D坂の殺人事件(四)
江戸川乱歩

「警察では、君の指紋が犯人の指紋の上に重って、それを消して了ったのだと解釈しているのですが、併しそれは今の実験でも分る通り不可能なんですよ。いくら強く押した所で、指紋というものが線で出来ている以上、線と線との間に、前の指紋の跡が残る筈です。もし前後の指紋が全く同じもので、捺し方も寸分違わなかったとすれば、指紋の各線が一致しますから、或は後の指紋が先の指紋を隠して了うことも出来るでしょうが、そういうことは先ずあり得ませんし、仮令そうだとしても、この場合結論は変らないのです。
 併し、あの電燈を消したのが犯人だとすれば、スイッチにその指紋が残っていなければなりません。僕は若しや警察では君の指紋の線と線との間に残っている先の指紋を見落しているのではないかと思って、自分で検べて見たのですが、少しもそんな痕跡がないのです。つまり、あのスイッチには、後にも先にも、君の指紋が捺されているだけなのです。――どうして古本屋の人達の指紋が残っていなかったのか、それはよく分りませんが、多分、あの部屋の電燈はつけっぱなしで、一度も消したことがないのでしょう。
君、以上の事柄は一体何を語っているでしょう。僕はこういう風に考えるのですよ。一人の荒い棒縞の着物を着た男が、――その男は多分死んだ女の幼馴染で、失恋という理由なんかも考えられますね――古本屋の主人が夜店を出すことを知っていてその留守の間に女を襲うたのです。声を立てたり抵抗したりした形跡がないのですから、女はその男をよく知っていたに相違ありません。で、まんまと目的を果した男は、死骸の発見を後らす為に、電燈を消して立去ったのです。併し、この男の一期いちごの不覚は、障子の格子のあいているのを知らなかったこと、そして、驚いてそれを閉めた時に、偶然店先にいた二人の学生に姿を見られたことでした。それから、男は一旦外へ出ましたが、ふと気がついたのは、電燈を消した時、スイッチに指紋が残ったに相違ないということです。これはどうしても消して了わねばなりません。然しもう一度同じ方法で部屋の中へ忍込むのは危険です。そこで、男は一つの妙案を思いつきました。それは、自から殺人事件の発見者になることです。そうすれば、少しも不自然もなく、自分の手で電燈をつけて、以前の指紋に対する疑をなくして了うことが出来るばかりでなく、まさか、発見者が犯人だろうとは誰しも考えませんからね、二重の利益があるのです。こうして、彼は何食わぬ顔で警察のやり方を見ていたのです。大胆にも証言さえしました。しかも、その結果は彼の思う壺だったのですよ。五日たっても十日たっても、誰も彼を捕えに来るものはなかったのですからね」
この私の話を、明智小五郎はどんな表情で聴いていたか。私は、恐らく話の中途で、何か変った表情をするか、言葉を挟むだろうと予期していた。ところが、驚いたことには、彼の顔には何の表情も現れぬのだ。一体平素から心を色に現さぬ質たちではあったけれど、余り平気すぎる。彼は始終例の髪の毛をモジャモジャやりながら、黙り込んでいるのだ。私は、どこまでずうずうしい男だろうと思いながら最後の点に話を進めた。
「君はきっと、それじゃ、その犯人はどこから入って、どこから逃げたかと反問するでしょう。確に、その点が明かにならなければ、他の凡てのことが分っても何の甲斐もないのですからね。だが、遺憾いかんながら、それも僕が探り出したのですよ。あの晩の捜査の結果では、全然犯人の出て行った形跡がない様に見えました。併し、殺人があった以上、犯人が出入しなかった筈はないのですから、刑事の捜索にどこか抜目があったと考える外はありません。警察でもそれには随分苦心した様子ですが、不幸にして、彼等は、僕という一介の書生に及ばなかったのですよ。
 ナアニ、実は下らぬ事なんですがね、僕はこう思ったのです。これ程警察が取調べているのだから、近所の人達に疑うべき点は先ずあるまい。もしそうだとすれば、犯人は、何か、人の目にふれても、それが犯人だとは気づかれぬ様な方法で通ったのじゃないだろうか、そして、それを目撃した人はあっても、まるで問題にしなかったのではなかろうか、とね。つまり、人間の注意力の盲点――我々の目に盲点があると同じ様に、注意力にもそれがありますよ――を利用して、手品使が見物の目の前で、大きな品物を訳もなく隠す様に、自分自身を隠したのかも知れませんからね。そこで、僕が目をつけたのは、あの古本屋の一軒置いて隣の旭屋という蕎麦屋です」
 古本屋の右へ時計屋、菓子屋と並び、左へ足袋屋、蕎麦屋と並んでいるのだ。
「僕はあすこへ行って、事件の当夜八時頃に、便所を借りて行った男はないかと聞いて見たのです。あの旭屋は君も知っているでしょうが、店から土間続きで、裏木戸まで行ける様になっていて、その裏木戸のすぐ側に便所があるのですから、便所を借りる様に見せかけて、裏口から出て行って、又入って来るのは訳はありませんからね。――例のアイスクリーム屋は路地を出た角に店を出していたのですから、見つかる筈はありません――それに、相手が蕎麦屋ですから、便所を借りるということが極めて自然なんです。聞けば、あの晩はお上さんは不在で、主人丈が店の間にいた相ですから、おあつらえ向きなんです。君、なんとすてきな、思附おもいつきではありませんか。
 そして、案の定、丁度その時分に便所を借りた客があったのです。ただ、残念なことには、旭屋の主人は、その男の顔形とか着物の縞柄なぞを少しも覚えていないのですがね。――僕は早速この事を例の友達を通じて、小林刑事に知らせてやりましたよ。刑事は自分でも蕎麦屋を調べた様でしたが、それ以上何も分らなかったのです――」
 私は少し言葉を切って、明智に発言の余裕を与えた。彼の立場は、この際何とか一言云わないでいられぬ筈だ。ところが、彼は相変らず頭を掻廻しながら、すまし込んでいるのだ。私はこれまで、敬意を表する意味で間接法を用いていたのを直接法に改めねばならなかった。
「君、明智君、僕のいう意味が分るでしょう。動かぬ証拠が君を指さしているのですよ。白状すると、僕はまだ心の底では、どうしても君を疑う気になれないのですが、こういう風に証拠が揃っていては、どうも仕方がありません。……僕は、もしやあの長屋の内に、太い棒縞の浴衣を持っている人がないかと思って、随分骨を折って調べて見ましたが、一人もありません。それも尤もっともですよ。同じ棒縞の浴衣でも、あの格子に一致する様な派手なのを着る人は珍らしいのですからね。それに、指紋のトリックにしても、便所を借りるというトリックにしても、実に巧妙で、君の様な犯罪学者でなければ、一寸真似の出来ない芸当ですよ。それから、第一おかしいのは、君はあの死人の細君と幼馴染だといっていながら、あの晩、細君の身許調べなんかあった時に、側で聞いていて、少しもそれを申立てなかったではありませんか。
 さて、そうなると唯一の頼みは Alibi の有無です。ところが、それも駄目なんです。君は覚えていますか、あの晩帰り途で、白梅軒へ来るまで君が何処どこにいたかということを、僕は聞きましたね。君は一時間程、その辺を散歩していたと答えたでしょう。仮令、君の散歩姿を見た人があったとしても、散歩の途中で、蕎麦屋の便所を借りるなどはあり勝ちのことですからね。明智君、僕のいうことが間違っていますか。どうです。もし出来るなら君の弁明を聞こうじゃありませんか」
 読者諸君、私がこういって詰めよった時、奇人明智小五郎は何をしたと思います。面目なさに俯伏して了ったとでも思うのですか。どうしてどうして、彼はまるで意表外のやり方で、私の荒胆あらぎもをひしいだのです。というのは、彼はいきなりゲラゲラと笑い出したのです。
「いや失敬失敬、決して笑うつもりではなかったのですけれど、君は余り真面目だもんだから」明智は弁解する様に云った。「君の考えは却々なかなか面白いですよ。僕は君の様な友達を見つけたことを嬉しく思いますよ。併し、惜しいことには、君の推理は余りに外面的で、そして物質的ですよ。例えばですね。僕とあの女との関係についても、君は、僕達がどんな風な幼馴染だったかということを、内面的に心理的に調べて見ましたか。僕が以前あの女と恋愛関係があったかどうか。又現に彼女を恨うらんでいるかどうか。君にはそれ位のことが推察出来なかったのですか。あの晩、なぜ彼女を知っていることを云わなかったか、その訳は簡単ですよ。僕は何も参考になる様な事柄を知らなかったのです。僕は、まだ小学校へも入らぬ時分に彼女と分れた切りなのですからね。尤も、最近偶然そのことが分って、二三度話し合ったことはありますけれど」
「では、例えば指紋のことはどういう風に考えたらいいのですか?」
「君は、僕があれから何もしないでいたと思うのですか。僕もこれで却々やったのですよ。D坂は毎日の様にうろついていましたよ。殊に古本屋へはよく行きました。そして主人をつかまえて色々探ったのです。――細君を知っていたことはその時打明けたのですが、それが却かえって便宜になりましたよ――君が新聞記者を通じて警察の模様を知った様に、僕はあの古本屋の主人から、それを聞出していたんです。今の指紋のことも、じきに分りましたから、僕も妙に思って検しらべて見たのですが、ハハ……、笑い話ですよ。電球の線が切れていたのです。誰も消しやしなかったのですよ。僕がスイッチをひねった為に燈ひがついたと思ったのは間違で、あの時、慌てて電燈を動かしたので、一度切れたタングステンが、つながったのですよ。スイッチに僕の指紋丈けしかなかったのは、当りまえなのです。あの晩、君は障子のすき間から電燈のついているのを見たと云いましたね。とすれば、電球の切れたのは、その後ですよ。古い電球は、どうもしないでも、独りでに切れることがありますからね。それから、犯人の着物の色のことですが、これは僕が説明するよりも……」
 彼はそういって、彼の身辺の書物の山を、あちらこちら発掘していたが、やがて、一冊の古ぼけた洋書を掘りだして来た。
「君、これを読んだことがありますか、ミュンスターベルヒの『心理学と犯罪』という本ですが、この『錯覚』という章の冒頭を十行許ばかり読んで御覧なさい」
 私は、彼の自信ありげな議論を聞いている内に、段々私自身の失敗を意識し始めていた。で、云われるままにその書物を受取って、読んで見た。そこには大体次の様なことが書いてあった。
嘗かつて一つの自動車犯罪事件があった。法廷に於て、真実を申立てる旨むね宣誓した証人の一人は、問題の道路は全然乾燥してほこり立っていたと主張し、今一人の証人は、雨降りの挙句で、道路はぬかるんでいたと誓言した。一人は、問題の自動車は徐行していたともいい、他の一人は、あの様に早く走っている自動車を見たことがないと述べた。又前者は、その村道には二三人しか居なかったといい、後者は、男や女や子供の通行人が沢山あったと陳述した。この両人の証人は、共に尊敬すべき紳士で、事実を曲弁したとて、何の利益がある筈もない人々だった。
私がそれを読み終るのを待って明智は更らに本の頁を繰りながら云った。
「これは実際あったことですが、今度は、この『証人の記憶』という章があるでしょう。その中程の所に、予あらかじめ計画して実験した話があるのですよ。丁度着物の色のことが出てますから、面倒でしょうが、まあ一寸読んで御覧なさい」
 それは左の様な記事であった。

D坂の殺人事件(二)
江戸川乱歩

間もなく、一人の正服せいふくの警官が背広の男と連立ってやって来た。正服の方は、後で知ったのだが、K警察署の司法主任で、もう一人は、その顔つきや持物でも分る様に、同じ署に属する警察医だった。私達は司法主任に、最初からの事情を大略説明した。そして、私はこう附加えた。
「この明智君がカフェへ入って来た時、偶然時計を見たのですが、丁度八時半頃でしたから、この障子の格子が閉ったのは、恐らく八時頃だったと思います。その時は確か中には電燈がついてました。ですから、少くとも八時頃には、誰れか生きた人間がこの部屋にいたことは明かです」
 司法主任が私達の陳述を聞取って、手帳に書留めている間に、警察医は一応死体の検診を済ませていた。彼は私達の言葉のとぎれるのを待って云った。
「絞殺ですね。手でやられたのです。これ御覧なさい。この紫色になっているのが指の痕あとです。それから、この出血しているのは爪が当った箇所ですよ。拇指おやゆびの痕が頸くびの右側についているのを見ると、右手でやったものですね。そうですね。恐らく死後一時間以上はたっていないでしょう。併し、無論もう蘇生そせいの見込はありません」
「上から押えつけたのですね」司法主任が考え考え云った。「併し、それにしては、抵抗した様子がないが……恐らく非常に急激にやったのでしょうね。ひどい力で」
 それから、彼は私達の方を向いて、この家の主人はどうしたのだと尋ねた。だが、無論私達が知っている筈はない。そこで、明智は気を利かして、隣家の時計屋の主人を呼んで来た。
 司法主任と時計屋の問答は大体次の様なものであった。
「主人はどこへ行ったのかね」
「ここの主人は、毎晩古本の夜店を出しに参りますんで、いつも十二時頃でなきゃ帰って参りません。ヘイ」
「どこへ夜店を出すんだね」
「よく上野うえのの広小路ひろこうじへ参ります様ですが。今晩はどこへ出ましたか、どうも手前には分り兼ねますんで。ヘイ」
「一時間ばかり前に、何か物音を聞かなかったかね」
「物音と申しますと」
「極っているじゃないか。この女が殺される時の叫び声とか、格闘の音とか……」
「別段これという物音を聞きません様でございましたが」
 そうこうする内に、近所の人達が聞伝えて集って来たのと、通りがかりの弥次馬で、古本屋の表は一杯の人だかりになった。その中に、もう一方の、隣家の足袋屋たびやのお神さんがいて、時計屋に応援した。そして、彼女も何も物音を聞かなかった旨むね陳述した。
 この間、近所の人達は、協議の上、古本屋の主人の所へ使つかいを走らせた様子だった。
 そこへ、表に自動車の止る音がして、数人の人がドヤドヤと入って来た。それは警察からの急報で駈けつけた裁判所の連中と、偶然同時に到着したK警察署長、及び当時の名探偵という噂の高かった小林こばやし刑事などの一行だった。――無論これは後になって分ったことだ、というのは、私の友達に一人の司法記者があって、それがこの事件の係りの小林刑事とごく懇意こんいだったので、私は後日彼から色々と聞くことが出来たのだ。――先着の司法主任は、この人達の前で今までの模様を説明した。私達も先の陳述をもう一度繰返さねばならなかった。
「表の戸を閉めましょう」
突然、黒いアルパカの上衣に、白ズボンという、下廻りの会社員見たいな男が、大声でどなって、さっさと戸を閉め出した。これが小林刑事だった。彼はこうして弥次馬を撃退して置いて、さて探偵にとりかかった。彼のやり方は如何にも傍若無人で、検事や署長などはまるで眼中にない様子だった。彼は始めから終りまで一人で活動した。他の人達は唯、彼の敏捷びんしょうな行動を傍観する為にやって来た見物人に過ぎない様に見えた。彼は第一に死体を検べた。頸の廻りは殊に念入りにいじり廻していたが、
「この指の痕には別に特徴がありません。つまり普通の人間が、右手で押えつけたという以外に何の手掛りもありません」
 と検事の方を見て云った。次に彼は一度死体を裸体にして見るといい出した。そこで、議会の秘密会見たいに、傍聴者の私達は、店の間へ追出されねばならなかった。だから、その間にどういう発見があったか、よく分らないが、察する所、彼等は死人の身体に沢山の生傷のあることに注意したに相違ない。カフェのウエトレスの噂していたあれだ。
 やがて、この秘密会が解かれたけれど、私達は奥の間へ入って行くのを遠慮して、例の店の間と奥との境の畳敷の所から奥の方を覗き込んでいた。幸なことには、私達は事件の発見者だったし、それに、後から明智の指紋をとらねばならなかった為に、最後まで追出されずに済んだ。というよりは抑留よくりゅうされていたという方が正しいかも知れぬ。併し小林刑事の活動は奥の間丈に限られていた訳でなく、屋内屋外の広い範囲に亙わたっていたのだから、一つ所にじっとしていた私達に、その捜査の模様が分ろう筈がないのだが、うまい工合に、検事が奥の間に陣取っていて、始終殆ど動かなかったので、刑事が出たり入ったりする毎に、一々捜査の結果を報告するのを、洩れなく聞きとることが出来た。検事はその報告に基いて、調書の材料を書記に書きとめさしていた。
先ず、死体のあった奥の間の捜索が行われたが、遺留品も、足跡も、その他探偵の目に触れる何物もなかった様子だ。ただ一つのものを除いては。
「電燈のスイッチに指紋があります」黒いエボナイトのスイッチに何か白い粉をふりかけていた刑事が云った。「前後の事情から考えて、電燈を消したのは犯人に相違ありません。併しこれをつけたのはあなた方のうちどちらですか」
 明智は自分だと答えた。
「そうですか。あとであなたの指紋をとらせて下さい。この電燈は触らない様にして、このまま取はずして持って行きましょう」
 それから、刑事は二階へ上って行って暫く下りて来なかったが、下りて来るとすぐに路地を検べるのだといって出て行った。それが十分もかかったろうか、やがて、彼はまだついたままの懐中電燈を片手に、一人の男を連れて帰って来た。それは汚れたクレップシャツにカーキ色のズボンという扮装いでたちで、四十許ばかりの汚い男だ。
「足跡はまるで駄目です」刑事が報告した。「この裏口の辺は、日当りが悪いせいかひどいぬかるみで、下駄の跡が滅多無性についているんだから、迚とても分りっこありません。ところで、この男ですが」と今連れて来た男を指し「これは、この裏の路地を出た所の角に店を出していたアイスクリーム屋ですが、若し犯人が裏口から逃げたとすれば、路地は一方口なんですから、必ずこの男の目についた筈です。君、もう一度私の尋ねることに答えて御覧」
そこで、アイスクリーム屋と刑事の問答。
「今晩八時前後に、この路地を出入でいりしたものはないかね」
「一人もありませんので、日が暮れてからこっち、猫の子一匹通りませんので」アイスクリーム屋は却々要領よく答える。
「私は長らくここへ店を出させて貰ってますが、あすこは、この長屋のお上さん達も、夜分は滅多に通りませんので、何分あの足場の悪い所へ持って来て、真暗なんですから」
「君の店のお客で路地の中へ入ったものはないかね」
「それも御座いません。皆さん私の目の前でアイスクリームを食べて、すぐ元の方へ御帰りになりました。それはもう間違いはありません」
 さて、若しこのアイスクリーム屋の証言が信用すべきものだとすると、犯人は仮令この家の裏口から逃げたとしても、その裏口からの唯一の通路である路地は出なかったことになる。さればといって、表の方から出なかったことも、私達が白梅軒から見ていたのだから間違いはない。では彼は一体どうしたのであろう。小林刑事の考えによれば、これは、犯人がこの路地を取りまいている裏表二側の長屋の、どこかの家に潜伏しているか、それとも借家人の内に犯人があるのかどちらかであろう。尤も二階から屋根伝いに逃げる路はあるけれど、二階を検べた所によると、表の方の窓は取りつけの格子が嵌はまっていて少しも動かした様子はないのだし、裏の方の窓だって、この暑さでは、どこの家も二階は明けっぱなしで、中には物干で涼んでいる人もある位だから、ここから逃げるのは一寸難しい様に思われる。とこういうのだ。
そこで臨検者達の間に、一寸捜査方針についての協議が開かれたが、結局、手分けをして近所を軒並に検べて見ることになった。といっても、裏表の長屋を合せて十一軒しかないのだから、大して面倒ではない。それと同時に家の中も再度、縁の下から天井裏まで残る隈くまなく検べられた。ところがその結果は、何の得うる処もなかったばかりでなく、却って事情を困難にして了った様に見えた。というのは、古本屋の一軒置いて隣の菓子屋の主人が、日暮れ時分からつい今し方まで屋上の物干へ出て尺八を吹いていたことが分ったが、彼は始めから終いまで、丁度古本屋の二階の窓の出来事を見逃す筈のない様な位置に坐っていたのだ。
 読者諸君、事件は却々面白くなって来た。犯人はどこから入って、どこから逃げたのか、裏口からでもない、二階の窓からでもない、そして表からでは勿論ない。彼は最初から存在しなかったのか、それとも煙の様に消えて了ったのか。不思議はそればかりでない。小林刑事が、検事の前に連れて来た二人の学生が、実に妙なことを申立てたのだ。それは裏側の長屋に間借りしている、ある工業学校の生徒達で、二人共出鱈目でたらめを云う様な男とも見えぬが、それにも拘かかわらず、彼等の陳述は、この事件を益々不可解にする様な性質のものだったのである。
 検事の質問に対して、彼等は大体左さの様に答えた。
「僕は丁度八時頃に、この古本屋の前に立って、そこの台にある雑誌を開いて見ていたのです。すると、奥の方で何だか物音がしたもんですから、ふと目を上げてこの障子の方を見ますと、障子は閉まっていましたけれど、この格子の様になった所が開いてましたので、そのすき間に一人の男の立っているのが見えました。しかし、私が目を上げるのと、その男が、この格子を閉めるのと殆ど同時でしたから、詳しいことは無論分りませんが、でも、帯の工合ぐあいで男だったことは確かです」
「で、男だったという外に何か気附いた点はありませんか、背恰好とか、着物の柄とか」
「見えたのは腰から下ですから、背恰好は一寸分りませんが、着物は黒いものでした。ひょっとしたら、細い縞か絣かすりであったかも知れませんけれど。私の目には黒無地に見えました」
「僕もこの友達と一緒に本を見ていたんです」ともう一方の学生、「そして、同じ様に物音に気づいて同じ様に格子の閉るのを見ました。ですが、その男は確かに白い着物を着ていました。縞も模様もない、真白な着物です」
「それは変ではありませんか。君達の内どちらかが間違いでなけりゃ」
「決して間違いではありません」
「僕も嘘は云いません」
 この二人の学生の不思議な陳述は何を意味するか、鋭敏な読者は恐らくあることに気づかれたであろう。実は、私もそれに気附いたのだ。併し、裁判所や警察の人達は、この点について、余りに深く考えない様子だった。

庚娘(上)
蒲松齢
田中貢太郎訳

 金大用きんたいようは中州ちゅうしゅうの旧家の子であった。尤ゆう太守の女むすめで幼な名を庚娘こうじょうというのを夫人に迎えたが、綺麗きれいなうえに賢明であったから、夫婦の間もいたってむつましかった。ところで、流賊の乱が起って金の一家も離散した。金は戦乱の中を両親と庚娘を伴つれて南の方へ逃げた。
 その途中で金は少年に遇った。それも細君さいくんと一緒に逃げていく者であったが、自分から、
「私は広陵こうりょうの王おう十八という者です。どうか路案内をさしてください。」
 といった。金は喜んで一緒にいった。河の傍そばへいった時、庚娘はそっと金に囁ささやいた。
「あの男と一緒に舟に乗ってはいけませんよ。あれは時どき私を見るのです。それにあの目は、動いて色が変りますから、心がゆるされませんよ。」
 金はそれを承知したが、王が心切に大きな舟をやとって来て、代って荷物を運んでくれたり、苦しいこともかまわずに世話をしてくれるので、同船をこばむこともできなかった。そのうえ若い細君を伴れているので、たいしたこともないだろうという思いもあった。そして一緒に舟に乗って、細君と庚娘とを一緒においていると、細君もひどくやさしいたちであった。
 王は船の舳へさきに坐って櫓ろを漕こいでいる船頭と囁ささやいていた。それは親しくしている人のようであった。
 間もなく陽が入った。水路は遥かに遠く、四方は漫漫たる水で南北の方角も解わからなかった。金はあたりを見まわしたが、物凄いのでひどく疑い怪しんだ。暫しばらくして明るい月がやっとのぼった。見るとそのあたりは一めんの蘆あしであった。
 舟はもう舟がかりした。王は金と金の父親とを上へ呼んだ。二人は室の戸を開けて外へ出た。外は月の光で明るかった。王は隙すきを見て金を水の中へつきおとした。金の父親はそれを見て大声をあげようとすると、船頭が篙さおでついた。金の父親もそのまま水の中へ落ちてしまった。金の母親がその声を聞いて出て窺のぞいた。船頭がまた篙でつきおとした。王はその時始めて、
「大変だ、大変だ、皆来てくれ。」
 といった。金の母親の出ていく時、庚娘は後にいて、そっとそれを窺のぞいていたが、一家の者が尽く溺れてしまったことを知ると、もう驚かなかった。ただ泣いて、
「お父さんもお母さんも没くなって、私はどうしたらいいだろう。」
 といった。そこへ王が入って来て、
「奥さん、何も御心配なされることはありませんよ。私と一緒に金陵きんりょうにお出でなさい。金陵には田地も家もあって、りっぱにくらしておりますから。」
 といった。庚娘は泣くことをやめていった。
「そうしていただくなら、私は他に心配することはありません。」
 王はひどく悦んで庚娘を大事にした。夜になってしまってから王は女を曳ひいて懽かんを求めた。女は体※たいはん姅に託してはぐらかした。王はそこで細君の所へいって寝た。
 初更がすぎたところで、王夫婦がやかましくいい争いをはじめたが、その由わけは解らなかった。それをじっと聞いていると、細君の声がいった。
「あなたのしたことは、雷に頭をくだかれることですよ。」
 と、王が細君をなぐりつける音がした。細君は叫んだ。
「殺せ、殺せ。死ぬるがいい、死にたい。人殺の女房になっているのはいやだ。」
 王の吼ほえるように怒る声がして、細君をひッつかんで出ていくようであったが、続いてどぶんと物の水に落ちる音が聞えて来た。
「だれか来てくれ、女房が水に落ちたのだ。」
 王のやかましくいう声がした。
 間もなく金陵にいった。王は庚娘を伴つれて自分の家へ帰って、堂おくへ入って母親に逢った。母親は王の細君が故もとの女でないのを不審がった。王はいった。
「あれは水に堕おちて死んじゃったから、これをもらったのです。」
 寝室へ帰って王は庚娘に迫った。庚娘は笑っていった。
「男子が三十になって、まだ人の道が解らないのですか。市まちの小商人の子供でさえ、初めて結婚する時には、いっぱいの酒を用いるじゃありませんか。それにあなたはお金持じゃありませんか。御馳走位はなんでもないでしょう。酒なしで結婚するのは、儀式に欠けるじゃありませんか、」
 王は喜んで酒をかまえて二人で飲んだ。庚娘は杯を持ってしとやかに酒を勧めた。王はだんだん酔って来て、もう飲めないといいだした。庚娘は大きな杯を自分で飲んでから、強いて媚こびをつくってそれを王に勧めた。王は厭というに忍びないので、またそれを飲んだ。王はそこで酔ってしまったので、裸になって庚娘に寝を促した。庚娘は酒の器をさげて燭ひを消し、手洗にかこつけて室を出ていって、刀を持って暗い中へ入り、手さぐりに王の項くびをさぐった。王はその臂うでをつかんで昵声なれごえをした。庚娘は力まかせに切りつけた。王は死なないで叫んで起きた。庚娘はまたそれに切りつけた。そこで王は殪たおれた。
 王の母親は夢現ゆめうつつの間にその物音を聞きつけて、走って来て声をかけた。庚娘はまたその母親も殺した。王の弟の十九がそれを覚った。庚娘はにげることができないと思ったので、急いで自分の吭のどを突いた。刀が純なまくらで入らなかった。そこで戸を啓あけて逃げだした。十九がそれを逐おっかけた。庚娘は池の中へ飛び込んだ。十九は人を呼んで引きあげたが、もう庚娘は死んでいた。しかしその美しいことは生きているようであった。
 人びとは一緒に王母子の尸しがいを験しらべた。窓の上に一つの凾はこがあった。開けて見ると庚娘の書いた物があって、精くわしく復讎ふくしゅうの事情を記してあった。皆庚娘を烈女として尊敬し、金を集めて葬ることにした。夜が明けて見に集まって来た者が数千人あったが、その容さまを見て皆が拝んでいった。そして一日のうちに百金集まったので、そこでそれを南郊に葬ったが、好事者ものずきは朱い冠に袍うわぎを着けて会葬した。それは手厚い葬式であった。
 一方王に衝つき堕おとされた金大用きんたいようは、板片いたきれにすがりつくことができたので死ななかった。そして流れて淮わいへいったところで、小舟に救いあげられた。その小舟は富豪の尹いん翁というのが溺れる者をすくうために設けてあるものであった。
 金はやっと蘇生したので、尹翁の許へいって礼をいった。翁は厚くもてなして逗留とうりゅうして子供を教えさせようとした。金は両親の消息が解らないので、いって探ろうとしていたから決しなかった。その時網で老人と老婆の尸しがいを曳ひきあげた者があった。金は両親かも解らないと思ったので、急いで出かけていって験べた。果して両親であった。尹翁は金に代って棺をかまえた。金はひどく悲しんだ。
 また人が来て、一人の溺れている婦人をすくったが、それは自分で金生の妻であるといっているといった。金は驚いて出ていった。女はもう来ていたが、それは庚娘でなかった。それは王十八の細君であった。女は金を見てひどく泣いて、
「どうか私を棄すてないでください。」
 といった。金はいった。
「僕の心はもう乱れている。人のことを考えてやる暇はないのだ。」
 女はますます悲しんだ。尹翁は精しく故わけを聞いて、
「それは天の報むくいだ。」
 といって喜び、金に勧めて結婚させようとした。金は、
「親の喪におりますから困ります。それに復讎ふくしゅうするつもりですから、女を伴つれていては手足まといになるのです。」
 といった。女はいった。
「もしあなたのお言葉のようだと、もしあなたの奥さんが生きていらしたら、復讎と喪のために離縁なさるのですか。」
 尹翁はその言葉が善いので、暫く代って女を世話しようといったので、金もそこで結婚することを承知した。そして日を見て両親を葬った。女は喪服を着て泣いた。舅しゅうと姑しゅうとめを喪った時のように。
 すでに葬式が終った。金は刀を懐にして行脚あんぎゃの僧に化けて広陵にいこうとした。女はそれを止めていった。
「私は唐とうという姓です。先祖から金陵におって、あの王の悪人と同郷です。あれが広陵といったのは嘘です、それにこのあたりの舟にいる悪人は、皆あれの仲間ですから、復讎することはむつかしいのです。うっかりするとあべこべに酷ひどい目に逢わされますから。」
 金はそのあたりを歩きながら考えたが、復讎の方法が見つからなかった。忽ち女子が復讎したということが伝わって来て、その河筋かわすじで評判になり、その姓名も精しくいい伝えられた。金はそれを聞いてうれしかったが、しかし両親が殺されまた庚娘が死んだことを思うとますます悲しかった。そこで女にいった。
「幸に汚されずに復讎してくれた。この烈婦の心にそむいて結婚することはできない。」
 女はもう約束ができあがっているので離れようとはしなかった。
「私は妾になってもよろしゅうございます。」
 その時副将軍の袁えん公という者があって、尹翁と古い知合であった。ちょうど西の方に向けて出発することになって尹の所へ寄った。袁は尹の家で金を見て、ひどくその人となりを愛して秘書となってくれと頼んだ。間もなくその地方に流賊の乱が起って、袁は大功をたてた。金も袁の機務にたずさわっていたので、その功によって游撃将軍となって帰って来た。そこで金と唐は始めて結婚の式をあげた。
 三、四日いて金は唐を伴れて金陵へいって、庚娘の墓参りをしようとした。そして舟で鎮江ちんこうを渡って金山きんざんに登ろうとした。舟が中流へ出た時、不意に一艘そうの小舟が擦すれ違った。それに一人の老婆と若い婦人が乗っていたが、その婦人がひどく庚娘に似ていた。舟は矢よりも早くゆき過ぎようとした。若い婦人も舟の窓の中から金の方を見た。その貌かおも容かたちもますます庚娘に似ているので驚きあやしんだ。そこで名をいって呼ばずにいそがしそうに、
「群鴨ぐんおう児、飛んで天に上るを見るか。」
 といった。婦人はそれを聞くとまたいった。
馋猧児、猫子の腥なまにくを喫くらわんと欲するか。」
 それは当年行われた閨中けいちゅうの隠語いんごであった。金はひどく驚いて、舟を返して近づいた。それはほんとうの庚娘であった。婢が手を引いてこちらの舟へ来た。二人は抱きあって泣いた。同船の旅客ももらい泣きをした。
 唐は庚娘に正夫人に対する礼を以て接した。庚娘は驚いて訊いた。金は始めてその故わけを話した。庚娘は唐の手を執っていった。
「舟で御一緒になった時から、あなたのことは忘れませんでした。それにはからずこんなことになりまして、私の代りにお父さんお母さんを葬っていただいて、何といってお礼を申していいか解りません。私はあなたにそうしていただいてはすみません。」
そこで年齢の順序で一緒におることになったが、唐は庚娘の一つ歳下であったから妹としていることになった。
 庚娘は初め葬られた時は何も解らなかったが、不意に人の声がして、
「庚娘、その方の夫は生きておる。その方はまた夫に逢って夫婦となることになっておる。」
 といった。そしてとうとう夢が醒めたようになった。手をやってなでてみると四面は皆壁であった。庚娘は始めて自分は死んでもう葬られているということを悟った。庚娘は困ってもだえたが苦しい所はなかった。
 悪少年が庚娘の葬具が多くてきれいであったのを知って、塚を発あばいて棺を破り、中を掻かきまわそうとして、庚娘の活きているのを見て驚きあった。庚娘は悪少年達に害を加えられるのが懼おそろしいので、哀願していった。


发布     👍 0 举报 写留言 🖊   
✋热门推荐
  • “敲山震虎”是股价经过盘整后,做出的试盘的动作,一般会在关键的位置制造压力,比如说60日均线、半年线,但是一般调整的时间不超过两个月。“敲山震虎”是股价经过盘整
  • 遇见你的那一刻,我便幡然醒悟了赶路的答案,无论四季轮转还是盛世人间,处处无不是你的身影,我在人间那么久,也不过是在寻找你。哦,我的老婆——即使我完成了九年义务教
  •  从头到尾来看,都是因为陈先生的违约,而引起的纠纷,在中介退了一步,提出归还租金和押金,却还想索要更多,涉嫌敲诈勒索。 掀被子和闯入房间,你可以通过法律途径解决
  • 2022十四届中国(江西)机床展 CIDF 江西工博会 2022 第十四届中国(江西)数字化工业博览会 The 14th China (Jiangxi) Di
  • 按照日媒说法,日本受和平宪法约束,一直以来不能拥有“攻击敌人基地”的能力;美国此前则受《中导条约》限制,没有研发射程为500至5500公里的陆基导弹,虽然美国已
  • 直到今天,85花经历过自己的人生大事乃至转型不力又归来,古偶界还是有她们的位置——起码平台与广告主这样觉得。自舍友来了之后这个小厨房有了烟火气… 所以她做饭我就
  • #檀健次[超话]#tjc#檀健次献唱电影新神榜杨戬# tjc#檀健次灯火千万音源上线# 去捍卫每份浪漫每张脸每一个小小的缘 十万难无法阻拦✊✊我~勇敢放飞心
  • #足球[超话]##中超##篮球##体育##曼联#我个人认为,在高压,或者攻防急转急下,传球成功率下降导致控制力下滑是目前最大的问题,埃利奥特传球成功率富勒姆 替
  • #艾芙花园[超话]#早上起来收物的姐妹应该看到争议帖了起因是我想拼am瑞,搜索关键词之后看到她的评论,国内邮费8r,我觉得对于偏远来说很划算,去询问了一下我首先
  • 是那个站姐摩多摩多的帅哥张嘉元吗?是那个站姐摩多摩多的帅哥张嘉元吗?
  • 爱了我亲爱的嘉慧姐姐[泪]今天明明今天自己是特殊日子还是依旧开车来公司接我然后陪我去吃饭和拔牙感动感动!(由于我的男友(姐姐的弟弟)最近工作太忙没空陪我)说说我
  • 【以色列#埃拉特#发现#濒临灭绝#的稀有#吉他鱼#】2022年8月,潜水员兼海洋摄影师Ofer Bar Yanai注意到两米长的吉他鱼在度假城市Mifratz
  • 我是一名酒泉的患者,很高兴盼到了属于自己的宝贝,现在我已经怀孕30周+1天,离预产期还有69天,一路上的痛并快乐着,今天想把自己的好孕经历分享给大家,希望能给在
  • 你期待吗[鼓掌][鼓掌](山西日报客户端)从事各种型号的 北京垫层自流平砂浆批发,价格实惠 , 以信誉求发展 , 北京垫层自流平砂浆质量可靠, 生产工艺完善
  • #成毅沉香如屑# cy#成毅应渊帝君# 20220817 今天淇圈好开心[太开心]成毅哥哥空降超话,发了9条微博,从问果果吃饭了吗,然后聊剧《沉香如屑》最后和
  • #万豪旅享家# #新态度深角度##万能假日趣野一夏#拉住盛夏的尾巴,万豪旅享家北京地区16家酒店与大家一起深入延庆玉渡山探索京郊森韵自然中更酷的户外寻Fun方式
  • #金牛座##处女座#:一些发给对象的超nice爱意文案:❶对视的时候 你的心也在对我说欢迎光临吗❷两个人在一起久了 就会越来越像 心思也会变得相似 很多事情总能
  • 生活的泥泞让我失去热情,但我依然对人真诚,也不知道自己在外人眼里有多少版本,也不想知道,我只知道问心无愧,或许我的人生就是如此,这些都是经历,增长我的智慧,尊重
  • 超度并不是说让自己怎么好怎么好,而是有因则有果,为曾经的错事做一场超度,是弥补,是忏悔,也是做功德。超度并不是说让自己怎么好怎么好,而是有因则有果,为曾经的错事
  • 4.将压制好的鸭子倒入砂钵内(挑出当归,药包,姜片,干椒)放入调味,一品鲜,红烧酱油,蒸鱼豉油,猪油,放煲仔炉中火煨45分钟,收汁即可。3.将焯水后的筒子骨,老