残酷すぎるラストにハッピーエンド…バトル漫画に登場した不老不死キャラの壮絶な結末
命には限りがあるからこそ価値がある?
生きていれば誰しも1度は憧れる不老不死。現実世界ではまだかなえられていない夢だが、漫画の世界では不老不死を実現させたキャラクターが存在している。本記事では、不老不死となったバトル漫画の登場人物から、永遠の命について考えよう。
最初に紹介するのは、1990年より週刊少年ジャンプ(集英社)で連載されていた『幽☆遊☆白書』(作:冨樫義博)に登場する戸愚呂兄弟の兄だ。元は人間だったが妖怪に転生した人物である。
戸愚呂兄は肉体を自在に操る能力を使い、自身の体を刃物や針のように変形させて戦う。しかも、身体が粉々になっても復活できる驚異的な再生能力を持っている。妖怪になることで人間に比べて遥かに長い寿命も併せ持ち、ほとんど不老不死といえるだろう。
主に活躍する暗黒武術会編では、コミックス12巻第102話「左京の提案!!」にて、自らの弟の一撃で、戸愚呂兄は粉々に砕かれ海まで吹き飛ばされて死んだと思われていた。しかし、コミックス13巻第113話「“領域”にようこそ!!」から始まる魔界の扉編で再登場を果たす。
コミックス15巻第138話「正体は誰だ!?」で描かれる、主人公・幽助の仲間である蔵馬との対戦が、戸愚呂兄の最期となる。戸愚呂兄は蔵馬の策により、邪念樹という魔界の植物に捕らわれ、蔵馬を追いかける幻影を見せられながら生命力を吸われ続けることに。どれだけ生命力を吸われても持ち前の再生能力から戸愚呂兄は死ぬことがなく、邪念樹にとってのなくならないエサへと成り果ててしまう。
戸愚呂兄は、不老不死であるため終わらない苦痛を永遠に与えられる最期を迎えた。
次に紹介するのは、87年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載開始された『ジョジョの奇妙な冒険』(作:荒木飛呂彦)第2部に登場するカーズだ。主人公であるジョセフ・ジョースターの前に立ちふさがる最大の敵・カーズは、ジョセフたちと敵対する柱の一族を統率する天才だ。
カーズは、自分の弱点である太陽の光を克服するために「エイジャの赤石」を手に入れ、寿命も弱点もない完全生命体となる。しかし、火山の力を利用したジョセフの攻撃によって、カーズは宇宙空間に吹き飛ばされてしまう。完全生命体であるカーズは、宇宙空間でも死ぬことはない。しかし、地球に戻る術がないことも悟り、最後には考えることを諦めて宇宙を漂うことしかできなくなった。
天才と言われたカーズが、弱点の克服という念願を果たした先に待っていたのが、永遠の「無」の世界という結末には皮肉を感じずにはいられない。
最後に紹介するのは、87年に『ヤングマガジン増刊海賊版』(講談社)で連載開始された『3×3 EYES』(作:高田裕三)の主人公・藤井八雲だ。額に第3の目がある三只目吽迦羅の少女・パイの術により、八雲は自身の魂をパイに預ける形で、不老不死となる。八雲はパイの「人間になりたい」という願いをかなえるため旅立ち、さまざまな敵と戦うストーリーだ。
物語の最終局面、最大の敵である鬼眼王の力によって、世界中の人間の魂は集約されて巨大な闇になってしまう。世界を覆い尽くすように広がった闇を人間の魂に戻すため、八雲は自らが粉々になって世界中に拡散し、闇と融合する決断をする。身体が粉々になっても自分の意思を持ち続けられる不老不死だからこそ可能な作戦だ。
ちなみに、決戦から数年後には粉々になった体は回復し、無事にパイや仲間たちと再会できており、最高のエンディングを迎えている。
紹介した不老不死の3人から分かるように、誰もが幸せな最後を迎えるわけではない。3人の物語は命について我々に問いかけているのかもしれない。
カキMONO.1
命には限りがあるからこそ価値がある?
生きていれば誰しも1度は憧れる不老不死。現実世界ではまだかなえられていない夢だが、漫画の世界では不老不死を実現させたキャラクターが存在している。本記事では、不老不死となったバトル漫画の登場人物から、永遠の命について考えよう。
最初に紹介するのは、1990年より週刊少年ジャンプ(集英社)で連載されていた『幽☆遊☆白書』(作:冨樫義博)に登場する戸愚呂兄弟の兄だ。元は人間だったが妖怪に転生した人物である。
戸愚呂兄は肉体を自在に操る能力を使い、自身の体を刃物や針のように変形させて戦う。しかも、身体が粉々になっても復活できる驚異的な再生能力を持っている。妖怪になることで人間に比べて遥かに長い寿命も併せ持ち、ほとんど不老不死といえるだろう。
主に活躍する暗黒武術会編では、コミックス12巻第102話「左京の提案!!」にて、自らの弟の一撃で、戸愚呂兄は粉々に砕かれ海まで吹き飛ばされて死んだと思われていた。しかし、コミックス13巻第113話「“領域”にようこそ!!」から始まる魔界の扉編で再登場を果たす。
コミックス15巻第138話「正体は誰だ!?」で描かれる、主人公・幽助の仲間である蔵馬との対戦が、戸愚呂兄の最期となる。戸愚呂兄は蔵馬の策により、邪念樹という魔界の植物に捕らわれ、蔵馬を追いかける幻影を見せられながら生命力を吸われ続けることに。どれだけ生命力を吸われても持ち前の再生能力から戸愚呂兄は死ぬことがなく、邪念樹にとってのなくならないエサへと成り果ててしまう。
戸愚呂兄は、不老不死であるため終わらない苦痛を永遠に与えられる最期を迎えた。
次に紹介するのは、87年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載開始された『ジョジョの奇妙な冒険』(作:荒木飛呂彦)第2部に登場するカーズだ。主人公であるジョセフ・ジョースターの前に立ちふさがる最大の敵・カーズは、ジョセフたちと敵対する柱の一族を統率する天才だ。
カーズは、自分の弱点である太陽の光を克服するために「エイジャの赤石」を手に入れ、寿命も弱点もない完全生命体となる。しかし、火山の力を利用したジョセフの攻撃によって、カーズは宇宙空間に吹き飛ばされてしまう。完全生命体であるカーズは、宇宙空間でも死ぬことはない。しかし、地球に戻る術がないことも悟り、最後には考えることを諦めて宇宙を漂うことしかできなくなった。
天才と言われたカーズが、弱点の克服という念願を果たした先に待っていたのが、永遠の「無」の世界という結末には皮肉を感じずにはいられない。
最後に紹介するのは、87年に『ヤングマガジン増刊海賊版』(講談社)で連載開始された『3×3 EYES』(作:高田裕三)の主人公・藤井八雲だ。額に第3の目がある三只目吽迦羅の少女・パイの術により、八雲は自身の魂をパイに預ける形で、不老不死となる。八雲はパイの「人間になりたい」という願いをかなえるため旅立ち、さまざまな敵と戦うストーリーだ。
物語の最終局面、最大の敵である鬼眼王の力によって、世界中の人間の魂は集約されて巨大な闇になってしまう。世界を覆い尽くすように広がった闇を人間の魂に戻すため、八雲は自らが粉々になって世界中に拡散し、闇と融合する決断をする。身体が粉々になっても自分の意思を持ち続けられる不老不死だからこそ可能な作戦だ。
ちなみに、決戦から数年後には粉々になった体は回復し、無事にパイや仲間たちと再会できており、最高のエンディングを迎えている。
紹介した不老不死の3人から分かるように、誰もが幸せな最後を迎えるわけではない。3人の物語は命について我々に問いかけているのかもしれない。
カキMONO.1
「悲録伝」(一共十章)。0部分。
第1話「ついに集った仲間! 八人の魔法少女」
Q:ある道で、たくさんの人が歩いている中、一人だけ傘をさしている人がしました。なぜでしょう?
A:雨が降っていたから。
(问:在某条街道上,有很多人走着,只有一个人撑着伞。为什么呢?答:因为下雨了。)
第2話「魔女の正体! 昔々の戦争」
失敗は忘れら、繰り返される。
成功は忘れら、二度と起こらない。
(失败被忘却之后,往往会重蹈覆辙。成功被忘却之后,却不会再度发生。)
第3話「編み出せ、攻略法! 四国ゲームの抜け穴」
夢を追うことは、夢を背負うことである。
夢は思いで、当然、重い。
(追逐梦想,其实就是背负梦想。梦想既是思念,当然,会很沉重。注:这条用了文字游戏,“追う(おう)”和“背負う(せおう)”,还有“思い(おもい)”和“重い(おもい)”。)
第4話「爆弾発言! 人造人間『悲恋』の秘密」
僕たちは偉人伝を読んで、『ろくでなしでも、運が良ければひとがどの人物になれる』ことを学ぶ。
(我们通过读伟人传记,学到了『即使是无用之人,如果运气好的话也能成为某个伟人』这件事。)
第5話「それぞれの夜! 対決前の対話」
今の子供達に必要なものは、努力と、諦めない心と、その他と、その他と、その他と、その他とその他とその他とその他とその他とその他とその他とその他とその他だ。
(现在的孩子们所必须要的,是努力,不放弃的心,以及其他的,其他,其他,以及其他其他其他其他其他其他其他其他其他。)
第6話「変わる風向き! 難航する交渉術」
勘より感覚のほうが当てになる。
(比起直觉,感觉更加的可靠。)
第7話「緑を大切に! 子供の心に木を植えよう」
雑草という草はないーーって言うけれど、じゃああなたは雑草の名をどれだけ知ってるの?
(没有叫做杂草的草——虽然你这么说,但是你又知道多少种杂草的名字呢?)
第8話「土の中で眠れ! 壊れゆく島々」
被害者という下積み時代を経て、僕たちは花形の加害者になる。
(经历了被人踩在脚下的被害者的时代,我们成为了备受瞩目的加害者。)
第9話「一番最初の魔法少女! 回る駱駝の前衛芸術」
終わりが見えたとき、それは終わっている。
(当看到终结的时候,那就已经终结了。)
第10話「少女から女へ、そして人へ! 四国ゲームの終わり」
終わりよければすべてよし。
つまり終わりが悪ければーー
(结局好则一切都好。也就是说如果结局不好的话——)
第1話「ついに集った仲間! 八人の魔法少女」
Q:ある道で、たくさんの人が歩いている中、一人だけ傘をさしている人がしました。なぜでしょう?
A:雨が降っていたから。
(问:在某条街道上,有很多人走着,只有一个人撑着伞。为什么呢?答:因为下雨了。)
第2話「魔女の正体! 昔々の戦争」
失敗は忘れら、繰り返される。
成功は忘れら、二度と起こらない。
(失败被忘却之后,往往会重蹈覆辙。成功被忘却之后,却不会再度发生。)
第3話「編み出せ、攻略法! 四国ゲームの抜け穴」
夢を追うことは、夢を背負うことである。
夢は思いで、当然、重い。
(追逐梦想,其实就是背负梦想。梦想既是思念,当然,会很沉重。注:这条用了文字游戏,“追う(おう)”和“背負う(せおう)”,还有“思い(おもい)”和“重い(おもい)”。)
第4話「爆弾発言! 人造人間『悲恋』の秘密」
僕たちは偉人伝を読んで、『ろくでなしでも、運が良ければひとがどの人物になれる』ことを学ぶ。
(我们通过读伟人传记,学到了『即使是无用之人,如果运气好的话也能成为某个伟人』这件事。)
第5話「それぞれの夜! 対決前の対話」
今の子供達に必要なものは、努力と、諦めない心と、その他と、その他と、その他と、その他とその他とその他とその他とその他とその他とその他とその他とその他だ。
(现在的孩子们所必须要的,是努力,不放弃的心,以及其他的,其他,其他,以及其他其他其他其他其他其他其他其他其他。)
第6話「変わる風向き! 難航する交渉術」
勘より感覚のほうが当てになる。
(比起直觉,感觉更加的可靠。)
第7話「緑を大切に! 子供の心に木を植えよう」
雑草という草はないーーって言うけれど、じゃああなたは雑草の名をどれだけ知ってるの?
(没有叫做杂草的草——虽然你这么说,但是你又知道多少种杂草的名字呢?)
第8話「土の中で眠れ! 壊れゆく島々」
被害者という下積み時代を経て、僕たちは花形の加害者になる。
(经历了被人踩在脚下的被害者的时代,我们成为了备受瞩目的加害者。)
第9話「一番最初の魔法少女! 回る駱駝の前衛芸術」
終わりが見えたとき、それは終わっている。
(当看到终结的时候,那就已经终结了。)
第10話「少女から女へ、そして人へ! 四国ゲームの終わり」
終わりよければすべてよし。
つまり終わりが悪ければーー
(结局好则一切都好。也就是说如果结局不好的话——)
2023.12.13 音人的彩虹P
KinKi Kidsの『P album』は希望で溢れてる――絶え間ない挑戦がもたらした新境地と新たな輝き
2007年、KinKi KidsがCDデビュー10周年を迎えた年にリリースされたアルバム『φ』(ファイ)。デビュー当時からずっと『A album』『B album』『C album』……とアルファベット順に名付けてきた彼らにとって、この作品はタイトルを含め、それまでのアルバムとは一線を画すものだった。ブラックミュージックの要素をふんだんに取り入れた楽曲「lOve in the φ」から始まり、ラストはバラード曲「永遠に」。ジャンルに囚われることなくさまざまな楽曲に挑戦したことがわかりやすく提示された作品で、初めて一聴した時、自分の知らなかったKinKi Kidsが凝縮されていて衝撃を受けたことを憶えている。多彩な楽曲を唄いこなせるのは、ひたむきに音楽に向き合い続け、作品をリリースするごとに新しい挑戦を重ねてきた2人だからこそ。それに、さまざまなジャンルを縦横無尽に行き交うという意味では、「どこにも属さない集合体」という意味を持つタイトルに相応しい作品だと思った。
それから16年。まるで『φ』を聴いた時のように〈こんなKinKi Kids、知らなかった!〉と感動に打ち震えたり、KinKi Kidsの表現に無限の可能性を感じられる作品に再び出逢うことができた。それが本日リリースされた通算17枚目のアルバム――『P album』だ。「ジャンルレスな Piece[=音楽]がちりばめられたアルバム」と謳っているだけあって、新しいアプローチが随所に見られる本作。聴いているとつい身体を揺らしたくなるようなEDM調の楽曲が多く収録されていて、それだけでも新鮮だが、突如ラップが繰り出されたりと(しかもまったく違和感がない)2人の挑戦はこちらの想像の範疇を軽々と超えてくる。だから、本作を聴いていると楽しくて仕方がないのだ。
2人のヴォーカリストとしての進化にも触れておきたい。夜の深い時間にハマるようなメロウで艶のあるヴォーカルがとにかく美しくて、アルバムをリピートするたび、つい聴き惚れてしまう。基本的にオケが抑え目なので、ある意味歌唱力に大きく左右される楽曲ばかりが並んでいるが、どれも圧巻の歌声で聴く者の心を惹きつけてしまうのは流石としか言いようがない。それに、2人の声の重なり方も史上最高レベルだと思っている。それぞれの個性が反発し合うどころか、一つの人格に成るような感覚を覚えてしまうが、きっとそれは26年という月日がもたらしたものの一つなのだろう。
共同プロデューサーである堂島孝平の仕事ぶりにも改めて脱帽してしまう。楽曲提供などを含めれば20年以上前からKinKi Kidsに携わり続け、2016年から共同プロデューサーを務めている彼は、もはやKinKi Kidsの進化に欠かせない存在である。本作を制作する上でどんな話し合いが行われたのかはわからないが、多彩な楽曲に挑戦させたのは、KinKi Kidsが26年の間に築いてきた表現力に堂島孝平が絶大な信頼を寄せているからであって、光一と剛もそこに対して誇りを持っているから、数々の実験的な試みに賛同したのではないかと思っている。堂島が作詩作曲した「アン/ペア」や「One of a kind」なども、あまりにも素晴らしい。
名曲揃いの本作だが、特筆すべきは剛が作詩を手がけた「無重力みたいな愛」だ。作曲は堂島で、弾むようなホーン隊の音色、そして愛に溢れたストレートな歌詩が、聴くたびに温かい気持ちにさせてくれる。
〈心はひとつだから/君と僕はどんな日も見つめ合っている〉
〈ずっとずっといよう一緒に/離れずに愛しよう〉
この歌詩に込められた想いは知らないけれど、私はKinKi Kidsを愛する人たちに向けたメッセージとして受け取った。それは私自身が、2人が積み上げてきたものの尊さを日々実感していて、彼らのあずかり知らないところで彼らが積み上げてきたものが壊されることを危惧していたり、壊されてたまるか、なんて勝手に闘志を燃やす瞬間があるのも要因だと思う。しかし、自分を含めグループの今後に少なからず不安を抱いている人々に対して、2人は音楽を通じて、「僕らの絆や積み上げてきたものは、そう簡単に壊れるものじゃない。だから安心してほしい」と語りかけてくれているようにも聴こえる。都合の良すぎる解釈にすぎないが、どうしたって、KinKi Kidsと彼らを愛する人々にとってのお守りのような楽曲にしか聴こえないのだ。
そして、ラストに収録されている「明日のピース」。映画のエンドロールを想起させるスロウなナンバーで、「無重力みたいな愛」に通ずるような前向きで温かい言葉がここにも並んでいる。
〈キミといる 終わらない 世界で/愛ある 未来へ/今日と言う明日のピースを繋ごう〉
「無重力みたいな愛」や「明日のピース」で彼らが伝えたいことの正解は、自分にはわからない。本人にインタビューをさせてもらったわけでもないし、あくまで憶測にすぎないけれど、こういった純度100%の愛が感じられる楽曲を終盤に持ってくるところがKinKi Kidsらしいなと思った。普段は照れ隠しから本音を隠すこともあるが、ここぞという時には真正面からメッセージを投げかけてくれる。それこそがKinKi Kidsなのだ。
そして『P album』のリリースからわずか2週間後、今度は47枚目のシングル「シュレーディンガー」がリリースされるが、驚くべきことに、そこでも2人は新境地を開拓している。どんな状況下であってもKinKi Kidsとして挑戦することを諦めたくない――そんな強い想いが感じられる2人の姿勢や作品から、私『音楽と人』2023年3月号のインタビューを思い出した。
「たぶんKinKi Kidsは完成しないまま、ずっと続いていくんですよ」
別々にインタビューを実施したにもかかわらず、それぞれの口から自然と出てきたこの言葉に、やはり二言はないのだろう。
最後に、本作を一通り聴き終えたあとは、ぜひ『A album』から『P album』まで順番に聴いてみてほしい。光一と剛がいくつもの挑戦を重ねてKinKi Kidsを大切に磨き続けてきたことも、彼らと私たちで積み上げてきたピースは、誰にも崩せやしない揺るぎないものであることも、きっと実感できるはずだから。
KinKi Kidsの『P album』は希望で溢れてる――絶え間ない挑戦がもたらした新境地と新たな輝き
2007年、KinKi KidsがCDデビュー10周年を迎えた年にリリースされたアルバム『φ』(ファイ)。デビュー当時からずっと『A album』『B album』『C album』……とアルファベット順に名付けてきた彼らにとって、この作品はタイトルを含め、それまでのアルバムとは一線を画すものだった。ブラックミュージックの要素をふんだんに取り入れた楽曲「lOve in the φ」から始まり、ラストはバラード曲「永遠に」。ジャンルに囚われることなくさまざまな楽曲に挑戦したことがわかりやすく提示された作品で、初めて一聴した時、自分の知らなかったKinKi Kidsが凝縮されていて衝撃を受けたことを憶えている。多彩な楽曲を唄いこなせるのは、ひたむきに音楽に向き合い続け、作品をリリースするごとに新しい挑戦を重ねてきた2人だからこそ。それに、さまざまなジャンルを縦横無尽に行き交うという意味では、「どこにも属さない集合体」という意味を持つタイトルに相応しい作品だと思った。
それから16年。まるで『φ』を聴いた時のように〈こんなKinKi Kids、知らなかった!〉と感動に打ち震えたり、KinKi Kidsの表現に無限の可能性を感じられる作品に再び出逢うことができた。それが本日リリースされた通算17枚目のアルバム――『P album』だ。「ジャンルレスな Piece[=音楽]がちりばめられたアルバム」と謳っているだけあって、新しいアプローチが随所に見られる本作。聴いているとつい身体を揺らしたくなるようなEDM調の楽曲が多く収録されていて、それだけでも新鮮だが、突如ラップが繰り出されたりと(しかもまったく違和感がない)2人の挑戦はこちらの想像の範疇を軽々と超えてくる。だから、本作を聴いていると楽しくて仕方がないのだ。
2人のヴォーカリストとしての進化にも触れておきたい。夜の深い時間にハマるようなメロウで艶のあるヴォーカルがとにかく美しくて、アルバムをリピートするたび、つい聴き惚れてしまう。基本的にオケが抑え目なので、ある意味歌唱力に大きく左右される楽曲ばかりが並んでいるが、どれも圧巻の歌声で聴く者の心を惹きつけてしまうのは流石としか言いようがない。それに、2人の声の重なり方も史上最高レベルだと思っている。それぞれの個性が反発し合うどころか、一つの人格に成るような感覚を覚えてしまうが、きっとそれは26年という月日がもたらしたものの一つなのだろう。
共同プロデューサーである堂島孝平の仕事ぶりにも改めて脱帽してしまう。楽曲提供などを含めれば20年以上前からKinKi Kidsに携わり続け、2016年から共同プロデューサーを務めている彼は、もはやKinKi Kidsの進化に欠かせない存在である。本作を制作する上でどんな話し合いが行われたのかはわからないが、多彩な楽曲に挑戦させたのは、KinKi Kidsが26年の間に築いてきた表現力に堂島孝平が絶大な信頼を寄せているからであって、光一と剛もそこに対して誇りを持っているから、数々の実験的な試みに賛同したのではないかと思っている。堂島が作詩作曲した「アン/ペア」や「One of a kind」なども、あまりにも素晴らしい。
名曲揃いの本作だが、特筆すべきは剛が作詩を手がけた「無重力みたいな愛」だ。作曲は堂島で、弾むようなホーン隊の音色、そして愛に溢れたストレートな歌詩が、聴くたびに温かい気持ちにさせてくれる。
〈心はひとつだから/君と僕はどんな日も見つめ合っている〉
〈ずっとずっといよう一緒に/離れずに愛しよう〉
この歌詩に込められた想いは知らないけれど、私はKinKi Kidsを愛する人たちに向けたメッセージとして受け取った。それは私自身が、2人が積み上げてきたものの尊さを日々実感していて、彼らのあずかり知らないところで彼らが積み上げてきたものが壊されることを危惧していたり、壊されてたまるか、なんて勝手に闘志を燃やす瞬間があるのも要因だと思う。しかし、自分を含めグループの今後に少なからず不安を抱いている人々に対して、2人は音楽を通じて、「僕らの絆や積み上げてきたものは、そう簡単に壊れるものじゃない。だから安心してほしい」と語りかけてくれているようにも聴こえる。都合の良すぎる解釈にすぎないが、どうしたって、KinKi Kidsと彼らを愛する人々にとってのお守りのような楽曲にしか聴こえないのだ。
そして、ラストに収録されている「明日のピース」。映画のエンドロールを想起させるスロウなナンバーで、「無重力みたいな愛」に通ずるような前向きで温かい言葉がここにも並んでいる。
〈キミといる 終わらない 世界で/愛ある 未来へ/今日と言う明日のピースを繋ごう〉
「無重力みたいな愛」や「明日のピース」で彼らが伝えたいことの正解は、自分にはわからない。本人にインタビューをさせてもらったわけでもないし、あくまで憶測にすぎないけれど、こういった純度100%の愛が感じられる楽曲を終盤に持ってくるところがKinKi Kidsらしいなと思った。普段は照れ隠しから本音を隠すこともあるが、ここぞという時には真正面からメッセージを投げかけてくれる。それこそがKinKi Kidsなのだ。
そして『P album』のリリースからわずか2週間後、今度は47枚目のシングル「シュレーディンガー」がリリースされるが、驚くべきことに、そこでも2人は新境地を開拓している。どんな状況下であってもKinKi Kidsとして挑戦することを諦めたくない――そんな強い想いが感じられる2人の姿勢や作品から、私『音楽と人』2023年3月号のインタビューを思い出した。
「たぶんKinKi Kidsは完成しないまま、ずっと続いていくんですよ」
別々にインタビューを実施したにもかかわらず、それぞれの口から自然と出てきたこの言葉に、やはり二言はないのだろう。
最後に、本作を一通り聴き終えたあとは、ぜひ『A album』から『P album』まで順番に聴いてみてほしい。光一と剛がいくつもの挑戦を重ねてKinKi Kidsを大切に磨き続けてきたことも、彼らと私たちで積み上げてきたピースは、誰にも崩せやしない揺るぎないものであることも、きっと実感できるはずだから。
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