「薬」鲁迅(下)
小栓は、ゆっくりと出てきた。胸をさするのだが、咳がとまらない。カマドから冷や飯を盛って、熱湯をかけて食べ始めた。母は彼と一緒に出てきて、「小栓、良くなったかい?
でも、お前やっぱりお腹がすくんだね。……」
 「請け負うよ。まちがいないって」。康大叔は小栓をちらっと見てから、衆人の方に向き直って、言った。「夏の三爺は、ほんとにおりこうさんさ。もし彼が、お上に届けなきゃ、
奴の家だって全滅さ。それがどうだい。銀貨だぜ。」
「あのがきゃー、ほんとにどうしようもねえ。牢にぶち込まれても、牢番に造反をそそのかすんだ。」
 「へええ。造反!」後ろの方に坐っていた二十代の男が憤慨して言った。
 「赤目の阿義が仔細を調べに行ったら、奴はこう言ったてんだ。この大清国の天下は、われわれみんなのものだ。どうでー、これがまっとうな人間の言うことかよ。」
 「赤目は、奴の家は、ばあさんが一人いるだけで、金ヅルはないってことは百も承知の助だが、まさか、あんなに貧乏だったとは、思いも及ばなかったそうだ。一銭たりとも、牢番への付け届けすら出てこなかったって。それで頭に来たってわけさ。その上、奴ときたひにやー、まったくもう、虎の頭の上で、かゆいところを掻くようなまねしやがって、
それで、二発ほどおみまいしてやったんだそうだ。」
 「義兄貴は、拳道の達人だし、二発も食らやー、やっこさんも参ったろうね。」角のせむしが忽然、興奮して立ちあがった。
「それが何と! 殴られても、平チャラでよ、言うにこと欠いて、義兄貴に向かって、
かわいそうに!かわいそうに!ってさ。」
 「こんなガキを殴って、何がかわいそうなもんか」とゴマ塩が言った。
 康大叔は、見下したような冷笑を浮かべて、「お前、俺の話がわかってねえな」「奴が言うのは、阿義がかわいそうだって、いうんだ」
 聞いていた連中の目はきょとんと動かなくなった。話も止んだ。小栓は食べ終わっていたが、全身汗をかいて、頭から湯気がでていた。
 「阿義がかわいそう。 きちがい沙汰だ。まったく気が狂ったんだ」ゴマ塩が悟ったように言った。「気が狂ったんだ」二十代の男も悟ったかのように続いた。
 店内の客も、また元に戻って、騒ぎだした。小栓もこの騒ぎにまぎれて、ゴホンゴホンと咳をした。康大叔が寄ってきて、肩をたたいて、言った。
 「良くなるよ。小栓。お前そんなに咳するな。きっと良くなるから!」
 「気が狂った!」せむしの五少爺は頭を揺らしながらぶつぶつつぶやいた。
4.
  西門外の城壁沿いの土地は、もともとお上のものだった。中央にくねくねと細い道が一本あった。近道をする人たちが通った結果であったが、自然と境界線になった。道の左側は、死刑囚や獄死人の墓で、右側は貧乏人の墓地だった。両方とも、すでに何列もの墓が並んで、さながら、大金持ちの祝いのときにお供えされる、マントウの如くであった。
 その年の清明節は、とくに寒く、楊柳の芽も米粒の半分くらい出たばかりであった。夜は明けたばかり、華のカミさんは、右側の新しい墓の前に、四皿の料理と飯一碗を供えて、ひとしきり泣いていた。紙銭を燃やし、呆けたように地べたに坐り、何かを待っているかのようであるが、何を待っているのか、自分もわからない。微風が起こり、短い髪をゆらした。白いものは去年よりかなり増えていた。
 その道を、また一人の女が歩いてきた。半ば白髪で、ボロをまとい、壊れかけた朱塗りの丸かごに、紙銭を吊り下げ、やすみやすみしながら歩いて来る。華のカミさんが自分を見ているのに気づくと、はっとして、少したじろぎ、はずかしそうにしていたが、やがて、意を決して、左側の墓地の前に、かごを置いた。
その墓は、小栓の墓と道を挟んでちょうど線対象にあった。カミさんは、彼女が四皿の料理と飯一碗を供えて、立ったまま泣いてから、紙銭を燃やすのを見て、「あの墓も息子のだな」と思った。老女は、まわりを見渡すと、急に手足が震え始め、へなへなと後ろに倒れそうになったが、目はぎょっと見開いたままだった。
 華のカミさんは、この様子を見ていて、老女は傷心のあまり気が狂ってしまわないかと、心配になった。それで立ちあがって、小道を横切って、「お母さん、もう帰りましょうよ」と小声で言った。女はうなずいたが、やはり上を見て、ぶつぶつつぶやいた。「あれ!見て、
あれは何?」カミさんは、女の指す方を見た。その墓をじっと見て、墓の土饅頭の上の草は、まだはえそろっていなくて、黄色い土がむきだしでみっともなかった。さらにその上を見てゆくと、びっくりしてしまった。紅白の花が土饅頭の頂上の周りを囲んでいるのだった。
 二人の老女は既に老眼であったが、この紅白の花は、はっきりと見分けることができた。
花はさして多くないし、丸く囲んだようになっているが、そんな新しくはないが、きれいに並んでいる。華のカミさんは自分の息子のや、人の墓を見たが、寒さに強い青白い花が、ほんの少し咲いているだけであった。それで何か物足りなく、うつろな気分になったが、それがどうしたわけか、知ろうとは思わなかった。老女は近づいてゆき、仔細にながめてから、ひとり言のように言った。「この花は根がない。根から生えた花じゃない。こんな場所に誰が来るもんか。息子がこの世に来られるはずもない。親類や本家の連中も、とっくに来なくなったし。一体どうしたのか。老女はいろいろ考えたが、訳もわからず、また涙を流し、大声で叫んだ。
 「息子よ!彼らはみんなして、お前に冤罪をかぶせたんだね。その悔しさを忘れられなくて、悲しんでばかりもいられなくて、今日は特別に帰ってきておくれだね。私に何を言いたいのだい。」彼女は周りを見回した。一羽のカラスが木の葉のない樹の上にいるのを見て、言った。「分かったよ。息子や。かわいそうな奴らは、お前を穴埋めにして、きっと奴らに報いが来るさ。お天道様は、お見通しだよ。さ、もうお前は安らかにお眠り。お前が 
もしほんとにここに帰ってきて、私の声が聞こえるなら、あのカラスをお前の墓の上に、飛んでこさせて、私に見せておくれ。」
微風はもう止んだ。枯れ草も微動だにせず,針金のように立っていた。何かがゆれる音がしたが、だんだんしなくなって、死んだような静けさになった。二人は枯れ草の中に立って、カラスを仰ぎ見ていた。カラスは筆のようにまっすぐ伸びた枝にとまって、頭をすぼめ、鋳物のように動かなかった。
 時間がだいぶ経った。墓参りの人も増え、墓と墓の間に、老若男女が、見え隠れした。華のカミさんはなぜかしら、重い荷をおろしたような気がして、もう帰ろうと思い、老女に「帰りましょうよ」と言った。
 老女はため息をついて、やるせなく、飯と料理をしまいながら、まだ逡巡していたが、やっとぶつぶつ独り言を言いながら、歩きだした。「一体、どうしたんだろう」
 彼女らが二三十歩も行かないうちに、背後で「クアー」と鳴き声がした。二人はぞっとして、振り向くと、カラスが翼を広げて、一旦身をすくめてから、まっすぐ遠くをめがけて、矢の如くに飛び去って行った。
   1919年4月。

记录一下某次讲座
榻榻米 一张❌ 一块 更有分量
二銭銅貨

→两分铜币
切符 收据
一万(円 ) 一万(块钱)
太鼓判を押す 打包票
敵本主義 醉翁之意不在酒,声东击西(敵は本能寺にあり)
門前払いを食わせる 吃闭门羹(角度关系,你我),拒之门外
目の上の瘤(こぶ)眼中钉,肉中刺
恋の邪魔物 爱情的绊脚石
傷持つ足(きずもつあし)有前科,而感到心虚
狂気の沙汰 きょうきのさた 简直是疯了
喧嘩腰になる けんかごし ❌ごし 摆出什么样子
御馳走さまッ 好肉麻哟~

常用语
半畳 到喝彩
何々小町 なになにこまち 小野小町六歌仙,美女
暖簾を分ける のれん わける 无形的财产,品牌效应
お払い箱 おはらいばこ 没有的东西
桐の火鉢 きりのひばち
もんながや 門長屋 or 長屋門 大门两侧连着平房

文化村 ぶんかむら

2軒建ち
忍ぶ恋人 恋歌小调

黄色 yellow paper受欧美影响

妖刀「村正」伝説は徳川家による歴史改ざんの産物だった!?ひとたび鞘から抜き放てば、血を吸わせるまで納められないという妖刀・村正。江戸市中においても、「吉原百人斬り」という大量殺人事件を巻き起こしたとか。村正は、家康の祖父や父、そして家康自身をも傷つけたとして忌避されてきた。しかし妖刀伝説の裏には、徳川家による“歴史のねつ造”があるかもしれないのだ。その実態とは、果たして?

■痴情のもつれが大量殺人事件に発展

 まず、江戸時代中頃の吉原で巻き起こった、とある悲惨な事件について紹介しよう。

 被害者は、吉原一の人気を誇った遊女・八ッ橋である。格別の美しさだったのだろう。女に惚れ込んだ佐野の豪商・佐野次郎左衛門は、足しげく吉原へ通った。そして、彼による身請け話が持ち上がったときのことである。

 話を進めていくと、途中で遊女が渋り始めた。彼女には心を許した恋人・栄之氶がいたからだ。身請け話を中断させられ、商人は怒り狂って刀を振り回した。ありがちな、情事の果ての刃傷沙汰である。

 しかし、男と女の情のもつれ合いにしては、死人の数が多すぎた。彼女を斬り殺した男はさらに暴れ回り、大勢の人を殺傷したのだ。通称「吉原百人斬り」事件である。

 事件後の江戸市中は、この話で持ちきりとなった。歌舞伎でも事件を題材とした演目『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』が人気を博したというから、当時、誰一人知らぬものがない大事件だったに違いない。

それにしても、単なる情事のもつれが、なぜここまでの死者を出してしまったのか? 誰しもが訝ったことだろう。

■鞘から抜くと、血を吸わせるまで納められない狂気の刀ここで注目したいのは、男と女のもつれ話の詳細ではない。女が斬り殺されたその刀だ。なんと、かの妖刀村正であったという。

 妖刀村正とは、「徳川家に害を為す」として恐れられた、あの名刀である。一度鞘から抜き放てば、人の血を吸うまで納められないとまで言い伝えられる。反りが浅く、肉付きが薄いのが特徴で、斬れ味は抜群。壮絶無比とまで称えられた、至上の業物(実践刀)であった。

「吉原百人斬り」の犯人が手にしていたのは、数ある村正のうち、籠釣瓶(かごつるべ)と呼ばれた名品の一つ。とある武士の形見として手に入れたものだという。

 遊女・八ツ橋の殺害は、男の妬心が原因である。しかし、妖刀・村正を手にしていたことで、その妖気に操られ、大勢の人を殺めてしまうこととなった……という説明もできるだろう。■三河武士が愛用してきた村正は、なぜ妖刀になったのか?

 村正は、伊勢国桑名の刀工・千子村正(せんごむらまさ)の作とされる名刀であるが、名跡は代々受け継がれ、少なくとも6代もの刀工が同名を名乗って刀を鍛造し続けたと見られている。桑名は三河地方からほど近いため、三河武士たちにも愛用されていた。それが、なぜ妖刀として恐れられるようになってしまったのか?

 徳川氏に関する歴史書『三河後風土記』によれば、呪いの皮切りは、家康の祖父・清康が、家臣の阿部正豊によって斬り殺されたこと。このとき正豊が手にしていたのが、村正だったのだという

 しかしこの『三河後風土記』なる書、当時は権威ある歴史書であったものの、今では信ぴょう性が疑問視されている。清康殺害の件にしても、よくよく考えてみれば、この頃の三河武士には村正を所持していた者も少なくなかった。清康が村正によって斬られたとしても、特段驚くべきことではない。

 じつは、家康が長男・信康に切腹を命じた際、介錯に使われたのも村正だったとされている。そのため、家康が肉親を切腹させたという汚点を覆い隠すために、村正の祟りのせいにしてしまったと見なす向きもあるようだ。家康の父・広忠が家臣・八弥(はちや)に刺された時に手にしていた脇差も、家康自身が手にして怪我をした槍も村正だったというから、つくづく徳川家は、村正と縁が深かったようである。ただしもちろん、それらが本当に村正だったのかどうかは異論も多く定かではない。妖刀伝説だけが一人歩きしているというべきか。

 なお、徳川家に祟りをなすと言い伝えられた村正は、のちに反幕府の象徴として捉えられたようである。幕府転覆を目論んでいた由井正雪、さらに幕末には西郷隆盛などの倒幕派の志士たちが村正を縁起物として珍重し、競って求めたという。村正は、武士にとって妖刀にも縁起物にもなる、実に謎めいた名刀なのである。

※画像…豊原国周『〔籠釣瓶花街酔醒〕』,福田熊次郎,明治21. 国立国会図書館デジタルコレクション https://t.cn/A6NRUi4f (参照 2023-05-02)。歴史人編集部にて結合・トリミング加工。
藤井勝彦


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