大沢たかおさん「大人になりきれない人が多い日本で大切なのは、孤独を恐れすぎないこと」/Amazonオーディブル『走ることについて語るときに僕の語ること』インタビュー

プロの声優や俳優が朗読した本や多様なポッドキャストが楽しめる音声エンターテインメントサービスのAmazonオーディブル(以下、Audible)。

村上春樹さんの人気エッセイ『走ることについて語るときに僕の語ること』が、俳優の大沢たかおさんの朗読で配信されます。

収録を終えた大沢さんに初挑戦した朗読の感想や、村上春樹作品の魅力、そして村上さんの著書から感じたご自身との共通点について伺いました。

目次
大沢たかおさん「大人になりきれない人が多い日本で大切なのは、孤独を恐れすぎないこと」/Amazonオーディブル『走ることについて語るときに僕の語ること』インタビュー
村上春樹さんのエッセイだからこそできた、等身大の自分でのチャレンジ
村上春樹さんが教えてくれた“いくつになっても懸命に生きること”
「気を遣ってうまくやる」ことが、大人じゃない。孤独を怖がらずに自分を突き通す大切さ

村上春樹さんのエッセイだからこそできた、等身大の自分でのチャレンジ

仕事柄はもちろん、プライベートで海外に行き来するなど、移動が多い大沢さん。Audibleは初期の頃から会員登録し、利用していたといいます。大沢さん流Audibleの活用法は?
「こういったコンテンツは実は昔からあって、夏目漱石や芥川隆之介の小説を朗読したものをCDで買って聴くという時代がありました。文学の名作が、多かったと思います。それがみんな多忙になり、昔の著名な文学だけでなく、実用書や経済書など、何でもどこでも聴けるようになって。娯楽だけでなく、勉強もできると思って、僕は最初のころすぐ会員になって聴き出したのですが、移動中や日常で車を運転するときも気軽に聴けるので、頻繁に利用させてもらっています。
海外への移動には、本を持って行くことも多いんですけど、例えば9時間とか10時間移動する場合は、文字を追うことに疲れてしまうんですよね。でも、Audibleで聴くと、不思議と長時間でも平気なんですよね。すごく便利な時代になったな、と。今回の作品は、マラソンする方々にもおすすめしたいです。村上春樹さんがマラソンの話をいっぱいしてくれるので、マラソンをしたくなるし、負けちゃいけないという気持ちになるんじゃないかな。励まされる感じもあって」
小説家であると同時にランナーでもある村上春樹さんが走ることについて語り、さらに小説家としての姿勢や思い、村上春樹という一個人を初めて説き明かした画期的なメモワールである『走ることについて語るときに僕の語ること』。今作の朗読には、等身大の自分自身で臨んだという大沢さん。
「何年か前に朗読劇はやったことがあって、ステージの上での朗読に対しては後ろ向きな気持ちはないんですけど、正直、朗読は苦手にしていることの一つだったんです。なるべくやらないように避けてきたところがありましたが、今回思い切って挑戦させてもらいました。作品が小説ではなくエッセイだったことも大きくて、比較的伸び伸び読ませてもらえたという感覚です。村上春樹さんが、ご自身の考えや人生を率直な言葉を紡いで語っているので、僕自身、変にうまくやろうとしないで、飾らない等身大の自分でやらせてもらおうと思いました」
朗読をしながら、改めて村上さんの文章に魅了されたと話します。
「どんな人でもわかる言葉を使ってくれたり、かと思えば難しい例えが出てきたり。何より比喩が素晴らしいと思います。そんな村上さんの文章の連続技を受けて、心の深いところに、彼が本当に言いたいことがストンと落ちる。また、村上さんの人生の一部を自分も追体験しているように読めるようなエッセイなので、朗読という機会をいただいて、彼の文章を体感するという、いい体験ができました。同時に、村上さんの作家になるまでの経歴や走ることへの思いを初めて知って驚いたり。僕にとって村上さんは雲の上の人なので、神宮外苑を走っていたり、ジャズバーを経営していたり、エアコンが壊れたり、日常の中でいろいろ悩んだりしていることを知って、こんなすごい人でもいろいろあるんだなと距離が近くなったというか(笑)。世界的に著名で求められ続けている村上さんが、一人の人間として言葉を紡いでいて、勇気や元気をくれる本だと思います」

村上春樹さんが教えてくれた“いくつになっても懸命に生きること”

今作は村上春樹さんが58歳の時に出版され、50代後半に差し掛かった心境も語っています。
「確かに歳を重ねていくことについての思いも、このエッセイのテーマの一つです。村上さんは後悔しないように懸命に生きていて、命というものに対して突き詰めて考えている人だと思いました。歳を重ねる上で不安になること、懸命に生きる大切さ、時間を無駄にしないこと。当たり前のようでいて通り過ぎてしまうことを、村上さんが素晴らしい文章で語ってくれて、改めて自分も懸命に生きようと思わせてくれます」
書くためには体力をつけないといけない。だから走ると決めて、走り続けている。そんな村上さんの姿も印象に残ります。
「僕はその部分に一番共感しましたね。こと僕の仕事に関しては、体力命で、体力がない人は絶対できないですから。病気したらできないですし、健康でないと演技はできません。演技は、不健康な状態でやると限界があるんですよね。不健康な体で考えても、不健康なアイデアしか出てこないから、不健康な表現になってしまう。演劇は人をハッピーにさせる仕事なので、健康な体でいないといけないし、体力勝負なんです。なので、作品のクランクイン前に体力が持つかを考えます。例えば、『キングダム』シリーズは4年くらいやっていますが、王騎という役の体重をどう維持して、何年間やっていけばいいのか。『沈黙の艦隊』という作品では、2ヶ月間、同じ場所に立ち続けないといけない。どうやったら朝から晩までやって、集中力を保てるかな、と。でも、結論的にはどの作品のどの役も体力がないとできないことなので、その前になるべく体力作りをしたいし、栄養もちゃんと取っておこうと意識する。そういうところは、作家の先生も一緒なんだなって思いました」
走り続けている村上さんのように、大沢さんがずっとやり続けていること、継続していることも聞いてみると、意外な回答が。
「プライベートでは全くなくて(笑)。20代、30代と40代と今、ステージが変わるごとに興味を持つことも変わってきています。日本人っぽいけど、仕事を一生懸命やったぐらいかな。でも、それは今の時代に合ってないというか、良くないと思うんですけどね。後輩に相談される時はいつも『絶対俺の真似しない方がいいよ』って話しています(笑)。『仕事は仕事だから、ちゃんと自分の時間を持って遊びなさい』と。でも、僕は仕事に一生懸命になりすぎたかもしれないけれど、それはそれでよかったなと思うことはありますね」

「気を遣ってうまくやる」ことが、大人じゃない。孤独を怖がらずに自分を突き通す大切さ

俳優としてのキャリアも30年、近年では映画作品のプロデュースも手がける大沢たかおさん。そんな大沢さんに、本誌の名前にちなんで、「大人」の定義を最後に伺いました。
「村上さんは、まさに大人だと思うんですよ。自分の価値観を持っていて、自分の行動に責任をとっていますよね。大人を定義づけるとしたら、自分で自分の責任をとれる人だと思います。でも、責任をとれる人は実際少ない。同時に、自分の意見や自分の価値観がない人も多い気がしています。大人になりきれない人が多い、この国の特徴だな、と。周りの人を気遣って、人とうまくやることが“大人”の定義じゃないと思うのですが、日本ではそう考えている人が多いのかな。でも、僕自身も含めて、大人になることは大事だと思うんですよね。若い子たちや子どもたちなど、次の世代に何を残せるのか考えることも、大人の役目だと感じています」
大人になるためには、「孤独になることを怖がらないこと」と、力強く語ります。
「孤独になりたくないから、ついつい人に合わせてしまいますが、人は死ぬ時に一人だと考えるとそもそも孤独な生き物なんです。僕は30年この仕事をやっていますが、20代で自分の事務所を立ち上げて、当時は前例なんてないから、まぁ苦労しました(笑)。最初の10年は疎外感を感じることがありましたが、でも、孤独で寂しいと思ったことは1回もなかったです。なぜなら、自分は間違ってないと思ったし、自分が正しいと思うことを突き通すことが大切だと思ったから。誰かに嫌われても自分のことを貫くこと、やったことに責任をとること、誰かのせいにしないことは、怖いことでもあるけど、大人になるためには大事なことなのかもしれないですね」

“ジョジョ”役・松下優也、ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』に向き合う中で見せた芸事への覚悟と真摯https://t.cn/A6liRwpl
2024年2月、帝国劇場で幕を開けるミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』。本作で主人公のジョナサン・ジョースター、通称“ジョジョ”を務めるのが、松下優也さん。『サンセット大通り』『ハウ・トゥ・サクシード』『ジャック・ザ・リッパー』『太平洋序曲』などミュージカル作品を中心に活躍し、アーティストとしても活動されています。初めての帝国劇場出演、そして主演にあたって、また長年世界中で愛される作品のミュージカル化にあたって、今のお気持ちをたっぷりと伺いました。

長谷川寧 演出により、今までに観たことがないミュージカルに

−原作『ジョジョの奇妙な冒険』を読んでみて、どのような印象を受けられましたか?
「1980年代から連載が始まって、今もなお続いているっていうことがまず衝撃ですよね。時代が変わって、主人公が変わって続いていく漫画は、そうないと思います。レガシーですよね。本当にとてつもない作品だと思うのと同時に、ミュージカル化されて、シリーズの始祖となる人物に自分が選ばれたことはすごく光栄なことだなと感じました」

−ミュージカルの台本を読んでみていかがでしたか?
「原作そのままというわけではないですが、『ジョジョの奇妙な冒険』に触れたことがない方でも、初見でも『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』のストーリーを理解してもらえるように、しっかりと内容は盛り込まれています。もちろん原作を見てから来ていただいたらさらに楽しめると思うんですけど。原作のファンの方も“あのシーンないんだ”と残念に思われることはないんじゃないかなと思いますね。僕も台本を読む前は“どうやってミュージカルにするんだろう、終わらないじゃん”と思ったのですが、よくまとまっています。台本が僕の手に渡るまでにも何度も原稿を重ねてきた結果だと思いますし、クリエイターの皆さんの熱量を感じました」

−“ジョジョ”シリーズならではの効果音や原作の特徴的な質感をどうリアルにするのか、気になっている方が多いと思います。
「どうなるんでしょうね。現時点では分からないことも多いのですが、生のバンドも入るので、生の楽器の音なんかも活かしていくのかなと楽しみにしています」

−いわゆるグランドミュージカルが好きな観客も楽しめそうでしょうか?
「絶対楽しめますよ。やっぱり長谷川寧さんが演出・振付を手がけられるので、作り方が結構ぶっ飛んでいますね。戦闘シーンでも、いわゆるアクションとか殺陣が入ってくる舞台とは全く違うと思うので。今までのクラシカルなミュージカルとも、いわゆる漫画やアニメを原作にした2.5次元ミュージカルとも、表現の仕方が違うと思います。出演者にもフィジカルに強い方が多いですし、長谷川さんが手がけたミュージカル『ピーター・パン』(2023年新演出版)を観に行かせていただいても、それを感じました。おそらく皆さんが観たことないものを、観ることになるだろうと思います」

−演出の長谷川さんとお話しされたことで印象に残っていることはありますか?
「お会いするたびに色々なお話をさせていただいていますが、例えばボクシングシーンについても“ただボクシングするというのもな”と仰っていたんです。じゃあどうやるのか、までは聞なかったのですが、キャストの皆さんと色々と作り上げていくことになるんだと思います」

−長谷川さんの言葉の端々から、今までとは違う雰囲気を感じ取られているのですね。
「ヒントは感じ取っていますし、あとはやっていきながらですよね、きっと。僕らが稽古に入りだしたときに、寧さんの頭の中で色々なことが起こると思うので。そこでまた流動的に出来ていくものもあるんじゃないかなと思っています。大人数が関わる作品って、いくら演出家とはいえ、1人で頭の中で考えるだけでは完結しないと思うんです。実際に人間が動いてみて、また変わってくると思う。役者それぞれの出てくる持ち味も出てくると思うんですよ。だからそれはすごい楽しみですね。どうやって作り上げていくのか」

−初演でもありますし、創り上げていく苦労も面白みもありそうですね。音楽については、どのようにアプローチしていこうと思われていますか?製作発表ではキャストから(歌いこなすには)とても難しい曲という声も挙がっていましたが。
「元々ポップス系の音楽を歌ってきていたので、僕はあんまり難しさというのは感じていないです。むしろクラシックな古典的なミュージカルの方が歌うのが難しかったりするので、そういう意味では今回は非常にやりやすいなと思っています」

ディオから引き出される正義感や勇敢さがあるはず

−演じられるジョナサン・ジョースターの人物像は、今どういうふうに捉えてらっしゃいますか?
「異常なまでの正義感とピュアさと真面目さはすごく感じます。ただ自分がヒントとしているのは、“ジョジョ”だけに限らずどの芝居をやるときにも、やっぱりストーリーがあって、他のキャラクターがいて、自分の役ができていくというふうに思っているので。原作に “ぼくらはやはり ふたりでひとりだったのかもしれない”というセリフもあるように、ジョナサンがいるからディオがいて、ディオがいるからジョナサンがいて、ディオと接することで引っ張り出される正義感や勇敢さがあるんじゃないかなと思います。だからあまりキャラクターがこうだからと思いすぎずに、ちゃんとストーリーに入っていったら自然とキャラクターが作られていくように思いますね」

−役づくりをされる時は、その人物に迫っていくというより、ストーリーの中で他の人と対峙する上で感じることを重視されることが多いんでしょうか。
「もちろん役の中に1本通っているものは絶対あるんですよね。ただ、1本通っている中で、何がその中で起きていくのかっていうのはやっていかないと分からないことなので。大事にしているのは、漫画原作やアニメがあると、もうある種答えがもうそこに提示されているじゃないですか。だから、例えばセリフの言い回し方、いでたちとかをそのままやったらそれはそれで、形になると思うんですけど、それだけじゃやっぱり生身の人間がやるということ、面白さに欠けるような気がします。だから自分はやっぱり思考から入っていって、その側(がわ)になるという順番は割と意識していたいなと思います。もちろんジョナサンっぽくいたらジョナサンの思考になっていくということもあるだろうから、それもやりながら、多面的に創っているかもしれないですね」

−ジョナサンと松下さんご自身との共通点はありますか?
「ジョナサンは真の紳士を目指していますよね。そこでどんどん色々な敵や色々な人と対峙して、成長していきます。ジャンルは違えど自分はやっぱ芸事っていうところに生きているということを、改めて30代になって思っているんですよね。20代の頃は何かやりきれてなかった部分というのが、その当時はそんなふうに思ってやってなかったんですけど、振り返ると思うんですよ。でも今は、自分で言うのは変ですけど、自分がやっている芸事に対してメンタルとしてまっすぐに臨めていると思うので、そういう部分はジョナサンと似ている部分があるんじゃないかな」

−それは変化のきっかけがあったのでしょうか?
「一度想像したことがあるんです。自分がもう今日死ぬってなったときに、ああじゃあもうOK、この世に思い残すことないです、さよならって思える状態って何だろうって。その時に、自分はやっぱり芸事でちゃんと向き合ってやってこられたかどうかかなと思ったんです。そこに尽きるなと思って。そこからいろんな人たちに影響を与えて楽しんでもらいたいというところがあるので、それ以外のものは全ておまけなのかなって思います。それに気づき出すと、人ってそれぞれみんな人生においての役割があって、自分のミッションは芸事に対してまっすぐ真摯に向き合ってやることだなって思うようになりましたね」

−30代になって年齢の変化というのもあるのでしょうか。
「そうですね、年齢と共にですよね。こういうことを言うことになったのも、ある意味成長なのかもしれない。20代は素直にこういうことを言わなかったし、ちょっと斜に構えていたし。20代の頃って、何か一生懸命だったりとか必死だったりとかすることにちょっと斜に構えている部分って、誰しも多分あると思うんですけど、自分も多少なりともそういうのはあったと思うんです。一生懸命やってはいたんですけれど、その中に多少邪念みたいなのあったので、今は芸事に向き合うことに関して邪念はないかなって思います」

−同世代なので共感できます。年齢と共に自分が人生でやるべきことを考えることがあるのかなと。
「もうそれは絶対的にあると思います。だから自分も数年前の自分とは全く多分自分の中ではすごく変わっているつもりですし、変わっていっていますよね、自然と。変わろうと思って変わっているものでもないんですけど、これも経験ですよね」

−新たに帝国劇場で主演ということに関しても、一つ新しい挑戦になってくるかなと思います。帝国劇場では観客として作品を観劇したことがあるそうですね。
「最近だと『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』を観に行きました。スケール感の大きさに驚きましたね。既に『ジョジョの奇妙な冒険』への出演は決まっていたので、ここでやるんだなぁと思いながら見ていました。お客さんとして何度か観に行ったことがある劇場なので、そこに自分が演者として出るっていうのはすごい楽しみです。多分、自分が見に行った客の時のイメージがあるまま、自分の目を感じながらステージに立つような気がします。そういうことはあんまり今までなかったので、それも面白いです」

−今までにはない経験になりそうですね。
「そうですね。ただ“初の帝劇で主演”ってパワーワードだとは思うのですが、リスペクトを持ちながら臨みたいという気持ちはありながらも、考えすぎたらプレッシャーにもなってくるし、やはりみんなで作るものなので、あんまりしょい込みすぎずにやれたらなと思います」

−作品の中にはいろんなメッセージが込められていると思うのですが、作品を通して届けたいことはありますか?
「今の世の中、戦争や色々なことがある中で、どうやったら戦争がなくなるかという答えを僕は持っていないですが、どうやったら人と人が手を取り合えるのかというのは、やはり理解する気持ちだと思うんです。
貴族階級のジョナサンとスラム街で生まれ育ったディオは、生まれた環境が大きく違うところから関係性が始まっていきますよね。環境によって人は変わっていきますが、ジョナサンとディオって全く違うようで、光と闇という言葉で表せるようなものでもなく、本当に表裏一体の存在です。2人の姿を見ていると、価値観や“これが正しい”というものは変わっていくように思います。そういった単に正義と悪ではない部分を感じてもらえるような、舞台になったらいいなと思いますね」

【生田絵梨花インタビュー】
劇中歌「ウィッシュ〜この願い〜」
に込めた、細やかな想い

ウォルト・ディズニー・カンパニーの創立100周年記念、長編アニメーションの最新作『ウィッシュ』が12月15日より公開。日本版アーシャの声を担当した生田絵梨花さんにアフレコ時のエピソードや作品に込めた想いなどをたっぷり伺いました。

――『ウィッシュ』の主人公、アーシャの日本版声優に決まったときはどんな感情が最初に湧き上がりましたか?

ディズニー・アニメーションの吹替えはずっとやりたいと思っていたので、「受かりました」って言われたときは、夢が急に現実になっちゃったみたいな感じで。

受け入れる前に、フリーズした状態が一瞬ありました(笑)。身近なスタッフさんたちから「おめでとう」って言ってもらって、ようやく喜びが爆発しましたね。

――台本を最初に読んだときの感想も教えてください。

ほとんどのシーンにアーシャが出ていたので、まずそれに驚きました。

当たり前のことなんですけど(笑)。改めて“これは頑張らなきゃいけない”と思いました。

それと、言葉やメッセージはすごくシンプルなのですが、大切なものばかりで、だからこそ表現が難しいということも台本を読んだときに感じました。

自分の声とアーシャの感情をどこまでリンクさせられるか?がすごく大切で、意識的に心掛けていました。

――アーシャはすごく真っ直ぐで、マグニフィコ王にもちゃんと自分の意見や気持ちを言える女の子です。そんな彼女の声をどんなことを心がけて表現しましたか?

アーシャが唄う楽曲は力強いものが多いので、 “表現には強さが必要なんじゃないか”って考えていたところがあったんですでも、台本を読んだら、意外とお茶目なところもあるし、周りの人たちを引き込む優しさや熱みたいなもの持った、人間臭い多面的な女の子ということが分かって。

なので、単純に強いとか、単純に明るいとか、そういう風には決めつけずに、彼女のいろんな要素を観た人に感じとってもらえるような声の表現を意識しましたね。

――相手がマグニフィコ王でも、アーシャは間違っているときには「間違っている」とはっきり言います。生田さんはそんな彼女と似たところもありますか?

私も自分の心の声は無視できないタイプなんですけど、意外とそれを言えないときがあって(笑)。

王とあんなにしっかり対峙できるアーシャはスゴいと思いました。

――ディズニー・アニメーションのアフレコはみんなで収録するのではなく、ひとりずつ録ることで有名ですが、相手のリアクションや熱量、声量が分からないそのやり方で、気持ちを込めて声を出すのは難しくなかったですか?

一人の収録だったので難しさがありましたが、アニメーションのキャラクターの動きから感情を読み取ることはできました。

オリジナルバージョンの声優の方々からも、声は違えど、感情は伝わってくるので、最初のうちはもちろん戸惑いましたけど、やっているうちに徐々に慣れていきました。

――生田さんがアフレコしたときは、マグニフィコ王を担当した福山雅治さんの声も入ってなかったんですね。

そうなんですよ。(アーシャの相棒の子ヤギ=バレンティノの声を担当した)山寺宏一さんの声だけは入っていて、山寺さんの声には助けてもらったと言うか、引っ張ってもらった感覚がありますね。

――そのやり方でアフレコをして、何か“気づき”はありました?

オリジナル版の英語のセリフを聞きながら声を吹き込んでいくのですが、感情はもちろん一緒なんですけど、英語のイントネーションで日本語のセリフを言おうとすると意外と平坦な感じになるんです。

なので意識的に声の高低差やテンションをちょっと大きめにするようにしました。

――本作は、生田さんが唄われた劇中歌「ウィッシュ〜この願い〜」が流れるところから物語が大きく動き出しますが、どんな想いで、どんなことを気をつけながらあの曲を唄われましたか?

この楽曲に乗ってアーシャの心情が変化し、同時に“願い”に強い力が宿っていくんですよね。

なので、曲の流れや構成はすごく考えました。1番と2番は同じメロディだけど、1番はまだ確信を持てていない、自分に言い聞かせているような感じに私には聞こえて。

その葛藤を経て、決心した後の2番はすごく開放的なんです。

心が解かれているような印象を受けたので、自分が唄うときも、曲の流れに乗ってアーシャの心情の変化をちゃんと辿っていくことを意識しました。

――アニメーションを見ながら唄った方が、気持ちも乗りやすいですか?

それはすごくありますね。ただ唄うよりも、モニターでアーシャの表情を見ながら唄った方が気持ちがグッと高まりました。

英語版の本編を見てからアフレコしたのもよかったと思います。

ストーリーが身体に入ってから唄うと、声の表現もまた違って。心情が本当に大事になってくる楽曲なんだと改めて思いました。

――ふたりの歌声が入った完成版を初めて見たときはどう思われました?

感動しました。福山さんとデュエットしているという感動ももちろんありますし、福山さんがハーモニーを寄り添って唄ってくださっているのが歌越しに伝わってきたので、そこにもとても感動しました。

――アーシャは挫けそうになっても、みんなのために立ち上がる女の子ですが、生田さんは挫けそうになったときや大きな壁にぶち当たったときは、それをどうやって乗り越えられてきましたか?

私、意外と抜け出せないことも多くてで、沼ることもあるんです(笑)。

ただ、以前は動揺して“抜け出せな〜い!”って思っていたけれど、いまはなんか、“あっ、沼だ”という感じで受け入れるようになって。

「誰かいませんか〜? 助けてくださ〜い」みたいなことも言えるようになってきたし、“沼ったけど、この沼を茶色じゃなくて違う色にできないかな?”みたいな風にも考えられるようになりました(笑)。

そんな感じで、ちょっとずつ変化していけたらいいな〜と思っています。

――最後の質問です。アーシャは“願い”の力を強く信じて、夢を叶えていきますが、生田さんがこの先叶えたい夢、絶対に諦めたくない夢を、壮大なものと身近なものの2パターン教えていただけますか?

小さい方から先に言うと…餃子を食べたい!(笑)。

私、意外と脂っぽいものが好きなんですけど、人と会う大事なお仕事やシチュエーションが続くときはやっぱり食べるのを控えるので、どっかで餃子を食べる時間を作りたいですね(笑)。

で、大きな夢は……大きな夢?…規模の大きな夢というのではないけれど、長くステージに立ち続けられたらいいなという願望はあります。

長く続けられている人って、人生を何周もしている感じがして。私がいま悩んだり、もがいたりしているようなことを超えてきた人たちの考え方ってすごくカッコいいなって思うし、その人たちにしか見えない視点があるような気がするんですよね。

なので、私も時間をかけて、その視点を知っていけたらいいなと思っています。

話を聞けば聞くほど、アーシャと似た方だな〜と思わせてくれた生田絵梨花。インタビューでは「なかなか言えないこともあって…」と言っていたが、言葉の端々に、どんなことにも妥協せずに真っ直ぐ突き進む強い意思と新しい状況にも瞬時に対応できるしなやかな感性が感じられた彼女が、アーシャの声を担当することになったのは運命的な必然だったのでしょう。

『ウィッシュ』日本版のアーシャの言葉の数々に熱いものが感じられ、観る者の心に突き刺さり、揺れ動かすのは、生田がそのひと言、ひと言に心を込めているから。

彼女が唄う「ウィッシュ〜この願い〜」に胸が高まるのも、それがただの歌詞ではなく、真の思いが込められた生きた言葉たちだから。

『ウィッシュ』日本版を映画館で観るのは、それを実感できる幸福な時間でもあります。


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