荷花公主(上)
田中貢太郎
南昌なんしょうに彭徳孚ほうとくふという秀才があった。色の白い面長な顔をした男であったが、ある時、銭塘せんとうにいる友人を訪ねて行って、昭慶寺しょうけいじという寺へ下宿していた。
その彭は、ある日西湖せいこの縁を歩いていた。それは夏の夕方のことで、水の中では葉を捲いていた蓮の葉に涼しい風が吹いて、ぎらぎらする夕陽の光も冷たくなっていた。聖因寺せいいんじの前へ行ったところで、中から若い眼のさめるような女が出てきた。十七八に見える碧あおい着物を着た手足の細ほっそりした女で、一人の老婆が後からきていた。その女の眼はちらと彭の顔へきた。
「あなたは、何所どこからいらっしたのです」
彭が声をかけると女は恥かしそうに顔を赤らめたが、そのままその顔を老婆の方へやって、
「婆や、早く行きましょうよ」
と言ってからむこうのほうへ歩いた。彭は引きずられるように老婆の後から随ついて行った。
すこし行くと女は斜に後ろを振り返って、老婆の横から彭を覗くようにした。女の気配に彭は顔をあげたが、その拍子に女の視線と視線が合った。女はきまり悪そうにあわてて前むこうをむいて歩いた。
女の眼の色に親しみを見出した彭は、非常に気が強くなってそのまま随いて行ったが、女も老婆も不思議に足が早いので、路の曲っている所などでは、ときどき二人の姿を見失いそうになった。
彭はすこしも油断することができなかった。孤山の麓にある水仙廟がすぐ眼の前に見えてきた。もう陽が入って西の空が真赤に夕映えていた。女と老婆は水仙廟の手前から廟に沿うて折れて行った。その二人の顔に夕映の色がうっすらと映っていた。
みるみる女と老婆は水仙廟の後ろへ行ったが、そのまま見えなくなった。彭は女の姿が見えなくなると、小走りに走って廟後へ着くなり、ぴったり走ることを止めて、そのまわりに注意して廻ったが、何所へ行ったのかもう影も見えなかった。
彭はしかたなしに其所そこへ立ち止った。いつの間にか夕映も消えて四辺あたりが微暗うすぐらくなった中に、水仙廟の建物が黒い絵になって見えていた。
「おい、彭君じゃないか」
だしぬけに声をかけるものがあった。彭は吃驚びっくりして我に返った。それは霊隠寺れいいんじへ行っていた友人であった。
「ああ君か」
「君は、いったい此所ここで何をしているのだ」
彭は女を捜しているとも言えなかった。
「散歩に来たところなのだ」
「そうかね、じゃ、いっしょに帰ろうじゃないか」
彭は友人と同時いっしょに帰ってきたが、女のことが諦められないので、翌日は朝から孤山の麓へ行って、彼方此方と探して歩いたがどうしても判らなかった。人を見つけて聞いてみても、何人だれも知っている者がなかった。それでも思い切れないので、その翌日もまたその翌日も、毎日のように孤山の麓へ行って日を暮した。
彭はとうとう病気になって、飯もろくろく喫くわずに寝ているようになった。と、ある夜、扉を開けて入ってきた者があった。彭は何人だれかきたとは思ったが、顔をあげるのも苦しいのでそのままじっとしていた。
「公主からお迎えにあがりました」
眼を開けて見ると、稚児髷ちごまげに結ゆうた女の子が燈籠を持って枕頭まくらもとに立っていた。しかし、彭は相手になるのが面倒であったから、ぐるりと寝返りして壁の方を向いた。
「貴郎あなたが、この間、水仙廟の所でお逢いになりました、公主からのお迎えでございます」
彭は急に体を起した。
「水仙廟で逢った公主というのですか」
「そうでございます、公主から貴郎のお供をしてくるようにという、お使いでございます」
「公主とは、どうした方です」
「いらしてくだされたら、お判りになります」
「では、行ってみましょう」
彭は起きて着物を調ととのえると、女の子は前さきに立って行った。外には月が出て涼しい風が吹いていた。燈籠の灯はその月の光にぼかされて黄いろく見えていた。
彭は生き返ったような軽い気もちになっていた。路は彼方に曲り此方に曲って行った。
「やっとまいりました」
彭はその声に顔をあげて見た。水仙廟の後ろと思われる山の麓に楼閣が簷のきを並べていた。女を尋ねて毎日水仙廟のあたりから孤山の頂にかけて歩いていた彭は、そんな楼閣を見たことがなかったので驚いた。
「公主のいらっしゃる所は、別院でございます、私がまいりますから、そっといらっしてくださいまし」
彭はうなずいてみせた。女の子はすぐ眼の前にあった朱塗の大きな門を入って、玉を敷いてあるような綺麗な路を行った。路の両側には花をつけた草や木が一めんに生えていた。椿のような花の木もあれば、牡丹のような大きな花をつけた草もあった。白い花をつけた高い木には、凌宵花のうぜんかずらのような黄いろな蔓草の花が星の落ちてきてかかったように咲いていた。花の梢から宮殿の簷が見えていた。
路は爪さきあがりにあがっていた。その路をすこし歩いていると、すぐなだらかな路になった。と、洞穴の口のように見える建物の入口がきた。その入口には「水晶城」とした額がかかっていた。建物の周囲には水があって、白や紅の蓮の花が月の光の中の下に夢見るように咲いていた。水に臨んで朱塗の欄干も見えていた。
女の子はその中へ入って行った。彭もそれに随いて行った。其所は窓という窓は皆水晶で、それに青白い月の光が射していた。公主といわれているかの女は欄干に凭もたれて月を観ていた。
「あの方かたを、お供してまいりました」
かの女は此方を見るなりすぐ体を起して寄ってきた。
「好奇ものずきの坊ちゃん、この四五日は、お見えにならないじゃありませんか」
女はにっと笑いながら彭の手に自分の手をかけた。彭はきまりが悪いので、微笑するだけで何も言えなかった。
「すこしお眼にかからない間に、こんなにお痩せになりまして」
女はこう言ってから傍に立っていた女の子の顔を見た。
「あの碧霞漿へきかしょうを一杯持っておいで」
女の子はちょっと頭をさげて次の室へやへ行ったが、すぐ盃を捧げ持ってきた。彭と手をとり合っていた女は、一方の手にそれを取って彭に渡した。それは紺碧の色をした甘い匂いのする物であった。
「これは緑蕚夫人りょくがくふじんから戴いた物でございます」
彭はそれを飲みながら不思議な周囲まわりにその眼を向けた。
「此所は何所でしょう」
「此所は広寒香界こうかんこうかいでございます、あなたのような俗人は、長く此所にいることはできないのです、早くお帰りなさい」
女は冗談に言って笑った。彭はもう何の遠慮もいらなかった。彼はいきなり女を抱きあげて綺麗な帷とばりの垂れている室の中へ入って行った。
已而菌縟流丹、女屡乞休始止。彭と女とはその後で話をした。彭は匂いのある女の体を撫でながら言った。
「貴女は、合徳ごうとくの生れかわりじゃないのですか」
女は艶めかしそうに笑った。
「貴郎は、物に怖れない方だから申しますが、私は水仙王の娘で、荷はすの花の精でございます、貴郎が情の深いことを知りましたので、こうしてお眼にかかることになりましたが、私は舅おじさんの世話になっております、舅さんは非常に物堅い方ですから、もし舅さんに知られると、もうお眼にかかることができません、どうか舅さんに知られないように、夜そっといらして、朝も早く夜が明けない内に帰ってください」
「舅さんは、どうした方です」
「蟹の王ですよ、今この西湖の判官になっております」
朝になって寺の鐘が鳴り出したので、彭は急いで起きて帰ってきたが、それから毎晩のように行って朝早く帰った。
ある朝、二人が寝すごしたところで、女の保姆うばが来た。保姆はそれを見るとその足で判官に知らせに行った。それがためにあわてて起きて帰ろうとしていた彭は、判官の捕卒のために縛られてその前へ引き出された。判官は黒い頭巾ずきんをつけて緑の袍ほうを着ていた。
「曲者をひっ捕えてまいりました」
捕卒の一人は後退しりごみする彭を判官の前へ引き据えた。彭はどんな目にあわされることかと思って生きた心地きもちがしなかった。判官はその容さまをにくにくしそうに見おろしていたが、何を考えたのか急に眼を瞠みはるとともに急いで堂の上からおりてきた。
「貴君あなたは私の恩人だ、これはあいすまんことをした弁解もうしわけがない」
判官は急いで彭を縛った縄を解いたが、彭にはその意味が判らなかった。
「私はいつか貴君に助けられた者だ」
彭は女から舅さんは蟹の王であると言われたことを思いだした。彭はふと気が注ついた。彼はある日、友人と二人で南屏なんびょうへ遊びに行ったが、帰ってくるとすぐ近くで網を曳いている舟があった。ちょうど網があがったところであったから、どんな魚が捕れるだろうと思って、中腰になって網の中を覗いた。網の中にはおおきな甲羅をした蟹が入っていて、それが紫色の鋏をあげて逃げようとでもするように悶掻もがいていた。彼にはこれまで曾かつて一度も見たことのない蟹であった。彼は何かしらそれに神秘を感じたので、放してやろうと思って網舟の傍へ自分の舟を持って行かした。その結果、彭の銭が漁師の手に渡って、漁師の蟹が彭の舟にきた。彭の舟はやがて網舟を離れたが、再び漁師に獲られる危険のない所へくると蟹を水の中に入れてやった。蟹は大きな鋏を前で合わせて人が拱揖れいをするような容さまをして沈んでいった。…………
「さあどうか、おあがりくだされ」
判官が強しいて言うので彭は安心してあがった。
「姪めいの室に人がきているというので、貴君とは知らずに大変無礼をいたした。時に貴君は何方どちらの生れです」
「私は南昌の者で彭徳孚と申します」
「貴君は許婚いいなずけの人でもありますか」
「ありません」
「では、良縁だ、私の姪と結婚して貰いたい」
彭はもとより望むところであった。その席には保姆もいた。判官は保姆に言いつけた。
「あれを呼んでこい」
保姆は公主を連れて入ってきた。女は恥かしそうにして顔をあげなかった。判官の夫人も其所へ入ってきた。
「この方が、わしの恩人じゃ、あれをお願いすることにした」
彭は女と結婚の式をあげて水晶館にいることになった。彭は琴が上手であった。彭が琴を弾ひくと女はいつも傍で歌った。二人はこうした夢のような日を一年ばかり送ったが、その翌年の春、西湖の年中行事の一つになっている水遊びの日がきた。その日、西湖では舟の競争があるので、その見物をかたがけて遊びにくるものが多かった。彭も舟で女を連れて出かけて行った。
風のない暖かな日であった。前からそろそろと漕いできた一艘の舟があったが、その舟の中から声をかける者があった。
「彭君じゃないか」
彭は聞き覚えのある声を聞いて顔をあげた。それは銭塘の友人であった。
「やあ」
「君は、いったい何所を歩いてるのだ、君の家から手紙がきたから、僕はこの間中、君の居所を捜していたのだよ」
その時、舟と舟の小縁こべりがくっつくようになって、彭と友人とは手を握れそうになった。
「それはすまなかったね」
「では手紙を渡すよ」
田中貢太郎
南昌なんしょうに彭徳孚ほうとくふという秀才があった。色の白い面長な顔をした男であったが、ある時、銭塘せんとうにいる友人を訪ねて行って、昭慶寺しょうけいじという寺へ下宿していた。
その彭は、ある日西湖せいこの縁を歩いていた。それは夏の夕方のことで、水の中では葉を捲いていた蓮の葉に涼しい風が吹いて、ぎらぎらする夕陽の光も冷たくなっていた。聖因寺せいいんじの前へ行ったところで、中から若い眼のさめるような女が出てきた。十七八に見える碧あおい着物を着た手足の細ほっそりした女で、一人の老婆が後からきていた。その女の眼はちらと彭の顔へきた。
「あなたは、何所どこからいらっしたのです」
彭が声をかけると女は恥かしそうに顔を赤らめたが、そのままその顔を老婆の方へやって、
「婆や、早く行きましょうよ」
と言ってからむこうのほうへ歩いた。彭は引きずられるように老婆の後から随ついて行った。
すこし行くと女は斜に後ろを振り返って、老婆の横から彭を覗くようにした。女の気配に彭は顔をあげたが、その拍子に女の視線と視線が合った。女はきまり悪そうにあわてて前むこうをむいて歩いた。
女の眼の色に親しみを見出した彭は、非常に気が強くなってそのまま随いて行ったが、女も老婆も不思議に足が早いので、路の曲っている所などでは、ときどき二人の姿を見失いそうになった。
彭はすこしも油断することができなかった。孤山の麓にある水仙廟がすぐ眼の前に見えてきた。もう陽が入って西の空が真赤に夕映えていた。女と老婆は水仙廟の手前から廟に沿うて折れて行った。その二人の顔に夕映の色がうっすらと映っていた。
みるみる女と老婆は水仙廟の後ろへ行ったが、そのまま見えなくなった。彭は女の姿が見えなくなると、小走りに走って廟後へ着くなり、ぴったり走ることを止めて、そのまわりに注意して廻ったが、何所へ行ったのかもう影も見えなかった。
彭はしかたなしに其所そこへ立ち止った。いつの間にか夕映も消えて四辺あたりが微暗うすぐらくなった中に、水仙廟の建物が黒い絵になって見えていた。
「おい、彭君じゃないか」
だしぬけに声をかけるものがあった。彭は吃驚びっくりして我に返った。それは霊隠寺れいいんじへ行っていた友人であった。
「ああ君か」
「君は、いったい此所ここで何をしているのだ」
彭は女を捜しているとも言えなかった。
「散歩に来たところなのだ」
「そうかね、じゃ、いっしょに帰ろうじゃないか」
彭は友人と同時いっしょに帰ってきたが、女のことが諦められないので、翌日は朝から孤山の麓へ行って、彼方此方と探して歩いたがどうしても判らなかった。人を見つけて聞いてみても、何人だれも知っている者がなかった。それでも思い切れないので、その翌日もまたその翌日も、毎日のように孤山の麓へ行って日を暮した。
彭はとうとう病気になって、飯もろくろく喫くわずに寝ているようになった。と、ある夜、扉を開けて入ってきた者があった。彭は何人だれかきたとは思ったが、顔をあげるのも苦しいのでそのままじっとしていた。
「公主からお迎えにあがりました」
眼を開けて見ると、稚児髷ちごまげに結ゆうた女の子が燈籠を持って枕頭まくらもとに立っていた。しかし、彭は相手になるのが面倒であったから、ぐるりと寝返りして壁の方を向いた。
「貴郎あなたが、この間、水仙廟の所でお逢いになりました、公主からのお迎えでございます」
彭は急に体を起した。
「水仙廟で逢った公主というのですか」
「そうでございます、公主から貴郎のお供をしてくるようにという、お使いでございます」
「公主とは、どうした方です」
「いらしてくだされたら、お判りになります」
「では、行ってみましょう」
彭は起きて着物を調ととのえると、女の子は前さきに立って行った。外には月が出て涼しい風が吹いていた。燈籠の灯はその月の光にぼかされて黄いろく見えていた。
彭は生き返ったような軽い気もちになっていた。路は彼方に曲り此方に曲って行った。
「やっとまいりました」
彭はその声に顔をあげて見た。水仙廟の後ろと思われる山の麓に楼閣が簷のきを並べていた。女を尋ねて毎日水仙廟のあたりから孤山の頂にかけて歩いていた彭は、そんな楼閣を見たことがなかったので驚いた。
「公主のいらっしゃる所は、別院でございます、私がまいりますから、そっといらっしてくださいまし」
彭はうなずいてみせた。女の子はすぐ眼の前にあった朱塗の大きな門を入って、玉を敷いてあるような綺麗な路を行った。路の両側には花をつけた草や木が一めんに生えていた。椿のような花の木もあれば、牡丹のような大きな花をつけた草もあった。白い花をつけた高い木には、凌宵花のうぜんかずらのような黄いろな蔓草の花が星の落ちてきてかかったように咲いていた。花の梢から宮殿の簷が見えていた。
路は爪さきあがりにあがっていた。その路をすこし歩いていると、すぐなだらかな路になった。と、洞穴の口のように見える建物の入口がきた。その入口には「水晶城」とした額がかかっていた。建物の周囲には水があって、白や紅の蓮の花が月の光の中の下に夢見るように咲いていた。水に臨んで朱塗の欄干も見えていた。
女の子はその中へ入って行った。彭もそれに随いて行った。其所は窓という窓は皆水晶で、それに青白い月の光が射していた。公主といわれているかの女は欄干に凭もたれて月を観ていた。
「あの方かたを、お供してまいりました」
かの女は此方を見るなりすぐ体を起して寄ってきた。
「好奇ものずきの坊ちゃん、この四五日は、お見えにならないじゃありませんか」
女はにっと笑いながら彭の手に自分の手をかけた。彭はきまりが悪いので、微笑するだけで何も言えなかった。
「すこしお眼にかからない間に、こんなにお痩せになりまして」
女はこう言ってから傍に立っていた女の子の顔を見た。
「あの碧霞漿へきかしょうを一杯持っておいで」
女の子はちょっと頭をさげて次の室へやへ行ったが、すぐ盃を捧げ持ってきた。彭と手をとり合っていた女は、一方の手にそれを取って彭に渡した。それは紺碧の色をした甘い匂いのする物であった。
「これは緑蕚夫人りょくがくふじんから戴いた物でございます」
彭はそれを飲みながら不思議な周囲まわりにその眼を向けた。
「此所は何所でしょう」
「此所は広寒香界こうかんこうかいでございます、あなたのような俗人は、長く此所にいることはできないのです、早くお帰りなさい」
女は冗談に言って笑った。彭はもう何の遠慮もいらなかった。彼はいきなり女を抱きあげて綺麗な帷とばりの垂れている室の中へ入って行った。
已而菌縟流丹、女屡乞休始止。彭と女とはその後で話をした。彭は匂いのある女の体を撫でながら言った。
「貴女は、合徳ごうとくの生れかわりじゃないのですか」
女は艶めかしそうに笑った。
「貴郎は、物に怖れない方だから申しますが、私は水仙王の娘で、荷はすの花の精でございます、貴郎が情の深いことを知りましたので、こうしてお眼にかかることになりましたが、私は舅おじさんの世話になっております、舅さんは非常に物堅い方ですから、もし舅さんに知られると、もうお眼にかかることができません、どうか舅さんに知られないように、夜そっといらして、朝も早く夜が明けない内に帰ってください」
「舅さんは、どうした方です」
「蟹の王ですよ、今この西湖の判官になっております」
朝になって寺の鐘が鳴り出したので、彭は急いで起きて帰ってきたが、それから毎晩のように行って朝早く帰った。
ある朝、二人が寝すごしたところで、女の保姆うばが来た。保姆はそれを見るとその足で判官に知らせに行った。それがためにあわてて起きて帰ろうとしていた彭は、判官の捕卒のために縛られてその前へ引き出された。判官は黒い頭巾ずきんをつけて緑の袍ほうを着ていた。
「曲者をひっ捕えてまいりました」
捕卒の一人は後退しりごみする彭を判官の前へ引き据えた。彭はどんな目にあわされることかと思って生きた心地きもちがしなかった。判官はその容さまをにくにくしそうに見おろしていたが、何を考えたのか急に眼を瞠みはるとともに急いで堂の上からおりてきた。
「貴君あなたは私の恩人だ、これはあいすまんことをした弁解もうしわけがない」
判官は急いで彭を縛った縄を解いたが、彭にはその意味が判らなかった。
「私はいつか貴君に助けられた者だ」
彭は女から舅さんは蟹の王であると言われたことを思いだした。彭はふと気が注ついた。彼はある日、友人と二人で南屏なんびょうへ遊びに行ったが、帰ってくるとすぐ近くで網を曳いている舟があった。ちょうど網があがったところであったから、どんな魚が捕れるだろうと思って、中腰になって網の中を覗いた。網の中にはおおきな甲羅をした蟹が入っていて、それが紫色の鋏をあげて逃げようとでもするように悶掻もがいていた。彼にはこれまで曾かつて一度も見たことのない蟹であった。彼は何かしらそれに神秘を感じたので、放してやろうと思って網舟の傍へ自分の舟を持って行かした。その結果、彭の銭が漁師の手に渡って、漁師の蟹が彭の舟にきた。彭の舟はやがて網舟を離れたが、再び漁師に獲られる危険のない所へくると蟹を水の中に入れてやった。蟹は大きな鋏を前で合わせて人が拱揖れいをするような容さまをして沈んでいった。…………
「さあどうか、おあがりくだされ」
判官が強しいて言うので彭は安心してあがった。
「姪めいの室に人がきているというので、貴君とは知らずに大変無礼をいたした。時に貴君は何方どちらの生れです」
「私は南昌の者で彭徳孚と申します」
「貴君は許婚いいなずけの人でもありますか」
「ありません」
「では、良縁だ、私の姪と結婚して貰いたい」
彭はもとより望むところであった。その席には保姆もいた。判官は保姆に言いつけた。
「あれを呼んでこい」
保姆は公主を連れて入ってきた。女は恥かしそうにして顔をあげなかった。判官の夫人も其所へ入ってきた。
「この方が、わしの恩人じゃ、あれをお願いすることにした」
彭は女と結婚の式をあげて水晶館にいることになった。彭は琴が上手であった。彭が琴を弾ひくと女はいつも傍で歌った。二人はこうした夢のような日を一年ばかり送ったが、その翌年の春、西湖の年中行事の一つになっている水遊びの日がきた。その日、西湖では舟の競争があるので、その見物をかたがけて遊びにくるものが多かった。彭も舟で女を連れて出かけて行った。
風のない暖かな日であった。前からそろそろと漕いできた一艘の舟があったが、その舟の中から声をかける者があった。
「彭君じゃないか」
彭は聞き覚えのある声を聞いて顔をあげた。それは銭塘の友人であった。
「やあ」
「君は、いったい何所を歩いてるのだ、君の家から手紙がきたから、僕はこの間中、君の居所を捜していたのだよ」
その時、舟と舟の小縁こべりがくっつくようになって、彭と友人とは手を握れそうになった。
「それはすまなかったね」
「では手紙を渡すよ」
#PrimordialTheater[超话]#
遠方を追いかける夢が更新しました✨️
人間樹清明四月日私の両親へ ——
遠い夢を追いかける
四月清明の時、
世界は花で満ちている。
あの木、あの片、
枝から散らば、
紙灰によって化化する、
切の想いが涙に化、
雨が心に落ちる。
あの小雨、
目の前にある青山緑の木を水にし、
頭の中の千思万想を熨し、
永遠に褪色しない思いやり...
これは一本の木です。
溝が彼の歳月を斑々とした。
頑固で,峥嵘,黙って黙る。
私は彼の厳しさで疎遠になり、畏敬の念を抱いていた。
星空を見上げるように、
遠くから大河を眺めて、
これが人生の座標だと知っているが、
しかし、彼に近づく勇気がなかった。
私が会うまで、
その強い外見の下の愛——
そんなに深くて静かで、
あんなに柔らかくて暇がない。
彼は我慢した涙、
彼は黙って注目している、
そびえ立つ大きな木です。
潤物無言の愛着。
私は思った、
大きな木はいつもそこにある。
考えたことがない、
時間は流砂のようだ。
37年前、
彼の溘然と倒れた姿、
それは木が突然崩れた。
一生の傷跡が落ちる...
夢の中で、
私は何度も彼に近づいた。
何度も彼の年輪を撫でて、
何度も夕日の下に付き添う。
私は言い尽くせない言葉が全部心に埋まっている。
心の種は長いよ、長いよ、
大きな木にも成長し、古い木にも成長した。
それぞれの葉が風に吹かれて、
みんな同じ叫び声を出すーー
「お父さん!」
私の父です。
これも一本の木です。
枝葉が茂り、花が咲き乱れ、
鳥はみな彼女の枝に生息する。
彼の不募笑より、
彼女はもっと親しくなった。
小鳥が巣に帰る、
いつもひそひそと彼女を呼んで、
いつも言い切れない言葉がある。
鳥はいつも家を出る時がある、
しかし、彼女はいつも心配していた。
彼女は代々の鳥を陰に守った。
私もいるし、私の子供もいる。
私の子供はあのそびえ立つ大きな木を見たことがない。
しかし、彼の心の中では、
この2本の木は同じように暖かくて、とても親しみやすい。
彼は毎回木の下に戻ると、
いつも彼の歌声で、
彼女への愛を歌う;
いつも彼の青春の翼を使って、
その老けた樹冠を撫でる。
いつも翼を広げて、
すべての葉、すべての花を抱きしめて、
彼女にささやく。
最後になったが、
彼女はもう年をとった。
万物のように枯れて栄える、
長年の歳月を忘れてしまった。
しかし、彼女は相変わらず優しいです。
そんなに背が高い、
彼女は鳥の永遠の頼りです。
私たちの永遠の家です...
3年前、
彼女も時間の中で足を止めた。
しかし、私もいつも夢を見ます。
喜びが楽しい時、
悲しい時、
病気が苦しい時、
私も彼女のように、
だんだん年をとった時...
夢の中で、
私は相変わらず彼女の腕の中に停泊している子供だよ。
私は相変わらずひそひそと鼻歌っている:
「お母さん!」
私の母です。
四月の清明の時期、
世界は相変わらず騒がしい。
大きな木々が安らかに立っている。
時間の奥深くで、
静かに背が高くて、
鳥が家に帰るのを待ちわびている。
私たちは子供と大きな木の年輪の下に寄り添って、
清風がゆっくりと葉脈を滑って、
輝かしい露が流れる、
希望に満ちた未来を一つ一つ映し出し、
朝日は錦のようで,ずっと花が咲いている。
#⭐️星海月
遠方を追いかける夢が更新しました✨️
人間樹清明四月日私の両親へ ——
遠い夢を追いかける
四月清明の時、
世界は花で満ちている。
あの木、あの片、
枝から散らば、
紙灰によって化化する、
切の想いが涙に化、
雨が心に落ちる。
あの小雨、
目の前にある青山緑の木を水にし、
頭の中の千思万想を熨し、
永遠に褪色しない思いやり...
これは一本の木です。
溝が彼の歳月を斑々とした。
頑固で,峥嵘,黙って黙る。
私は彼の厳しさで疎遠になり、畏敬の念を抱いていた。
星空を見上げるように、
遠くから大河を眺めて、
これが人生の座標だと知っているが、
しかし、彼に近づく勇気がなかった。
私が会うまで、
その強い外見の下の愛——
そんなに深くて静かで、
あんなに柔らかくて暇がない。
彼は我慢した涙、
彼は黙って注目している、
そびえ立つ大きな木です。
潤物無言の愛着。
私は思った、
大きな木はいつもそこにある。
考えたことがない、
時間は流砂のようだ。
37年前、
彼の溘然と倒れた姿、
それは木が突然崩れた。
一生の傷跡が落ちる...
夢の中で、
私は何度も彼に近づいた。
何度も彼の年輪を撫でて、
何度も夕日の下に付き添う。
私は言い尽くせない言葉が全部心に埋まっている。
心の種は長いよ、長いよ、
大きな木にも成長し、古い木にも成長した。
それぞれの葉が風に吹かれて、
みんな同じ叫び声を出すーー
「お父さん!」
私の父です。
これも一本の木です。
枝葉が茂り、花が咲き乱れ、
鳥はみな彼女の枝に生息する。
彼の不募笑より、
彼女はもっと親しくなった。
小鳥が巣に帰る、
いつもひそひそと彼女を呼んで、
いつも言い切れない言葉がある。
鳥はいつも家を出る時がある、
しかし、彼女はいつも心配していた。
彼女は代々の鳥を陰に守った。
私もいるし、私の子供もいる。
私の子供はあのそびえ立つ大きな木を見たことがない。
しかし、彼の心の中では、
この2本の木は同じように暖かくて、とても親しみやすい。
彼は毎回木の下に戻ると、
いつも彼の歌声で、
彼女への愛を歌う;
いつも彼の青春の翼を使って、
その老けた樹冠を撫でる。
いつも翼を広げて、
すべての葉、すべての花を抱きしめて、
彼女にささやく。
最後になったが、
彼女はもう年をとった。
万物のように枯れて栄える、
長年の歳月を忘れてしまった。
しかし、彼女は相変わらず優しいです。
そんなに背が高い、
彼女は鳥の永遠の頼りです。
私たちの永遠の家です...
3年前、
彼女も時間の中で足を止めた。
しかし、私もいつも夢を見ます。
喜びが楽しい時、
悲しい時、
病気が苦しい時、
私も彼女のように、
だんだん年をとった時...
夢の中で、
私は相変わらず彼女の腕の中に停泊している子供だよ。
私は相変わらずひそひそと鼻歌っている:
「お母さん!」
私の母です。
四月の清明の時期、
世界は相変わらず騒がしい。
大きな木々が安らかに立っている。
時間の奥深くで、
静かに背が高くて、
鳥が家に帰るのを待ちわびている。
私たちは子供と大きな木の年輪の下に寄り添って、
清風がゆっくりと葉脈を滑って、
輝かしい露が流れる、
希望に満ちた未来を一つ一つ映し出し、
朝日は錦のようで,ずっと花が咲いている。
#⭐️星海月
#恋の花咲く百花园# 小狗线clear。好久没吃过这么纯正的年下小狗了,我一直忍不住姨母笑,全程好感度全开,就算被前辈说很可爱,也不会说出乙女名台词,而是回复“只要你愿意看着我用什么词都可以啊!”。你一举一动他都全喜欢的小狗好可爱,真的久违了这种感觉。比起主线的青春故事,后日谈里两个人“因为对方是年上”“因为我是年上”所以必须都逞强,当和真在意女主和男同事说话,女主必须用前辈的身份提示他“只因为我就不去和女性交流,让世界狭窄是错误的,我们保持一点距离吧”,我真的感慨好深,但正是之前发的那句话一个道理,并不是相信彼此就不会感觉到不安,用“怎么样做更好”去否认他当时感觉到的不安是不对的。两个人都适度和异性保持距离了什么小情侣一起磨合磕死我了。
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