雨夜草紙
田中貢太郎
小さくなった雨が庭の無花果いちじくの葉にぼそぼそと云う音をさしていた。静かな光のじっと沈んだ絵のような電燈の下で、油井あぶらい伯爵の遺稿を整理していた山田三造さんぞうは、机の上に積み重ねた新聞雑誌の切抜きりぬきや、原稿紙などに書いたものを、あれ、これ、と眼をとおして、それに朱筆しゅふでを入れていた。当代の名士で恩師であった油井伯爵が死亡すると、政友や同門からの推薦によって、その遺稿を出版することになり、できるなら百日祭までに、伯爵が晩年の持論であった貴族に関する議論だけでも活字にしたいと思って、編纂へんさんに着手してみると、思いのほかに時間がとれて、仕事が進まないのでその当時は徹夜することも珍しくなかった。
一時間も前から眼を通していた二十頁ページに近い菊判の雑誌の切抜がやっと終った。三造は一服するつもりで、朱筆しゅふでを置き、体を左斜ひだりななめにして火鉢ひばちの傍にある巻煙草の袋を執とり、その中から一本抜いてマッチを点つけた。夜よはよほど更ふけていた。さっき便所へ往った時に十二時と思われる時計の音を聞いたが、それから後のちは時間に対する意識は朦朧もうろうとなっていた。ただ時間と空間に支配せられた、頗すこぶる疲労し切った存在が意識せられるに過ぎなかった。
雨の音はもう聞えなかった。彼は二本目の煙草を点けたところで、その煙が円まるい竹輪麩ちくわふを切ったように一つずつ渦を巻いて、それが繋つながりながら飛んで往くのに気が注ついた。彼は不思議な珍らしい物を見つけたと云う軽い驚異の眼でそれを見ながら、ゆっくりゆっくり煙を吐いた。煙はやはり竹輪麩のように渦を巻いて、それが連続しながら天井の方へ昇って往った。そして、その靡なびきがぴったり止んで動かなくなったかと思うと、その煙の色がみるみる濃くなり、それが引締るようになると、ものの輪廓りんかくがすうと出来た。肩の円みと顔が見えて、仙台平せんだいひらの袴はかまを穿はいた男が眼の前に立った。三造はその中古ちゅうぶるになった袴の襞ひだの具合に見覚えがあった。
「どうだ、山田」
と、前に立った人は懐しそうに云って、机の横に胡座あぐらをかくように坐り、
「伯はくの遺稿は、もうだいぶん進んだかね、あれ程有った伯の政友同志は、皆伯を棄すて去った中で、君達数人が、ほんとうに伯のことを思っていてくれたのは、実に感謝の他はない、吾輩も晩年の伯が甚はなはだお気の毒であったから、いつも傍にいてあげた、君達はたびたび伯から、木内きうちの夢を見たよと云われたことがあるだろう、あれが吾輩の傍にいた証拠だ」
三造は膝ひざを直してかしこまっていた。彼はその場合、何の矛盾も感ぜずに、非常な敬虔けいけんな心を持って先輩に対していた。油井伯爵を首領に戴いただいた野党の中の智嚢ちのうと云われた木内種盛きうちたねもりは、微髭うすひげの生えた口元まで、三十年前ぜんとすこしも変らない精悍せいかんな容貌を持っていた。
「しかし、もう、何も往くべき処へ往った、我が党の足痕あしあとへは、もう新しい世界の隻足かたあしが来ている、吾輩の魂も、これから永遠の安静に入いるべき時が来たから、最後の言げんとして、君にまで懺悔ざんげして置きたいことがあってやって来た」
三造は頭をさげた。
「君は、吾輩が至誠しせい病院で斃たおれたことを覚えているだろう」
眼に残っている金盥かなだらいの血、俄然容態が変って危険に陥おちいったと云う通知を得て、あたふたと駈かけつけて往く先輩の一人に跟ついて、至誠病院の病室へ入った三造は、呼吸いきを引きとったばかりの木内の顔に、白いガーゼのかけてあるのを見た。その枕頭まくらもとには死人の吐いた血が金盥の中に冷たく光っていた。
(しまった、しまった、しまった)
感情家の先輩は、両手をひしと握りしめて、その拳こぶしを胸のあたりで上下に揮ふり動かしながら、床をどしどしと踏んだ。そこには至誠堂病院の院長青木寛かんをはじめ、二三人の医師が粛然しゅくぜんとして立っていた。先輩の眼は院長に往った。
(何故なぜ死んだのです、何故死んだのです、木内君は何故死んだのです)
先輩の眼は憎悪に燃えていた。
(急に容態が変じました、いろいろと手を尽してみましたが、どうも残念でした)
院長はすまして云った。その冷ひややかな調子は三造にまで反感をおこさせた。
(残念と云ってしまえばそれまでだが、この男の体をどう思っているのです)
先輩は怒鳴どなりだした。当時閥族ばつぞく政府へ肉薄して、政府をして窘窮きんきゅうの極に陥おとしいれていた野党の中でも、その中堅とせられている某党の智嚢ちのうの死亡は、野党にとっての一大打撃であった。三造は先輩の憤激するのも無理はないと思った。
(実にお気の毒です)
院長はまた冷ひややかに云った。先輩の眼は金盥かなだらいに往った。先輩の熱した頭はやや醒さめかけていた。
(胃腸の病やまいに、こんなに血を吐くことがあるのですか)
(無いにもかぎりません)
(しかしどうもおかしいのですね、これまで木内君は、ちょいちょい胃腸が悪いが、何時いつも五六日位、口養生くちようじょうさえすれば、すぐ癒なおったし、今度も別に大したこともないが、下宿では政友が押しかけて来て煩うるさいから、保養のつもりで入院すると云ってた位だから、こんなことはあらわれないはずだ)
(私もはじめには、たいしたことはないと思っておりましたが、急にこんなになりました、どうもお気の毒です)
そこへ三四人の同志が来たので、その先輩と院長の応対はそれっきりになったが、その後あとでも同志の中では、三造の先輩と同じように木内の死因に疑いを挟んで、院長と交渉した者もあったと云うことを聞いた。また、その野党の総理であった油井伯爵は、関西方面へ旅行中、旅先でそれを聞いて驚いて帰京したが、これまたその死因を疑って、死体を解剖に附ふすると云って口惜くやしがったけれども、結局そのままになってしまった。三造はその当時、その周囲から口ぐちに、
(木内君は毒殺せられた)
と云うことを聞いた。そして、その院長が次第に社会的に栄達えいたつして、男爵を授さずけられた時にも、
(木内を殺した功こうさ)
と、云うようなことを云う者があって、忘れていた過去の記憶を呼び起されたこともあった。……
「あれは、君、僕はあの時、青木のためにガラスの粉末を飲まされたのだ、それを青木に頼んだ者は、三田尻みたじりと山口さ、実に卑怯千万ひきょうせんばんな奴だが、謀はかりごとは見事図に当って、野党の歩調が乱れ、予算の大削減にも逢あわず、内閣も倒壊せずに済んださ、その時から青木は、もう男爵になることになっていた」
三造はまた頭をさげた。
「僕はこの悪漢に対して、すぐ思い知らしてやろうと思ったが、そのままでは復讐の効力が強くないから、時節の来るのを待っていたのだ、が、その時節がとうとうやって来た、君は昨年から本年にかけて、彼奴あいつの家に大きな不幸の来たのを知ってるだろう、それさ、彼奴は思いのままに男爵になり、金にも名誉にも不足が無くなったので、このうえは、二人の男の子を立派な人間にしたいと思いだした、彼奴が時どき己じぶんの室へやで、細君さいくんや親しい朋友ともだちに向って、
(あの二人さえ、一人前の人間になってくれるなら、もう何も遺憾いかんなことはない)
などと云っているのを見て、僕は、
(今に見ろ、一人前の人間になりかけたところで、復讐してやるぞ)
と呟つぶやいたことがあったさ、それで、二人とも大学を出たので、彼奴は知人の間を運動して、兄の方の小供を満伊みつい商会へ入れ、弟は医科だから、己の経営している病院の副院長と云う事にしたのだ、
復讐の舞台が出来たのだよ、
そこで昨年になって、サンフランシスコの支店長となった兄の子の方から手をくだしたのだ、爺親おやじの血を受けて、意志の強い比較的厳格な奴を、先まずオペラへ引きだして、その座の人気役者で腕の凄い女に関係さして、その手でうんと金を絞らしたら、奴やっこさん苦しくなり、部下となっている遊朋友あそびともだちに勧められて、投機に手を出したところが、みるみる六十万円と云う穴を開けてしまったさ、それで、一方女の方では、年少とししたの情夫があって、奴さんから絞り執とった金を、その情夫と媾曳あいびきの費用にして遊んでいたのを、奴さんうすうす知って、煩悶はんもんしているところへ、投機の一件が本店の方へ知れて、本店から急に呼び返されたのでいよいよ困り、このうえはなんとか身の所置をしなくてはならないと思って、考え考え、ふらふらと彼かの女の許もとへ、足の向くままに往ってみたさ、ホテルの三階になった彼かの女の室へやへは、年少とししたの情夫が来ていて、微暗うすぐらい電燈の下で話していたが、奴さんは入口へ立って扉ドアを叩たたこうとすると、不思議に開あいているので、そのまま静しずかに入って往ったのだ、中の二人は睦むつまじそうに話しているところへ、不意の闖入者ちんにゅうしゃがあったので、びっくりして離れ離れになって起たちあがったが、入って来た者が奴さんだと知ると、平生へいぜいからばかにしきっている女は、
(犬のようにそっと入って来るなんて、貴郎あなたはよっぽど卑怯者ひきょうものですわね)
と云うと、奴さんしかたなく笑いながら、
(そう云ってくれるな、開あいていたから入ったまでだ、たくらんでそっと入ったものじゃないよ)
と、穏かに云ったものの、うすうす知っている情夫の青年と睦じそうにしているところを見せつけられたので、頭の中は穏かでなかった、
(だから日本人は嫌いと云うのですよ、嘘つき、今私が締めた扉ドアが、どうして開あいてるのです、なにか私の秘密でも探ろうと思って、合鍵を持って来て、それで開けたのでしょう、出て往ってください、一刻も置くことはなりません)
と、女は情夫との媾曳あいびきの場所を見られた腹立ちまぎれに怒鳴どなりだした、すると奴やっこさんむらむらとして来た。
(よし、お前のような恩知らずの畜生ちくしょうのところには、おれと云ってもおってやらないさ、帰る)
と云うと、
(帰ってくださいとも、犬のような奴は、一刻も置くことは出来ません、帰ってください、出てください)
と、女は奴さんに向って進んで来て、突き飛ばしそうにする、奴さんも肱ひじを張って女を迎えようとしたが、思い返して室へやの外へ出た、女は追って来て扉ドアをぴしりと締めたさ、室へやの出口には、蒼白あおじろい瓦斯燈がすとうの光があって、その光の中に僕の顔が浮き出ていたが、奴さんは僕の顔を知らないから、
(変な顔が見えたぞ、頭の具合かな)
と、眼をつぶって頭を一つ揮ふったさ、しかし、僕はまだ顔を出していたから、奴さんまた僕の顔を見たが、もうその時は、頭の具合かなどと、己じぶんの頭を疑ってみるような反省力は無くなっている、奴さんは恐れて、螺旋形らせんけいの階段を走りおりて街路とおりへでたのだ、そして、奴さんの意識は朦朧もうろうとなってしまったさ、奴さんは人道じんどうも車道しゃどうも区別なしに歩いていると、荷物かもつ自動車がやって来たさ、奴さんは腹部を引かれて大腸が露出したが、それでも二日ばかり生きていたのだ、君は昨年の九月の新聞に、満伊商会の支店長が過あやまって自動車に轢ひかれて、死亡したと云う記事の載っていたのを読んだことがあるだろう、あれさ」
三造は頷うなずいてみせた。
田中貢太郎
小さくなった雨が庭の無花果いちじくの葉にぼそぼそと云う音をさしていた。静かな光のじっと沈んだ絵のような電燈の下で、油井あぶらい伯爵の遺稿を整理していた山田三造さんぞうは、机の上に積み重ねた新聞雑誌の切抜きりぬきや、原稿紙などに書いたものを、あれ、これ、と眼をとおして、それに朱筆しゅふでを入れていた。当代の名士で恩師であった油井伯爵が死亡すると、政友や同門からの推薦によって、その遺稿を出版することになり、できるなら百日祭までに、伯爵が晩年の持論であった貴族に関する議論だけでも活字にしたいと思って、編纂へんさんに着手してみると、思いのほかに時間がとれて、仕事が進まないのでその当時は徹夜することも珍しくなかった。
一時間も前から眼を通していた二十頁ページに近い菊判の雑誌の切抜がやっと終った。三造は一服するつもりで、朱筆しゅふでを置き、体を左斜ひだりななめにして火鉢ひばちの傍にある巻煙草の袋を執とり、その中から一本抜いてマッチを点つけた。夜よはよほど更ふけていた。さっき便所へ往った時に十二時と思われる時計の音を聞いたが、それから後のちは時間に対する意識は朦朧もうろうとなっていた。ただ時間と空間に支配せられた、頗すこぶる疲労し切った存在が意識せられるに過ぎなかった。
雨の音はもう聞えなかった。彼は二本目の煙草を点けたところで、その煙が円まるい竹輪麩ちくわふを切ったように一つずつ渦を巻いて、それが繋つながりながら飛んで往くのに気が注ついた。彼は不思議な珍らしい物を見つけたと云う軽い驚異の眼でそれを見ながら、ゆっくりゆっくり煙を吐いた。煙はやはり竹輪麩のように渦を巻いて、それが連続しながら天井の方へ昇って往った。そして、その靡なびきがぴったり止んで動かなくなったかと思うと、その煙の色がみるみる濃くなり、それが引締るようになると、ものの輪廓りんかくがすうと出来た。肩の円みと顔が見えて、仙台平せんだいひらの袴はかまを穿はいた男が眼の前に立った。三造はその中古ちゅうぶるになった袴の襞ひだの具合に見覚えがあった。
「どうだ、山田」
と、前に立った人は懐しそうに云って、机の横に胡座あぐらをかくように坐り、
「伯はくの遺稿は、もうだいぶん進んだかね、あれ程有った伯の政友同志は、皆伯を棄すて去った中で、君達数人が、ほんとうに伯のことを思っていてくれたのは、実に感謝の他はない、吾輩も晩年の伯が甚はなはだお気の毒であったから、いつも傍にいてあげた、君達はたびたび伯から、木内きうちの夢を見たよと云われたことがあるだろう、あれが吾輩の傍にいた証拠だ」
三造は膝ひざを直してかしこまっていた。彼はその場合、何の矛盾も感ぜずに、非常な敬虔けいけんな心を持って先輩に対していた。油井伯爵を首領に戴いただいた野党の中の智嚢ちのうと云われた木内種盛きうちたねもりは、微髭うすひげの生えた口元まで、三十年前ぜんとすこしも変らない精悍せいかんな容貌を持っていた。
「しかし、もう、何も往くべき処へ往った、我が党の足痕あしあとへは、もう新しい世界の隻足かたあしが来ている、吾輩の魂も、これから永遠の安静に入いるべき時が来たから、最後の言げんとして、君にまで懺悔ざんげして置きたいことがあってやって来た」
三造は頭をさげた。
「君は、吾輩が至誠しせい病院で斃たおれたことを覚えているだろう」
眼に残っている金盥かなだらいの血、俄然容態が変って危険に陥おちいったと云う通知を得て、あたふたと駈かけつけて往く先輩の一人に跟ついて、至誠病院の病室へ入った三造は、呼吸いきを引きとったばかりの木内の顔に、白いガーゼのかけてあるのを見た。その枕頭まくらもとには死人の吐いた血が金盥の中に冷たく光っていた。
(しまった、しまった、しまった)
感情家の先輩は、両手をひしと握りしめて、その拳こぶしを胸のあたりで上下に揮ふり動かしながら、床をどしどしと踏んだ。そこには至誠堂病院の院長青木寛かんをはじめ、二三人の医師が粛然しゅくぜんとして立っていた。先輩の眼は院長に往った。
(何故なぜ死んだのです、何故死んだのです、木内君は何故死んだのです)
先輩の眼は憎悪に燃えていた。
(急に容態が変じました、いろいろと手を尽してみましたが、どうも残念でした)
院長はすまして云った。その冷ひややかな調子は三造にまで反感をおこさせた。
(残念と云ってしまえばそれまでだが、この男の体をどう思っているのです)
先輩は怒鳴どなりだした。当時閥族ばつぞく政府へ肉薄して、政府をして窘窮きんきゅうの極に陥おとしいれていた野党の中でも、その中堅とせられている某党の智嚢ちのうの死亡は、野党にとっての一大打撃であった。三造は先輩の憤激するのも無理はないと思った。
(実にお気の毒です)
院長はまた冷ひややかに云った。先輩の眼は金盥かなだらいに往った。先輩の熱した頭はやや醒さめかけていた。
(胃腸の病やまいに、こんなに血を吐くことがあるのですか)
(無いにもかぎりません)
(しかしどうもおかしいのですね、これまで木内君は、ちょいちょい胃腸が悪いが、何時いつも五六日位、口養生くちようじょうさえすれば、すぐ癒なおったし、今度も別に大したこともないが、下宿では政友が押しかけて来て煩うるさいから、保養のつもりで入院すると云ってた位だから、こんなことはあらわれないはずだ)
(私もはじめには、たいしたことはないと思っておりましたが、急にこんなになりました、どうもお気の毒です)
そこへ三四人の同志が来たので、その先輩と院長の応対はそれっきりになったが、その後あとでも同志の中では、三造の先輩と同じように木内の死因に疑いを挟んで、院長と交渉した者もあったと云うことを聞いた。また、その野党の総理であった油井伯爵は、関西方面へ旅行中、旅先でそれを聞いて驚いて帰京したが、これまたその死因を疑って、死体を解剖に附ふすると云って口惜くやしがったけれども、結局そのままになってしまった。三造はその当時、その周囲から口ぐちに、
(木内君は毒殺せられた)
と云うことを聞いた。そして、その院長が次第に社会的に栄達えいたつして、男爵を授さずけられた時にも、
(木内を殺した功こうさ)
と、云うようなことを云う者があって、忘れていた過去の記憶を呼び起されたこともあった。……
「あれは、君、僕はあの時、青木のためにガラスの粉末を飲まされたのだ、それを青木に頼んだ者は、三田尻みたじりと山口さ、実に卑怯千万ひきょうせんばんな奴だが、謀はかりごとは見事図に当って、野党の歩調が乱れ、予算の大削減にも逢あわず、内閣も倒壊せずに済んださ、その時から青木は、もう男爵になることになっていた」
三造はまた頭をさげた。
「僕はこの悪漢に対して、すぐ思い知らしてやろうと思ったが、そのままでは復讐の効力が強くないから、時節の来るのを待っていたのだ、が、その時節がとうとうやって来た、君は昨年から本年にかけて、彼奴あいつの家に大きな不幸の来たのを知ってるだろう、それさ、彼奴は思いのままに男爵になり、金にも名誉にも不足が無くなったので、このうえは、二人の男の子を立派な人間にしたいと思いだした、彼奴が時どき己じぶんの室へやで、細君さいくんや親しい朋友ともだちに向って、
(あの二人さえ、一人前の人間になってくれるなら、もう何も遺憾いかんなことはない)
などと云っているのを見て、僕は、
(今に見ろ、一人前の人間になりかけたところで、復讐してやるぞ)
と呟つぶやいたことがあったさ、それで、二人とも大学を出たので、彼奴は知人の間を運動して、兄の方の小供を満伊みつい商会へ入れ、弟は医科だから、己の経営している病院の副院長と云う事にしたのだ、
復讐の舞台が出来たのだよ、
そこで昨年になって、サンフランシスコの支店長となった兄の子の方から手をくだしたのだ、爺親おやじの血を受けて、意志の強い比較的厳格な奴を、先まずオペラへ引きだして、その座の人気役者で腕の凄い女に関係さして、その手でうんと金を絞らしたら、奴やっこさん苦しくなり、部下となっている遊朋友あそびともだちに勧められて、投機に手を出したところが、みるみる六十万円と云う穴を開けてしまったさ、それで、一方女の方では、年少とししたの情夫があって、奴さんから絞り執とった金を、その情夫と媾曳あいびきの費用にして遊んでいたのを、奴さんうすうす知って、煩悶はんもんしているところへ、投機の一件が本店の方へ知れて、本店から急に呼び返されたのでいよいよ困り、このうえはなんとか身の所置をしなくてはならないと思って、考え考え、ふらふらと彼かの女の許もとへ、足の向くままに往ってみたさ、ホテルの三階になった彼かの女の室へやへは、年少とししたの情夫が来ていて、微暗うすぐらい電燈の下で話していたが、奴さんは入口へ立って扉ドアを叩たたこうとすると、不思議に開あいているので、そのまま静しずかに入って往ったのだ、中の二人は睦むつまじそうに話しているところへ、不意の闖入者ちんにゅうしゃがあったので、びっくりして離れ離れになって起たちあがったが、入って来た者が奴さんだと知ると、平生へいぜいからばかにしきっている女は、
(犬のようにそっと入って来るなんて、貴郎あなたはよっぽど卑怯者ひきょうものですわね)
と云うと、奴さんしかたなく笑いながら、
(そう云ってくれるな、開あいていたから入ったまでだ、たくらんでそっと入ったものじゃないよ)
と、穏かに云ったものの、うすうす知っている情夫の青年と睦じそうにしているところを見せつけられたので、頭の中は穏かでなかった、
(だから日本人は嫌いと云うのですよ、嘘つき、今私が締めた扉ドアが、どうして開あいてるのです、なにか私の秘密でも探ろうと思って、合鍵を持って来て、それで開けたのでしょう、出て往ってください、一刻も置くことはなりません)
と、女は情夫との媾曳あいびきの場所を見られた腹立ちまぎれに怒鳴どなりだした、すると奴やっこさんむらむらとして来た。
(よし、お前のような恩知らずの畜生ちくしょうのところには、おれと云ってもおってやらないさ、帰る)
と云うと、
(帰ってくださいとも、犬のような奴は、一刻も置くことは出来ません、帰ってください、出てください)
と、女は奴さんに向って進んで来て、突き飛ばしそうにする、奴さんも肱ひじを張って女を迎えようとしたが、思い返して室へやの外へ出た、女は追って来て扉ドアをぴしりと締めたさ、室へやの出口には、蒼白あおじろい瓦斯燈がすとうの光があって、その光の中に僕の顔が浮き出ていたが、奴さんは僕の顔を知らないから、
(変な顔が見えたぞ、頭の具合かな)
と、眼をつぶって頭を一つ揮ふったさ、しかし、僕はまだ顔を出していたから、奴さんまた僕の顔を見たが、もうその時は、頭の具合かなどと、己じぶんの頭を疑ってみるような反省力は無くなっている、奴さんは恐れて、螺旋形らせんけいの階段を走りおりて街路とおりへでたのだ、そして、奴さんの意識は朦朧もうろうとなってしまったさ、奴さんは人道じんどうも車道しゃどうも区別なしに歩いていると、荷物かもつ自動車がやって来たさ、奴さんは腹部を引かれて大腸が露出したが、それでも二日ばかり生きていたのだ、君は昨年の九月の新聞に、満伊商会の支店長が過あやまって自動車に轢ひかれて、死亡したと云う記事の載っていたのを読んだことがあるだろう、あれさ」
三造は頷うなずいてみせた。
#日语##轻小说##欢迎来到实力至上主义的教室#
「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編11」を読みました。今回は新たな伏線と綾小路のゲーム無双っぷりを楽しみつつ箸休めの巻になると思ったら、後半はしっかりと濃い内容でしたね。1巻たりとも読み飛ばせない、これが「よう実」です!
というわけで、今回もネタバレ注意です!
さて、まず南雲生徒会長ですが、どうやらあれで決着らしいですね。彼が自身もそう評したように、私もちょっと「黒子のバスケ」の氷室を思い出しました。そしてまるで予言者のようにその南雲会長を伝言役に使って、天沢の自棄を止めたシーンは、作者にうまく誘導されたせいで、てっきり校外の誰への伝言だと思ったら、まさかすぐさまに回収されるとは鳥肌でしたね。
次に坂柳と龍園の賭けから、坂柳も我々読者同様、綾小路の計画は「4クラスの四つ巴」と想定していたことがわかりました。綾小路自身もどんな計画かは明言されなかったら、「計画が予定にない問題で強制変更されそう」なことを仄めかしていました。そこからさらに綾小路が敗者の去った空クラスに移籍してバランスを取ることまで坂柳が考えて、明文化したことから、むしろ今後違う展開になりそうで、わくわくさせられました!
そしてそして、綾小路がいよいよ(たぶん)次の巻で「軽井沢に関する問題を処理する」そうです!「当初の予定通り、粛々と処理を進めるだけ」だそうです!その後すぐ、今回病欠で不在の一之瀬の名前を出して「軌道の修正が必要になるかもしれない」と考えたり、堀北と「世間話」をしたりーーいやこれが箸休めとか、とんだ勘違いでしたね!
さらにはさり気なく、「よう実」の黒子ごと山村に関するエピソードも地味に目から鱗でした。くじで神室が退学になったことで、自身が予想した以上にダメージを受けた坂柳のかたわらで、くじで生き残った山村にもあんな想いがあったなんて、言われてもみれた確かにと頷いたけど、ホント盲点でした。こういうとこがどこよりも作者さんの衣笠彰梧先生の実力が窺えますよね!
最後に、あとがきで首のヘルニアに悩まされ、次巻が遅くなるかもしれないと苦戦している衣笠先生には、私も腰のヘルニアを抱えている身として「決して無理をなさらず、ちゃんと治療を受けつつ、自分のペースで「よう実」を含めた仕事に取り組んでください」とお伝えしたいと思います!いつになっても構わないので、「流星ワールドアクター」の続編や他の新作を期待しておりますぞ!
「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編11」を読みました。今回は新たな伏線と綾小路のゲーム無双っぷりを楽しみつつ箸休めの巻になると思ったら、後半はしっかりと濃い内容でしたね。1巻たりとも読み飛ばせない、これが「よう実」です!
というわけで、今回もネタバレ注意です!
さて、まず南雲生徒会長ですが、どうやらあれで決着らしいですね。彼が自身もそう評したように、私もちょっと「黒子のバスケ」の氷室を思い出しました。そしてまるで予言者のようにその南雲会長を伝言役に使って、天沢の自棄を止めたシーンは、作者にうまく誘導されたせいで、てっきり校外の誰への伝言だと思ったら、まさかすぐさまに回収されるとは鳥肌でしたね。
次に坂柳と龍園の賭けから、坂柳も我々読者同様、綾小路の計画は「4クラスの四つ巴」と想定していたことがわかりました。綾小路自身もどんな計画かは明言されなかったら、「計画が予定にない問題で強制変更されそう」なことを仄めかしていました。そこからさらに綾小路が敗者の去った空クラスに移籍してバランスを取ることまで坂柳が考えて、明文化したことから、むしろ今後違う展開になりそうで、わくわくさせられました!
そしてそして、綾小路がいよいよ(たぶん)次の巻で「軽井沢に関する問題を処理する」そうです!「当初の予定通り、粛々と処理を進めるだけ」だそうです!その後すぐ、今回病欠で不在の一之瀬の名前を出して「軌道の修正が必要になるかもしれない」と考えたり、堀北と「世間話」をしたりーーいやこれが箸休めとか、とんだ勘違いでしたね!
さらにはさり気なく、「よう実」の黒子ごと山村に関するエピソードも地味に目から鱗でした。くじで神室が退学になったことで、自身が予想した以上にダメージを受けた坂柳のかたわらで、くじで生き残った山村にもあんな想いがあったなんて、言われてもみれた確かにと頷いたけど、ホント盲点でした。こういうとこがどこよりも作者さんの衣笠彰梧先生の実力が窺えますよね!
最後に、あとがきで首のヘルニアに悩まされ、次巻が遅くなるかもしれないと苦戦している衣笠先生には、私も腰のヘルニアを抱えている身として「決して無理をなさらず、ちゃんと治療を受けつつ、自分のペースで「よう実」を含めた仕事に取り組んでください」とお伝えしたいと思います!いつになっても構わないので、「流星ワールドアクター」の続編や他の新作を期待しておりますぞ!
#健康要有文化素養 & 健康要有哲學頭腦#
特集
ありが糖!
スイーツ 02
新感覚登場!
スイーツなグミ
食感が楽しいグミの人気が高まっているようです。
今回は、全国の果実を使ったグミや
家庭でできる簡単なグミのつくり方を紹介します。
今週の見どころ
食感が楽しい噛むお菓子「グミ」って何?
47都道府県すべてそろった国産果実グミ
果実を使ったグミをつくってみよう!
食感が楽しい噛むお菓子「グミ」って何?
お菓子「グミ」
グミは1920年代からドイツで作られてきたお菓子で、その主な材料はゼラチンです。ゼラチンは動物の骨や皮からつくられるたんぱく質の一種でコラーゲンを多く含んでおり、歯応えのある独特の食感を生み出します。
同じくゼラチンを使ったお菓子にはゼリーがありますが、グミとゼリーでは含まれている水分の量が違います。ゼリーだと通常、ゼラチン5グラムに水250ミリリットルを加えますが、グミの水分量はその3分の1以下。ゼラチンに対する水分量が少ないため、ゼリーよりも硬くて弾力のある噛み応えに仕上がるのです。
監修:近藤幸子さん(料理研究家、管理栄養士)
47都道府県すべてそろった国産果実グミ
JA全農(全国農業協同組合連合会)が展開する商品ブランド「ニッポンエール」は、「日本全国47都道府県から届けられる日本産のたべものに、そしてにっぽんに、ここからエールをおくろう。」がコンセプト。一般的な食品だけでなく飲料やお菓子のラインナップも充実しています。お菓子の中でも最近人気なのが「国産果実グミ」。全国各地の様々な果実を手軽に味わえると好評です。
47都道府県制覇!国産果実グミ
開発者に聞いた! 国産果実グミへのこだわり
お話を聞いた方々 JA全農(全国農業協同組合連合会)営業開発部MD企画課 山田晋也さん 中島月乃さん
グミを発売することになったきっかけは?
山田晋也さん(以下、山田)ニッポンエールのコンセプトでもある「47都道府県」がそろうお菓子をつくる、ということを前提にグミを選びました。キャンディやガム、クッキーといった他のお菓子と比べて、グミの市場だけが伸びていたのも一因です。2021年9月にグループ会社の全国農協食品(株)を販売者として、まず21都道県、28種を発売しました。現在は47都道府県の特産を使った味を販売しています。
使っている果実はどのようなものですか。
山田知名度のある品種だけでなく、あまり知られていないものも取り上げています。歴史の浅い新品種や、一般的には知名度の低い特産の果実などです。一般流通に向かない不揃いの果実なども無駄にせず使うようにもしています。
入手に苦労した果実にはどんなものがありますか。
中島月乃さん47都道府県の最後に発売した、滋賀県のいちご「みおしずく」です。これは2022年から栽培が始まったいちごの新品種で、わずかな生産者しかつくっていませんでしたが、JA全農しがと連携して果実を手配することができました。
国産果実グミへの思いを教えてください。
山田グミを通して、果物をもっと知ってほしい、ということを強く思っています。とくに若年層は果物離れしているといわれていますから、このグミがきっかけとなって果物をもっと食べていただけるようになったらうれしいです。
8製品をピックアップ!
【北海道産】和ハッカ グミ
【北海道産】和ハッカ グミ
北海道紋別郡滝上町の「和ハッカ(日本ハッカ)」を使用。ペパーミントのような洋種ハッカに比べ、メントール成分が多いのが特徴。爽やかな香りと清涼感を楽しめる。
【北海道産】和ハッカ グミ
【秋田県産】北限の桃 グミ
【秋田県産】北限の桃 グミ
秋田県鹿角市で収穫された「かづの北限の桃」のジュースを使用。全国でも出荷する時期が一番遅いブランド桃で、豊かな香りとジューシーな甘さを味わえる。
【秋田県産】北限の桃 グミ
【富山県産】入善ジャンボ西瓜 グミ
【富山県産】入善ジャンボ西瓜 グミ
富山県入善町の特産で、重さが15から25キログラムもあるラグビーボールのような形の「入善ジャンボ西瓜」の果汁を使用。濃厚な甘さで上品な香りが広がる。
【富山県産】入善ジャンボ西瓜 グミ
【東京都産】東京ゴールドキウイ グミ
【東京都産】東京ゴールドキウイ グミ
東京都小平市で発見された、鮮やかな黄色い果肉が特徴のキウイフルーツの品種「東京ゴールド」のピューレを使用。やさしい酸味とともに豊かな甘みを感じられる。
【東京都産】東京ゴールドキウイ グミ
【長野県産】シャインマスカット グミ
【長野県産】シャインマスカット グミ
長野県産「シャインマスカット」の果汁を使用。種がなく皮ごと食べられる果皮を持つぶどうで、同県は全国でも有数の生産地。特有の濃厚な甘みと爽やかな香りを楽しめる。
【長野県産】シャインマスカット グミ
【滋賀県産】みおしずく苺 グミ
【滋賀県産】みおしずく苺 グミ
2022年に生産が開始された新品種で、滋賀県初のオリジナルいちご「みおしずく」のジャムを使用。適度な酸味と爽やかな甘みが広がる。
【滋賀県産】みおしずく苺 グミ
【山口県産】ゆめほっぺ® グミ
【山口県産】ゆめほっぺ® グミ
山口県特産「ゆめほっぺ(せとみ)」の果汁を使用。清見と吉浦ポンカンを交配した同県オリジナルの柑橘類。中袋が薄くて食べやすく、濃い甘みとやさしい酸味を味わえる。
【山口県産】ゆめほっぺ® グミ
【熊本県産】ハニーローザ グミ
【熊本県産】ハニーローザ グミ
熊本県産「ハニーローザ」のピューレを使用。毎年6月上旬から中旬のわずか10日間程度しか収穫できない希少な品種。甘みが強くほのかな酸味も楽しめる。
【熊本県産】ハニーローザ グミ
column
果実を使ったグミをつくってみよう!
果実を使ったグミ
※黄色はみかんジュースでつくったグミ。赤色はカキ氷用のいちごシロップ、紫色はカキ氷用のぶどうシロップでつくったグミです。
果物の味を楽しめるグミは家庭でもつくれます。市販の果実飲料や、果汁入りかき氷用シロップを使うと簡単。今回はみかんジュースと、カキ氷用いちごシロップを使ったつくり方をご紹介します。ひと口サイズに仕上げるには、シリコン製のチョコレート型を使用すると便利です。
レシピ&料理 近藤幸子さん 料理研究家、管理栄養士
果実飲料でつくる場合
果実飲料だけでは甘さが足りないので、まず砂糖を加えて煮詰め、シロップにするのがポイントです。
【材料(つくりやすい分量)】
みかんジュース… 150ミリリットル
砂糖… 大さじ2.5
粉ゼラチン… 5グラム
みかんジュースの他にも、りんごやぶどうなどいろんなジュースで試してみてください
【つくり方】
1 小鍋にみかんジュースと砂糖を入れる
小鍋にみかんジュースと砂糖を入れて弱火にかける。半分の量になるまで20分ほどスプーンで混ぜながら煮詰める。
2 耐熱ボウルに粉ゼラチンを振り入れる
耐熱ボウルに1 を入れてから、粉ゼラチンを振り入れる。軽く混ぜて5分ほど置く。
3 ラップをふんわりとかけ、電子レンジ加熱
ラップをふんわりとかけ、電子レンジ(600ワット)で1分加熱する。軽く沸騰し始めるくらいが目安。
POINT ラップを使い泡を取るPOINT
ラップを外すとシロップの表面に細かい泡が出ているはず。このままではできあがりの色が濁ってしまうため、先ほど外したラップを使い、シロップの表面に付けて手前に引くと一気に泡が取れる。
4 スプーンでシリコン型に流し込む
3をよく混ぜてから、スプーンでシリコン型に流し込む。
5 冷蔵庫に入れ冷やす
粗熱がとれたら冷蔵庫に入れ、1時間ほど冷やして固める。
6 シリコン型から取り出す
シリコン型から取り出してできあがり。
果汁入りシロップでつくる場合
カキ氷用シロップを使ってつくります。シロップの場合は、レモン果汁を加え、甘さを少し抑えるのがポイント。いちごシロップの場合、レモン果汁により発色もよくなります。
【材料(つくりやすい分量)】
カキ氷用のいちごシロップ… 大さじ3
レモン果汁(市販のもの)… 小さじ1
水… 大さじ2
粉ゼラチン… 5グラム
【つくり方】
耐熱ボウルにいちごシロップ、レモン果汁、水を入れる
耐熱ボウルにいちごシロップ、レモン果汁、水を入れる。これらをよく混ぜたあとに粉ゼラチンを振り入れる。再び軽く混ぜて5分ほど置く。
2
「果実飲料でつくる場合」の 3以降と同じ手順でつくってできあがり。
特集
ありが糖!
スイーツ 02
新感覚登場!
スイーツなグミ
食感が楽しいグミの人気が高まっているようです。
今回は、全国の果実を使ったグミや
家庭でできる簡単なグミのつくり方を紹介します。
今週の見どころ
食感が楽しい噛むお菓子「グミ」って何?
47都道府県すべてそろった国産果実グミ
果実を使ったグミをつくってみよう!
食感が楽しい噛むお菓子「グミ」って何?
お菓子「グミ」
グミは1920年代からドイツで作られてきたお菓子で、その主な材料はゼラチンです。ゼラチンは動物の骨や皮からつくられるたんぱく質の一種でコラーゲンを多く含んでおり、歯応えのある独特の食感を生み出します。
同じくゼラチンを使ったお菓子にはゼリーがありますが、グミとゼリーでは含まれている水分の量が違います。ゼリーだと通常、ゼラチン5グラムに水250ミリリットルを加えますが、グミの水分量はその3分の1以下。ゼラチンに対する水分量が少ないため、ゼリーよりも硬くて弾力のある噛み応えに仕上がるのです。
監修:近藤幸子さん(料理研究家、管理栄養士)
47都道府県すべてそろった国産果実グミ
JA全農(全国農業協同組合連合会)が展開する商品ブランド「ニッポンエール」は、「日本全国47都道府県から届けられる日本産のたべものに、そしてにっぽんに、ここからエールをおくろう。」がコンセプト。一般的な食品だけでなく飲料やお菓子のラインナップも充実しています。お菓子の中でも最近人気なのが「国産果実グミ」。全国各地の様々な果実を手軽に味わえると好評です。
47都道府県制覇!国産果実グミ
開発者に聞いた! 国産果実グミへのこだわり
お話を聞いた方々 JA全農(全国農業協同組合連合会)営業開発部MD企画課 山田晋也さん 中島月乃さん
グミを発売することになったきっかけは?
山田晋也さん(以下、山田)ニッポンエールのコンセプトでもある「47都道府県」がそろうお菓子をつくる、ということを前提にグミを選びました。キャンディやガム、クッキーといった他のお菓子と比べて、グミの市場だけが伸びていたのも一因です。2021年9月にグループ会社の全国農協食品(株)を販売者として、まず21都道県、28種を発売しました。現在は47都道府県の特産を使った味を販売しています。
使っている果実はどのようなものですか。
山田知名度のある品種だけでなく、あまり知られていないものも取り上げています。歴史の浅い新品種や、一般的には知名度の低い特産の果実などです。一般流通に向かない不揃いの果実なども無駄にせず使うようにもしています。
入手に苦労した果実にはどんなものがありますか。
中島月乃さん47都道府県の最後に発売した、滋賀県のいちご「みおしずく」です。これは2022年から栽培が始まったいちごの新品種で、わずかな生産者しかつくっていませんでしたが、JA全農しがと連携して果実を手配することができました。
国産果実グミへの思いを教えてください。
山田グミを通して、果物をもっと知ってほしい、ということを強く思っています。とくに若年層は果物離れしているといわれていますから、このグミがきっかけとなって果物をもっと食べていただけるようになったらうれしいです。
8製品をピックアップ!
【北海道産】和ハッカ グミ
【北海道産】和ハッカ グミ
北海道紋別郡滝上町の「和ハッカ(日本ハッカ)」を使用。ペパーミントのような洋種ハッカに比べ、メントール成分が多いのが特徴。爽やかな香りと清涼感を楽しめる。
【北海道産】和ハッカ グミ
【秋田県産】北限の桃 グミ
【秋田県産】北限の桃 グミ
秋田県鹿角市で収穫された「かづの北限の桃」のジュースを使用。全国でも出荷する時期が一番遅いブランド桃で、豊かな香りとジューシーな甘さを味わえる。
【秋田県産】北限の桃 グミ
【富山県産】入善ジャンボ西瓜 グミ
【富山県産】入善ジャンボ西瓜 グミ
富山県入善町の特産で、重さが15から25キログラムもあるラグビーボールのような形の「入善ジャンボ西瓜」の果汁を使用。濃厚な甘さで上品な香りが広がる。
【富山県産】入善ジャンボ西瓜 グミ
【東京都産】東京ゴールドキウイ グミ
【東京都産】東京ゴールドキウイ グミ
東京都小平市で発見された、鮮やかな黄色い果肉が特徴のキウイフルーツの品種「東京ゴールド」のピューレを使用。やさしい酸味とともに豊かな甘みを感じられる。
【東京都産】東京ゴールドキウイ グミ
【長野県産】シャインマスカット グミ
【長野県産】シャインマスカット グミ
長野県産「シャインマスカット」の果汁を使用。種がなく皮ごと食べられる果皮を持つぶどうで、同県は全国でも有数の生産地。特有の濃厚な甘みと爽やかな香りを楽しめる。
【長野県産】シャインマスカット グミ
【滋賀県産】みおしずく苺 グミ
【滋賀県産】みおしずく苺 グミ
2022年に生産が開始された新品種で、滋賀県初のオリジナルいちご「みおしずく」のジャムを使用。適度な酸味と爽やかな甘みが広がる。
【滋賀県産】みおしずく苺 グミ
【山口県産】ゆめほっぺ® グミ
【山口県産】ゆめほっぺ® グミ
山口県特産「ゆめほっぺ(せとみ)」の果汁を使用。清見と吉浦ポンカンを交配した同県オリジナルの柑橘類。中袋が薄くて食べやすく、濃い甘みとやさしい酸味を味わえる。
【山口県産】ゆめほっぺ® グミ
【熊本県産】ハニーローザ グミ
【熊本県産】ハニーローザ グミ
熊本県産「ハニーローザ」のピューレを使用。毎年6月上旬から中旬のわずか10日間程度しか収穫できない希少な品種。甘みが強くほのかな酸味も楽しめる。
【熊本県産】ハニーローザ グミ
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果実を使ったグミをつくってみよう!
果実を使ったグミ
※黄色はみかんジュースでつくったグミ。赤色はカキ氷用のいちごシロップ、紫色はカキ氷用のぶどうシロップでつくったグミです。
果物の味を楽しめるグミは家庭でもつくれます。市販の果実飲料や、果汁入りかき氷用シロップを使うと簡単。今回はみかんジュースと、カキ氷用いちごシロップを使ったつくり方をご紹介します。ひと口サイズに仕上げるには、シリコン製のチョコレート型を使用すると便利です。
レシピ&料理 近藤幸子さん 料理研究家、管理栄養士
果実飲料でつくる場合
果実飲料だけでは甘さが足りないので、まず砂糖を加えて煮詰め、シロップにするのがポイントです。
【材料(つくりやすい分量)】
みかんジュース… 150ミリリットル
砂糖… 大さじ2.5
粉ゼラチン… 5グラム
みかんジュースの他にも、りんごやぶどうなどいろんなジュースで試してみてください
【つくり方】
1 小鍋にみかんジュースと砂糖を入れる
小鍋にみかんジュースと砂糖を入れて弱火にかける。半分の量になるまで20分ほどスプーンで混ぜながら煮詰める。
2 耐熱ボウルに粉ゼラチンを振り入れる
耐熱ボウルに1 を入れてから、粉ゼラチンを振り入れる。軽く混ぜて5分ほど置く。
3 ラップをふんわりとかけ、電子レンジ加熱
ラップをふんわりとかけ、電子レンジ(600ワット)で1分加熱する。軽く沸騰し始めるくらいが目安。
POINT ラップを使い泡を取るPOINT
ラップを外すとシロップの表面に細かい泡が出ているはず。このままではできあがりの色が濁ってしまうため、先ほど外したラップを使い、シロップの表面に付けて手前に引くと一気に泡が取れる。
4 スプーンでシリコン型に流し込む
3をよく混ぜてから、スプーンでシリコン型に流し込む。
5 冷蔵庫に入れ冷やす
粗熱がとれたら冷蔵庫に入れ、1時間ほど冷やして固める。
6 シリコン型から取り出す
シリコン型から取り出してできあがり。
果汁入りシロップでつくる場合
カキ氷用シロップを使ってつくります。シロップの場合は、レモン果汁を加え、甘さを少し抑えるのがポイント。いちごシロップの場合、レモン果汁により発色もよくなります。
【材料(つくりやすい分量)】
カキ氷用のいちごシロップ… 大さじ3
レモン果汁(市販のもの)… 小さじ1
水… 大さじ2
粉ゼラチン… 5グラム
【つくり方】
耐熱ボウルにいちごシロップ、レモン果汁、水を入れる
耐熱ボウルにいちごシロップ、レモン果汁、水を入れる。これらをよく混ぜたあとに粉ゼラチンを振り入れる。再び軽く混ぜて5分ほど置く。
2
「果実飲料でつくる場合」の 3以降と同じ手順でつくってできあがり。
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