俳優・高良健吾さん、日常を離れ、アナログな「時」を楽しむ旅【後編】2
見えるのは空だけ。波に身を任せる至上のひととき
スカイダイビングに続いては、しばしのドライブ。「乗り物は車とチャリ」という高良さんは、普段から都内や東京近郊でドライブを楽しんでいるそうだ。海に向かって山中に車を走らせながら、金色に輝く麦畑、風格ある家が集まった集落など、過ぎ去る美しい景色にも目を向ける。田んぼに張られた水は鏡のように山々を映し出し、思わず「すごいキレイ」と呟(つぶや)く高良さん。このロケーションも、すっかり気に入ったようだ。
潮の香りを楽しみながら「気持ちよかった」という海沿いの道を過ぎ、たどり着いたのはSUP(サップ)体験。サーフボードの上に立ち、パドルで水面を進むウォータースポーツだ。アクティビティーが満載の2日目は、まさしく「動の旅」と言えよう。この日の波は少し強め。この状態でサーフボードの上に立つのは、なかなか難しそうだ。
太陽が沈み始めようとするころ、ウェットスーツに身を包んだ高良さんは、インストラクターの方と共に海へ出ていく。ボードにひざ立ちしてパドルを漕(こ)ぎながら、少しずつ立ち上がろうとするものの、すぐにボードが裏返って海中へ。それでもすぐに体勢を整え、再びのトライで早くも立ち上がれる身体能力の高さには、ただ舌を巻くばかりだ。数分もすればまるで陸にいるかのように佇(たたず)み、バランスを崩してもすぐに立て直している。
沈み行く夕日を見つめ、時には万歳をするようにオールを掲げる高良さん。両足を開いて仁王立ちする姿が、夕焼けの中でシルエットとなって浮かび上がる。この間、表情は常に笑顔。ボードの上でヨガのポーズを取ったり、寝そべって波にたゆたったり、心のままに楽しんでいる。
それこそ、陸とも空とも違う時間の流れに、ただ身を任せている感じ。この2日間の中で、一番満たされたように見える表情は、自然に癒やされる旅の成功も示しているようだった。
「あんまり海に行かないんですよ、僕。海で泳ぐってこともなくて、見るだけが好きなんですけど、何だろうな、あの気持ち。癒やされるって言うのかな。波のリズムであったりとか、流れる雲の速さだったりとか、それこそわかりやすく夕日が落ちていって時間の流れがわかったりとか。明るさも変わっていきますし、そこに体ひとつで自然に任せているって状態が多分、好きだったのかな。結構、感動していたんですよ、ずっと。これからもしたいですね、SUP。波の上の良さを知ってしまいました」
「動の旅」の時を刻んだ、半袖に合う腕時計
アナログ旅2日目、高良さんの相棒となったのは「セイコー プレザージュ Style 60’s SARY209」。この機械式腕時計を「半袖が合う1本」と高良さんは語っている。
「普段の自分の格好に合うのは、これかなって思いますね。つけ心地がしっかりしていて、つけている感もありますし、シンプルでいい。素敵ですね。スチール(のブレスレット)もかっこいいですけど、黒のナイロンベルトに替えても合いそうなデザインだと思います」
「半袖に合う」という点では、昨年の自転車旅で共に時を刻んだ「セイコー プレザージュ Sharp Edged Series SARF005」にも、同じ思いを抱くという。
「ケースサイズが42.2mmで、自分にはちょっとデカいかなって思ったんですけど、つけると大きさを感じないんです。しかも半袖にハマるんですよね。小さいのって年中つけられますけど、半袖のときは良くも悪くも控えめ感があるので、このケースサイズは半袖に映えるなと思いました。旅好きで海外にもよく行くので、自分の一番好きなのがGMT。今もあの1本は活躍しています」
あのときの自転車旅を振り返り、「お話をいただいたときに、ご褒美だと思った」という高良さん。そんな彼は、今回の旅を終えてどのような感想をもったのだろうか。
「前回からそんなに時間が経たないうちにまたやりたいことを叶えてくれて、今回もご褒美のような旅だったので、自分にできることを精いっぱいやりたかったですね。ただ楽しむだけじゃなく、自分のルーツに通ずる場所であったり、好きなファッション、カルチャーだったり、そういうものを身に纏(まと)って何かやれたっていうのは、おもしろかったと思います。自分の好きなことで機械式時計がもたらしてくれる“贅沢な時間”を表現できる企画なんて、 ご褒美です、もう。最高でした。すいません、とかも出てきちゃいますね。こんなに楽しんじゃって(笑)」
見えるのは空だけ。波に身を任せる至上のひととき
スカイダイビングに続いては、しばしのドライブ。「乗り物は車とチャリ」という高良さんは、普段から都内や東京近郊でドライブを楽しんでいるそうだ。海に向かって山中に車を走らせながら、金色に輝く麦畑、風格ある家が集まった集落など、過ぎ去る美しい景色にも目を向ける。田んぼに張られた水は鏡のように山々を映し出し、思わず「すごいキレイ」と呟(つぶや)く高良さん。このロケーションも、すっかり気に入ったようだ。
潮の香りを楽しみながら「気持ちよかった」という海沿いの道を過ぎ、たどり着いたのはSUP(サップ)体験。サーフボードの上に立ち、パドルで水面を進むウォータースポーツだ。アクティビティーが満載の2日目は、まさしく「動の旅」と言えよう。この日の波は少し強め。この状態でサーフボードの上に立つのは、なかなか難しそうだ。
太陽が沈み始めようとするころ、ウェットスーツに身を包んだ高良さんは、インストラクターの方と共に海へ出ていく。ボードにひざ立ちしてパドルを漕(こ)ぎながら、少しずつ立ち上がろうとするものの、すぐにボードが裏返って海中へ。それでもすぐに体勢を整え、再びのトライで早くも立ち上がれる身体能力の高さには、ただ舌を巻くばかりだ。数分もすればまるで陸にいるかのように佇(たたず)み、バランスを崩してもすぐに立て直している。
沈み行く夕日を見つめ、時には万歳をするようにオールを掲げる高良さん。両足を開いて仁王立ちする姿が、夕焼けの中でシルエットとなって浮かび上がる。この間、表情は常に笑顔。ボードの上でヨガのポーズを取ったり、寝そべって波にたゆたったり、心のままに楽しんでいる。
それこそ、陸とも空とも違う時間の流れに、ただ身を任せている感じ。この2日間の中で、一番満たされたように見える表情は、自然に癒やされる旅の成功も示しているようだった。
「あんまり海に行かないんですよ、僕。海で泳ぐってこともなくて、見るだけが好きなんですけど、何だろうな、あの気持ち。癒やされるって言うのかな。波のリズムであったりとか、流れる雲の速さだったりとか、それこそわかりやすく夕日が落ちていって時間の流れがわかったりとか。明るさも変わっていきますし、そこに体ひとつで自然に任せているって状態が多分、好きだったのかな。結構、感動していたんですよ、ずっと。これからもしたいですね、SUP。波の上の良さを知ってしまいました」
「動の旅」の時を刻んだ、半袖に合う腕時計
アナログ旅2日目、高良さんの相棒となったのは「セイコー プレザージュ Style 60’s SARY209」。この機械式腕時計を「半袖が合う1本」と高良さんは語っている。
「普段の自分の格好に合うのは、これかなって思いますね。つけ心地がしっかりしていて、つけている感もありますし、シンプルでいい。素敵ですね。スチール(のブレスレット)もかっこいいですけど、黒のナイロンベルトに替えても合いそうなデザインだと思います」
「半袖に合う」という点では、昨年の自転車旅で共に時を刻んだ「セイコー プレザージュ Sharp Edged Series SARF005」にも、同じ思いを抱くという。
「ケースサイズが42.2mmで、自分にはちょっとデカいかなって思ったんですけど、つけると大きさを感じないんです。しかも半袖にハマるんですよね。小さいのって年中つけられますけど、半袖のときは良くも悪くも控えめ感があるので、このケースサイズは半袖に映えるなと思いました。旅好きで海外にもよく行くので、自分の一番好きなのがGMT。今もあの1本は活躍しています」
あのときの自転車旅を振り返り、「お話をいただいたときに、ご褒美だと思った」という高良さん。そんな彼は、今回の旅を終えてどのような感想をもったのだろうか。
「前回からそんなに時間が経たないうちにまたやりたいことを叶えてくれて、今回もご褒美のような旅だったので、自分にできることを精いっぱいやりたかったですね。ただ楽しむだけじゃなく、自分のルーツに通ずる場所であったり、好きなファッション、カルチャーだったり、そういうものを身に纏(まと)って何かやれたっていうのは、おもしろかったと思います。自分の好きなことで機械式時計がもたらしてくれる“贅沢な時間”を表現できる企画なんて、 ご褒美です、もう。最高でした。すいません、とかも出てきちゃいますね。こんなに楽しんじゃって(笑)」
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俳優・高良健吾さん、日常を離れ、アナログな「時」を楽しむ旅 【前編】
これまでやりたくても「時間」がなくてできなかったことに挑戦する「時間」をセイコー プレザージュが提供するこの企画。
昨年の「瀬戸内しまなみ海道」での自転車旅に続いて、俳優の高良健吾さんが再び旅立った。2日間、自然の中へ——。旅の目的は、「やりたかったことをすべて叶(かな)える」こと。とかく情報過多になりがちな日常を抜け出して、アナログな時間の流れに身を置いた高良さんは、何を感じ、どんな思いを抱いたのか。今回お届けする前編では、都会の喧噪(けんそう)から離れ、兵庫県北部の山間(やまあい)で自然をゆるりと楽しむ様子を追った。
腕時計と地図。アナログなツールでドライブへ
とある初夏の一日、高良さんが訪れたのは山間に佇(たたず)む古民家宿。やりたかったことをすべて叶える、今回の旅の拠点だ。大きな窓のあるメインルームでソファに座り、高良さんは持参した文庫本をしばし読みふける。
「本は好きです。こんな何百円で、人の考えに触れられるなんてすごいですよね。手に取らないと出会えないような言葉だったり、生き方だったり、そういうものを知ることができる。ある意味、ちょっとした旅だと思います」
そしてふと顔を上げ、明るい光が入り込む大きな窓から、山々を見つめる高良さん。そろそろ出発の時間だ。日常から離れるために、スマートフォンは置いていく。ルートは地図で、時間は腕時計で確認するアナログな旅の始まりだ。
「自分は基本アナログ。家にパソコンはないし、映画館に行くときはスマホを家に置いていくこともよくあります。スマホを気にしない分、別のものが見えてくる。こういう自然の中なら周囲をよく見るようになるし、いつもと違うアンテナも張れます」。地図を眺め、腕時計に目を向けてから、高良さんは車へ乗り込んだ。
小一時間、車を走らせて訪れたのは、歴史ある寺院。しっかりとした足取りで、初めて訪れる寺の山門をくぐる。
寺院では本堂に上がり、庭に向かってあぐらをかく。瞑想(めいそう)、これもまた高良さんがこの日、やりたかったことのひとつだ。背筋をぴしりと伸ばし、目をつぶって微動だにしない。葉ずれの音、鳥やカエルの鳴き声が止(や)んだ瞬間は、まるで時が止まっているかのようだ。
高良さんにとって瞑想は、ルーティンのようなものだという。
「だいたい寝る前にやるんです。撮影している期間は日中集中しているので、寝付きが悪かったり、途中で目が覚めたりすることもあるので、眠る前にちょっと心を落ち着かせるという感じ。今日のように自然の音に囲まれた場所だと、家の中で瞑想するよりも入りやすいですね。何も考えない、無理をしない時間が過ごせました」
自然の揺れを感じに。日常にない、贅沢時間
瞑想を終え、「ゴチャゴチャしていたものが整理された」と言う高良さんの次の目的地は、山中の釣り場。川に沿って続く遊歩道を、土の感触を確かめるように泰然と歩いていく高良さん。途中、足を止めて伸びをしたり、思いのままに満喫しているようだ。
こうして自然に囲まれながら思うのは、「自分が落ち着く場所、癒やされる場所は、自然なんだ」ということ。
「原風景が祖父母の田舎なんですよね。阿蘇と北九州の田川。きっと、そういう田舎で遊んでいた、楽しかった記憶があるんだろうと思います。自然の揺れって、見ているだけで落ち着くので、そこを求めに行っている。東京にいると、そういう揺れは風とか、上を見ないと感じられないので」
やがてたどり着いたのが、半径15mほどの滝壺(つぼ)。主にニジマスが釣れるという。海でのルアーフィッシング経験はある高良さんだが、川釣りは初挑戦。竹竿(ざお)にウキという組み合わせも、やはり初めて使う道具だそうだ。照れくさそうに「海ではルアーをなくしてばかりいたし、今回のやりたいことの中では一番自信がない」と言うものの、慣れた手つきで竿を操っている。
糸を垂らし、狙うポイントを変えながら数十分。前日の雨で濁った水面がゆらめく様子を、ただ見つめながら過ごす贅沢(ぜいたく)な時間だ。
「釣れなくても、3時間くらいは平気で過ごせますね。どれだけ時間が経ったかを確認することはあっても、苦ではないです。こうやって自然の中で過ごしている時は、時間の確認は腕時計がいいですね。それもデジタルの数字じゃなくて、針で見るっていうのがいい」
そんな話をするうちに、不意にウキが動き出した。「食いついた!」。そう思った瞬間、必死に暴れる魚の姿が。木漏れ日に輝く銀色の体はかなり大きく、高良さんもしばらく格闘したものの、魚はハリから外れて滝壺の底へと消えていった。その後すぐに再び別の獲物を捕らえるが、今度は糸が切れてしまう事態に。この装備では、少し心許(こころもと)ないようだ。
そろそろ宿に戻ろうか……と諦めかけたところで、またもウキが躍り出す。三度目の正直とばかりに、見事釣り上げた高良さん。「今日に限らず、以前から目の前で逃がしてばかりだったけど、ようやく釣れた!」と、喜びであふれんばかりの笑顔を向けた。
手を掛けるだけ愛着が増す。フォーマルな印象のモデル
「1時間で3匹なら入れ食い状態」と笑みを浮かべながら、宿へと戻ってきた。本日、予定していた夕食は屋外でのバーベキューだった。しかし、天気は下り坂。焚(た)き火台に火を入れ、炎が上がり始めるころには雨も降り出してきたため、部屋の中の囲炉裏に場所を移しての食事となった。
周囲には街灯や民家がなく、夜の帳(とばり)が下りれば辺りは真っ暗に。肉に魚、野菜も焼いて、時折、焚き火を眺めるひととき。
「焚き火って、本当に自然の揺らぎですよね。人間が作り出せない揺れというか。それこそ波だってそうだし、空だって雲の流れだったり、風の流れだったり、それって人間が絶対作り出せない。そういう場所に身を置くことが、自分にとっての癒やしですかね」。そう語る彼を包み込むように、時間はゆったりと過ぎていく。
この日、高良さんの腕で時を刻んだのは、「セイコー プレザージュ Sharp Edged Series SARX097」。アナログな旅によく似合う、機械式時計だ。
「機械式時計の良さは、自分がちゃんとその時計を扱っていないといけないこと。毎日見て、定期的にちゃんとメンテナンスしてあげることでより愛着が湧きますよね。耳を近付けて音を聞きながらりゅうずを巻くのも、好きな行為ですね」
「この『セイコー プレザージュ Sharp Edged Series SARX097』は、どちらかというとフォーマルな印象でした。白文字盤は持っていなかったんですが、いいですね。スーツのようなキレイめにも合うし、幅広いシーンで使えると思いました。(白文字盤は)似合う年齢が少し上という勝手なイメージがあったんですけど、 身につけてみると、“いや、そんなことないな”って気がしました」
そう言って、「セイコー プレザージュ Sharp Edged Series SARX097」に視線を落とす高良さん。「静の旅」となった1日が、そろそろ終わろうとしている。明日は一転、「動の旅」と言えるほど、バラエティーに富んだアクティブな旅となる。そちらは後編として次回、改めてご紹介しよう。
(文・石川由紀子 写真・高橋雄大 取材協力・円覚山宗鏡寺、glaminka KAMIKAWA、日高神鍋観光協会、清滝地区コミュニティセンターの皆様)
これまでやりたくても「時間」がなくてできなかったことに挑戦する「時間」をセイコー プレザージュが提供するこの企画。
昨年の「瀬戸内しまなみ海道」での自転車旅に続いて、俳優の高良健吾さんが再び旅立った。2日間、自然の中へ——。旅の目的は、「やりたかったことをすべて叶(かな)える」こと。とかく情報過多になりがちな日常を抜け出して、アナログな時間の流れに身を置いた高良さんは、何を感じ、どんな思いを抱いたのか。今回お届けする前編では、都会の喧噪(けんそう)から離れ、兵庫県北部の山間(やまあい)で自然をゆるりと楽しむ様子を追った。
腕時計と地図。アナログなツールでドライブへ
とある初夏の一日、高良さんが訪れたのは山間に佇(たたず)む古民家宿。やりたかったことをすべて叶える、今回の旅の拠点だ。大きな窓のあるメインルームでソファに座り、高良さんは持参した文庫本をしばし読みふける。
「本は好きです。こんな何百円で、人の考えに触れられるなんてすごいですよね。手に取らないと出会えないような言葉だったり、生き方だったり、そういうものを知ることができる。ある意味、ちょっとした旅だと思います」
そしてふと顔を上げ、明るい光が入り込む大きな窓から、山々を見つめる高良さん。そろそろ出発の時間だ。日常から離れるために、スマートフォンは置いていく。ルートは地図で、時間は腕時計で確認するアナログな旅の始まりだ。
「自分は基本アナログ。家にパソコンはないし、映画館に行くときはスマホを家に置いていくこともよくあります。スマホを気にしない分、別のものが見えてくる。こういう自然の中なら周囲をよく見るようになるし、いつもと違うアンテナも張れます」。地図を眺め、腕時計に目を向けてから、高良さんは車へ乗り込んだ。
小一時間、車を走らせて訪れたのは、歴史ある寺院。しっかりとした足取りで、初めて訪れる寺の山門をくぐる。
寺院では本堂に上がり、庭に向かってあぐらをかく。瞑想(めいそう)、これもまた高良さんがこの日、やりたかったことのひとつだ。背筋をぴしりと伸ばし、目をつぶって微動だにしない。葉ずれの音、鳥やカエルの鳴き声が止(や)んだ瞬間は、まるで時が止まっているかのようだ。
高良さんにとって瞑想は、ルーティンのようなものだという。
「だいたい寝る前にやるんです。撮影している期間は日中集中しているので、寝付きが悪かったり、途中で目が覚めたりすることもあるので、眠る前にちょっと心を落ち着かせるという感じ。今日のように自然の音に囲まれた場所だと、家の中で瞑想するよりも入りやすいですね。何も考えない、無理をしない時間が過ごせました」
自然の揺れを感じに。日常にない、贅沢時間
瞑想を終え、「ゴチャゴチャしていたものが整理された」と言う高良さんの次の目的地は、山中の釣り場。川に沿って続く遊歩道を、土の感触を確かめるように泰然と歩いていく高良さん。途中、足を止めて伸びをしたり、思いのままに満喫しているようだ。
こうして自然に囲まれながら思うのは、「自分が落ち着く場所、癒やされる場所は、自然なんだ」ということ。
「原風景が祖父母の田舎なんですよね。阿蘇と北九州の田川。きっと、そういう田舎で遊んでいた、楽しかった記憶があるんだろうと思います。自然の揺れって、見ているだけで落ち着くので、そこを求めに行っている。東京にいると、そういう揺れは風とか、上を見ないと感じられないので」
やがてたどり着いたのが、半径15mほどの滝壺(つぼ)。主にニジマスが釣れるという。海でのルアーフィッシング経験はある高良さんだが、川釣りは初挑戦。竹竿(ざお)にウキという組み合わせも、やはり初めて使う道具だそうだ。照れくさそうに「海ではルアーをなくしてばかりいたし、今回のやりたいことの中では一番自信がない」と言うものの、慣れた手つきで竿を操っている。
糸を垂らし、狙うポイントを変えながら数十分。前日の雨で濁った水面がゆらめく様子を、ただ見つめながら過ごす贅沢(ぜいたく)な時間だ。
「釣れなくても、3時間くらいは平気で過ごせますね。どれだけ時間が経ったかを確認することはあっても、苦ではないです。こうやって自然の中で過ごしている時は、時間の確認は腕時計がいいですね。それもデジタルの数字じゃなくて、針で見るっていうのがいい」
そんな話をするうちに、不意にウキが動き出した。「食いついた!」。そう思った瞬間、必死に暴れる魚の姿が。木漏れ日に輝く銀色の体はかなり大きく、高良さんもしばらく格闘したものの、魚はハリから外れて滝壺の底へと消えていった。その後すぐに再び別の獲物を捕らえるが、今度は糸が切れてしまう事態に。この装備では、少し心許(こころもと)ないようだ。
そろそろ宿に戻ろうか……と諦めかけたところで、またもウキが躍り出す。三度目の正直とばかりに、見事釣り上げた高良さん。「今日に限らず、以前から目の前で逃がしてばかりだったけど、ようやく釣れた!」と、喜びであふれんばかりの笑顔を向けた。
手を掛けるだけ愛着が増す。フォーマルな印象のモデル
「1時間で3匹なら入れ食い状態」と笑みを浮かべながら、宿へと戻ってきた。本日、予定していた夕食は屋外でのバーベキューだった。しかし、天気は下り坂。焚(た)き火台に火を入れ、炎が上がり始めるころには雨も降り出してきたため、部屋の中の囲炉裏に場所を移しての食事となった。
周囲には街灯や民家がなく、夜の帳(とばり)が下りれば辺りは真っ暗に。肉に魚、野菜も焼いて、時折、焚き火を眺めるひととき。
「焚き火って、本当に自然の揺らぎですよね。人間が作り出せない揺れというか。それこそ波だってそうだし、空だって雲の流れだったり、風の流れだったり、それって人間が絶対作り出せない。そういう場所に身を置くことが、自分にとっての癒やしですかね」。そう語る彼を包み込むように、時間はゆったりと過ぎていく。
この日、高良さんの腕で時を刻んだのは、「セイコー プレザージュ Sharp Edged Series SARX097」。アナログな旅によく似合う、機械式時計だ。
「機械式時計の良さは、自分がちゃんとその時計を扱っていないといけないこと。毎日見て、定期的にちゃんとメンテナンスしてあげることでより愛着が湧きますよね。耳を近付けて音を聞きながらりゅうずを巻くのも、好きな行為ですね」
「この『セイコー プレザージュ Sharp Edged Series SARX097』は、どちらかというとフォーマルな印象でした。白文字盤は持っていなかったんですが、いいですね。スーツのようなキレイめにも合うし、幅広いシーンで使えると思いました。(白文字盤は)似合う年齢が少し上という勝手なイメージがあったんですけど、 身につけてみると、“いや、そんなことないな”って気がしました」
そう言って、「セイコー プレザージュ Sharp Edged Series SARX097」に視線を落とす高良さん。「静の旅」となった1日が、そろそろ終わろうとしている。明日は一転、「動の旅」と言えるほど、バラエティーに富んだアクティブな旅となる。そちらは後編として次回、改めてご紹介しよう。
(文・石川由紀子 写真・高橋雄大 取材協力・円覚山宗鏡寺、glaminka KAMIKAWA、日高神鍋観光協会、清滝地区コミュニティセンターの皆様)
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