230610
转推及推文补档
★今夜も来たぞ、ワイルドタイガーだっ❗
★今晚也来了,狂野猛虎❗
★先週さ、#リアタイバニ のコメント見てたらチョイチョイ見かけたのが『リンリンコンビ』
最初ぜーんぜん分かんなかった
いやぁ~タイバニ基礎用語があって助かったぜ️
そっかなるほどね~✨
やっぱ凄いな基礎用語
みんなありがとなー
★看上周的#リアタイバニ 的评论恰巧看到的『RINRI 搭档』
在开始完全不明白什么意思
那~在タイバニ基础用语这块请帮助我️
哦哦原来如此啊~✨
果然是超厉害的基础用语
谢谢大家
*宝玲的Rin和折纸旋风的Rin组成的组合
★平田さんはただ今、市民の皆様からのツッコミを受付中です。
間もなく締め切り、放送開始までっ❗
お早めにっ(・ω<)
#リアタイバニ じゃない
★平田先生现在正在受理市民们的吐槽。
马上就要截止了,直到播放开始❗
早点来哦(・ω<)
不是事实TB
★どもっ、TIGER & BUNNYのびろんびろんになった歯ブラシは熱湯をかけて再生させる方、ひらたでっす‼️
★你好,TIGER & BUNNY的哗啦哗啦的牙刷是浇上热水再生的人,平田是也‼️
★ゲゲッ‼️
NEXTだと子供でも問答無用で銃口向けられんのかっ⁉️
★啊啊‼️
NEXT即使是孩子也不需要问答就用枪口对着么⁉️
★二人してお洒落イケメンに成長したな……
って足下に『リンリンコンビ』がっ‼️
★两个人都成长为时尚帅哥了......
『リンリンコンビ』‼️
★だっ❗
マッティアに素面が割れてんぞっ‼️
★啊❗
马蒂亚素面裂开了‼️
★いい娘だな……ラーラ
★好女孩啊….拉拉
9★ライアンの車、シビィーなぁ
子供の頃、コラムシフトに憧れてました。
9★瑞安的车,希比啊
小时候,我憧憬着坐专栏轮班。
★トナカイバルーンめっちゃキャワイイ
★驯鹿气球超级可爱
★タイテムの差し入れコーナー✨
★大典的获得环节✨
★珍しくタイテムが凄ぇ良いコト言ってるところ、大変恐縮ですが、只今ジョリーが出演中です。
★难得大典说了这么好的话,真是不好意思,现在朱力正在出场。
★だっ❗
所長登場っ❗
今夜も寝不足確定か……
★啊❗
所长登场❗
今晚也确定睡眠不足了……
★だっ‼️
ライアンのカッチョイイ車がっ
★啊‼️
瑞安的卡乔伊车
★だっ‼️
どうした一体っ⁉️
みんなトレーニングルームで捕まっちまったのかっ❗
★啊‼️
怎么回事啊⁉️
大家都在训练室被抓了吗?❗
★カッチェ~っタイテムっ️
★kachi~大典️
★昴も️
★昴也️
★最悪なじゃねえかっ
★不是最坏的情况吗
★オレもわからん
★我也不知道
★だっ終わっ‼️
いつの間に体感マヒの打たれてたってかっ⁉️
今週も残念ながらはお休み。
来週に期待しませう✨
★啊要完了‼️
不知不觉体感瘫痪的被打了⁉️
这周也很遗憾休息
期待下周吧✨
★予告はラーラ✨
蚊の鳴くような声で頑張りました
★预告片上是拉拉予告はラーラ✨
像蚊子一样的声音,已经很努力了
★仲間たちが次々にやられちまって大変な状況だけど、目覚めた相棒の快復に望みを賭けて、来週も応援よろしくっ❗
しーやーっ‼️
★同伴们接二连三地被打败了,虽然情况很糟糕,但是赌上搭档复活的情况,下周也请支持❗
就这样‼️
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★今夜も来たぞ、ワイルドタイガーだっ❗
★今晚也来了,狂野猛虎❗
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最初ぜーんぜん分かんなかった
いやぁ~タイバニ基礎用語があって助かったぜ️
そっかなるほどね~✨
やっぱ凄いな基礎用語
みんなありがとなー
★看上周的#リアタイバニ 的评论恰巧看到的『RINRI 搭档』
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お早めにっ(・ω<)
#リアタイバニ じゃない
★平田先生现在正在受理市民们的吐槽。
马上就要截止了,直到播放开始❗
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不是事实TB
★どもっ、TIGER & BUNNYのびろんびろんになった歯ブラシは熱湯をかけて再生させる方、ひらたでっす‼️
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って足下に『リンリンコンビ』がっ‼️
★两个人都成长为时尚帅哥了......
『リンリンコンビ』‼️
★だっ❗
マッティアに素面が割れてんぞっ‼️
★啊❗
马蒂亚素面裂开了‼️
★いい娘だな……ラーラ
★好女孩啊….拉拉
9★ライアンの車、シビィーなぁ
子供の頃、コラムシフトに憧れてました。
9★瑞安的车,希比啊
小时候,我憧憬着坐专栏轮班。
★トナカイバルーンめっちゃキャワイイ
★驯鹿气球超级可爱
★タイテムの差し入れコーナー✨
★大典的获得环节✨
★珍しくタイテムが凄ぇ良いコト言ってるところ、大変恐縮ですが、只今ジョリーが出演中です。
★难得大典说了这么好的话,真是不好意思,现在朱力正在出场。
★だっ❗
所長登場っ❗
今夜も寝不足確定か……
★啊❗
所长登场❗
今晚也确定睡眠不足了……
★だっ‼️
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★啊‼️
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★だっ‼️
どうした一体っ⁉️
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★啊‼️
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大家都在训练室被抓了吗?❗
★カッチェ~っタイテムっ️
★kachi~大典️
★昴も️
★昴也️
★最悪なじゃねえかっ
★不是最坏的情况吗
★オレもわからん
★我也不知道
★だっ終わっ‼️
いつの間に体感マヒの打たれてたってかっ⁉️
今週も残念ながらはお休み。
来週に期待しませう✨
★啊要完了‼️
不知不觉体感瘫痪的被打了⁉️
这周也很遗憾休息
期待下周吧✨
★予告はラーラ✨
蚊の鳴くような声で頑張りました
★预告片上是拉拉予告はラーラ✨
像蚊子一样的声音,已经很努力了
★仲間たちが次々にやられちまって大変な状況だけど、目覚めた相棒の快復に望みを賭けて、来週も応援よろしくっ❗
しーやーっ‼️
★同伴们接二连三地被打败了,虽然情况很糟糕,但是赌上搭档复活的情况,下周也请支持❗
就这样‼️
蜘蛛の糸
芥川龍之介
ある日の事でございます。御釈迦様おしゃかさまは極楽の蓮池はすいけのふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮はすの花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色きんいろの蕊ずいからは、何とも云えない好よい匂においが、絶間たえまなくあたりへ溢あふれて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。
やがて御釈迦様はその池のふちに御佇おたたずみになって、水の面おもてを蔽おおっている蓮の葉の間から、ふと下の容子ようすを御覧になりました。この極楽の蓮池の下は、丁度地獄じごくの底に当って居りますから、水晶すいしようのような水を透き徹して、三途さんずの河や針の山の景色が、丁度覗のぞき眼鏡めがねを見るように、はっきりと見えるのでございます。
するとその地獄の底に、犍陀多かんだたと云う男が一人、ほかの罪人と一しょに蠢うごめいている姿が、御眼に止まりました。この犍陀多と云う男は、人を殺したり家に火をつけたり、いろいろ悪事を働いた大泥坊でございますが、それでもたった一つ、善い事を致した覚えがございます。と申しますのは、ある時この男が深い林の中を通りますと、小さな蜘蛛くもが一匹、路ばたを這はって行くのが見えました。そこで犍陀多は早速足を挙げて、踏み殺そうと致しましたが、「いや、いや、これも小さいながら、命のあるものに違いない。その命を無暗むやみにとると云う事は、いくら何でも可哀そうだ。」と、こう急に思い返して、とうとうその蜘蛛を殺さずに助けてやったからでございます。御釈迦様は地獄の容子を御覧になりながら、この犍陀多には蜘蛛を助けた事があるのを御思い出しになりました。そうしてそれだけの善い事をした報むくいには、出来るなら、この男を地獄から救い出してやろうと御考えになりました。幸い、側を見ますと、翡翠ひすいのような色をした蓮の葉の上に、極楽の蜘蛛が一匹、美しい銀色の糸をかけて居ります。御釈迦様はその蜘蛛の糸をそっと御手に御取りになって、玉のような白蓮しらはすの間から、遥か下にある地獄の底へ、まっすぐにそれを御下おろしなさいました。
こちらは地獄の底の血の池で、ほかの罪人と一しょに、浮いたり沈んだりしていた犍陀多かんだたでございます。何しろどちらを見ても、まっ暗で、たまにそのくら暗からぼんやり浮き上っているものがあると思いますと、それは恐しい針の山の針が光るのでございますから、その心細さと云ったらございません。その上あたりは墓の中のようにしんと静まり返って、たまに聞えるものと云っては、ただ罪人がつく微かすかな嘆息たんそくばかりでございます。これはここへ落ちて来るほどの人間は、もうさまざまな地獄の責苦せめくに疲れはてて、泣声を出す力さえなくなっているのでございましょう。ですからさすが大泥坊の犍陀多も、やはり血の池の血に咽むせびながら、まるで死にかかった蛙かわずのように、ただもがいてばかり居りました。ところがある時の事でございます。何気なにげなく犍陀多が頭を挙げて、血の池の空を眺めますと、そのひっそりとした暗の中を、遠い遠い天上から、銀色の蜘蛛くもの糸が、まるで人目にかかるのを恐れるように、一すじ細く光りながら、するすると自分の上へ垂れて参るのではございませんか。犍陀多はこれを見ると、思わず手を拍うって喜びました。この糸に縋すがりついて、どこまでものぼって行けば、きっと地獄からぬけ出せるのに相違ございません。いや、うまく行くと、極楽へはいる事さえも出来ましょう。そうすれば、もう針の山へ追い上げられる事もなくなれば、血の池に沈められる事もある筈はございません。
こう思いましたから犍陀多かんだたは、早速その蜘蛛の糸を両手でしっかりとつかみながら、一生懸命に上へ上へとたぐりのぼり始めました。元より大泥坊の事でございますから、こう云う事には昔から、慣れ切っているのでございます。
しかし地獄と極楽との間は、何万里となくございますから、いくら焦あせって見た所で、容易に上へは出られません。ややしばらくのぼる中うちに、とうとう犍陀多もくたびれて、もう一たぐりも上の方へはのぼれなくなってしまいました。そこで仕方がございませんから、まず一休み休むつもりで、糸の中途にぶら下りながら、遥かに目の下を見下しました。すると、一生懸命にのぼった甲斐があって、さっきまで自分がいた血の池は、今ではもう暗の底にいつの間にかかくれて居ります。それからあのぼんやり光っている恐しい針の山も、足の下になってしまいました。この分でのぼって行けば、地獄からぬけ出すのも、存外わけがないかも知れません。犍陀多は両手を蜘蛛の糸にからみながら、ここへ来てから何年にも出した事のない声で、「しめた。しめた。」と笑いました。ところがふと気がつきますと、蜘蛛の糸の下の方には、数限かずかぎりもない罪人たちが、自分ののぼった後をつけて、まるで蟻ありの行列のように、やはり上へ上へ一心によじのぼって来るではございませんか。犍陀多はこれを見ると、驚いたのと恐しいのとで、しばらくはただ、莫迦ばかのように大きな口を開あいたまま、眼ばかり動かして居りました。自分一人でさえ断きれそうな、この細い蜘蛛の糸が、どうしてあれだけの人数にんずの重みに堪える事が出来ましょう。もし万一途中で断きれたと致しましたら、折角ここへまでのぼって来たこの肝腎かんじんな自分までも、元の地獄へ逆落さかおとしに落ちてしまわなければなりません。そんな事があったら、大変でございます。が、そう云う中にも、罪人たちは何百となく何千となく、まっ暗な血の池の底から、うようよと這はい上って、細く光っている蜘蛛の糸を、一列になりながら、せっせとのぼって参ります。今の中にどうかしなければ、糸はまん中から二つに断れて、落ちてしまうのに違いありません。そこで犍陀多は大きな声を出して、「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は己おれのものだぞ。お前たちは一体誰に尋きいて、のぼって来た。下りろ。下りろ。」と喚わめきました。
その途端でございます。今まで何ともなかった蜘蛛の糸が、急に犍陀多のぶら下っている所から、ぷつりと音を立てて断きれました。ですから犍陀多もたまりません。あっと云う間まもなく風を切って、独楽こまのようにくるくるまわりながら、見る見る中に暗の底へ、まっさかさまに落ちてしまいました。
後にはただ極楽の蜘蛛の糸が、きらきらと細く光りながら、月も星もない空の中途に、短く垂れているばかりでございます。御釈迦様おしゃかさまは極楽の蓮池はすいけのふちに立って、この一部始終しじゅうをじっと見ていらっしゃいましたが、やがて犍陀多かんだたが血の池の底へ石のように沈んでしまいますと、悲しそうな御顔をなさりながら、またぶらぶら御歩きになり始めました。自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、犍陀多の無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、御釈迦様の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう。
しかし極楽の蓮池の蓮は、少しもそんな事には頓着とんじゃく致しません。その玉のような白い花は、御釈迦様の御足おみあしのまわりに、ゆらゆら萼うてなを動かして、そのまん中にある金色の蕊ずいからは、何とも云えない好よい匂が、絶間たえまなくあたりへ溢あふれて居ります。極楽ももう午ひるに近くなったのでございましょう。
底本:「芥川龍之介全集2」ちくま文庫、筑摩書房
芥川龍之介
ある日の事でございます。御釈迦様おしゃかさまは極楽の蓮池はすいけのふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮はすの花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色きんいろの蕊ずいからは、何とも云えない好よい匂においが、絶間たえまなくあたりへ溢あふれて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。
やがて御釈迦様はその池のふちに御佇おたたずみになって、水の面おもてを蔽おおっている蓮の葉の間から、ふと下の容子ようすを御覧になりました。この極楽の蓮池の下は、丁度地獄じごくの底に当って居りますから、水晶すいしようのような水を透き徹して、三途さんずの河や針の山の景色が、丁度覗のぞき眼鏡めがねを見るように、はっきりと見えるのでございます。
するとその地獄の底に、犍陀多かんだたと云う男が一人、ほかの罪人と一しょに蠢うごめいている姿が、御眼に止まりました。この犍陀多と云う男は、人を殺したり家に火をつけたり、いろいろ悪事を働いた大泥坊でございますが、それでもたった一つ、善い事を致した覚えがございます。と申しますのは、ある時この男が深い林の中を通りますと、小さな蜘蛛くもが一匹、路ばたを這はって行くのが見えました。そこで犍陀多は早速足を挙げて、踏み殺そうと致しましたが、「いや、いや、これも小さいながら、命のあるものに違いない。その命を無暗むやみにとると云う事は、いくら何でも可哀そうだ。」と、こう急に思い返して、とうとうその蜘蛛を殺さずに助けてやったからでございます。御釈迦様は地獄の容子を御覧になりながら、この犍陀多には蜘蛛を助けた事があるのを御思い出しになりました。そうしてそれだけの善い事をした報むくいには、出来るなら、この男を地獄から救い出してやろうと御考えになりました。幸い、側を見ますと、翡翠ひすいのような色をした蓮の葉の上に、極楽の蜘蛛が一匹、美しい銀色の糸をかけて居ります。御釈迦様はその蜘蛛の糸をそっと御手に御取りになって、玉のような白蓮しらはすの間から、遥か下にある地獄の底へ、まっすぐにそれを御下おろしなさいました。
こちらは地獄の底の血の池で、ほかの罪人と一しょに、浮いたり沈んだりしていた犍陀多かんだたでございます。何しろどちらを見ても、まっ暗で、たまにそのくら暗からぼんやり浮き上っているものがあると思いますと、それは恐しい針の山の針が光るのでございますから、その心細さと云ったらございません。その上あたりは墓の中のようにしんと静まり返って、たまに聞えるものと云っては、ただ罪人がつく微かすかな嘆息たんそくばかりでございます。これはここへ落ちて来るほどの人間は、もうさまざまな地獄の責苦せめくに疲れはてて、泣声を出す力さえなくなっているのでございましょう。ですからさすが大泥坊の犍陀多も、やはり血の池の血に咽むせびながら、まるで死にかかった蛙かわずのように、ただもがいてばかり居りました。ところがある時の事でございます。何気なにげなく犍陀多が頭を挙げて、血の池の空を眺めますと、そのひっそりとした暗の中を、遠い遠い天上から、銀色の蜘蛛くもの糸が、まるで人目にかかるのを恐れるように、一すじ細く光りながら、するすると自分の上へ垂れて参るのではございませんか。犍陀多はこれを見ると、思わず手を拍うって喜びました。この糸に縋すがりついて、どこまでものぼって行けば、きっと地獄からぬけ出せるのに相違ございません。いや、うまく行くと、極楽へはいる事さえも出来ましょう。そうすれば、もう針の山へ追い上げられる事もなくなれば、血の池に沈められる事もある筈はございません。
こう思いましたから犍陀多かんだたは、早速その蜘蛛の糸を両手でしっかりとつかみながら、一生懸命に上へ上へとたぐりのぼり始めました。元より大泥坊の事でございますから、こう云う事には昔から、慣れ切っているのでございます。
しかし地獄と極楽との間は、何万里となくございますから、いくら焦あせって見た所で、容易に上へは出られません。ややしばらくのぼる中うちに、とうとう犍陀多もくたびれて、もう一たぐりも上の方へはのぼれなくなってしまいました。そこで仕方がございませんから、まず一休み休むつもりで、糸の中途にぶら下りながら、遥かに目の下を見下しました。すると、一生懸命にのぼった甲斐があって、さっきまで自分がいた血の池は、今ではもう暗の底にいつの間にかかくれて居ります。それからあのぼんやり光っている恐しい針の山も、足の下になってしまいました。この分でのぼって行けば、地獄からぬけ出すのも、存外わけがないかも知れません。犍陀多は両手を蜘蛛の糸にからみながら、ここへ来てから何年にも出した事のない声で、「しめた。しめた。」と笑いました。ところがふと気がつきますと、蜘蛛の糸の下の方には、数限かずかぎりもない罪人たちが、自分ののぼった後をつけて、まるで蟻ありの行列のように、やはり上へ上へ一心によじのぼって来るではございませんか。犍陀多はこれを見ると、驚いたのと恐しいのとで、しばらくはただ、莫迦ばかのように大きな口を開あいたまま、眼ばかり動かして居りました。自分一人でさえ断きれそうな、この細い蜘蛛の糸が、どうしてあれだけの人数にんずの重みに堪える事が出来ましょう。もし万一途中で断きれたと致しましたら、折角ここへまでのぼって来たこの肝腎かんじんな自分までも、元の地獄へ逆落さかおとしに落ちてしまわなければなりません。そんな事があったら、大変でございます。が、そう云う中にも、罪人たちは何百となく何千となく、まっ暗な血の池の底から、うようよと這はい上って、細く光っている蜘蛛の糸を、一列になりながら、せっせとのぼって参ります。今の中にどうかしなければ、糸はまん中から二つに断れて、落ちてしまうのに違いありません。そこで犍陀多は大きな声を出して、「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は己おれのものだぞ。お前たちは一体誰に尋きいて、のぼって来た。下りろ。下りろ。」と喚わめきました。
その途端でございます。今まで何ともなかった蜘蛛の糸が、急に犍陀多のぶら下っている所から、ぷつりと音を立てて断きれました。ですから犍陀多もたまりません。あっと云う間まもなく風を切って、独楽こまのようにくるくるまわりながら、見る見る中に暗の底へ、まっさかさまに落ちてしまいました。
後にはただ極楽の蜘蛛の糸が、きらきらと細く光りながら、月も星もない空の中途に、短く垂れているばかりでございます。御釈迦様おしゃかさまは極楽の蓮池はすいけのふちに立って、この一部始終しじゅうをじっと見ていらっしゃいましたが、やがて犍陀多かんだたが血の池の底へ石のように沈んでしまいますと、悲しそうな御顔をなさりながら、またぶらぶら御歩きになり始めました。自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、犍陀多の無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、御釈迦様の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう。
しかし極楽の蓮池の蓮は、少しもそんな事には頓着とんじゃく致しません。その玉のような白い花は、御釈迦様の御足おみあしのまわりに、ゆらゆら萼うてなを動かして、そのまん中にある金色の蕊ずいからは、何とも云えない好よい匂が、絶間たえまなくあたりへ溢あふれて居ります。極楽ももう午ひるに近くなったのでございましょう。
底本:「芥川龍之介全集2」ちくま文庫、筑摩書房
徳川家康の嫡男・松平信康と正室・築山殿の死にまつわる謎が残る3つの通説
徳川家康は天正7年(1579年)に正室・築山殿と嫡男・松平信康の死に向き合っている。この死にはさまざまな謎があったという。
■家康の「家族の処刑」という過酷な出来事にまつわる謎
徳川家康の嫡男・松平信康(まつだいらのぶやす)は21歳の若さで死ななければならなかった。しかも母の築山殿(つきやまどの)と相前後してという異常な状況の中で、だ。その原因については通説がいくつかある。
(一)築山殿(家康正室、信康の母)の甲斐・武田家内応と信康の加担を咎めた織
田信長(おだのぶなが)の命令による
(二)信長による信忠(のぶただ/信長嫡男)のライバルの排除
(三)秀忠派の家臣による信康排除
これをさらに潤色(じゅんしょく)する形で「信康が正室・お五徳の侍女である小侍従を斬り、口を手で裂いた」「僧侶を馬でひきずって殺した」「少しでも意に背く者があればたちまち手討ちにした」などとも伝わっているが、すべて根拠は無い。江戸幕府の御用史家たちが息子を死なせた家康を弁護するため、ことさらに信康を貶(おとし)めただけだ。
一次史料として確認できるのは、後年の家康が「(讒言によって)父子の仲平たいらならざりし」と後悔していた事、秀忠の妻・お江与(えよ)に対して「(信康を)気儘に育て(中略)、後には親子の争ひの様になり候て、毎度申し候ても聞入れず」却って親を恨む様になった、と評するように、浜松・岡崎と離れて住まう父子が、周囲の人間の影響もあってわがまま気味に育った信康との関係が悪くなったという事。だが信康の場合は、やはり「武田家内応」が命取りとなったようだ。と言っても、信康自身や築山殿が首謀者という訳では無い。事件の際、信康を支える岡崎の徳川家臣団の多くが粛清・追放されている所を見ると、天正2年に発生した大賀弥四郎(おおがやしろう)事件(岡崎の高級官僚だった弥四郎が武田方に内通し武田軍を岡崎城へ引き入れようとしたが未遂に終わる)の様に岡崎家臣団中の家康に対する不満分子が信康を担いで何らかの行動に出ようという兆候はあったのだろう。
これに信康の正室・五徳(ごとく/徳姫)の問題も絡んでくる。夫婦の仲が悪いため彼女が信長に十二カ条からなる信康とその母・築山殿の弾劾状を送ったというが、その実物は無く内容も完全には伝わらない。
ただ、比較的信用できる『前田本安土日記』は「逆心の雑説」があった為に徳川側から信長へ信康の処分を上申して来たとしているのは確かだ。この時期信長は「雑説」を気にしてか毎年鷹狩りの名目で三河に赴おもむいていたのだが、事件以後は足を向けていないのも何かを暗示している気がする。
監修・文/橋場日月
歴史人2022年8月号『徳川家康 天下人への決断』より
歴史人編集部
徳川家康は天正7年(1579年)に正室・築山殿と嫡男・松平信康の死に向き合っている。この死にはさまざまな謎があったという。
■家康の「家族の処刑」という過酷な出来事にまつわる謎
徳川家康の嫡男・松平信康(まつだいらのぶやす)は21歳の若さで死ななければならなかった。しかも母の築山殿(つきやまどの)と相前後してという異常な状況の中で、だ。その原因については通説がいくつかある。
(一)築山殿(家康正室、信康の母)の甲斐・武田家内応と信康の加担を咎めた織
田信長(おだのぶなが)の命令による
(二)信長による信忠(のぶただ/信長嫡男)のライバルの排除
(三)秀忠派の家臣による信康排除
これをさらに潤色(じゅんしょく)する形で「信康が正室・お五徳の侍女である小侍従を斬り、口を手で裂いた」「僧侶を馬でひきずって殺した」「少しでも意に背く者があればたちまち手討ちにした」などとも伝わっているが、すべて根拠は無い。江戸幕府の御用史家たちが息子を死なせた家康を弁護するため、ことさらに信康を貶(おとし)めただけだ。
一次史料として確認できるのは、後年の家康が「(讒言によって)父子の仲平たいらならざりし」と後悔していた事、秀忠の妻・お江与(えよ)に対して「(信康を)気儘に育て(中略)、後には親子の争ひの様になり候て、毎度申し候ても聞入れず」却って親を恨む様になった、と評するように、浜松・岡崎と離れて住まう父子が、周囲の人間の影響もあってわがまま気味に育った信康との関係が悪くなったという事。だが信康の場合は、やはり「武田家内応」が命取りとなったようだ。と言っても、信康自身や築山殿が首謀者という訳では無い。事件の際、信康を支える岡崎の徳川家臣団の多くが粛清・追放されている所を見ると、天正2年に発生した大賀弥四郎(おおがやしろう)事件(岡崎の高級官僚だった弥四郎が武田方に内通し武田軍を岡崎城へ引き入れようとしたが未遂に終わる)の様に岡崎家臣団中の家康に対する不満分子が信康を担いで何らかの行動に出ようという兆候はあったのだろう。
これに信康の正室・五徳(ごとく/徳姫)の問題も絡んでくる。夫婦の仲が悪いため彼女が信長に十二カ条からなる信康とその母・築山殿の弾劾状を送ったというが、その実物は無く内容も完全には伝わらない。
ただ、比較的信用できる『前田本安土日記』は「逆心の雑説」があった為に徳川側から信長へ信康の処分を上申して来たとしているのは確かだ。この時期信長は「雑説」を気にしてか毎年鷹狩りの名目で三河に赴おもむいていたのだが、事件以後は足を向けていないのも何かを暗示している気がする。
監修・文/橋場日月
歴史人2022年8月号『徳川家康 天下人への決断』より
歴史人編集部
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