雨夜の怪談
岡本綺堂
秋……殊ことに雨などが漕々そうそう降ると、人は兎角とかくに陰気になつて、動ややもすれば魔物臭い話が出る。さればこそ、七偏人しちへんじんは百物語を催ほして大愚大人を脅かさんと巧み、和合人わごうじんの土場六先生はヅーフラ(註:オランダ渡来の、ラツパのような形状をした呼筒。半七捕物帳「ズウフラ怪談」に詳しい。)を以て和次さん等を驚かさんと企つるに至るのだ。聞く所に拠よれば近来も怪談大流行、到る所に百物語式の会合があると云ふ。で、私も流行を趁おうて、自分が見聞の怪談二三を紹介する。但ただし何いずれも実録であるから、芝居や講釈の様に物凄いのは無い。それは前以てお断り申して置く。
一
明治六七年の頃、私わたしの家うちは高輪たかなわから飯田町いいだまちに移つた。飯田町の家は大久保何某なにがしといふ旗本はたもとの古屋敷で随分広い。移つてから二月ふたつきほど経つた或夜の事、私の母が夜半よなかに起きて便所に行く。途中は長い廊下、真闇まっくらの中なかで何やら摺違すれちがつたやうな物の気息けはいがする、之これと同時に何とは無しに後あとへ引戻されるやうな心地がした。けれども、別に意にも介とめず、用を済すまして寝床へ帰つた。
こゝに住むこと約半年、更さらに同町内の他へ移転した。すると、出入でいりの酒商さかやが来て、旧宅にゐる間に何か変つた事は無かつたかと問ふ。いや、何事も無かつたと答へると、実は彼あの家うちは昔から有名なだいの化物屋敷、あなた方が住んでお在いでの時に、そんな事を申上げては却かえつて悪いと、今日こんにちまで差控さしひかえて居おりましたと云ふ。併しかし此方こっちでは何等の不思議を見た事無し、強しいて心当りを探り出せば、前に記しるした一件のみ。これでも怪談の部であらうか。
二
安政あんせいの末年まつねん、一人の若武士わかざむらいが品川から高輪たかなわの海端うみばたを通る。夜は四よつ過ぎ、他ほかに人通りは無い。芝しばの田町たまちの方から人魂ひとだまのやうな火が宙ちゅうを迷まようて来る。それが漸次しだいに近ちかづくと、女の背に負おぶはれた三歳みっつばかりの小供が、竹の柄えを付けた白張しらはりのぶら提灯ぢょうちんを持つてゐるのだ。唯ただ是これだけの事ならば別に仔細しさい無なし、こゝに不思議なるは其その女の顔で、眼も鼻も無い所謂いわゆるのツぺらぼう。武士さむらいも驚いて、思はず刀に手を掛けたが、待て暫しばし、広い世の中には病気又は怪我けがの為に不思議な顔を有もつ女が無いとも限らぬ、迂闊うかつに手を下くだすのも短慮だと、少時しばしづツと見てゐる中うちに、女は消ゆるが如ごとくに行き過ぎて遠く残るは提灯ちょうちんの影ばかり。是これ果はたして人か怪かいか竟ついに分らぬ。其その武士さむらいと云ふのは私の父である。
忠盛ただもりは油坊主あぶらぼうずを捕へた。私も引捕へて詮議すれば可よかつたものを……と、老後の悔くやみ話。
三
慶応けいおうの初年しょねん、私の叔父おじは富津ふっつの台場だいばを固めてゐた、で、或日あるひの事。同僚吉田何某なにがしと共に近所へ酒を飲みに行つた帰途かえりみち、冬の日も暮れかゝる田甫路たんぼみちをぶら/\来ると、吉田は何故なぜか知らず、動ややもすれば田たの方へ踉蹌よろけて行く。勿論幾分か酔つてはゐるが、足下あしもとの危い程でも無いに兎角とかくに左の方へと行きたがる。おい、田へ落ちるぞ、確乎しっかりしろと、叔父は幾いくたびか注意しても、本人は夢の様、無意識に田の中なかへ行かうとする。
其中そのうちに、叔父が不図ふと見ると、田を隔へだてたる左手ゆんでの丘に一匹の狐がゐて、宛さながら招まねくが如くに手を挙あげてゐる。こん畜生! 武士さむらいを化ばかさうなどゝは怪けしからぬと、叔父も酒の勢ひ、腰なる刀をひらりと抜く。これを見て狐は逃げた。吉田は眼を摩こすりながら「あゝ、睡ねむかつた……。」それから後のちは何事も無い。
動物電気に依よって一種のヒプノヂズム式作用を起すものと見える。狐が人を化すと云ふのも嘘では無いらしい。
四
鼬いたちの立つのは珍しくはないが私は猫の立つて歩くのを見た。
時は明治三十一年の八月十二日、夜の一時頃であらう。私は寝苦しいので蚊帳かやを出た。庭を一巡して扨さてそれから表へ出やうと、何心なく門を明けると、門から往来へ出る路次ろじの真中まんなかに何物か立つてゐる。月は明るい。其そのうしろ姿は正まさしく猫、加之しかも表通りの焼芋商やきいもやに飼つてある雉子猫きじねこだ。彼奴きゃつ、どうするかと息を潜ひそめて窺うかがつてゐると、彼かれは長き尾を地に曳ひき二本の後脚あとあしを以もって矗然すっくと立つたまゝ、宛さながら人のやうに歩んで行く、足下あしもとは中々なかなか確たしかだ。
はて、不思議と見てゐる中うちに、彼は既すでに二間けんばかりも歩き出した。私は一種の好奇心に駆られて、背後うしろから其後そのあとを尾つけやうと、跫音あしおとを偸ぬすんで一歩蹈ふみ出すや否や、彼は忽たちまち顧みかえつた。と思ふと、平常へいぜいの四脚よつあしに復かえつて飛鳥ひちょうの如ごとくに往来へ逃げ去つた。私も続いて逐おうたが、もう影も見せぬ。
翌日、焼芋屋の店を窺うかがふと彼は例の如く竈前かままえに遊んでゐる。併しかし昨夜の事を迂闊うっかり饒舌しゃべつて、家内の者を閙さわがすのも悪いと思つたから、私は何にも言はなかつた。が、其後も絶えず彼の挙動に注目してゐると、翌月の末頃から彼は姿を現はさぬ。同家に就ついて訊けば、猫は二三日前から行方不明となつたと云ふ。
動物学上から云へば、猫の立つて歩くのも或あるいは当然の事かも知れぬ。併しかし我々俗人は之これをも不思議の一つに数かぞへるのが慣例ならいだ。
五
明治廿三にじゅうさん年の二月、父と共に信州軽井沢に宿やどる。昨日から降積ふりつむ雪で外へは出られぬ。日の暮れる頃に猟夫かりうどが来て、鹿の肉を買つて呉くれと云ふ。退屈の折柄おりから、彼を炉辺ろへんに呼び入れて、種々いろいろの話をする。
木曾路の山へ分け入ると、折々に不思議を見る。猟夫仲間では之これをえてものと云ふ。現に此この猟夫も七八年前ぜん二三人の同業者と連れ立つて、木曾の山奥へ猟りょうに行つた。斯かかる深山へ登る時には、四五日にち分ぶんの米の他に鍋なべ釜かまをも携たずさへて行くのが慣例ならい。
登山してから三日目の夕刻、一同は唯とある大樹たいじゅの下に屯たむろして夕飯ゆうめしを焚たく。で、もう好よい頃と一人が釜の蓋ふたを明けると、濛々もうもうと颺あがる湯気ゆげの白き中なかから、真蒼まっさおな人間の首がぬツと出た。あツと驚いて再び蓋をすると、其中そのなかで物馴ものなれた一人が「えてものだ、鉄砲を撃て。」と云ふ。一同直すぐに鉄砲を把とつて、何処どこを的あてとも無なしに二三発ぱつ。それから更さらに釜の蓋を明けると今度は何の不思議もない。
えてものの正体は何なんだか知らぬが、処々おりおりに斯こういふ悪戯いたずらをすると、猟夫の話。
六
日露戦争の際、私は東京日々とうきょうにちにち新聞社から通信員として戦地へ派遣された。三十七年の九月、遼陽りょうようより北一里り半はんの大紙房だいしぼうといふ村に宿とまつて、滞留約半月はんつき。其間そのあいだに村人の話を聞くと、大紙房と小紙房との村境むらざかいに一間の空家あきやがあつて十数年来誰たれも住まぬ。それは『鬼き』が祟たたりを作なす為だと云ふ。
中国の怪物ばけもの………私は例の好奇心に促されて、一夜を彼かの空屋に送るべく決心した。で、更さらに委くわしく其その『鬼き』の有様を質ただすと、曰いわく、半夜に凄風せいふう颯さっとして至る。大鬼だいきは衣冠いかんにして騎馬、小鬼しょうき数十何いずれも剣戟けんげきを携たずさへて従ふ。屋おくに進んで大鬼先まづ瞋いかつて呼ぶ、小鬼それに応じて口より火を噴き、光熖こうえん屋おくを照てらすと。
何の事だ。宛まるで子不語しふごが今古奇観こんこきかんにでも有ありさうな怪談だ。余り馬鹿々々しいので、
七
これは最近の話。今年の五月、菊五郎一座が水戸みとへ乗込んだ時とき。一座の鼻升びしょう、菊太郎、市勝いちかつ等ら五名は下市しもいちの某旅店ぼうりょてん(名は憚はばかつて記しるさぬ)に泊つて、下座敷したざしきの六畳の間まに陣取る。で、第一日の夜、市勝が俯向うつむいて手紙を書いてゐると、鼻の頭さきの障子しょうじが自然にすうと明いた。之これを序開じょびらきとして種々いろいろの不思議がある。段々だんだん詮議すると、これは此家このやに年古く住む鼬いたちの仕業しわざだと云ふ。
併しかし人間に対して害は加へぬと分つたので、一同も先まづ安心。其後そのごは芝居から帰ると、毎夜彼かの鼬を対手あいてにして遊ぶ。就中なかんずく面白いのは、例の狐狗狸式こくりしきに物を当てさせる事で、例へば此室このへやに女が居いるかと問ひ、居ない時には彼かれが廊下をとんと一つ打つ。居る時にはとん/\と二つ打つと云ふ類たぐいだ。
或時あるとき、此室このへやに手拭てぬぐいが幾筋いくすじ掛けてあるかと問へば、彼は廊下を四つ打つた。けれども、手拭は三筋より無い。更さらに聞直しても矢はり四つだと答へる。で、念の為に手拭を検あらためると、三筋と思つたのは此方こっちの過失あやまりで、一つの釘くぎに二筋の手拭が重ねて掛けて有あつて、都合つごう四筋といふのが成なるほど本当だ。是これには何いずれも敬服したと云ふ。が、彼かれは果はたして鼬いたちか狸たぬきか、或あるいは人の悪戯いたずらかと種々いろいろに穿索せんさくしたが、遂ついに其正体を見出し得なかつた。宿やどの者は飽あくまでも鼬と信じてゐるらしいとの事。
![](https://wx1.sinaimg.cn/large/008sH4ehly1hotombuf4vj30b40dwt9n.jpg)
岡本綺堂
秋……殊ことに雨などが漕々そうそう降ると、人は兎角とかくに陰気になつて、動ややもすれば魔物臭い話が出る。さればこそ、七偏人しちへんじんは百物語を催ほして大愚大人を脅かさんと巧み、和合人わごうじんの土場六先生はヅーフラ(註:オランダ渡来の、ラツパのような形状をした呼筒。半七捕物帳「ズウフラ怪談」に詳しい。)を以て和次さん等を驚かさんと企つるに至るのだ。聞く所に拠よれば近来も怪談大流行、到る所に百物語式の会合があると云ふ。で、私も流行を趁おうて、自分が見聞の怪談二三を紹介する。但ただし何いずれも実録であるから、芝居や講釈の様に物凄いのは無い。それは前以てお断り申して置く。
一
明治六七年の頃、私わたしの家うちは高輪たかなわから飯田町いいだまちに移つた。飯田町の家は大久保何某なにがしといふ旗本はたもとの古屋敷で随分広い。移つてから二月ふたつきほど経つた或夜の事、私の母が夜半よなかに起きて便所に行く。途中は長い廊下、真闇まっくらの中なかで何やら摺違すれちがつたやうな物の気息けはいがする、之これと同時に何とは無しに後あとへ引戻されるやうな心地がした。けれども、別に意にも介とめず、用を済すまして寝床へ帰つた。
こゝに住むこと約半年、更さらに同町内の他へ移転した。すると、出入でいりの酒商さかやが来て、旧宅にゐる間に何か変つた事は無かつたかと問ふ。いや、何事も無かつたと答へると、実は彼あの家うちは昔から有名なだいの化物屋敷、あなた方が住んでお在いでの時に、そんな事を申上げては却かえつて悪いと、今日こんにちまで差控さしひかえて居おりましたと云ふ。併しかし此方こっちでは何等の不思議を見た事無し、強しいて心当りを探り出せば、前に記しるした一件のみ。これでも怪談の部であらうか。
二
安政あんせいの末年まつねん、一人の若武士わかざむらいが品川から高輪たかなわの海端うみばたを通る。夜は四よつ過ぎ、他ほかに人通りは無い。芝しばの田町たまちの方から人魂ひとだまのやうな火が宙ちゅうを迷まようて来る。それが漸次しだいに近ちかづくと、女の背に負おぶはれた三歳みっつばかりの小供が、竹の柄えを付けた白張しらはりのぶら提灯ぢょうちんを持つてゐるのだ。唯ただ是これだけの事ならば別に仔細しさい無なし、こゝに不思議なるは其その女の顔で、眼も鼻も無い所謂いわゆるのツぺらぼう。武士さむらいも驚いて、思はず刀に手を掛けたが、待て暫しばし、広い世の中には病気又は怪我けがの為に不思議な顔を有もつ女が無いとも限らぬ、迂闊うかつに手を下くだすのも短慮だと、少時しばしづツと見てゐる中うちに、女は消ゆるが如ごとくに行き過ぎて遠く残るは提灯ちょうちんの影ばかり。是これ果はたして人か怪かいか竟ついに分らぬ。其その武士さむらいと云ふのは私の父である。
忠盛ただもりは油坊主あぶらぼうずを捕へた。私も引捕へて詮議すれば可よかつたものを……と、老後の悔くやみ話。
三
慶応けいおうの初年しょねん、私の叔父おじは富津ふっつの台場だいばを固めてゐた、で、或日あるひの事。同僚吉田何某なにがしと共に近所へ酒を飲みに行つた帰途かえりみち、冬の日も暮れかゝる田甫路たんぼみちをぶら/\来ると、吉田は何故なぜか知らず、動ややもすれば田たの方へ踉蹌よろけて行く。勿論幾分か酔つてはゐるが、足下あしもとの危い程でも無いに兎角とかくに左の方へと行きたがる。おい、田へ落ちるぞ、確乎しっかりしろと、叔父は幾いくたびか注意しても、本人は夢の様、無意識に田の中なかへ行かうとする。
其中そのうちに、叔父が不図ふと見ると、田を隔へだてたる左手ゆんでの丘に一匹の狐がゐて、宛さながら招まねくが如くに手を挙あげてゐる。こん畜生! 武士さむらいを化ばかさうなどゝは怪けしからぬと、叔父も酒の勢ひ、腰なる刀をひらりと抜く。これを見て狐は逃げた。吉田は眼を摩こすりながら「あゝ、睡ねむかつた……。」それから後のちは何事も無い。
動物電気に依よって一種のヒプノヂズム式作用を起すものと見える。狐が人を化すと云ふのも嘘では無いらしい。
四
鼬いたちの立つのは珍しくはないが私は猫の立つて歩くのを見た。
時は明治三十一年の八月十二日、夜の一時頃であらう。私は寝苦しいので蚊帳かやを出た。庭を一巡して扨さてそれから表へ出やうと、何心なく門を明けると、門から往来へ出る路次ろじの真中まんなかに何物か立つてゐる。月は明るい。其そのうしろ姿は正まさしく猫、加之しかも表通りの焼芋商やきいもやに飼つてある雉子猫きじねこだ。彼奴きゃつ、どうするかと息を潜ひそめて窺うかがつてゐると、彼かれは長き尾を地に曳ひき二本の後脚あとあしを以もって矗然すっくと立つたまゝ、宛さながら人のやうに歩んで行く、足下あしもとは中々なかなか確たしかだ。
はて、不思議と見てゐる中うちに、彼は既すでに二間けんばかりも歩き出した。私は一種の好奇心に駆られて、背後うしろから其後そのあとを尾つけやうと、跫音あしおとを偸ぬすんで一歩蹈ふみ出すや否や、彼は忽たちまち顧みかえつた。と思ふと、平常へいぜいの四脚よつあしに復かえつて飛鳥ひちょうの如ごとくに往来へ逃げ去つた。私も続いて逐おうたが、もう影も見せぬ。
翌日、焼芋屋の店を窺うかがふと彼は例の如く竈前かままえに遊んでゐる。併しかし昨夜の事を迂闊うっかり饒舌しゃべつて、家内の者を閙さわがすのも悪いと思つたから、私は何にも言はなかつた。が、其後も絶えず彼の挙動に注目してゐると、翌月の末頃から彼は姿を現はさぬ。同家に就ついて訊けば、猫は二三日前から行方不明となつたと云ふ。
動物学上から云へば、猫の立つて歩くのも或あるいは当然の事かも知れぬ。併しかし我々俗人は之これをも不思議の一つに数かぞへるのが慣例ならいだ。
五
明治廿三にじゅうさん年の二月、父と共に信州軽井沢に宿やどる。昨日から降積ふりつむ雪で外へは出られぬ。日の暮れる頃に猟夫かりうどが来て、鹿の肉を買つて呉くれと云ふ。退屈の折柄おりから、彼を炉辺ろへんに呼び入れて、種々いろいろの話をする。
木曾路の山へ分け入ると、折々に不思議を見る。猟夫仲間では之これをえてものと云ふ。現に此この猟夫も七八年前ぜん二三人の同業者と連れ立つて、木曾の山奥へ猟りょうに行つた。斯かかる深山へ登る時には、四五日にち分ぶんの米の他に鍋なべ釜かまをも携たずさへて行くのが慣例ならい。
登山してから三日目の夕刻、一同は唯とある大樹たいじゅの下に屯たむろして夕飯ゆうめしを焚たく。で、もう好よい頃と一人が釜の蓋ふたを明けると、濛々もうもうと颺あがる湯気ゆげの白き中なかから、真蒼まっさおな人間の首がぬツと出た。あツと驚いて再び蓋をすると、其中そのなかで物馴ものなれた一人が「えてものだ、鉄砲を撃て。」と云ふ。一同直すぐに鉄砲を把とつて、何処どこを的あてとも無なしに二三発ぱつ。それから更さらに釜の蓋を明けると今度は何の不思議もない。
えてものの正体は何なんだか知らぬが、処々おりおりに斯こういふ悪戯いたずらをすると、猟夫の話。
六
日露戦争の際、私は東京日々とうきょうにちにち新聞社から通信員として戦地へ派遣された。三十七年の九月、遼陽りょうようより北一里り半はんの大紙房だいしぼうといふ村に宿とまつて、滞留約半月はんつき。其間そのあいだに村人の話を聞くと、大紙房と小紙房との村境むらざかいに一間の空家あきやがあつて十数年来誰たれも住まぬ。それは『鬼き』が祟たたりを作なす為だと云ふ。
中国の怪物ばけもの………私は例の好奇心に促されて、一夜を彼かの空屋に送るべく決心した。で、更さらに委くわしく其その『鬼き』の有様を質ただすと、曰いわく、半夜に凄風せいふう颯さっとして至る。大鬼だいきは衣冠いかんにして騎馬、小鬼しょうき数十何いずれも剣戟けんげきを携たずさへて従ふ。屋おくに進んで大鬼先まづ瞋いかつて呼ぶ、小鬼それに応じて口より火を噴き、光熖こうえん屋おくを照てらすと。
何の事だ。宛まるで子不語しふごが今古奇観こんこきかんにでも有ありさうな怪談だ。余り馬鹿々々しいので、
七
これは最近の話。今年の五月、菊五郎一座が水戸みとへ乗込んだ時とき。一座の鼻升びしょう、菊太郎、市勝いちかつ等ら五名は下市しもいちの某旅店ぼうりょてん(名は憚はばかつて記しるさぬ)に泊つて、下座敷したざしきの六畳の間まに陣取る。で、第一日の夜、市勝が俯向うつむいて手紙を書いてゐると、鼻の頭さきの障子しょうじが自然にすうと明いた。之これを序開じょびらきとして種々いろいろの不思議がある。段々だんだん詮議すると、これは此家このやに年古く住む鼬いたちの仕業しわざだと云ふ。
併しかし人間に対して害は加へぬと分つたので、一同も先まづ安心。其後そのごは芝居から帰ると、毎夜彼かの鼬を対手あいてにして遊ぶ。就中なかんずく面白いのは、例の狐狗狸式こくりしきに物を当てさせる事で、例へば此室このへやに女が居いるかと問ひ、居ない時には彼かれが廊下をとんと一つ打つ。居る時にはとん/\と二つ打つと云ふ類たぐいだ。
或時あるとき、此室このへやに手拭てぬぐいが幾筋いくすじ掛けてあるかと問へば、彼は廊下を四つ打つた。けれども、手拭は三筋より無い。更さらに聞直しても矢はり四つだと答へる。で、念の為に手拭を検あらためると、三筋と思つたのは此方こっちの過失あやまりで、一つの釘くぎに二筋の手拭が重ねて掛けて有あつて、都合つごう四筋といふのが成なるほど本当だ。是これには何いずれも敬服したと云ふ。が、彼かれは果はたして鼬いたちか狸たぬきか、或あるいは人の悪戯いたずらかと種々いろいろに穿索せんさくしたが、遂ついに其正体を見出し得なかつた。宿やどの者は飽あくまでも鼬と信じてゐるらしいとの事。
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寿屋拼装模型 阿尔卡纳蒂亚系列 索菲艾拉 预定于2024年9月发售,8000日元(未含税),本日开订https://t.cn/A6TjPOVg
製品スペック
作品 アルカナディア
シリーズ キャラクタープラモデル
スケール NON
製品サイズ 全高:約168mm
製品仕様 プラモデル
パーツ数 201~400
素材 PS・ABS・POM・PVC(非フタル酸)
対象年齢 15歳以上
設計 石井 達也、maimi
品番 AR007
製品説明
「私とエンゲージしてくれたらぁ、、マスターさんのためにとっても頑張っちゃいます。」
「SF×ファンタジー」を題材としたコトブキヤ新シリーズ『アルカナディア』より、悪魔型ディアーズ「ソフィエラ」がプラモデルで登場です。
ゲームイラストやVTuberキャラクターデザインなど幅広く活躍されている人気イラストレーター「necömi」氏が描いたイラストを立体化しました。
各部専用パーツの組み換えにより、1つの商品で非戦闘状態「ノーマルモード」と戦闘状態「ウィライズモード」の2種類の形態を再現することができます。
各部の分割設計は3mmジョイントを採用しており、これまでのコトブキヤオリジナルシリーズと組み合わせて楽しむことができます。
【付属品&ギミック】
・各部専用パーツの組み換えにより、非戦闘状態「ノーマルモード」と戦闘状態「ウィライズモード」の2種類の形態を再現可能。
・4種類のタンポ印刷済みの表情パーツが付属。
・好みの表情を作ることができる水転写表情デカールが付属。
・耳パーツはルミティアなど他のディアーズの耳パーツと差し換えが可能。
・尻尾は腰都の付け根部分は軸可動、ほか一節ごとにボールジョイントによりフレキシブルに可動。
・スカートはそれぞれ独立可動し、脚部可動範囲が拡大。
【ノーマルモード】
・ソフィエラとエンゲージするためのリングパーツが付属。
・小悪魔をイメージした背中の羽は取り付け基部に配置されたジョイントパーツにより、有機的で美麗なデザイン性とフレキシブルな可動性を両立。
・腰部魔法陣型のパーツは中央に3mm穴の空いたヘキサグラム形状のジョイントとなっており、安定した保持力を確保。
・ノーマルモード脚部は引き出し式膝関節の採用により、素立ちの際に前から関節ジョイントが見えない美しい脚線美と広範囲な可動を両立。
【ウィライズモード】
・上腕、膝の各装甲パーツは3mm径ジョイントによる接続により、様々な位置に取り付けが可能。
・腰の長短異なる4枚の主翼は先端がクリアパーツで造形。
・主翼は基部から取り外すことが可能で、短剣、双剣、自律攻撃武装など、様々なシチュエーションで活躍する武器としても使用可能。
・腰から下方向に伸びる長短のある4枚の尾羽は軸接続の基部に、それぞれが3mmボールジョイントで接続されていることによりソフィエラの動きに合わせて様々な表情付けが可能。
・大鎌から大鋏にモードチェンジする専用武器が付属。
・専用のスタンドが付属。
・PVC製の手首が左右それぞれ5種付属。
・各部に配置された3mm径の穴により既存M.S.G、フレームアームズ、フレームアームズ・ガール シリーズの武装と併用が可能。
・フレームアームズ・ガール、メガミデバイスの頭部を接続するための首パーツが付属。
![](https://wx4.sinaimg.cn/large/006SCGqIgy1hotmjnej2jj30rs0fnaeq.jpg)
製品スペック
作品 アルカナディア
シリーズ キャラクタープラモデル
スケール NON
製品サイズ 全高:約168mm
製品仕様 プラモデル
パーツ数 201~400
素材 PS・ABS・POM・PVC(非フタル酸)
対象年齢 15歳以上
設計 石井 達也、maimi
品番 AR007
製品説明
「私とエンゲージしてくれたらぁ、、マスターさんのためにとっても頑張っちゃいます。」
「SF×ファンタジー」を題材としたコトブキヤ新シリーズ『アルカナディア』より、悪魔型ディアーズ「ソフィエラ」がプラモデルで登場です。
ゲームイラストやVTuberキャラクターデザインなど幅広く活躍されている人気イラストレーター「necömi」氏が描いたイラストを立体化しました。
各部専用パーツの組み換えにより、1つの商品で非戦闘状態「ノーマルモード」と戦闘状態「ウィライズモード」の2種類の形態を再現することができます。
各部の分割設計は3mmジョイントを採用しており、これまでのコトブキヤオリジナルシリーズと組み合わせて楽しむことができます。
【付属品&ギミック】
・各部専用パーツの組み換えにより、非戦闘状態「ノーマルモード」と戦闘状態「ウィライズモード」の2種類の形態を再現可能。
・4種類のタンポ印刷済みの表情パーツが付属。
・好みの表情を作ることができる水転写表情デカールが付属。
・耳パーツはルミティアなど他のディアーズの耳パーツと差し換えが可能。
・尻尾は腰都の付け根部分は軸可動、ほか一節ごとにボールジョイントによりフレキシブルに可動。
・スカートはそれぞれ独立可動し、脚部可動範囲が拡大。
【ノーマルモード】
・ソフィエラとエンゲージするためのリングパーツが付属。
・小悪魔をイメージした背中の羽は取り付け基部に配置されたジョイントパーツにより、有機的で美麗なデザイン性とフレキシブルな可動性を両立。
・腰部魔法陣型のパーツは中央に3mm穴の空いたヘキサグラム形状のジョイントとなっており、安定した保持力を確保。
・ノーマルモード脚部は引き出し式膝関節の採用により、素立ちの際に前から関節ジョイントが見えない美しい脚線美と広範囲な可動を両立。
【ウィライズモード】
・上腕、膝の各装甲パーツは3mm径ジョイントによる接続により、様々な位置に取り付けが可能。
・腰の長短異なる4枚の主翼は先端がクリアパーツで造形。
・主翼は基部から取り外すことが可能で、短剣、双剣、自律攻撃武装など、様々なシチュエーションで活躍する武器としても使用可能。
・腰から下方向に伸びる長短のある4枚の尾羽は軸接続の基部に、それぞれが3mmボールジョイントで接続されていることによりソフィエラの動きに合わせて様々な表情付けが可能。
・大鎌から大鋏にモードチェンジする専用武器が付属。
・専用のスタンドが付属。
・PVC製の手首が左右それぞれ5種付属。
・各部に配置された3mm径の穴により既存M.S.G、フレームアームズ、フレームアームズ・ガール シリーズの武装と併用が可能。
・フレームアームズ・ガール、メガミデバイスの頭部を接続するための首パーツが付属。
![](https://wx4.sinaimg.cn/large/006SCGqIgy1hotmjnej2jj30rs0fnaeq.jpg)
#健康要有文化素養 & 健康要有哲學頭腦#
悪性関節リウマチ(指定難病46)
あくせいかんせつりうまち
○ 概要
1.概要
既存の関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)に、血管炎(リウマトイド血管炎)をはじめとする関節外症状を認め、難治性又は重症な臨床病態を伴う場合に、悪性関節リウマチ(MRA)という。関節リウマチの関節病変が進行して高度な関節機能障害を来しただけでは悪性関節リウマチとはいわない。悪性関節リウマチと診断される年齢のピークは60歳代で、男女比は1:2である。悪性関節リウマチの血管炎は結節性多発動脈炎と同様な全身性動脈炎型(内臓を系統的に侵し、生命予後不良)と内膜の線維性増殖を呈する末梢動脈炎型(四肢末梢及び皮膚を侵し、生命予後は良好)の2つの型に分けられる。臓器病変として間質性肺炎を生じると生命予後は不良である。
2.原因
関節リウマチと同様に病因は不明である。悪性関節リウマチ患者の関節リウマチの家族内発症は12%にみられる。関節リウマチはHLA-DR4 (HLA-DRB1*0401)との関連が指摘されているが、悪性関節リウマチではその関連がより強い。
悪性関節リウマチではIgGクラスのリウマトイド因子が高率に認められ、このIgGクラスのリウマトイド因子は自己凝集する。その免疫複合体は補体消費量が高く、血管炎の発症に関与しているとみなされている。
3.症状
全身血管炎型では既存の関節リウマチによる多発関節痛(炎)、発熱(38゜C以上)、体重減少を伴って皮下結節、紫斑、筋痛、筋力低下、間質性肺炎、胸膜炎、多発神経炎または多発性単神経炎、消化管出血、上強膜炎などの全身症状がかなり急速に出現する。
末梢動脈炎型では皮膚の潰瘍、梗塞、又は四肢先端の壊死や壊疸を主症状とする。
全身血管炎型ではリウマトイド因子高値、血清補体価低値、免疫複合体高値を示す。
4.治療法
悪性関節リウマチに伴う関節外病変の制御、及び関節の構造的変化と身体機能低下の進行抑制を目標に治療する。悪性関節リウマチの薬物治療には、グルココルチコイド、メトトレキサートをはじめとする従来型抗リウマチ薬、生物学的抗リウマチ薬、分子標的型合成抗リウマチ薬、シクロフォスファミドやアザチオプリンなどの免疫抑制薬などがあり、その他血漿交換療法も行われる。治療法の選択は臨床病態により異なる。
(1)全身症状(血管炎による臓器病変があり漿膜炎や上強膜炎などの関節外病変や発熱、体重減少を伴う)を伴うリウマトイド血管炎の寛解導入治療では、抗リウマチ薬あるいはグルココルチコイド単独よりも、グルココルチコイド+静注シクロホスファミドパルスを用いる。
(2)皮膚に限局したリウマトイド血管炎の寛解導入治療では、抗リウマチ薬単独よりもグルココルチコイド+アザチオプリンを用いる。
(3)治療抵抗性あるいは再発性のリウマトイド血管炎では,TNF阻害薬あるいはリツキシマブ*の使用を考慮する。
* 2021年現在保険適用外であることに留意する。
注1:治療内容を検討する際には、最新の診療ガイドライン等を参考にすること。
5.予後
悪性関節リウマチの転帰は、軽快21%、不変26%、悪化31%、死亡14%、不明・その他8%との2002年の本邦の疫学調査成績がある。死因は呼吸不全が最も多く、次いで感染症の合併、心不全、腎不全などがあげられる。2017年のKishoreらの報告によれば、積極的な治療アプローチにもかかわらず、リウマトイド血管炎の死亡率は以前と同様である。
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数(令和元年度医療受給者証保持者数)
5,246人
2.発病の機構
不明
3.効果的な治療方法
未確立(根治療法なし。)
4.長期の療養
必要(身体機能低下の進行抑制を目標に治療が必要である。)
5.診断基準
あり
6.重症度分類
悪性関節リウマチの重症度分類を用いて、1)又は2)の該当例を対象とする。
○ 情報提供元
難治性疾患等政策研究事業「難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班」
研究代表者 東京女子医科大学医学部内科学講座膠原病リウマチ内科学分野 針谷 正祥
<診断基準>
Definiteを対象とする。
1.臨床症状
(1)多発神経炎または多発性単神経炎:知覚障害、運動障害いずれを伴ってもよい。
(2)皮膚潰瘍又は梗塞又は指趾壊疽:感染や外傷によるものは含まない。
(3)皮下結節:骨突起部、伸側表面又は関節近傍にみられる皮下結節。
(4)上強膜炎又は虹彩炎:眼科的に確認され、他の原因によるものは含まない。
(5)滲出性胸膜炎又は心外膜炎:感染症など、他の原因によるものは含まない。癒着のみの所見は陽性にとらない。
(6)心筋炎:臨床所見、炎症反応、心筋逸脱酵素及び心筋特異的蛋白、心電図、心エコーなどにより診断されたものを陽性とする。
(7)間質性肺炎又は肺線維症:理学的所見、胸部X線、肺機能検査により確認されたものとし、病変の広がりは問わない。
(8)臓器梗塞:血管炎による虚血、壊死に起因した腸管、心筋、肺などの臓器梗塞。
(9)リウマトイド因子高値:2回以上の検査で、RF 960 IU/mL以上の値を示すこと。
(10)血清低補体価又は血中免疫複合体陽性:2回以上の検査で、C3、C4などの血清補体成分の低下若しくはCH50による血清補体価の低下をみること、又は2回以上の検査で血中免疫複合体陽性(C1q結合免疫複合体を標準とする)をみること。
2.組織所見
皮膚、筋、神経、その他の臓器の生検により小ないし中動脈の壊死性血管炎、肉芽腫性血管炎ないしは閉塞性動脈内膜炎を認めること。
3.診断のカテゴリー
ACR/EULARによる関節リウマチの分類基準 2010年(表1)を満たし、
Definite1 1.臨床症状(1)~(10)のうち3項目以上満たすもの。
Definite2 1.臨床症状(1)~(10)の項目の1項目以上と2.組織所見の項目を満たすもの。
を悪性関節リウマチと診断する。
4.鑑別診断
鑑別すべき疾患、病態として、感染症、続発性アミロイドーシス、治療薬剤(薬剤誘発性間質性肺炎、薬剤誘発性血管炎など)があげられる。アミロイドーシスでは、胃、直腸、皮膚、腎、肝などの生検によりアミロイドの沈着をみる。関節リウマチ以外の膠原病(全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎など)との重複症候群にも留意する。シェーグレン症候群は、関節リウマチに最も合併しやすい膠原病で、悪性関節リウマチにおいても約10%に合併する。フェルティ症候群も鑑別すべき疾患であるが、この場合、顆粒球減少、脾腫、易感染性をみる。
表1:ACR/EULARによる関節リウマチの分類基準(2010年)
1.この基準は関節炎を新たに発症した患者の分類を目的としている。関節リウマチに伴う典型的な骨びらんを有し、かつて上記分類を満たしたことがあれば関節リウマチと分類する。罹病期間が長い患者(治療の有無を問わず疾患活動性が消失している患者を含む。)で、以前のデータで上記分類を満たしたことがあれば関節リウマチと分類する。
2.鑑別診断は患者の症状により多岐にわたるが、全身性エリテマトーデス、乾癬性関節炎、痛風などを含む。鑑別診断が困難な場合は専門医に意見を求めるべきである。
3.合計点が5点以下の場合は関節リウマチと分類できないが、将来的に分類可能となる場合もあるため、必要に応じ後日改めて評価する。
4.DIP関節、第1CM関節、第1MTP関節は評価対象外
5.大関節:肩、肘、股、膝、足関節
6.小関節:MCP、PIP(IP)、MTP(2~5)、手関節
7.上に挙げていない関節(顎関節、肩鎖関節、胸鎖関節など)を含んでも良い。
8.RF: リウマトイド因子。陰性:正常上限値以下、弱陽性:正常上限3倍未満、強陽性:正常上限の3倍以上。リウマトイド因子の定性検査の場合、陽性は弱陽性としてスコア化する。
9.陽性、陰性の判定には各施設の基準を用いる。
10.罹病期間の判定は、評価時点で症状(疼痛、腫脹)を有している関節(治療の有無を問わない)について行い、患者申告による。
<重症度分類>
1)又は2)を認める場合を重症とする。
1)悪性関節リウマチによる以下のいずれかの臓器障害を有する。
臓器
障害の内容
腎臓
CKD重症度分類ヒートマップの赤色に該当*1、又は腎血管性高血圧*2。
肺
特発性間質性肺炎の重症度分類でIII度以上に該当*3、又は肺胞出血、又は滲出性胸膜炎
心臓
NYHA 2度以上の心不全徴候*4、又は心外膜炎。
眼
良好な方の眼の矯正視力が0.3未満
耳
両耳の聴力レベルが70デシベル以上、又は一側耳の聴力が90デシベル以上かつ他側耳の聴力レベルが50デシベル以上の聴力障害
平衡機能の著しい障害、又は極めて著しい障害*5
腸管
腸管梗塞、消化管出血
皮膚・軟部組織
四肢の梗塞・潰瘍・壊疽、又はそれらによる四肢の欠損・切断(部位は問わない)
神経
脳血管障害により、modified Rankin Scaleで3以上*6
末梢神経障害により、徒手筋力テストで筋力3以下*7
末梢神経障害による2肢以上の知覚異常
その他の臓器
肝、膵臓の梗塞、胆のう炎、睾丸炎等
2)血管炎の治療に伴う以下のいずれかの合併症を有し、かつ入院治療を必要とする。
・感染症
・圧迫骨折
・骨壊死
・消化性潰瘍
・糖尿病
・白内障
・緑内障
・精神症状
*1 CKD重症度分類ヒートマップ
*2 腎血管性高血圧
片側もしくは両側の腎動脈またはその分枝の狭窄または閉塞により発症する高血圧である。腎血管性高血圧は若年発症高血圧、治療抵抗性高血圧、悪性高血圧、腹部血管雑音、腎サイズの左右差、レニン-アンジオテンシン系阻害薬での腎機能の悪化などから疑われる。腎動脈狭窄を示す画像検査(腎動脈超音波検査、MRアンギオグラフィー、CTアンギオグラフィー、血管造影検査など)所見、血液・生化学検査所見(血漿レニン活性、アルドステロン値など)から総合的に診断する。
*3 特発性間質性肺炎の重症度分類
新重症度分類
安静時動脈血酸素分圧
6分間歩行時 SpO2
I
80Torr 以上
90 %未満の場合はIIIにする
II
70Torr 以上 80Torr 未満
90 %未満の場合はIIIにする
III
60Torr 以上 70Torr 未満
90 %未満の場合はIVにする
(危険な場合は測定不要)
IV
60Torr 未満
測定不要
※上記の重症度分類でⅢ度以上を重症とする。安静時動脈血酸素分圧でⅢ度以上の条件を満たせば6分間歩行は実施しなくても良い。
*4 NYHA心機能分類
クラス
自覚症状
Ⅰ
身体活動を制限する必要はない心疾患患者。通常の身体活動で、疲労、動悸、息切れ、狭心症状が起こらない。
Ⅱ
身体活動を軽度ないし中等度に制限する必要のある心疾患患者。通常の身体活動で、疲労、動悸、息切れ、狭心症状が起こる。
Ⅲ
身体活動を高度に制限する必要のある心疾患患者。安静時には何の愁訴もないが、普通以下の身体活動でも疲労、動悸、息切れ、狭心症状が起こる。
Ⅳ
身体活動の大部分を制限せざるを得ない心疾患患者。安静時にしていても心不全症状や狭心症状が起こり、少しでも身体活動を行うと症状が増悪する。
NYHA: New York Heart Association
上記分類でII度以上を重症とする。
NYHA分類については、以下の指標を参考に判断することとする。
NYHA分類
身体活動能力
(Specific Activity Scale; SAS)
最大酸素摂取量
(peakVO2)
I
6 METs以上
基準値の80%以上
II
3.5~5.9 METs
基準値の60~80%
III
2~3.4 METs
基準値の40~60%
IV
1~1.9 METs以下
施行不能あるいは
基準値の40%未満
※NYHA分類に厳密に対応するSASはないが、「室内歩行2METs、通常歩行3.5METs、ラジオ体操・ストレッチ体操4METs、速歩5~6METs、階段6~7METs」をおおよその目安として分類した。
![](https://wx1.sinaimg.cn/large/008vgpvwgy1hote186mtxj30kq0fmjyp.jpg)
悪性関節リウマチ(指定難病46)
あくせいかんせつりうまち
○ 概要
1.概要
既存の関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)に、血管炎(リウマトイド血管炎)をはじめとする関節外症状を認め、難治性又は重症な臨床病態を伴う場合に、悪性関節リウマチ(MRA)という。関節リウマチの関節病変が進行して高度な関節機能障害を来しただけでは悪性関節リウマチとはいわない。悪性関節リウマチと診断される年齢のピークは60歳代で、男女比は1:2である。悪性関節リウマチの血管炎は結節性多発動脈炎と同様な全身性動脈炎型(内臓を系統的に侵し、生命予後不良)と内膜の線維性増殖を呈する末梢動脈炎型(四肢末梢及び皮膚を侵し、生命予後は良好)の2つの型に分けられる。臓器病変として間質性肺炎を生じると生命予後は不良である。
2.原因
関節リウマチと同様に病因は不明である。悪性関節リウマチ患者の関節リウマチの家族内発症は12%にみられる。関節リウマチはHLA-DR4 (HLA-DRB1*0401)との関連が指摘されているが、悪性関節リウマチではその関連がより強い。
悪性関節リウマチではIgGクラスのリウマトイド因子が高率に認められ、このIgGクラスのリウマトイド因子は自己凝集する。その免疫複合体は補体消費量が高く、血管炎の発症に関与しているとみなされている。
3.症状
全身血管炎型では既存の関節リウマチによる多発関節痛(炎)、発熱(38゜C以上)、体重減少を伴って皮下結節、紫斑、筋痛、筋力低下、間質性肺炎、胸膜炎、多発神経炎または多発性単神経炎、消化管出血、上強膜炎などの全身症状がかなり急速に出現する。
末梢動脈炎型では皮膚の潰瘍、梗塞、又は四肢先端の壊死や壊疸を主症状とする。
全身血管炎型ではリウマトイド因子高値、血清補体価低値、免疫複合体高値を示す。
4.治療法
悪性関節リウマチに伴う関節外病変の制御、及び関節の構造的変化と身体機能低下の進行抑制を目標に治療する。悪性関節リウマチの薬物治療には、グルココルチコイド、メトトレキサートをはじめとする従来型抗リウマチ薬、生物学的抗リウマチ薬、分子標的型合成抗リウマチ薬、シクロフォスファミドやアザチオプリンなどの免疫抑制薬などがあり、その他血漿交換療法も行われる。治療法の選択は臨床病態により異なる。
(1)全身症状(血管炎による臓器病変があり漿膜炎や上強膜炎などの関節外病変や発熱、体重減少を伴う)を伴うリウマトイド血管炎の寛解導入治療では、抗リウマチ薬あるいはグルココルチコイド単独よりも、グルココルチコイド+静注シクロホスファミドパルスを用いる。
(2)皮膚に限局したリウマトイド血管炎の寛解導入治療では、抗リウマチ薬単独よりもグルココルチコイド+アザチオプリンを用いる。
(3)治療抵抗性あるいは再発性のリウマトイド血管炎では,TNF阻害薬あるいはリツキシマブ*の使用を考慮する。
* 2021年現在保険適用外であることに留意する。
注1:治療内容を検討する際には、最新の診療ガイドライン等を参考にすること。
5.予後
悪性関節リウマチの転帰は、軽快21%、不変26%、悪化31%、死亡14%、不明・その他8%との2002年の本邦の疫学調査成績がある。死因は呼吸不全が最も多く、次いで感染症の合併、心不全、腎不全などがあげられる。2017年のKishoreらの報告によれば、積極的な治療アプローチにもかかわらず、リウマトイド血管炎の死亡率は以前と同様である。
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数(令和元年度医療受給者証保持者数)
5,246人
2.発病の機構
不明
3.効果的な治療方法
未確立(根治療法なし。)
4.長期の療養
必要(身体機能低下の進行抑制を目標に治療が必要である。)
5.診断基準
あり
6.重症度分類
悪性関節リウマチの重症度分類を用いて、1)又は2)の該当例を対象とする。
○ 情報提供元
難治性疾患等政策研究事業「難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班」
研究代表者 東京女子医科大学医学部内科学講座膠原病リウマチ内科学分野 針谷 正祥
<診断基準>
Definiteを対象とする。
1.臨床症状
(1)多発神経炎または多発性単神経炎:知覚障害、運動障害いずれを伴ってもよい。
(2)皮膚潰瘍又は梗塞又は指趾壊疽:感染や外傷によるものは含まない。
(3)皮下結節:骨突起部、伸側表面又は関節近傍にみられる皮下結節。
(4)上強膜炎又は虹彩炎:眼科的に確認され、他の原因によるものは含まない。
(5)滲出性胸膜炎又は心外膜炎:感染症など、他の原因によるものは含まない。癒着のみの所見は陽性にとらない。
(6)心筋炎:臨床所見、炎症反応、心筋逸脱酵素及び心筋特異的蛋白、心電図、心エコーなどにより診断されたものを陽性とする。
(7)間質性肺炎又は肺線維症:理学的所見、胸部X線、肺機能検査により確認されたものとし、病変の広がりは問わない。
(8)臓器梗塞:血管炎による虚血、壊死に起因した腸管、心筋、肺などの臓器梗塞。
(9)リウマトイド因子高値:2回以上の検査で、RF 960 IU/mL以上の値を示すこと。
(10)血清低補体価又は血中免疫複合体陽性:2回以上の検査で、C3、C4などの血清補体成分の低下若しくはCH50による血清補体価の低下をみること、又は2回以上の検査で血中免疫複合体陽性(C1q結合免疫複合体を標準とする)をみること。
2.組織所見
皮膚、筋、神経、その他の臓器の生検により小ないし中動脈の壊死性血管炎、肉芽腫性血管炎ないしは閉塞性動脈内膜炎を認めること。
3.診断のカテゴリー
ACR/EULARによる関節リウマチの分類基準 2010年(表1)を満たし、
Definite1 1.臨床症状(1)~(10)のうち3項目以上満たすもの。
Definite2 1.臨床症状(1)~(10)の項目の1項目以上と2.組織所見の項目を満たすもの。
を悪性関節リウマチと診断する。
4.鑑別診断
鑑別すべき疾患、病態として、感染症、続発性アミロイドーシス、治療薬剤(薬剤誘発性間質性肺炎、薬剤誘発性血管炎など)があげられる。アミロイドーシスでは、胃、直腸、皮膚、腎、肝などの生検によりアミロイドの沈着をみる。関節リウマチ以外の膠原病(全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎など)との重複症候群にも留意する。シェーグレン症候群は、関節リウマチに最も合併しやすい膠原病で、悪性関節リウマチにおいても約10%に合併する。フェルティ症候群も鑑別すべき疾患であるが、この場合、顆粒球減少、脾腫、易感染性をみる。
表1:ACR/EULARによる関節リウマチの分類基準(2010年)
1.この基準は関節炎を新たに発症した患者の分類を目的としている。関節リウマチに伴う典型的な骨びらんを有し、かつて上記分類を満たしたことがあれば関節リウマチと分類する。罹病期間が長い患者(治療の有無を問わず疾患活動性が消失している患者を含む。)で、以前のデータで上記分類を満たしたことがあれば関節リウマチと分類する。
2.鑑別診断は患者の症状により多岐にわたるが、全身性エリテマトーデス、乾癬性関節炎、痛風などを含む。鑑別診断が困難な場合は専門医に意見を求めるべきである。
3.合計点が5点以下の場合は関節リウマチと分類できないが、将来的に分類可能となる場合もあるため、必要に応じ後日改めて評価する。
4.DIP関節、第1CM関節、第1MTP関節は評価対象外
5.大関節:肩、肘、股、膝、足関節
6.小関節:MCP、PIP(IP)、MTP(2~5)、手関節
7.上に挙げていない関節(顎関節、肩鎖関節、胸鎖関節など)を含んでも良い。
8.RF: リウマトイド因子。陰性:正常上限値以下、弱陽性:正常上限3倍未満、強陽性:正常上限の3倍以上。リウマトイド因子の定性検査の場合、陽性は弱陽性としてスコア化する。
9.陽性、陰性の判定には各施設の基準を用いる。
10.罹病期間の判定は、評価時点で症状(疼痛、腫脹)を有している関節(治療の有無を問わない)について行い、患者申告による。
<重症度分類>
1)又は2)を認める場合を重症とする。
1)悪性関節リウマチによる以下のいずれかの臓器障害を有する。
臓器
障害の内容
腎臓
CKD重症度分類ヒートマップの赤色に該当*1、又は腎血管性高血圧*2。
肺
特発性間質性肺炎の重症度分類でIII度以上に該当*3、又は肺胞出血、又は滲出性胸膜炎
心臓
NYHA 2度以上の心不全徴候*4、又は心外膜炎。
眼
良好な方の眼の矯正視力が0.3未満
耳
両耳の聴力レベルが70デシベル以上、又は一側耳の聴力が90デシベル以上かつ他側耳の聴力レベルが50デシベル以上の聴力障害
平衡機能の著しい障害、又は極めて著しい障害*5
腸管
腸管梗塞、消化管出血
皮膚・軟部組織
四肢の梗塞・潰瘍・壊疽、又はそれらによる四肢の欠損・切断(部位は問わない)
神経
脳血管障害により、modified Rankin Scaleで3以上*6
末梢神経障害により、徒手筋力テストで筋力3以下*7
末梢神経障害による2肢以上の知覚異常
その他の臓器
肝、膵臓の梗塞、胆のう炎、睾丸炎等
2)血管炎の治療に伴う以下のいずれかの合併症を有し、かつ入院治療を必要とする。
・感染症
・圧迫骨折
・骨壊死
・消化性潰瘍
・糖尿病
・白内障
・緑内障
・精神症状
*1 CKD重症度分類ヒートマップ
*2 腎血管性高血圧
片側もしくは両側の腎動脈またはその分枝の狭窄または閉塞により発症する高血圧である。腎血管性高血圧は若年発症高血圧、治療抵抗性高血圧、悪性高血圧、腹部血管雑音、腎サイズの左右差、レニン-アンジオテンシン系阻害薬での腎機能の悪化などから疑われる。腎動脈狭窄を示す画像検査(腎動脈超音波検査、MRアンギオグラフィー、CTアンギオグラフィー、血管造影検査など)所見、血液・生化学検査所見(血漿レニン活性、アルドステロン値など)から総合的に診断する。
*3 特発性間質性肺炎の重症度分類
新重症度分類
安静時動脈血酸素分圧
6分間歩行時 SpO2
I
80Torr 以上
90 %未満の場合はIIIにする
II
70Torr 以上 80Torr 未満
90 %未満の場合はIIIにする
III
60Torr 以上 70Torr 未満
90 %未満の場合はIVにする
(危険な場合は測定不要)
IV
60Torr 未満
測定不要
※上記の重症度分類でⅢ度以上を重症とする。安静時動脈血酸素分圧でⅢ度以上の条件を満たせば6分間歩行は実施しなくても良い。
*4 NYHA心機能分類
クラス
自覚症状
Ⅰ
身体活動を制限する必要はない心疾患患者。通常の身体活動で、疲労、動悸、息切れ、狭心症状が起こらない。
Ⅱ
身体活動を軽度ないし中等度に制限する必要のある心疾患患者。通常の身体活動で、疲労、動悸、息切れ、狭心症状が起こる。
Ⅲ
身体活動を高度に制限する必要のある心疾患患者。安静時には何の愁訴もないが、普通以下の身体活動でも疲労、動悸、息切れ、狭心症状が起こる。
Ⅳ
身体活動の大部分を制限せざるを得ない心疾患患者。安静時にしていても心不全症状や狭心症状が起こり、少しでも身体活動を行うと症状が増悪する。
NYHA: New York Heart Association
上記分類でII度以上を重症とする。
NYHA分類については、以下の指標を参考に判断することとする。
NYHA分類
身体活動能力
(Specific Activity Scale; SAS)
最大酸素摂取量
(peakVO2)
I
6 METs以上
基準値の80%以上
II
3.5~5.9 METs
基準値の60~80%
III
2~3.4 METs
基準値の40~60%
IV
1~1.9 METs以下
施行不能あるいは
基準値の40%未満
※NYHA分類に厳密に対応するSASはないが、「室内歩行2METs、通常歩行3.5METs、ラジオ体操・ストレッチ体操4METs、速歩5~6METs、階段6~7METs」をおおよその目安として分類した。
![](https://wx1.sinaimg.cn/large/008vgpvwgy1hote186mtxj30kq0fmjyp.jpg)
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