オペラ座の怪人
概要
新聞記者でもあったルルーの取材談のような疑似ノンフィクションテイストで書かれている。ルルーは執筆にあたり、実際のオペラ座(ガルニエ宮)の構造や地下の広大な奈落、建築経過などを詳しく取材しており、尚且つオペラ座が建設された当時の実際の幽霊話や陰惨な事件などを用いて、虚構と現実が入り交じったミステリアスな怪奇ロマンとして執筆した。
物語前半は、謎の『天使の声』に導かれ歌手として頭角を現す女優クリスティーヌ・ダーエと、彼女が謎の声に魅了されている様子を見て悩み苦しむ恋人ラウル・シャニュイ子爵の葛藤を中心とし、後半は『ファントム=怪人』ことエリックの暴走と悲劇的な素性、そして彼の秘密を知るペルシャ人・ダロガの手記という形で描かれている(この手記を手に入れたルルーが本作を執筆したという仮想現実構造になっている)。特に終盤はダロガが事実上の主役級になっているのが、後のミュージカル版等との大きな相違である。
あらすじ
舞台は1880年のパリ。年老いたマネージャーの退職日の夜、オペラ座の若手オペラ歌手のクリスティーヌはガラに出演して喝采を浴びる。幼馴染のラウル子爵はクリスティーヌの歌を聴き、彼女への愛を思い出す。この頃、オペラ座には謎の怪人が住み着いているという噂があり、月給2万フランと5番ボックス席の常時確保などを支配人に要求するなど、手紙や行動で、マネージャーに自身の存在を知らせていたという。怪人は音楽の才能に溢れ、投げ縄や奇術の達人でもあり、そしてクリスティーヌに恋をしていた。ガラの数日後、パリ国立オペラでは『ファウスト』を上演し、怪人の望みに反してカルロッタがプリマドンナとなり主役を演じる。上演中、カルロッタは声を失い、豪華なシャンデリアが客席に落下する。
怪人はクリスティーヌをさらい、自身が住むオペラ座の地下室に連れていき、エリックと名乗る。エリックは、クリスティーヌが数日間共に過ごし、自分を愛するようになることを望む。しかしエリックはクリスティーヌに仮面を剥ぎ取られ、鼻も唇もなく、落ち窪んだ目、生来の醜悪な人相に壊死した黄色い皮膚で覆われた、見るもおぞましいミイラのような顔を見られてしまったため、考えを変える。クリスティーヌが自分のもとを離れることを恐れたエリックは、彼女を永遠に自分のものとする決心をするが、2週間後クリスティーヌがここを出たいと言うと、自分の指輪をはめて信頼を裏切らないことを条件に解放する。
その後のクリスティーヌは、自分の楽屋の裏から聞こえる『天使の声』の指導で歌唱力を付け頭角を現すが、その様子に嫉妬したクリスティーヌの恋人ラウルは、『天使の声』の謎を解こうと奔走する。オペラ座の屋根の上で、クリスティーヌはラウルに、エリックにさらわれたことを打ち明ける。このエリックこそ『天使の声』であり、その正体はオペラ座の地下に広がる広大な水路の空間に住み着いた怪人であった。ラウルはエリックが、二度とクリスティーヌを見つけられないようにすると約束。翌日決行するつもりだと語り、クリスティーヌもこれに同意する。その一方でクリスティーヌはエリックを哀れに思い、最後にエリックのために歌うまで出て行かないことに決める。しかしエリックがこれを盗み聞きし、強い嫉妬を抱いていることを、クリスティーヌもラウルも気付いていなかった。
翌日の夜、『ファウスト』上演中にエリックはついに、クリスティーヌを誘拐してオペラ座の地下深く消え、強引に結婚しようとする。もし拒否すれば地下室に仕掛けた爆弾を爆発させオペラ座を破壊すると脅すが、クリスティーヌは拒否する。残されたラウルは元ダロガ(ペルシャ語で国家警察の長官という意味)の謎のペルシャ人と共に、クリスティーヌを取り戻すためオペラ座の地下のエリックの隠れ家へと潜入するが、辿り着いた先は侵入者用の拷問部屋だった。エリックはこれに気づき、ペルシャ人とラウルに、合わせ鏡のトリックと赤道直下の様な高温による拷問を始める。そのため彼らと地上の人々を守るべく、クリスティーヌはエリックと結婚することに合意する。そして仕掛けが作動し消火用水が爆薬を水没させるが、その水はそのまま拷問部屋に流れ込む仕掛けになっていた。エリックはそのままラウルとダロガを水死させようとするが、それに気づいたクリスティーヌは、自らの命を絶たずにエリックの「生ける花嫁」となる事に同意するのでラウルを殺さないようエリックに懇願する。エリックは拷問部屋からラウルとダロガを出す。エリックはダロガを地上に帰すものの、ラウルは解放せず地下の奥深くに監禁する。隠れ家に戻ったエリックは、クリスティーヌが自分を待っていた事、近づいても逃げたりせず額にキスをさせてくれた事に感極まって涙を流し、彼女の足元に崩れ落ちる。クリスティーヌは「可哀想で不幸なエリック」と言って涙を流す。エリックは、母親さえも自分にキスをさせてくれた事は無かったと後にダロガに明かす。エリックは2人を解放することを決め、ラウルの監禁を解く。エリックの家で再会したラウルとクリスティーヌは喜び抱き合う。エリックは、自分が死んだらクリスティーヌが訪問して遺体を埋葬し、その際クリスティーヌに渡した金の指輪を遺体の指にはめてくれるよう約束させる。去り際、クリスティーヌはエリックの額にキスをして隠れ家を後にする。しばらくしてエリックはダロガを訪問し、拷問後の一連の出来事を彼に話し、最後が間近になったら合図に遺品を送るので、新聞に自分の死を伝える記事を載せてくれるように頼む。三週間後、レポック紙に「エリック死亡」の記事が掲載された。
登場人物
エリック: オペラ座の怪人、音楽の天使、オペラ・ゴースト。オペラ座で暗躍する人物。万能の天才だが、生まれつき骸骨のように醜い容貌を持つ。
クリスティーヌ・ダーエ: パリ国立オペラの若く美しいスウェーデン人ソプラノ歌手。怪人が恋をする。
ラウル・シャニュイ子爵: クリスティーヌの幼馴染の美青年。彼女と互いに恋するが、エリックが原因で亀裂が生じかける。
ペルシア人: エリックの過去を知る謎の男。エリックと異なり良識派。エリックと旧知の仲だが、彼の悪事をあまりよく思っていない。
フィリップ・シャニュイ伯爵: ラウルの兄。弟と異なり良識派の中年男性。クリスティーヌのことで暴走する弟を心配している。
アマンド・モンチャミン、ファーミン・リチャード: オペラ座の新しいマネージャー、怪人の要求に悩まされる日々を送る。
マダム・ジリー: リトル・メグの母、ボックス席案内員。エリックの知り合いの1人。
メグ・ジリー: マダム・ジリーの一人娘のバレリーナ。のちのカストロ・バルベザク男爵夫人。
デビエンヌ、ポリグニー: オペラ座の元マネージャー。かつてエリックの要求に苦しめられていたため、我慢の限界が来て引退しモンチャミンとリチャードにオペラ座の支配人の座を引き渡した。
ジョセフ・ブケー: 道具係チーフ、怪人の顔を見たため冒頭で彼に殺される。
カルロッタ: 我儘なプリマドンナ。パリ国立オペラのリード・ソプラノ。クリスティーヌを毛嫌いしている。
メルシエ: オペラ座の舞台装置マネージャー。
ガブリエル: 迷信的なコーラス・マスター。
ミフロイド: クリスティーヌが行方不明になった時に呼ばれた警視。クリスティーヌの失踪をシャニュイ兄弟のいざこざの巻き添えと決めてかかる。
レミー: マネージャーの秘書
警部補: 5番ボックス席の異変を捜査するために雇われた警部補。
ショー・サルタン: エリックがかつて設計した宮殿に住む王で、彼を殺そうとする。
ソレリ: リード・バレリーナ。フィリップと深い仲で、彼と行動を共にする。
リトル・ジャミス: オペラ座で語られるバレリーナ。
マダム・ヴァレリアス: クリスティーヌの保護者である人物。
概要
新聞記者でもあったルルーの取材談のような疑似ノンフィクションテイストで書かれている。ルルーは執筆にあたり、実際のオペラ座(ガルニエ宮)の構造や地下の広大な奈落、建築経過などを詳しく取材しており、尚且つオペラ座が建設された当時の実際の幽霊話や陰惨な事件などを用いて、虚構と現実が入り交じったミステリアスな怪奇ロマンとして執筆した。
物語前半は、謎の『天使の声』に導かれ歌手として頭角を現す女優クリスティーヌ・ダーエと、彼女が謎の声に魅了されている様子を見て悩み苦しむ恋人ラウル・シャニュイ子爵の葛藤を中心とし、後半は『ファントム=怪人』ことエリックの暴走と悲劇的な素性、そして彼の秘密を知るペルシャ人・ダロガの手記という形で描かれている(この手記を手に入れたルルーが本作を執筆したという仮想現実構造になっている)。特に終盤はダロガが事実上の主役級になっているのが、後のミュージカル版等との大きな相違である。
あらすじ
舞台は1880年のパリ。年老いたマネージャーの退職日の夜、オペラ座の若手オペラ歌手のクリスティーヌはガラに出演して喝采を浴びる。幼馴染のラウル子爵はクリスティーヌの歌を聴き、彼女への愛を思い出す。この頃、オペラ座には謎の怪人が住み着いているという噂があり、月給2万フランと5番ボックス席の常時確保などを支配人に要求するなど、手紙や行動で、マネージャーに自身の存在を知らせていたという。怪人は音楽の才能に溢れ、投げ縄や奇術の達人でもあり、そしてクリスティーヌに恋をしていた。ガラの数日後、パリ国立オペラでは『ファウスト』を上演し、怪人の望みに反してカルロッタがプリマドンナとなり主役を演じる。上演中、カルロッタは声を失い、豪華なシャンデリアが客席に落下する。
怪人はクリスティーヌをさらい、自身が住むオペラ座の地下室に連れていき、エリックと名乗る。エリックは、クリスティーヌが数日間共に過ごし、自分を愛するようになることを望む。しかしエリックはクリスティーヌに仮面を剥ぎ取られ、鼻も唇もなく、落ち窪んだ目、生来の醜悪な人相に壊死した黄色い皮膚で覆われた、見るもおぞましいミイラのような顔を見られてしまったため、考えを変える。クリスティーヌが自分のもとを離れることを恐れたエリックは、彼女を永遠に自分のものとする決心をするが、2週間後クリスティーヌがここを出たいと言うと、自分の指輪をはめて信頼を裏切らないことを条件に解放する。
その後のクリスティーヌは、自分の楽屋の裏から聞こえる『天使の声』の指導で歌唱力を付け頭角を現すが、その様子に嫉妬したクリスティーヌの恋人ラウルは、『天使の声』の謎を解こうと奔走する。オペラ座の屋根の上で、クリスティーヌはラウルに、エリックにさらわれたことを打ち明ける。このエリックこそ『天使の声』であり、その正体はオペラ座の地下に広がる広大な水路の空間に住み着いた怪人であった。ラウルはエリックが、二度とクリスティーヌを見つけられないようにすると約束。翌日決行するつもりだと語り、クリスティーヌもこれに同意する。その一方でクリスティーヌはエリックを哀れに思い、最後にエリックのために歌うまで出て行かないことに決める。しかしエリックがこれを盗み聞きし、強い嫉妬を抱いていることを、クリスティーヌもラウルも気付いていなかった。
翌日の夜、『ファウスト』上演中にエリックはついに、クリスティーヌを誘拐してオペラ座の地下深く消え、強引に結婚しようとする。もし拒否すれば地下室に仕掛けた爆弾を爆発させオペラ座を破壊すると脅すが、クリスティーヌは拒否する。残されたラウルは元ダロガ(ペルシャ語で国家警察の長官という意味)の謎のペルシャ人と共に、クリスティーヌを取り戻すためオペラ座の地下のエリックの隠れ家へと潜入するが、辿り着いた先は侵入者用の拷問部屋だった。エリックはこれに気づき、ペルシャ人とラウルに、合わせ鏡のトリックと赤道直下の様な高温による拷問を始める。そのため彼らと地上の人々を守るべく、クリスティーヌはエリックと結婚することに合意する。そして仕掛けが作動し消火用水が爆薬を水没させるが、その水はそのまま拷問部屋に流れ込む仕掛けになっていた。エリックはそのままラウルとダロガを水死させようとするが、それに気づいたクリスティーヌは、自らの命を絶たずにエリックの「生ける花嫁」となる事に同意するのでラウルを殺さないようエリックに懇願する。エリックは拷問部屋からラウルとダロガを出す。エリックはダロガを地上に帰すものの、ラウルは解放せず地下の奥深くに監禁する。隠れ家に戻ったエリックは、クリスティーヌが自分を待っていた事、近づいても逃げたりせず額にキスをさせてくれた事に感極まって涙を流し、彼女の足元に崩れ落ちる。クリスティーヌは「可哀想で不幸なエリック」と言って涙を流す。エリックは、母親さえも自分にキスをさせてくれた事は無かったと後にダロガに明かす。エリックは2人を解放することを決め、ラウルの監禁を解く。エリックの家で再会したラウルとクリスティーヌは喜び抱き合う。エリックは、自分が死んだらクリスティーヌが訪問して遺体を埋葬し、その際クリスティーヌに渡した金の指輪を遺体の指にはめてくれるよう約束させる。去り際、クリスティーヌはエリックの額にキスをして隠れ家を後にする。しばらくしてエリックはダロガを訪問し、拷問後の一連の出来事を彼に話し、最後が間近になったら合図に遺品を送るので、新聞に自分の死を伝える記事を載せてくれるように頼む。三週間後、レポック紙に「エリック死亡」の記事が掲載された。
登場人物
エリック: オペラ座の怪人、音楽の天使、オペラ・ゴースト。オペラ座で暗躍する人物。万能の天才だが、生まれつき骸骨のように醜い容貌を持つ。
クリスティーヌ・ダーエ: パリ国立オペラの若く美しいスウェーデン人ソプラノ歌手。怪人が恋をする。
ラウル・シャニュイ子爵: クリスティーヌの幼馴染の美青年。彼女と互いに恋するが、エリックが原因で亀裂が生じかける。
ペルシア人: エリックの過去を知る謎の男。エリックと異なり良識派。エリックと旧知の仲だが、彼の悪事をあまりよく思っていない。
フィリップ・シャニュイ伯爵: ラウルの兄。弟と異なり良識派の中年男性。クリスティーヌのことで暴走する弟を心配している。
アマンド・モンチャミン、ファーミン・リチャード: オペラ座の新しいマネージャー、怪人の要求に悩まされる日々を送る。
マダム・ジリー: リトル・メグの母、ボックス席案内員。エリックの知り合いの1人。
メグ・ジリー: マダム・ジリーの一人娘のバレリーナ。のちのカストロ・バルベザク男爵夫人。
デビエンヌ、ポリグニー: オペラ座の元マネージャー。かつてエリックの要求に苦しめられていたため、我慢の限界が来て引退しモンチャミンとリチャードにオペラ座の支配人の座を引き渡した。
ジョセフ・ブケー: 道具係チーフ、怪人の顔を見たため冒頭で彼に殺される。
カルロッタ: 我儘なプリマドンナ。パリ国立オペラのリード・ソプラノ。クリスティーヌを毛嫌いしている。
メルシエ: オペラ座の舞台装置マネージャー。
ガブリエル: 迷信的なコーラス・マスター。
ミフロイド: クリスティーヌが行方不明になった時に呼ばれた警視。クリスティーヌの失踪をシャニュイ兄弟のいざこざの巻き添えと決めてかかる。
レミー: マネージャーの秘書
警部補: 5番ボックス席の異変を捜査するために雇われた警部補。
ショー・サルタン: エリックがかつて設計した宮殿に住む王で、彼を殺そうとする。
ソレリ: リード・バレリーナ。フィリップと深い仲で、彼と行動を共にする。
リトル・ジャミス: オペラ座で語られるバレリーナ。
マダム・ヴァレリアス: クリスティーヌの保護者である人物。
《狂人日记》鲁迅(下)
七
わたしは彼等の手段を悟った。手取り早く殺してしまうことは、いやでもあるし、またやろうともしないのだ。罪祟りを恐れているから、衆みなの者が連絡を取って網を張り詰め、わたしに自害を迫っているのだ。四五日このかた往来の男女の様子を見ても、アニキの行動を見ても八九分通りは悟られて来た。一番都合のいいのは、帯を解いて梁はりに掛け、自分で縊くびれて死ねば彼等に殺人の罪名がないわけだ。そうすれば自然願いが通って皆大喜びで鼠泣きするだろう。しかし驚き恐れ憂い悲しんで死んでも、いくらか痩せるくらいでまんざら役に立たないことはない。
彼等は死肉を食べつつある!――何かの本に書いてあったことを想い出したが、「海乙那かいおつな」という一種の代物がある。眼光めつきと様子がとても醜い。いつも死肉を食って、どんな大きな骨でもパリパリと咬み砕き、腹の中に嚥のみ下してしまう。想い出しても恐ろしいものだが、この「海乙那」は狼の親類で、狼は犬の本家である。先日趙家の犬めが幾度も乃公を見たが、さてこそ彼も一味徒党で、もう接洽ひきあいもすんでいるのだろう。あの親爺がいくら地面を眺めたって、乃公を胡魔化すことが出来るもんか。中にも気の毒なのは乃公のアニキだ。彼だって人間だ。恐ろしい事とも思わずに何ゆえ仲間を集めて乃公を食うのだろう。やっぱり永年ながねんのしきたりで悪い事とは思っていないのだろう。それとも良心を喪失してしまって、知っていながらことさら犯しているのだろう。
わたしは食人者を呪う。まず彼から発起して食人の人達を勧誘し、また彼から先手をつける。
八
実際この種の道理は今になってみると、彼等もわかり切っているのだ。
ひょっくり一人の男が来た。年頃は二十前後で、人相はあまりハッキリしていないが、顔じゅうに笑いを浮べてわたしに向ってお辞儀をした。彼の笑いは本当の笑いとは見えない。わたしは訊いてみた。
「人食いの仕事は旨く行ったかね」
彼はやっぱり笑いながら話した。
「餓饉年じゃあるまいし、人を食うことなど出来やしません」
わたしは彼が仲間であることにすぐに気がついた。人を食うのを喜ぶのだろうと思うと、勇気百倍して無理にも訊いてやろうと思う。
「うまく行ったかえ」
「そんなことを訊いてどうするんだ。お前は本統ほんとうにわかるのかね。冗当を言っているんじゃないかな。きょうは大層いい天気だよ」
天気もいいし月も明るい。だが乃公はお前に訊くつもりだ。
「うまく行ったかえ」
彼はいけないと思っているのだろう。あいまいの返辞をした。
「いけ……」
「いけない? あいつ等はもう食ってしまったんだろう」
「ありもしないこと」
「ありもしないこと? 狼村ろうそんでは現在食べているし、本にもちゃんと書いてある。出来立てのほやほやだ」
彼は顔色を変えて鉄のように青くなり目を※(「目+爭」、第3水準1-88-85)みはって言った。
「あるかもしれないが、まあそんなものさ……」
「まあそんなものだ。じゃ旨く行ったんだね」
「わたしはお前とそんな話をするのはいやだ。どうしてもお前は間違っている。話をすればするほど間違って来る」
わたしは跳び上って眼を開けると、体じゅうが汗びっしょりになり、その人の姿は見えない。年頃はわたしのアニキよりもずっと若いがこいつはテッキリ仲間の一人に違いない。きっと彼等の親達が彼に教えて、そうしてまた彼の子供に伝えるのだろう。だから小さな子供等が皆憎らしげにわたしを見る。
九
自分で人を食えば、人から食われる恐れがあるので、皆疑い深い目付をして顔と顔と覗き合う。この心さえ除き去れば安心して仕事が出来、道を歩いても飯を食っても睡眠しても、何と朗らかなものであろう。ただこの一本の閾しきい、一つの関所があればこそ、彼らは親子、兄弟、夫婦、朋友、師弟、仇敵、各々相識しらざる者までも皆一団にかたまって、互に勧め合い互に牽制し合い、死んでもこの一歩を跨ぎ去ろうとはしない。
一〇
朝早くアニキの所へ行ってみると、彼は堂門の外で空を眺めていた。わたしは彼の後ろから近寄って門前に立ち塞がり、いとも静かにいとも親しげに彼に向って言った。
「兄さん、わたしはあなたに言いたいことがある」
「お前、言ってごらん」
彼は顔をこちらに向けて頭を動かした。
「わたしは二つ三つ話をすればいいのだが、旨く言い出せるかしら。兄さん、大抵初めの野蛮人は皆人を食っていた。後になると心の持方が違って来て、中には人を食わぬ者もあり、その人達は質たちのいい方で人間に成り変り、真の人間に成り変った。またある者は虫ケラ同様にいつまでも人を食っていた。またある者は魚鳥や猿に変化し、それから人間に成り変った。またある者は善いことをしようとは思わず、今でもやはり虫ケラだ。この人を食う人達は人を食わぬ人達に比べてみると、いかにも忌わしい愧はずべき者ではないか。おそらく虫ケラが猿に劣るよりももっと甚だしい。
易牙えきがが彼の子供を蒸して桀紂けっちゅうに食わせたのはずっと昔のことで誰だってよくわからぬが、盤古が天地を開闢かいびゃくしてから、ずっと易牙の時代まで子供を食い続け、易牙の子からずっと徐錫林じょしゃくりんまで、徐錫林から狼村で捉まった男までずっと食い続けて来たのかもしれない。去年も城内で犯人が殺されると、癆症ろうしょう病みの人が彼の血を饅頭に※(「くさかんむり/(酉+隹)/れんが」、第3水準1-91-44)ひたして食った。
あの人達がわたしを食おうとすれば、全くあなた一人では法返しがつくまい。しかし何も向うへ行って仲間入をしなければならぬということはあるまい。あの人達がわたしを食えばあなたもまた食われる。結局仲間同志の食い合いだ。けれどちょっと方針を変えてこの場ですぐに改めれば、人々は太平無事で、たとい今までの仕来しきたりがどうあろうとも、わたしどもは今日こんにち特別の改良をすることが出来る。なに、出来ないと被仰おっしゃるるのか。兄さん、あなたがやればきっと出来ると思う。こないだ小作人が減租を要求した時、あなたが出来ないと撥ねつけたように」
最初彼はただ冷笑するのみであったが、まもなく眼が気味悪く光って来て、彼等の秘密を説き破った頃には顔じゅうが真青になった。表門の外には大勢の人が立っていて、趙貴翁と彼の犬もその中に交って皆恐る恐る近寄って来た。ある者は顔を見られぬように頬かぶりをしていたようでもあった。ある者はやはりいつもの青面あおづらで出歯でっぱを抑えて笑っていた。わたしは彼等が皆一つ仲間の食人種であることを知っているが、彼等の考かんがえが皆一様でないことも知っている。その一種は昔からの仕来りで人を食っても構わないと思っている者で、他の一種は人を食ってはいけないと知りながら、やはり食いたいと思っている者である。彼等は他人に説破されることを恐れているのでわたしの話を聞くとますます腹を立て口を尖らせて冷笑している。
この時アニキはたちまち兇相を現わし、大喝一声した。
「皆出て行け、気狂きちがいを見て何が面白い」
同時にわたしは彼等の巧妙な手段を悟った。彼等は改心しないばかりか、すでに用心深く手配して気狂という名をわたしにかぶせ、いずれわたしを食べる時に無事に辻褄を合せるつもりだ。衆みなが一人の悪人を食った小作人の話もまさにこの方法で、これこそ彼等の常用手段だ。
陳老五は憤々ぷんぷんしながらやって来た。どんなにわたしの口を抑えようが、わたしはどこまでも言ってやる。
「お前達は改心せよ。真心から改心せよ。ウン、解ったか。人を食う人は将来世の中に容れられず、生きてゆかれるはずがない。お前達が改心せずにいれば、自分もまた食い尽されてしまう。仲間が殖ふえれば殖えるほど本当の人間に依って滅亡されてしまう。猟師が、狼を狩り尽すように――虫ケラ同様に」
彼等は皆陳老五に追払われてしまった。陳老五はわたしに勧めて部屋に帰らせた。部屋の中は真暗で横梁よこはりと椽木たるきが頭の上で震えていた。しばらく震えているうちに、大おおいに持上ってわたしの身体の上に堆積した。
何という重みだろう。撥ね返すことも出来ない。彼等の考は、わたしが死ねばいいと思っているのだ。わたしはこの重みが※(「言+虚」、第4水準2-88-74)うそであることを知っているから、押除おしのけると、身体中の汗が出た。しかしどこまでも言ってやる。
「お前はすぐに改心しろ、真心から改心しろ、ウン解ったか。人を食う奴は将来容れられるはずがない」
一一
太陽も出ない。門も開かない。毎日二度の御飯だ。
わたしは箸をひねってアニキの事を想い出した。解った。妹の死んだ訳も全く彼だ。あの時妹はようやく五歳になったばかり、そのいじらしい可愛らしい様子は今も眼の前にある。母親は泣き続けていると、彼は母親に勧めて、泣いちゃいけないと言ったのは、大方自分で食ったので、泣き出されたら多少気の毒にもなる。しかし果して気の毒に思うかしら……
妹はアニキに食われた。母は妹が無くなったことを知っている。わたしはまあ知らないことにしておこう。
母も知ってるに違いない。が泣いた時には何にも言わない。大方当り前だと思っているのだろう。そこで想い出したが、わたしが四五歳の時、堂前に涼んでいるとアニキが言った。親の病には、子たる者は自ら一片ひときれの肉を切取ってそれを煮て、親に食わせるのが好よき人というべきだ。母もそうしちゃいけないとは言わなかった。一片食えばだんだんどっさり食うものだ。けれどあの日の泣き方は今想い出しても、人の悲しみを催す。これはまったく奇妙なことだ。
一二
想像することも出来ない。
四千年来、時々人を食う地方が今ようやくわかった。わたしも永年ながねんその中に交っていたのだ。アニキが家政のキリモリしていた時に、ちょうど妹が死んだ。彼はそっとお菜の中に交ぜて、わたしどもに食わせた事がないとも限らん。
わたしは知らぬままに何ほどか妹の肉を食わない事がないとも限らん。現在いよいよ乃公の番が来たんだ……
四千年間、人食いの歴史があるとは、初めわたしは知らなかったが、今わかった。真の人間は見出し難い。
一三
人を食わずにいる子供は、あるいはあるかもしれない。
救えよ救え。子供……
(一九一八年四月)
底本:「魯迅全集」改造社
1932(昭和7)年11月18日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
七
わたしは彼等の手段を悟った。手取り早く殺してしまうことは、いやでもあるし、またやろうともしないのだ。罪祟りを恐れているから、衆みなの者が連絡を取って網を張り詰め、わたしに自害を迫っているのだ。四五日このかた往来の男女の様子を見ても、アニキの行動を見ても八九分通りは悟られて来た。一番都合のいいのは、帯を解いて梁はりに掛け、自分で縊くびれて死ねば彼等に殺人の罪名がないわけだ。そうすれば自然願いが通って皆大喜びで鼠泣きするだろう。しかし驚き恐れ憂い悲しんで死んでも、いくらか痩せるくらいでまんざら役に立たないことはない。
彼等は死肉を食べつつある!――何かの本に書いてあったことを想い出したが、「海乙那かいおつな」という一種の代物がある。眼光めつきと様子がとても醜い。いつも死肉を食って、どんな大きな骨でもパリパリと咬み砕き、腹の中に嚥のみ下してしまう。想い出しても恐ろしいものだが、この「海乙那」は狼の親類で、狼は犬の本家である。先日趙家の犬めが幾度も乃公を見たが、さてこそ彼も一味徒党で、もう接洽ひきあいもすんでいるのだろう。あの親爺がいくら地面を眺めたって、乃公を胡魔化すことが出来るもんか。中にも気の毒なのは乃公のアニキだ。彼だって人間だ。恐ろしい事とも思わずに何ゆえ仲間を集めて乃公を食うのだろう。やっぱり永年ながねんのしきたりで悪い事とは思っていないのだろう。それとも良心を喪失してしまって、知っていながらことさら犯しているのだろう。
わたしは食人者を呪う。まず彼から発起して食人の人達を勧誘し、また彼から先手をつける。
八
実際この種の道理は今になってみると、彼等もわかり切っているのだ。
ひょっくり一人の男が来た。年頃は二十前後で、人相はあまりハッキリしていないが、顔じゅうに笑いを浮べてわたしに向ってお辞儀をした。彼の笑いは本当の笑いとは見えない。わたしは訊いてみた。
「人食いの仕事は旨く行ったかね」
彼はやっぱり笑いながら話した。
「餓饉年じゃあるまいし、人を食うことなど出来やしません」
わたしは彼が仲間であることにすぐに気がついた。人を食うのを喜ぶのだろうと思うと、勇気百倍して無理にも訊いてやろうと思う。
「うまく行ったかえ」
「そんなことを訊いてどうするんだ。お前は本統ほんとうにわかるのかね。冗当を言っているんじゃないかな。きょうは大層いい天気だよ」
天気もいいし月も明るい。だが乃公はお前に訊くつもりだ。
「うまく行ったかえ」
彼はいけないと思っているのだろう。あいまいの返辞をした。
「いけ……」
「いけない? あいつ等はもう食ってしまったんだろう」
「ありもしないこと」
「ありもしないこと? 狼村ろうそんでは現在食べているし、本にもちゃんと書いてある。出来立てのほやほやだ」
彼は顔色を変えて鉄のように青くなり目を※(「目+爭」、第3水準1-88-85)みはって言った。
「あるかもしれないが、まあそんなものさ……」
「まあそんなものだ。じゃ旨く行ったんだね」
「わたしはお前とそんな話をするのはいやだ。どうしてもお前は間違っている。話をすればするほど間違って来る」
わたしは跳び上って眼を開けると、体じゅうが汗びっしょりになり、その人の姿は見えない。年頃はわたしのアニキよりもずっと若いがこいつはテッキリ仲間の一人に違いない。きっと彼等の親達が彼に教えて、そうしてまた彼の子供に伝えるのだろう。だから小さな子供等が皆憎らしげにわたしを見る。
九
自分で人を食えば、人から食われる恐れがあるので、皆疑い深い目付をして顔と顔と覗き合う。この心さえ除き去れば安心して仕事が出来、道を歩いても飯を食っても睡眠しても、何と朗らかなものであろう。ただこの一本の閾しきい、一つの関所があればこそ、彼らは親子、兄弟、夫婦、朋友、師弟、仇敵、各々相識しらざる者までも皆一団にかたまって、互に勧め合い互に牽制し合い、死んでもこの一歩を跨ぎ去ろうとはしない。
一〇
朝早くアニキの所へ行ってみると、彼は堂門の外で空を眺めていた。わたしは彼の後ろから近寄って門前に立ち塞がり、いとも静かにいとも親しげに彼に向って言った。
「兄さん、わたしはあなたに言いたいことがある」
「お前、言ってごらん」
彼は顔をこちらに向けて頭を動かした。
「わたしは二つ三つ話をすればいいのだが、旨く言い出せるかしら。兄さん、大抵初めの野蛮人は皆人を食っていた。後になると心の持方が違って来て、中には人を食わぬ者もあり、その人達は質たちのいい方で人間に成り変り、真の人間に成り変った。またある者は虫ケラ同様にいつまでも人を食っていた。またある者は魚鳥や猿に変化し、それから人間に成り変った。またある者は善いことをしようとは思わず、今でもやはり虫ケラだ。この人を食う人達は人を食わぬ人達に比べてみると、いかにも忌わしい愧はずべき者ではないか。おそらく虫ケラが猿に劣るよりももっと甚だしい。
易牙えきがが彼の子供を蒸して桀紂けっちゅうに食わせたのはずっと昔のことで誰だってよくわからぬが、盤古が天地を開闢かいびゃくしてから、ずっと易牙の時代まで子供を食い続け、易牙の子からずっと徐錫林じょしゃくりんまで、徐錫林から狼村で捉まった男までずっと食い続けて来たのかもしれない。去年も城内で犯人が殺されると、癆症ろうしょう病みの人が彼の血を饅頭に※(「くさかんむり/(酉+隹)/れんが」、第3水準1-91-44)ひたして食った。
あの人達がわたしを食おうとすれば、全くあなた一人では法返しがつくまい。しかし何も向うへ行って仲間入をしなければならぬということはあるまい。あの人達がわたしを食えばあなたもまた食われる。結局仲間同志の食い合いだ。けれどちょっと方針を変えてこの場ですぐに改めれば、人々は太平無事で、たとい今までの仕来しきたりがどうあろうとも、わたしどもは今日こんにち特別の改良をすることが出来る。なに、出来ないと被仰おっしゃるるのか。兄さん、あなたがやればきっと出来ると思う。こないだ小作人が減租を要求した時、あなたが出来ないと撥ねつけたように」
最初彼はただ冷笑するのみであったが、まもなく眼が気味悪く光って来て、彼等の秘密を説き破った頃には顔じゅうが真青になった。表門の外には大勢の人が立っていて、趙貴翁と彼の犬もその中に交って皆恐る恐る近寄って来た。ある者は顔を見られぬように頬かぶりをしていたようでもあった。ある者はやはりいつもの青面あおづらで出歯でっぱを抑えて笑っていた。わたしは彼等が皆一つ仲間の食人種であることを知っているが、彼等の考かんがえが皆一様でないことも知っている。その一種は昔からの仕来りで人を食っても構わないと思っている者で、他の一種は人を食ってはいけないと知りながら、やはり食いたいと思っている者である。彼等は他人に説破されることを恐れているのでわたしの話を聞くとますます腹を立て口を尖らせて冷笑している。
この時アニキはたちまち兇相を現わし、大喝一声した。
「皆出て行け、気狂きちがいを見て何が面白い」
同時にわたしは彼等の巧妙な手段を悟った。彼等は改心しないばかりか、すでに用心深く手配して気狂という名をわたしにかぶせ、いずれわたしを食べる時に無事に辻褄を合せるつもりだ。衆みなが一人の悪人を食った小作人の話もまさにこの方法で、これこそ彼等の常用手段だ。
陳老五は憤々ぷんぷんしながらやって来た。どんなにわたしの口を抑えようが、わたしはどこまでも言ってやる。
「お前達は改心せよ。真心から改心せよ。ウン、解ったか。人を食う人は将来世の中に容れられず、生きてゆかれるはずがない。お前達が改心せずにいれば、自分もまた食い尽されてしまう。仲間が殖ふえれば殖えるほど本当の人間に依って滅亡されてしまう。猟師が、狼を狩り尽すように――虫ケラ同様に」
彼等は皆陳老五に追払われてしまった。陳老五はわたしに勧めて部屋に帰らせた。部屋の中は真暗で横梁よこはりと椽木たるきが頭の上で震えていた。しばらく震えているうちに、大おおいに持上ってわたしの身体の上に堆積した。
何という重みだろう。撥ね返すことも出来ない。彼等の考は、わたしが死ねばいいと思っているのだ。わたしはこの重みが※(「言+虚」、第4水準2-88-74)うそであることを知っているから、押除おしのけると、身体中の汗が出た。しかしどこまでも言ってやる。
「お前はすぐに改心しろ、真心から改心しろ、ウン解ったか。人を食う奴は将来容れられるはずがない」
一一
太陽も出ない。門も開かない。毎日二度の御飯だ。
わたしは箸をひねってアニキの事を想い出した。解った。妹の死んだ訳も全く彼だ。あの時妹はようやく五歳になったばかり、そのいじらしい可愛らしい様子は今も眼の前にある。母親は泣き続けていると、彼は母親に勧めて、泣いちゃいけないと言ったのは、大方自分で食ったので、泣き出されたら多少気の毒にもなる。しかし果して気の毒に思うかしら……
妹はアニキに食われた。母は妹が無くなったことを知っている。わたしはまあ知らないことにしておこう。
母も知ってるに違いない。が泣いた時には何にも言わない。大方当り前だと思っているのだろう。そこで想い出したが、わたしが四五歳の時、堂前に涼んでいるとアニキが言った。親の病には、子たる者は自ら一片ひときれの肉を切取ってそれを煮て、親に食わせるのが好よき人というべきだ。母もそうしちゃいけないとは言わなかった。一片食えばだんだんどっさり食うものだ。けれどあの日の泣き方は今想い出しても、人の悲しみを催す。これはまったく奇妙なことだ。
一二
想像することも出来ない。
四千年来、時々人を食う地方が今ようやくわかった。わたしも永年ながねんその中に交っていたのだ。アニキが家政のキリモリしていた時に、ちょうど妹が死んだ。彼はそっとお菜の中に交ぜて、わたしどもに食わせた事がないとも限らん。
わたしは知らぬままに何ほどか妹の肉を食わない事がないとも限らん。現在いよいよ乃公の番が来たんだ……
四千年間、人食いの歴史があるとは、初めわたしは知らなかったが、今わかった。真の人間は見出し難い。
一三
人を食わずにいる子供は、あるいはあるかもしれない。
救えよ救え。子供……
(一九一八年四月)
底本:「魯迅全集」改造社
1932(昭和7)年11月18日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
#假面骑士build[超话]#
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