窓際
微睡む光たちの吐息と
振動する空気の波をつたって
何を描く

地平線をなぞるネオンと
コンクリートが織り成す銀河
燦めきを着飾った眠れぬ街

冷凍都市の暮らしは平然と営んでいる
人々は喜怒哀楽を混じり合い
それぞれの存在価値を見出すため
誰かを蹴り落とし
また誰かを救い出そうとしている
やがて森羅万象は夕暮れに沈み
どん詰まった夜に消えてゆく

昨日も明日も今日も今になる
諸行の背後関係を曖昧にしながら
意味を創り上げては打ち砕けながら

何千何万の心臓の確か不確かなる鼓動と
この光の川で波立ち、渦巻き
夜の果てに辿り着くまで
目を凝らし続けるよ

2024.1.25

 竹青(中)
――新曲聊斎志異――
太宰治
魚容は傷の苦しさに、もはや息も絶える思いで、見えぬ眼をわずかに開いて、
「竹青。」と小声で呼んだ、と思ったら、ふと眼が醒さめて、気がつくと自分は人間の、しかも昔のままの貧書生の姿で呉王廟の廊下に寝ている。斜陽あかあかと目前の楓かえでの林を照らして、そこには数百の烏が無心に唖々と鳴いて遊んでいる。
「気がつきましたか。」と農夫の身なりをした爺じじいが傍に立っていて笑いながら尋ねる。
「あなたは、どなたです。」
「わしはこの辺の百姓だが、きのうの夕方ここを通ったら、お前さんが死んだように深く眠っていて、眠りながら時々微笑んだりして、わしは、ずいぶん大声を挙げてお前さんを呼んでも一向に眼を醒まさない。肩をつかんでゆすぶっても、ぐたりとしている。家へ帰ってからも気になるので、たびたびお前さんの様子を見に来て、眼の醒めるのを待っていたのだ。見れば、顔色もよくないが、どこか病気か。」
「いいえ、病気ではございません。」不思議におなかも今はちっとも空すいていない。「すみませんでした。」とれいのあやまり癖が出て、坐り直して農夫に叮嚀ていねいにお辞儀をして、「お恥かしい話ですが、」と前置きをしてこの廟の廊下に行倒れるにいたった事情を正直に打明け、重ねて、「すみませんでした。」とお詫びを言った。
 農夫は憐あわれに思った様子で、懐ふところから財布さいふを取出しいくらかの金を与え、
「人間万事塞翁さいおうの馬。元気を出して、再挙を図はかるさ。人生七十年、いろいろさまざまの事がある。人情は飜覆ほんぷくして洞庭湖の波瀾はらんに似たり。」と洒落しゃれた事を言って立ち去る。
 魚容はまだ夢の続きを見ているような気持で、呆然ぼうぜんと立って農夫を見送り、それから振りかえって楓の梢にむらがる烏を見上げ、
「竹青!」と叫んだ。一群の烏が驚いて飛び立ち、ひとしきりやかましく騒いで魚容の頭の上を飛びまわり、それからまっすぐに湖の方へいそいで行って、それっきり、何の変った事も無い。
 やっぱり、夢だったかなあ、と魚容は悲しげな顔をして首を振り、一つ大きい溜息ためいきをついて、力無く故土に向けて発足する。
 故郷の人たちは、魚容が帰って来ても、格別うれしそうな顔もせず、冷酷の女房は、さっそく伯父の家の庭石の運搬を魚容に命じ、魚容は汗だくになって河原から大いなる岩石をいくつも伯父の庭先まで押したり曳ひいたり担かついだりして運び、「貧して怨えん無きは難し」とつくづく嘆じ、「朝あしたに竹青の声を聞かば夕ゆうべに死するも可なり矣」と何につけても洞庭一日の幸福な生活が燃えるほど劇はげしく懐慕せられるのである。
 伯夷叔斉はくいしゅくせいは旧悪を念おもわず、怨うらみ是これを用いて希まれなり。わが魚容君もまた、君子の道に志している高邁こうまいの書生であるから、不人情の親戚をも努めて憎まず、無学の老妻にも逆わず、ひたすら古書に親しみ、閑雅の清趣を養っていたが、それでも、さすがに身辺の者から受ける蔑視べっしには堪えかねる事があって、それから三年目の春、またもや女房をぶん殴って、いまに見ろ、と青雲の志を抱いだいて家出して試験に応じ、やっぱり見事に落第した。よっぽど出来ない人だったと見える。帰途、また思い出の洞庭湖畔、呉王廟に立ち寄って、見るものみな懐しく、悲しみもまた千倍して、おいおい声を放って廟前で泣き、それから懐中のわずかな金を全部はたいて羊肉を買い、それを廟前にばら撒まいて神烏に供して樹上から降りて肉を啄ついばむ群烏を眺めて、この中に竹青もいるのだろうなあ、と思っても、皆一様に真黒で、それこそ雌雄をさえ見わける事が出来ず、
「竹青はどれですか。」と尋ねても振りかえる烏は一羽も無く、みんなただ無心に肉を拾ってたべている。魚容はそれでも諦められず、
「この中に、竹青がいたら一番あとまで残っておいで。」と、千万の思慕の情をこめて言ってみた。そろそろ肉が無くなって、群烏は二羽立ち、五羽立ち、むらむらぱっと大部分飛び立ち、あとには三羽、まだ肉を捜して居残り、魚容はそれを見て胸をとどろかせ手に汗を握ったが、肉がもう全く無いと見てぱっと未練みれんげも無く、その三羽も飛び立つ。魚容は気抜けの余りくらくら眩暈めまいして、それでも尚なお、この場所から立ち去る事が出来ず、廟の廊下に腰をおろして、春霞はるがすみに煙る湖面を眺めてただやたらに溜息をつき、「ええ、二度も続けて落第して、何の面目があっておめおめ故郷に帰られよう。生きて甲斐かいない身の上だ、むかし春秋戦国の世にかの屈原くつげんも衆人皆酔い、我独ひとり醒さめたり、と叫んでこの湖に身を投げて死んだとかいう話を聞いている、乃公おれもこの思い出なつかしい洞庭に身を投げて死ねば、或あるいは竹青がどこかで見ていて涙を流してくれるかも知れない、乃公を本当に愛してくれたのは、あの竹青だけだ、あとは皆、おそろしい我慾の鬼ばかりだった、人間万事塞翁の馬だと三年前にあのお爺じいさんが言ってはげましてくれたけれども、あれは嘘だ、不仕合せに生れついた者は、いつまで経たっても不仕合せのどん底であがいているばかりだ、これすなわち天命を知るという事か、あはは、死のう、竹青が泣いてくれたら、それでよい、他には何も望みは無い」と、古聖賢の道を究きわめた筈の魚容も失意の憂愁に堪えかね、今夜はこの湖で死ぬる覚悟。やがて夜になると、輪郭りんかくの滲にじんだ満月が中空に浮び、洞庭湖はただ白く茫ぼうとして空と水の境が無く、岸の平沙へいさは昼のように明るく柳の枝は湖水の靄もやを含んで重く垂れ、遠くに見える桃畑の万朶ばんだの花は霰あられに似て、微風が時折、天地の溜息の如く通過し、いかにも静かな春の良夜、これがこの世の見おさめと思えば涙も袖そでにあまり、どこからともなく夜猿やえんの悲しそうな鳴声が聞えて来て、愁思まさに絶頂に達した時、背後にはたはたと翼の音がして、
「別来、恙つつが無きや。」
 振り向いて見ると、月光を浴びて明眸皓歯めいぼうこうし、二十はたちばかりの麗人がにっこり笑っている。
「どなたです、すみません。」とにかく、あやまった。
「いやよ、」と軽く魚容の肩を打ち、「竹青をお忘れになったの?」
「竹青!」
 魚容は仰天して立ち上り、それから少し躊躇ちゅうちょしたが、ええ、ままよ、といきなり美女の細い肩を掻き抱いた。
「離して。いきが、とまるわよ。」と竹青は笑いながら言って巧みに魚容の腕からのがれ、「あたしは、どこへも行かないわよ。もう、一生あなたのお傍に。」
「たのむ! そうしておくれ。お前がいないので、乃公は今夜この湖に身を投げて死んでしまうつもりだった。お前は、いったい、どこにいたのだ。」
「あたしは遠い漢陽に。あなたと別れてからここを立ち退き、いまは漢水の神烏になっているのです。さっき、この呉王廟にいる昔のお友達があなたのお見えになっている事を知らせにいらして下さったので、あたしは、漢陽からいそいで飛んで来たのです。あなたの好きな竹青が、ちゃんとこうして来たのですから、もう、死ぬなんておそろしい事をお考えになっては、いやよ。ちょっと、あなたも痩せたわねえ。」
「痩せる筈さ。二度も続けて落第しちゃったんだ。故郷に帰れば、またどんな目に遭うかわからない。つくづくこの世が、いやになった。」
「あなたは、ご自分の故郷にだけ人生があると思い込んでいらっしゃるから、そんなに苦しくおなりになるのよ。人間到いたるところに青山せいざんがあるとか書生さんたちがよく歌っているじゃありませんか。いちど、あたしと一緒に漢陽の家へいらっしゃい。生きているのも、いい事だと、きっとお思いになりますから。」
「漢陽は、遠いなあ。」いずれが誘うともなく二人ならんで廟びょうの廊下から出て月下の湖畔を逍遥しょうようしながら、「父母在いませば遠く遊ばず、遊ぶに必ず方有り、というからねえ。」魚容は、もっともらしい顔をして、れいの如くその学徳の片鱗へんりんを示した。
「何をおっしゃるの。あなたには、お父さんもお母さんも無いくせに。」
「なんだ、知っているのか。しかし、故郷には父母同様の親戚の者たちが多勢いる。乃公は何とかして、あの人たちに、乃公の立派に出世した姿をいちど見せてやりたい。あの人たちは昔から乃公をまるで阿呆か何かみたいに思っているのだ。そうだ、漢陽へ行くよりは、これからお前と一緒に故郷に帰り、お前のその綺麗きれいな顔をみんなに見せて、おどろかしてやりたい。ね、そうしようよ。乃公は、故郷の親戚の者たちの前で、いちど、思いきり、大いに威張ってみたいのだ。故郷の者たちに尊敬されるという事は、人間の最高の幸福で、また終極の勝利だ。」
「どうしてそんなに故郷の人たちの思惑ばかり気にするのでしょう。むやみに故郷の人たちの尊敬を得たくて努めている人を、郷原きょうげんというんじゃなかったかしら。郷原は徳の賊なりと論語に書いてあったわね。」
 魚容は、ぎゃふんとまいって、やぶれかぶれになり、
「よし、行こう。漢陽に行こう。連れて行ってくれ。逝者ゆくものは斯かくの如き夫かな、昼夜を舎すてず。」てれ隠しに、甚はなはだ唐突な詩句を誦しょうして、あははは、と自らを嘲あざけった。
「まいりますか。」竹青はいそいそして、「ああ、うれしい。漢陽の家では、あなたをお迎えしようとして、ちゃんと仕度がしてあります。ちょっと、眼をつぶって。」
 魚容は言われるままに眼を軽くつぶると、はたはたと翼の音がして、それから何か自分の肩に薄い衣のようなものがかかったと思うと、すっとからだが軽くなり、眼をひらいたら、すでに二人は雌雄の烏、月光を受けて漆黒しっこくの翼は美しく輝き、ちょんちょん平沙を歩いて、唖々と二羽、声をそろえて叫んで、ぱっと飛び立つ。
 月下白光三千里の長江ちょうこう、洋々と東北方に流れて、魚容は酔えるが如く、流れにしたがっておよそ二ときばかり飛翔して、ようよう夜も明けはなれて遥はるか前方に水の都、漢陽の家々の甍いらかが朝靄あさもやの底に静かに沈んで眠っているのが見えて来た。近づくにつれて、晴川せいせん歴々たり漢陽の樹、芳草萋々せいせいたり鸚鵡おうむの洲、対岸には黄鶴楼の聳そびえるあり、長江をへだてて晴川閣と何事か昔を語り合い、帆影点々といそがしげに江上を往来し、更にすすめば大別山だいべつざんの高峰眼下にあり、麓ふもとには水漫々の月湖ひろがり、更に北方には漢水蜿蜒えんえんと天際に流れ、東洋のヴェニス一眸ぼうの中に収り、「わが郷関きょうかん何いずれの処ぞ是これなる、煙波江上、人をして愁えしむ」と魚容は、うっとり呟いた時、竹青は振りかえって、

トレントンの戦い
戦闘
大陸軍の攻撃
トレントンの北西約1マイル (1.6 km) のペニントン道路沿い桶屋の所に、ドイツ人傭兵部隊によって前進基地が設けられていた。ワシントンは自ら兵士達の前に馬で進んでその襲撃を率いた。前進基地部隊の指揮官アンドレアス・ヴィーダーホルト中尉が、新鮮な空気を吸うために店から出てきた時に、大陸軍が彼に向かって発砲した。ヴィーダーホルトが「敵だ!」と叫び、他の兵士達が飛び出してきた。大陸軍は彼等に向かって3度一斉射撃を行い、ドイツ人傭兵部隊も1度は応射した。ワシントンは、エドワード・ハンドのペンシルベニア・ライフル銃隊とドイツ語が話せる歩兵の大隊に、プリンストンに向かう道路を塞ぐように命じ、彼等はそこからドイツ人傭兵部隊前哨基地をまさに攻撃した。ヴィーダーホルトは間もなく大陸軍が襲撃隊以上のものであることを認識し、また他のドイツ兵がプリンストン道路を撤退しつつあることを見て、自分も撤退することにした。ドイツ人傭兵部隊は後退しながら発砲し、秩序だった撤退を行った。彼等はトレントンの北外れにある高台まで後退し、そこでロスバーグ連隊の当番中隊と合流した。そこからは緩りと後退しながら発砲し、発砲が途絶えないようにしながら、また家屋や他の建物を遮蔽にしながら大陸軍に応戦した。トレントンの町中に入ると、町の外縁にいた他の守備中隊の支援を受け始めた。デラウェア川の近くにいたもう一つの守備中隊も支援のために東に急行し、川から町に入る道ががら空きになった。ワシントンはプリンストンに向かう逃走路を抑えるよう命じ、歩兵隊を戦闘隊形でその遮断に向かわせ、砲兵隊はキング通りとクィーン通りの上手に陣取らせた。
ジョン・サリバン将軍は南側の大陸軍部隊を率いて放棄された川沿い道からトレントンに入り、アッサンピンク・クリークを渡す唯一の道を抑えた。そこはトレントンから南へ出て行く唯一のルートであり、ドイツ人傭兵部隊が逃げ出すのを遮断できると考えていた。サリバンは少しの間前進を止めて、グリーンの部隊が北側の前進基地からドイツ人傭兵部隊を駆逐する時間があったかどうかを確認した。その後間もなく前進を再開し、フォン・グロスハウゼン中尉指揮下の猟兵隊50名が駐屯しているフィレモン・ディキンソンの家である隠れ家を攻撃した。フォン・グロスハウゼン中尉は猟兵の中から12名を前衛隊に対する戦闘に投入したが、大陸軍が隠れ家に前進して来るのを見たときにはまだ数百ヤード進んだだけだった。フォン・グロスハウゼンは宿営所にとって返し、残りの猟兵達と合流して隠れ家を放棄した。彼等は一斉射撃を行った後に振り向いて走り、ある者はクリークを泳ぎ、ある者はまだ遮断されていなかった橋を渡って逃げた。そこにいた20名のイギリス竜騎兵も同時に逃げ出した。グリーンとサリバンの部隊が町に押し入ると、ワシントンはキング通りとクィーン通りの北にある高台に移動したので、戦闘の様子を見ることができ、その部隊に指示ができた。この頃、デラウェア川対岸にいた砲兵隊からの砲撃が始まり、ドイツ人傭兵部隊の陣地を破壊した。
間もなく警鐘が鳴らされ、ドイツ人傭兵部隊3個連隊が戦闘準備を始めた。ラールの連隊はロスバーグ連隊と共にキング通りの下流側で隊形を作り、クニプハウゼン連隊はクィーン通りの下端に配置した。ラールの旅団副官であるピール中尉が最後にその指揮官を起こし、ラールは工兵隊がその月早くに堡塁を築くはずだった町のメインストリート"V"地点を大陸軍が占領しているのが分かった。ラールはその連隊にキング通り下端に隊列を作るよう命じ、ロスバーグ連隊にはクィーン通りを前進できるように備えさせ、クニプハウゼンの連隊にはラール連隊がキング通りを進む間、予備隊として待機するよう命じた。

2つのメインストリートの上手に陣取った大陸軍の大砲が間もなく砲撃を開始した。これに反応したラールは、ロスバーグ連隊の数個中隊に支援させて、自分の連隊にその大砲を征圧するよう指示した。ドイツ人傭兵部隊は隊列を組み通りを前進し始めたが、その隊形は大陸軍の大砲および通りの左側にある家屋を占領していたマーサー隊からの発砲によって直ぐに破られた。その隊列が崩れるとドイツ兵は逃走した。ラールは続いて2門の3ポンド砲を戦闘に参加させるよう命じた。これらの大砲はなんとかそれぞれ6発の砲弾を発射することができたが、数分も経たないうちにその大砲を操作していた兵士の半分が大陸軍の砲撃で殺された。残っていた砲兵は逃げ出して家屋や塀の影に隠れ、その大砲は大陸軍に奪取された。この大砲の捕獲に続いて、ジョージ・ウィードン指揮下の部隊がキング通りを下って前進した。
クィーン通りでは、ロスバーグ連隊とラール連隊による前進の試み全てが、トマス・フォレスト指揮下の大砲によって撃退された。ドイツ兵の大砲がさらに2門、ほんの4発を放っただけで沈黙させられた。フォレストの榴弾砲のうち1門は車軸が壊れたために使えなくなった。この時点でクニプハウゼン連隊はロスバーグ連隊やラール連隊とは離ればなれになった。ロスバーグ連隊とラール連隊は葡萄弾やマスケット銃弾によって大きな損失を蒙り、町の外の畑まで後退した。町の南ではサリバン指揮下の大陸軍部隊がドイツ人傭兵部隊を圧倒し始めていた。ジョン・スタークがクニプハウゼン連隊に銃剣突撃を敢行し、ドイツ兵の武器が発砲できなかったので抵抗する者の大半を倒した。サリバン自らが1隊を率いてそれ以上誰もクリークを渡って逃げられないようにした。

ドイツ人傭兵部隊の抵抗が崩壊
畑にいたドイツ人傭兵部隊は再編成を試み、もう一度町を取り返して突破口を開こうとした。ラールは町の北にある高台の大陸軍側面を衝くことに決めた。ラールは「前へ!進め!進め!」と呼びかけ、旅団の鼓笛隊がドイツ兵の気魄を上げるために笛、ラッパや太鼓を鳴らし、ドイツ兵は動き始めた。
ワシントンはこのときまだ高台に居り、ドイツ兵が大陸軍の側面に進んでくるのを見て、その方向に戦闘隊形を作ることができるように部隊を動かした。ドイツ兵2個連隊はキング通りの方向に進み始めたが、3方向から来る大陸軍の大砲に捕まってしまった。大陸軍のある兵士は家屋の中に陣を取り、撃たれにくくしていた。何人かの市民ですらドイツ兵との戦闘に加わった。それにも拘わらずドイツ兵は前進し、捕獲されていた大砲を取り戻した。キング通りの上手にいたノックスはドイツ兵が大砲を取り戻すのを見て、再度奪取を命じた。6名の兵士が走り、短時間の闘争の後で大砲を奪取し、それをドイツ兵の方向に向け直した。ドイツ兵の大半はその大砲を発砲できず、攻撃は止まった。ドイツ兵の隊列が崩れ、散らばり始めた。この時点でラールは致命傷を負っていた。ワシントンが高台から降りてきて部隊を率い、「進め、勇敢な仲間達よ、私に続け!」と叫んだ。ドイツ兵の大半が果樹園の中に後退し、大陸軍が急迫して直ぐに包囲した。ドイツ語を話すアメリカ兵が降伏条件を伝え、ドイツ兵が応じた。
クニプハウゼン連隊の残りはラール連隊と合流するよう命じられたが、誤解のために反対方向に進んだ。彼等は橋を渡って逃げようとしたが、橋が占領されていることが分かった。大陸軍が直ぐに掃討を試み、ドイツ兵の突破口を開こうという試みも失敗した。彼等は橋から遮断されサリバン隊に包囲されて降伏を強いられた。この連隊は旅団の他の部隊よりも数分後に降伏した。

損失
ドイツ人傭兵部隊は戦死22名、重傷83名、さらに896名が捕虜となった。大陸軍は戦死が2名だけであり、5名が負傷した。しかし、戦いの数日後に疲労、低体温および病気で死んだ者を含めると大陸軍の総損失の方が多いかも知れない。捕虜になったドイツ兵はフィラデルフィア、さらにランカスターに送られ、1777年には再度バージニアまで移動させられた。ラールは致命傷を負い、その日遅くに自分の策戦本部で死んだ。この戦闘に参加したドイツ人の大佐4人全員が戦死した。ロスバーグ連隊は事実上イギリス軍から外された。クニプハウゼン連隊の一部は南に逃げたが、サリバン隊が200名程をその大砲や物資と共に捕獲した。他にも約1,000挺の武器と大陸軍が大いに必要としていた弾薬が捕獲された。

神話
ドイツ人傭兵部隊は大陸軍の急襲で驚かされ衝撃を受けた。クリスマスの祝いの結果として酔っていたと一般に信じられている。軍事歴史家のエドワード・G・レンゲルは「ドイツ人は目が眩み、疲れてはいたが、伝説が伝えるように救いようのないくらい酔っていたという事実はない。」と言った。歴史家のデイビッド・ハケット・フィッシャーは「そうではなかった」と言い、この戦闘に参加し、戦闘後にドイツ兵の面倒を見たアメリカ軍人のジョン・グリーンウッドですら、「前夜に1滴でも酒を飲んだのか確認できないし、1片のパンですら食べたのかも分からない」と言ったことを指摘している。しかし、ワシントンの参謀士官の一人は「彼等は大いにドイツ流のクリスマスを楽しみ、疑いもなくその夜は大いに酒を飲み、踊った。彼等は翌朝眠かったことだろう。」と記した。


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