往復書簡39[泪][泪][泪]
片寄からの最後のメッセージ
片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡 エンタメ 芸能 2021年4月18日掲載
片寄涼太
先日東京オリンピック関連のイベントに参加させて頂きました。歴史ある聖火が灯ったステージで歌わせて頂いて…生きているうちにこんな経験ができて大変光栄に思います(他の写真を見る)
片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡39
コロナ禍に始まっていまだコロナ禍の中、幕を閉じようとする往復書簡。今回で片寄パートはラストとなる。
拝啓 小竹正人さま
この往復書簡が始まる頃の打ち合わせで「初めは僕が書いたほうがいいと思う」と提案させて頂いたことを思い出した。そのときは「返事の来ない手紙」を最後に小竹さんに書かせることになるとは全く思っていなかった。
僕としてはこのメッセージが最後。あえて僕の短い人生のなかでの、些細な思い出話のようなものを綴らせてもらおうかと思います。
なんてことのない物や出来事を通じて、必ずよみがえるエピソードがあります。
例えば割り箸を割るたびに思い出すこと。僕は割り箸を割ったあと、割れた箸同士の割れた面を合わせて擦るクセがあるのですが、小竹さんとの食事の席で割り箸を割ったときにそれを「いま何したの??」と揶揄(からか)うように突っ込まれたこと。
またそれも食事をご一緒しているとき。食事も一通り済みそろそろ帰ろうかという頃、小竹さんが結露したグラスに付いた水滴を何気なく指で引っ張ったことがあった。
「こういうのを歌詞にするんだよ」とボソッとおっしゃった数年後に生まれたGENERATIONSの「Stupid~真っ赤なブレスレット~」という楽曲。その歌いはじめは「曇ったガラスを指でなぞったら 水滴散らかしながら一本の線ができる You know」でした。
なんの引き合わせかそのパートを僕が歌うことになったのですが、僕の脳裏には歌うたびに必ずそのときの画が鮮明に浮かぶ。でも何も知らずに歌詞だけを見たら、これは冬の窓ガラスなんだろうなと想像する人は少なくないだろうなとも思う。
小竹さん自身が僕との食事の席でのそんな一瞬を覚えているとは考えにくいのですが、僕自身はそんな些細なことを妙に頭にこびり付かせてしまうことがあるのです。
親からもらった言葉でも忘れないものがある。
「こんにゃくはお腹の掃除をするんだよ」と母から言われ、子供心に“お腹が掃除される”ことを想像して必ず食事の最後に食べないと気が済まなくなったこと。まだ4、5歳の頃に「『チュウトハンパ』という言葉の意味がわからない」と母と買い物をしているときに聞いたことがあった。すると母は乗っているエスカレーターのひとつ上の段に片足を乗せて「これが『中途半端』だよ」と教えてくれた。
この話を母にしたら、もちろん覚えていなかったのですが、もし自分に子どもができて同じことを聞かれたら、同じように教えてあげようと思う。
博多ラーメン
普段は罪ですがやっぱり博多ラーメンは最高です。スタッフの方のご厚意で味わうことができました。またお店でも頂きたいです(他の写真を見る)
小竹さんが書いてくれたように、確かにこの往復書簡を通して、僕自身も「知らない自分」に出会うことができたのだと思いました。
でもこういった些細な思い出を記し、思い返せるような場所だったなら、その自分は決して「知らない自分」ではなくて、僕自身が大切にしてきた「大切にしたい自分」だったんじゃないかと思う。
「自分を大切に」と言うと、自己愛やナルシストっぽいかもしれないですが、この往復書簡を通して「僕自身が好きな片寄涼太」をお届けできたのではないかな。
この往復書簡を覗き見してくれた読者の皆さまにとって、ほんの些細な…でも頭にこびり付くような言葉や思い出が少しでもお届けできていたらなと願って。
小竹正人さま、心から…ありがとうございました。
片寄涼太
片寄からの最後のメッセージ
片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡 エンタメ 芸能 2021年4月18日掲載
片寄涼太
先日東京オリンピック関連のイベントに参加させて頂きました。歴史ある聖火が灯ったステージで歌わせて頂いて…生きているうちにこんな経験ができて大変光栄に思います(他の写真を見る)
片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡39
コロナ禍に始まっていまだコロナ禍の中、幕を閉じようとする往復書簡。今回で片寄パートはラストとなる。
拝啓 小竹正人さま
この往復書簡が始まる頃の打ち合わせで「初めは僕が書いたほうがいいと思う」と提案させて頂いたことを思い出した。そのときは「返事の来ない手紙」を最後に小竹さんに書かせることになるとは全く思っていなかった。
僕としてはこのメッセージが最後。あえて僕の短い人生のなかでの、些細な思い出話のようなものを綴らせてもらおうかと思います。
なんてことのない物や出来事を通じて、必ずよみがえるエピソードがあります。
例えば割り箸を割るたびに思い出すこと。僕は割り箸を割ったあと、割れた箸同士の割れた面を合わせて擦るクセがあるのですが、小竹さんとの食事の席で割り箸を割ったときにそれを「いま何したの??」と揶揄(からか)うように突っ込まれたこと。
またそれも食事をご一緒しているとき。食事も一通り済みそろそろ帰ろうかという頃、小竹さんが結露したグラスに付いた水滴を何気なく指で引っ張ったことがあった。
「こういうのを歌詞にするんだよ」とボソッとおっしゃった数年後に生まれたGENERATIONSの「Stupid~真っ赤なブレスレット~」という楽曲。その歌いはじめは「曇ったガラスを指でなぞったら 水滴散らかしながら一本の線ができる You know」でした。
なんの引き合わせかそのパートを僕が歌うことになったのですが、僕の脳裏には歌うたびに必ずそのときの画が鮮明に浮かぶ。でも何も知らずに歌詞だけを見たら、これは冬の窓ガラスなんだろうなと想像する人は少なくないだろうなとも思う。
小竹さん自身が僕との食事の席でのそんな一瞬を覚えているとは考えにくいのですが、僕自身はそんな些細なことを妙に頭にこびり付かせてしまうことがあるのです。
親からもらった言葉でも忘れないものがある。
「こんにゃくはお腹の掃除をするんだよ」と母から言われ、子供心に“お腹が掃除される”ことを想像して必ず食事の最後に食べないと気が済まなくなったこと。まだ4、5歳の頃に「『チュウトハンパ』という言葉の意味がわからない」と母と買い物をしているときに聞いたことがあった。すると母は乗っているエスカレーターのひとつ上の段に片足を乗せて「これが『中途半端』だよ」と教えてくれた。
この話を母にしたら、もちろん覚えていなかったのですが、もし自分に子どもができて同じことを聞かれたら、同じように教えてあげようと思う。
博多ラーメン
普段は罪ですがやっぱり博多ラーメンは最高です。スタッフの方のご厚意で味わうことができました。またお店でも頂きたいです(他の写真を見る)
小竹さんが書いてくれたように、確かにこの往復書簡を通して、僕自身も「知らない自分」に出会うことができたのだと思いました。
でもこういった些細な思い出を記し、思い返せるような場所だったなら、その自分は決して「知らない自分」ではなくて、僕自身が大切にしてきた「大切にしたい自分」だったんじゃないかと思う。
「自分を大切に」と言うと、自己愛やナルシストっぽいかもしれないですが、この往復書簡を通して「僕自身が好きな片寄涼太」をお届けできたのではないかな。
この往復書簡を覗き見してくれた読者の皆さまにとって、ほんの些細な…でも頭にこびり付くような言葉や思い出が少しでもお届けできていたらなと願って。
小竹正人さま、心から…ありがとうございました。
片寄涼太
#往復書簡#
片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡39
コロナ禍に始まっていまだコロナ禍の中、幕を閉じようとする往復書簡。今回で片寄パートはラストとなる。
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拝啓 小竹正人さま
この往復書簡が始まる頃の打ち合わせで「初めは僕が書いたほうがいいと思う」と提案させて頂いたことを思い出した。そのときは「返事の来ない手紙」を最後に小竹さんに書かせることになるとは全く思っていなかった。
僕としてはこのメッセージが最後。あえて僕の短い人生のなかでの、些細な思い出話のようなものを綴らせてもらおうかと思います。
なんてことのない物や出来事を通じて、必ずよみがえるエピソードがあります。
例えば割り箸を割るたびに思い出すこと。僕は割り箸を割ったあと、割れた箸同士の割れた面を合わせて擦るクセがあるのですが、小竹さんとの食事の席で割り箸を割ったときにそれを「いま何したの??」と揶揄(からか)うように突っ込まれたこと。
またそれも食事をご一緒しているとき。食事も一通り済みそろそろ帰ろうかという頃、小竹さんが結露したグラスに付いた水滴を何気なく指で引っ張ったことがあった。
「こういうのを歌詞にするんだよ」とボソッとおっしゃった数年後に生まれたGENERATIONSの「Stupid~真っ赤なブレスレット~」という楽曲。その歌いはじめは「曇ったガラスを指でなぞったら 水滴散らかしながら一本の線ができる You know」でした。
なんの引き合わせかそのパートを僕が歌うことになったのですが、僕の脳裏には歌うたびに必ずそのときの画が鮮明に浮かぶ。でも何も知らずに歌詞だけを見たら、これは冬の窓ガラスなんだろうなと想像する人は少なくないだろうなとも思う。
小竹さん自身が僕との食事の席でのそんな一瞬を覚えているとは考えにくいのですが、僕自身はそんな些細なことを妙に頭にこびり付かせてしまうことがあるのです。
親からもらった言葉でも忘れないものがある。
「こんにゃくはお腹の掃除をするんだよ」と母から言われ、子供心に“お腹が掃除される”ことを想像して必ず食事の最後に食べないと気が済まなくなったこと。まだ4、5歳の頃に「『チュウトハンパ』という言葉の意味がわからない」と母と買い物をしているときに聞いたことがあった。すると母は乗っているエスカレーターのひとつ上の段に片足を乗せて「これが『中途半端』だよ」と教えてくれた。
この話を母にしたら、もちろん覚えていなかったのですが、もし自分に子どもができて同じことを聞かれたら、同じように教えてあげようと思う。
小竹さんが書いてくれたように、確かにこの往復書簡を通して、僕自身も「知らない自分」に出会うことができたのだと思いました。
でもこういった些細な思い出を記し、思い返せるような場所だったなら、その自分は決して「知らない自分」ではなくて、僕自身が大切にしてきた「大切にしたい自分」だったんじゃないかと思う。
「自分を大切に」と言うと、自己愛やナルシストっぽいかもしれないですが、この往復書簡を通して「僕自身が好きな片寄涼太」をお届けできたのではないかな。
この往復書簡を覗き見してくれた読者の皆さまにとって、ほんの些細な…でも頭にこびり付くような言葉や思い出が少しでもお届けできていたらなと願って。
小竹正人さま、心から…ありがとうございました。
片寄涼太
p1 先日東京オリンピック関連のイベントに参加させて頂きました。歴史ある聖火が灯ったステージで歌わせて頂いて…生きているうちにこんな経験ができて大変光栄に思います
p2 普段は罪ですがやっぱり博多ラーメンは最高です。スタッフの方のご厚意で味わうことができました。またお店でも頂きたいです
原文地址https://t.cn/A6coTURj
片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡39
コロナ禍に始まっていまだコロナ禍の中、幕を閉じようとする往復書簡。今回で片寄パートはラストとなる。
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拝啓 小竹正人さま
この往復書簡が始まる頃の打ち合わせで「初めは僕が書いたほうがいいと思う」と提案させて頂いたことを思い出した。そのときは「返事の来ない手紙」を最後に小竹さんに書かせることになるとは全く思っていなかった。
僕としてはこのメッセージが最後。あえて僕の短い人生のなかでの、些細な思い出話のようなものを綴らせてもらおうかと思います。
なんてことのない物や出来事を通じて、必ずよみがえるエピソードがあります。
例えば割り箸を割るたびに思い出すこと。僕は割り箸を割ったあと、割れた箸同士の割れた面を合わせて擦るクセがあるのですが、小竹さんとの食事の席で割り箸を割ったときにそれを「いま何したの??」と揶揄(からか)うように突っ込まれたこと。
またそれも食事をご一緒しているとき。食事も一通り済みそろそろ帰ろうかという頃、小竹さんが結露したグラスに付いた水滴を何気なく指で引っ張ったことがあった。
「こういうのを歌詞にするんだよ」とボソッとおっしゃった数年後に生まれたGENERATIONSの「Stupid~真っ赤なブレスレット~」という楽曲。その歌いはじめは「曇ったガラスを指でなぞったら 水滴散らかしながら一本の線ができる You know」でした。
なんの引き合わせかそのパートを僕が歌うことになったのですが、僕の脳裏には歌うたびに必ずそのときの画が鮮明に浮かぶ。でも何も知らずに歌詞だけを見たら、これは冬の窓ガラスなんだろうなと想像する人は少なくないだろうなとも思う。
小竹さん自身が僕との食事の席でのそんな一瞬を覚えているとは考えにくいのですが、僕自身はそんな些細なことを妙に頭にこびり付かせてしまうことがあるのです。
親からもらった言葉でも忘れないものがある。
「こんにゃくはお腹の掃除をするんだよ」と母から言われ、子供心に“お腹が掃除される”ことを想像して必ず食事の最後に食べないと気が済まなくなったこと。まだ4、5歳の頃に「『チュウトハンパ』という言葉の意味がわからない」と母と買い物をしているときに聞いたことがあった。すると母は乗っているエスカレーターのひとつ上の段に片足を乗せて「これが『中途半端』だよ」と教えてくれた。
この話を母にしたら、もちろん覚えていなかったのですが、もし自分に子どもができて同じことを聞かれたら、同じように教えてあげようと思う。
小竹さんが書いてくれたように、確かにこの往復書簡を通して、僕自身も「知らない自分」に出会うことができたのだと思いました。
でもこういった些細な思い出を記し、思い返せるような場所だったなら、その自分は決して「知らない自分」ではなくて、僕自身が大切にしてきた「大切にしたい自分」だったんじゃないかと思う。
「自分を大切に」と言うと、自己愛やナルシストっぽいかもしれないですが、この往復書簡を通して「僕自身が好きな片寄涼太」をお届けできたのではないかな。
この往復書簡を覗き見してくれた読者の皆さまにとって、ほんの些細な…でも頭にこびり付くような言葉や思い出が少しでもお届けできていたらなと願って。
小竹正人さま、心から…ありがとうございました。
片寄涼太
p1 先日東京オリンピック関連のイベントに参加させて頂きました。歴史ある聖火が灯ったステージで歌わせて頂いて…生きているうちにこんな経験ができて大変光栄に思います
p2 普段は罪ですがやっぱり博多ラーメンは最高です。スタッフの方のご厚意で味わうことができました。またお店でも頂きたいです
原文地址https://t.cn/A6coTURj
往復書簡37
片寄が気になっていた「ワインショップの店主との出会い」
片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡 エンタメ 芸能 2021年4月4日掲載
南部鉄器
友人の勧めから南部鉄器デビュー。これから美味しい白湯を研究していきます。宮伸穂さんの作品はどれもめちゃくちゃかわいい(他の写真を見る)
片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡37
この往復書簡のやりとりも残り少ないものとなった。コロナ禍に始まり、コロナ禍に終わろうとする連載で、片寄の胸に去来したものとは?
拝啓 小竹正人さま
先日、マネージャーさんからこの往復書簡が残り2回のやり取りとなるという連絡をもらいました。
コロナ禍の時間とリンクするように始まったこの往復書簡があと少しという知らせ…世の状況も少しずつ、会いたい人に会えるようになっていくことを暗示してくれているのかもしれません。
多くの方々に自由に見ていただける場所で文章を書く経験は僕にとって貴重な財産となりました。
今まで会員制のモバイルサイトのブログで時折綴ってきたパーソナルな想いに近いものを、小竹さんとのこの往復書簡という場所で表現できたのは新鮮でした。ブログに綴る内容と差別化しようとして、モバイルサイトのほうを多少おざなりにしてしまったことは悔やまれますが…。
目黒川の桜
目黒川の桜。ちょうど満開のタイミングでふらっと外を歩いたので、とても綺麗な桜が観られました(他の写真を見る)
さて、あと残り2回のやり取りでなにを書き残せるのかと考えていたところ、とあるワインショップの店主との出会いがありました。
店内でグラス一杯から飲めて、そこで飲んだワインはもちろん、店内に並ぶワインからもお気に入りを選んで買って帰ることができるスタイルの店舗が、最近増えてきています。
僕が仕事の合間によく行く、身体のケアの先生のところからほど近くにもそのような類のお店があり、その店の前を通るたびに気になっていました。
ですが、そのお店は緊急事態宣言下の自粛要請に従って全く店を開けていませんでした。
そんなある日の午後、たまたまその店の前を通ると珍しく営業していました。
これは何かの縁かなあと思い、少し覗いてみることにしました。
アパレルショップでも酒屋でも、初めての店に入るのは多少緊張感を伴う。
思っていたのと違うなあと感じたり、直感的に合わないなと感じたりというお店にも出会ってきた。
ドキドキしながらその店に入ると、店主は入ってきた客を睨むような、怖い顔をなさっていたのです。
僕は正直、無愛想だなと思いました。
でも僕は単純にワインが好きだし、前を通るたびに気になっていたお店だから一通りどんなものが置いてあるのか見てから出ようと思いました。
いろいろと見ていくなかで、このお店に置かれたワインは僕の好みとかなり重なる部分があることに気づき、気持ちが高まっていきました。
この店と出会ったのも縁かもしれないと思い、無愛想だなと思った店主に話しかけてみました。
「ワインがすごく好きなんです。素敵なラインナップですね。」
すると店主は、「ありがとうございます。僕が好きなものを置いてるだけなんです。趣味みたいなもんです」とのこと。
ワインについて話をしているうちに、店主は僕に心の内を語ってくれました。
「若いころは同級生と居酒屋とかで飲んでも、なにも気にせず割り勘で食事をしていたのに、歳を重ねていくと行くお店も少し変わる。そんなときに『お前は3杯飲んだだろ?俺は2杯しか飲んでないのに割り勘なのかよ』と相手が言うようになったことが悲しかった」
そんな風に言ってきた友人とはもう食事にいけないなと思ったんだそうです。
「最近は“コスパ”という言葉がよく使われるけれど、食事やお酒はそれだけの世界じゃない。美味しいものには美味しいものなりの価値があって、美味しく生まれてきた食事やお酒に罪はない」
そこで僕は合点がいきました。
「だからこの店主は入ってくるお客さんに怖い顔をしてしまうようになったんだな」と。
その話を聞いた翌日にも僕はそのお店を訪ねました。
「今日は大切な友人と食事をするから、美味しいワインを買いに来ました」
僕はそう言って赤白一本ずつのワインを購入したのです。
昨日訪ねた僕であることに店主が気づいていたかどうかはさておき、ワインがグラスに注がれたときの花が開くような香りのように、店主の顔に笑顔が咲くことを心から祈っています。
片寄が気になっていた「ワインショップの店主との出会い」
片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡 エンタメ 芸能 2021年4月4日掲載
南部鉄器
友人の勧めから南部鉄器デビュー。これから美味しい白湯を研究していきます。宮伸穂さんの作品はどれもめちゃくちゃかわいい(他の写真を見る)
片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡37
この往復書簡のやりとりも残り少ないものとなった。コロナ禍に始まり、コロナ禍に終わろうとする連載で、片寄の胸に去来したものとは?
拝啓 小竹正人さま
先日、マネージャーさんからこの往復書簡が残り2回のやり取りとなるという連絡をもらいました。
コロナ禍の時間とリンクするように始まったこの往復書簡があと少しという知らせ…世の状況も少しずつ、会いたい人に会えるようになっていくことを暗示してくれているのかもしれません。
多くの方々に自由に見ていただける場所で文章を書く経験は僕にとって貴重な財産となりました。
今まで会員制のモバイルサイトのブログで時折綴ってきたパーソナルな想いに近いものを、小竹さんとのこの往復書簡という場所で表現できたのは新鮮でした。ブログに綴る内容と差別化しようとして、モバイルサイトのほうを多少おざなりにしてしまったことは悔やまれますが…。
目黒川の桜
目黒川の桜。ちょうど満開のタイミングでふらっと外を歩いたので、とても綺麗な桜が観られました(他の写真を見る)
さて、あと残り2回のやり取りでなにを書き残せるのかと考えていたところ、とあるワインショップの店主との出会いがありました。
店内でグラス一杯から飲めて、そこで飲んだワインはもちろん、店内に並ぶワインからもお気に入りを選んで買って帰ることができるスタイルの店舗が、最近増えてきています。
僕が仕事の合間によく行く、身体のケアの先生のところからほど近くにもそのような類のお店があり、その店の前を通るたびに気になっていました。
ですが、そのお店は緊急事態宣言下の自粛要請に従って全く店を開けていませんでした。
そんなある日の午後、たまたまその店の前を通ると珍しく営業していました。
これは何かの縁かなあと思い、少し覗いてみることにしました。
アパレルショップでも酒屋でも、初めての店に入るのは多少緊張感を伴う。
思っていたのと違うなあと感じたり、直感的に合わないなと感じたりというお店にも出会ってきた。
ドキドキしながらその店に入ると、店主は入ってきた客を睨むような、怖い顔をなさっていたのです。
僕は正直、無愛想だなと思いました。
でも僕は単純にワインが好きだし、前を通るたびに気になっていたお店だから一通りどんなものが置いてあるのか見てから出ようと思いました。
いろいろと見ていくなかで、このお店に置かれたワインは僕の好みとかなり重なる部分があることに気づき、気持ちが高まっていきました。
この店と出会ったのも縁かもしれないと思い、無愛想だなと思った店主に話しかけてみました。
「ワインがすごく好きなんです。素敵なラインナップですね。」
すると店主は、「ありがとうございます。僕が好きなものを置いてるだけなんです。趣味みたいなもんです」とのこと。
ワインについて話をしているうちに、店主は僕に心の内を語ってくれました。
「若いころは同級生と居酒屋とかで飲んでも、なにも気にせず割り勘で食事をしていたのに、歳を重ねていくと行くお店も少し変わる。そんなときに『お前は3杯飲んだだろ?俺は2杯しか飲んでないのに割り勘なのかよ』と相手が言うようになったことが悲しかった」
そんな風に言ってきた友人とはもう食事にいけないなと思ったんだそうです。
「最近は“コスパ”という言葉がよく使われるけれど、食事やお酒はそれだけの世界じゃない。美味しいものには美味しいものなりの価値があって、美味しく生まれてきた食事やお酒に罪はない」
そこで僕は合点がいきました。
「だからこの店主は入ってくるお客さんに怖い顔をしてしまうようになったんだな」と。
その話を聞いた翌日にも僕はそのお店を訪ねました。
「今日は大切な友人と食事をするから、美味しいワインを買いに来ました」
僕はそう言って赤白一本ずつのワインを購入したのです。
昨日訪ねた僕であることに店主が気づいていたかどうかはさておき、ワインがグラスに注がれたときの花が開くような香りのように、店主の顔に笑顔が咲くことを心から祈っています。
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