【ギルガメッシュ FIGHT】
藤原季節:“ギルガメ”ドラマで触れた「テレビマン」のかっこよさ 今後も“演じさせていただく”気持ち忘れずに
1990年代に人気を博したテレビ東京の深夜のお色気番組「ギルガメッシュないと」から着想を得たドラマ「Paravi オリジナルドラマ『ギルガメッシュ FIGHT』」で主演を務めている俳優の藤原季節さん。動画配信サービス「Paravi」で配信中の同作で演じているのは、「テレビ東洋」の番組「ギルガメッシュ FIGHT」の演出担当・加藤竜也だ。「正しくテレビマン。このドラマをやって、テレビマンって言葉のかっこよさに触れた気もします」と明かす藤原さんが、撮影を通じて感じたことを語った。
◇撮影中も「勉強させられっぱなしだった」
同作は、「ギルガメッシュないと」のスタッフたちの実話に基づいたフィクションドラマ。「エロ」に真正面から向き合った制作陣の物語で、藤原さん演じる加藤は、天才的かつ芸術的なアイデアで番組を作り上げていくディレクターだ。
「加藤に対する最初の印象は『突き抜けた人』。決して『社会性がある』とは言えない、でもすごく才能があって、カリスマ性があるんだろうなと感じました。演じていて思ったのは、『才能がある』と他人に言われる加藤って、どこか少しさみしいんだなということ。みんなが盛り上がっている輪の中に入っていけないさみしさや孤高な感じが、振り子のように『絶対に面白い番組を作るぞ』という、反骨心にもなっている。面白い番組を作ることでしか、自分の存在を誇示できないというところもあったんだと思います」
才気走る孤高のテレビマン。そんな加藤と共に「ギルガメッシュ FIGHT」を人気番組に押し上げた剛腕プロデューサー・栗田淳一(大東駿介さん)も、正しく「テレビマン」である。
「昔のテレビ業界はどんな感じだったのか、大東さんといろいろなプロデューサーさんに話を聞く機会があったのですが、『昔のテレビマンはマジでかっこよかったよ』ってみんな言うんですよ。加藤も栗田も正しくテレビマン。このドラマをやって、テレビマンって言葉のかっこよさに触れた気もします」
撮影中も「勉強させられっぱなしだった」と振り返る藤原さん。演じた加藤は、優れた観察眼と“狂愛”の持ち主としても描かれている。劇中、そんな加藤と栗田のやりとりで飛び出した「番組はプロデューサーのものじゃない、ディレクターのものだ」とのせりふに対しても「なるほどなと思った」といい、「簡単に妥協してはいけなかったり、言うことを聞きすぎて、大切なものを見失ってはいけないんだなって。とても勉強にもなりました」と明かした。
◇デビュー10周年、30代、思い描く理想の俳優像
ドラマは当時の熱気や狂騒など“ギルガメ”の栄光だけではなく、終焉(しゅうえん)も描いた、藤原さんいわく「結構切ない」人間ドラマにもなっている。
また、視聴者の反応として「職業ドラマとしてすごく面白かったという意見があって、それはうれしかったですね」と話す藤原さん。一方で、いち役者としては、主演として力不足を感じた現場でもあったという。
「主演って本当に大変で、とてもありがたいことではあるのですが、大東さんの力強さ、みんなを巻き込むような力強さを目の当たりにして、到底かなわない、自分はまだまだだなって思いました。自分がドラマの中心にいて、みんなの視線を集めるのには、本当に研ぎ澄まされていないとボロが出てしまう。そういう意味でも、非常に良い経験をさせていただきました」
そんな藤原さんにとって2023年はデビュー10周年の節目の年。1月18日に30歳の誕生日を迎え、30代へと突入した。最後に、自身が思い描く理想の俳優像について聞くと……。
「月並みな言い方にはなってしまうのですが、これからも一つ一つの役に誠実に取り組んでいきたいと思っています。最近、俳優さんが舞台挨拶(あいさつ)などで口にする、『○○役を演じさせていただきました』という言葉の意味を考えることがよくあって、それは誰に対しての敬語なのか、『演じさせていただく』とはどういう意味なんだろうって。実際、僕らが演じるのって、ほとんどが日常を生きる“生活者”で。僕が電車の駅員を演じたとしても、人それぞれ日々の積み重ねがあり、そこに至るまでの喜びや苦しみを100%再現できるかと言ったら、そんなことはないわけで。いっときをフィクションとして演じるだけなので、言い方は難しいのですが、ある意味、失礼なことをしているなって思いもあるんです。だからこそ、その一つ一つの役、職業に対して、『演じさせていただく』気持ちを常に忘れてはいけないなって。今回はディレクターの役をやりましたし、いつかは記者の役をやるかもしれない。そこに対して『演じさせていただく』という尊敬やリスペクトの気持ちを忘れると、良い俳優になれないだろうなと思ってもいるので、これからも敬意を持って、一つ一つの役に誠実に取り組んで行きたいと思っています」
藤原季節:“ギルガメ”ドラマで触れた「テレビマン」のかっこよさ 今後も“演じさせていただく”気持ち忘れずに
1990年代に人気を博したテレビ東京の深夜のお色気番組「ギルガメッシュないと」から着想を得たドラマ「Paravi オリジナルドラマ『ギルガメッシュ FIGHT』」で主演を務めている俳優の藤原季節さん。動画配信サービス「Paravi」で配信中の同作で演じているのは、「テレビ東洋」の番組「ギルガメッシュ FIGHT」の演出担当・加藤竜也だ。「正しくテレビマン。このドラマをやって、テレビマンって言葉のかっこよさに触れた気もします」と明かす藤原さんが、撮影を通じて感じたことを語った。
◇撮影中も「勉強させられっぱなしだった」
同作は、「ギルガメッシュないと」のスタッフたちの実話に基づいたフィクションドラマ。「エロ」に真正面から向き合った制作陣の物語で、藤原さん演じる加藤は、天才的かつ芸術的なアイデアで番組を作り上げていくディレクターだ。
「加藤に対する最初の印象は『突き抜けた人』。決して『社会性がある』とは言えない、でもすごく才能があって、カリスマ性があるんだろうなと感じました。演じていて思ったのは、『才能がある』と他人に言われる加藤って、どこか少しさみしいんだなということ。みんなが盛り上がっている輪の中に入っていけないさみしさや孤高な感じが、振り子のように『絶対に面白い番組を作るぞ』という、反骨心にもなっている。面白い番組を作ることでしか、自分の存在を誇示できないというところもあったんだと思います」
才気走る孤高のテレビマン。そんな加藤と共に「ギルガメッシュ FIGHT」を人気番組に押し上げた剛腕プロデューサー・栗田淳一(大東駿介さん)も、正しく「テレビマン」である。
「昔のテレビ業界はどんな感じだったのか、大東さんといろいろなプロデューサーさんに話を聞く機会があったのですが、『昔のテレビマンはマジでかっこよかったよ』ってみんな言うんですよ。加藤も栗田も正しくテレビマン。このドラマをやって、テレビマンって言葉のかっこよさに触れた気もします」
撮影中も「勉強させられっぱなしだった」と振り返る藤原さん。演じた加藤は、優れた観察眼と“狂愛”の持ち主としても描かれている。劇中、そんな加藤と栗田のやりとりで飛び出した「番組はプロデューサーのものじゃない、ディレクターのものだ」とのせりふに対しても「なるほどなと思った」といい、「簡単に妥協してはいけなかったり、言うことを聞きすぎて、大切なものを見失ってはいけないんだなって。とても勉強にもなりました」と明かした。
◇デビュー10周年、30代、思い描く理想の俳優像
ドラマは当時の熱気や狂騒など“ギルガメ”の栄光だけではなく、終焉(しゅうえん)も描いた、藤原さんいわく「結構切ない」人間ドラマにもなっている。
また、視聴者の反応として「職業ドラマとしてすごく面白かったという意見があって、それはうれしかったですね」と話す藤原さん。一方で、いち役者としては、主演として力不足を感じた現場でもあったという。
「主演って本当に大変で、とてもありがたいことではあるのですが、大東さんの力強さ、みんなを巻き込むような力強さを目の当たりにして、到底かなわない、自分はまだまだだなって思いました。自分がドラマの中心にいて、みんなの視線を集めるのには、本当に研ぎ澄まされていないとボロが出てしまう。そういう意味でも、非常に良い経験をさせていただきました」
そんな藤原さんにとって2023年はデビュー10周年の節目の年。1月18日に30歳の誕生日を迎え、30代へと突入した。最後に、自身が思い描く理想の俳優像について聞くと……。
「月並みな言い方にはなってしまうのですが、これからも一つ一つの役に誠実に取り組んでいきたいと思っています。最近、俳優さんが舞台挨拶(あいさつ)などで口にする、『○○役を演じさせていただきました』という言葉の意味を考えることがよくあって、それは誰に対しての敬語なのか、『演じさせていただく』とはどういう意味なんだろうって。実際、僕らが演じるのって、ほとんどが日常を生きる“生活者”で。僕が電車の駅員を演じたとしても、人それぞれ日々の積み重ねがあり、そこに至るまでの喜びや苦しみを100%再現できるかと言ったら、そんなことはないわけで。いっときをフィクションとして演じるだけなので、言い方は難しいのですが、ある意味、失礼なことをしているなって思いもあるんです。だからこそ、その一つ一つの役、職業に対して、『演じさせていただく』気持ちを常に忘れてはいけないなって。今回はディレクターの役をやりましたし、いつかは記者の役をやるかもしれない。そこに対して『演じさせていただく』という尊敬やリスペクトの気持ちを忘れると、良い俳優になれないだろうなと思ってもいるので、これからも敬意を持って、一つ一つの役に誠実に取り組んで行きたいと思っています」
「ああなりたい、こうなりたい。
思いはたくさんあるけど、
それを僕は“夢”と
言わないようにしている」
体育大学出身の母、空手をやっている武道家の父、ゴリゴリの体育会系家庭で育った僕の夢もまた体育教師やサッカー選手で。幼い頃は1ミリも芸能界に興味がなかったんてすよ。そんな僕がこの世界に飛ひ込んだのは『スクール革命!』の公開オーディションがきっかけ。同級生が勝手に履歷書を送りまさかの合格。僕の人生は大きく变わりました。
どこかで「自分で目指した場所じゃない」という気持ちがあったから。正直、最初はやる気がなかった。「いつやめてもいい」と思っていた自分を引き止めたのは「たくさんの人の中から選ばれたことを忘れるな」という親の言葉で。「ここでやめたら選ばれなかった人たちに失礼。せめて『スクール革命!』が終わるまで続けよう」、そう思っていたら、まさかの今も番組か続いているっていうね(笑)。そんなオレがこの仕事に本気になったのは、SixTONESを結成してから。なんだろう、自分がサッカーに夢中になっていたあの頃の感覚に近いというか、自分ひとりではなく全員で前に進んでいく感じがすごく楽しかったんだよね。このグループが存在するから自分は今もここにいる。オレね、照れずに「SixTONESが好き」って言えるくらい好きだし、いちばんのファンだと思っているの。この自由さや奔放なところを最前列の席で見られるの、最高じゃんって(笑)。
こうなりたい、ああなりたい、そんな目標はたくさんある。ただ、僕はそれを夢と呼ばないようにしています。新年ってみんな目標を立てたりするけど、それを達成する人ってごくわずかじゃん。新しいノートも最初は「キレイに書くぞ」と思うけど、 後半のページは間違いなく汚いから(笑)。夢も同じで、高く掲げると「あの熱意はどこへ?」になると思うんですよ。最初から高いハードルを跳ぼうとすると転ぶ。すぐに疲れてしまう。焦りや気負いはいつか自分の足を止めてしまう。大事なのは低いハードルから跳び始め、少しずつでいいから理想の自分に近づき続けること。オレね、いつか自分でバイクをフレームから作りたくて。そのためには勉強しなきゃいけないことがたくさんあるんだけど、それをひとつひとつ楽しみながら、年を取った時に1台作れる自分になっていたらいいなって思っているの。人生も夢もそんなふうに一步一步楽しめたらいいよね。
髙地優吾の美学。
MORE 2023年3・4月号增刊
思いはたくさんあるけど、
それを僕は“夢”と
言わないようにしている」
体育大学出身の母、空手をやっている武道家の父、ゴリゴリの体育会系家庭で育った僕の夢もまた体育教師やサッカー選手で。幼い頃は1ミリも芸能界に興味がなかったんてすよ。そんな僕がこの世界に飛ひ込んだのは『スクール革命!』の公開オーディションがきっかけ。同級生が勝手に履歷書を送りまさかの合格。僕の人生は大きく变わりました。
どこかで「自分で目指した場所じゃない」という気持ちがあったから。正直、最初はやる気がなかった。「いつやめてもいい」と思っていた自分を引き止めたのは「たくさんの人の中から選ばれたことを忘れるな」という親の言葉で。「ここでやめたら選ばれなかった人たちに失礼。せめて『スクール革命!』が終わるまで続けよう」、そう思っていたら、まさかの今も番組か続いているっていうね(笑)。そんなオレがこの仕事に本気になったのは、SixTONESを結成してから。なんだろう、自分がサッカーに夢中になっていたあの頃の感覚に近いというか、自分ひとりではなく全員で前に進んでいく感じがすごく楽しかったんだよね。このグループが存在するから自分は今もここにいる。オレね、照れずに「SixTONESが好き」って言えるくらい好きだし、いちばんのファンだと思っているの。この自由さや奔放なところを最前列の席で見られるの、最高じゃんって(笑)。
こうなりたい、ああなりたい、そんな目標はたくさんある。ただ、僕はそれを夢と呼ばないようにしています。新年ってみんな目標を立てたりするけど、それを達成する人ってごくわずかじゃん。新しいノートも最初は「キレイに書くぞ」と思うけど、 後半のページは間違いなく汚いから(笑)。夢も同じで、高く掲げると「あの熱意はどこへ?」になると思うんですよ。最初から高いハードルを跳ぼうとすると転ぶ。すぐに疲れてしまう。焦りや気負いはいつか自分の足を止めてしまう。大事なのは低いハードルから跳び始め、少しずつでいいから理想の自分に近づき続けること。オレね、いつか自分でバイクをフレームから作りたくて。そのためには勉強しなきゃいけないことがたくさんあるんだけど、それをひとつひとつ楽しみながら、年を取った時に1台作れる自分になっていたらいいなって思っているの。人生も夢もそんなふうに一步一步楽しめたらいいよね。
髙地優吾の美学。
MORE 2023年3・4月号增刊
【ギルガメッシュFIGHT】
藤原季節、俳優10年目を迎え意識している“受け入れること”「自分の欲望だけだと息切れしてしまう」
「破滅的な演技がしたい」という大東駿介との共演を楽しみにしていた
ーー90年代生まれの藤原さんにとって、このドラマは、今の時代からは想像できないような世界観だったと思うのですが、最初に台本を読んだときの感想をお聞かせください。
まず純粋に、脚本も作品としてもおもしろいと思いました。それから大東駿介さんとも共演できる機会があるかもしれないということもあって、ぜひやらせていただきたいと。その後に「ギルガメッシュないと」という伝説の番組といわれる存在を知りました。
非常に熱烈なファンが多い番組だということを後から知って、徐々にプレッシャーに感じていきましたね。当時見ていた人の熱量がものすごくて、これはすごいプロジェクトになりそうだなと、本当にドキドキしました。
ーー大東さんとの共演を楽しみにされていたということでしたが、その理由は。
個人的に、大東さんの舞台をよく拝見しているのですが、大東さんは毎回アナーキーな演技をされるというか、型にはまらない演技が凄まじいんです。以前、映画「明日の食卓」でもご一緒したのですが、その時も勢いのあるお芝居をされていて、大好きな俳優さんなので共演を楽しみにしていました。
今回の「ギルガメッシュFIGHT」でも、大東さんの予想だにしない熱量とエンジンのかかり方に驚きました。彼の“力の根源”を取材しようと思って、待ち時間もずっと大東さんの楽屋に押しかけてましたね(笑)。
大東さんは、破滅的な演技がしたいそうなんです。例えば、舞台だと30公演以上あったりするんですが、大東さんの演技の仕方で30公演もつのかなって毎回、思っていました。その感想を素直に本人に伝えたら「そう思わせたいねん。こいつ最後までもつのかなっていう演技を毎公演したい」とおっしゃっていて。その熱意がすごいなと思いましたし、撮影でも記者会見でも、その破滅的な姿は変わっていなくて、本当に尊敬する人です。
現代で尖った表現をすることの勇気
ーー「ギルガメッシュないと」を知らない世代の人もご覧になると思いますが、その世代に向けての見どころと、現代にも通じるドラマのメッセージ性は何だと思いますか?
当時は、“エロは人間の本質である”ということを、大きな声で言って番組を制作できた時代だったと思うんです。そしてそれに吸い寄せられた人たちが番組を見ていたと思うんですが、今は多様な価値観を認めようという時代なので、1つの尖った意見を大きな声で主張することって難しくなっているんじゃないかと感じます。“エロは人間の本質である”といっても、恋愛しない方もいるでしょうし、嫌悪感を持つ人もいますよね。
でも、そんな時代に窮屈さを感じてる人も多いはずだ、というのが出発点の思いとしてあって、そこに目を背けずに作られた番組です。それから、ギルガメはエロ番組ではなくて、エロをテーマにしたバラエティー。ただのエロじゃダメで、バラエティーになっていないといけない。そこのこだわりが強いんです。
僕が好きな加藤のセリフで「番組はプロデューサーのものじゃない。ディレクターのものだ」っていう言葉があります。プロデューサーはコンプライアンスや世間の声を反映して、もう少し抑えようと言うんですが、加藤は全部跳ね除けて、妥協せずに企画を考え続けます。それは最近では、少なくなってきた傾向なのかなと思います。多様な価値観全てに順応するために、尖ったものを押さえつけてしまいがちなのかなと。だからこのドラマ通して、尖った表現をすることとか、周りに嫌われることを恐れないとか、そういう精神を見ることもできるのかなと思います。
「加藤の個性をどう色づけしていくかは、本当に苦労しました」
ーー天才と呼ばれるディレクター・加藤という人物を演じきれたという実感はありましたか。
加藤の個性をどう色づけしていくかは、本当に苦労しました。出演が決まってから「全裸監督」や、マーティン・スコセッシ監督の作品を見直したりしたのですが、どうあがいても山田孝之さんの真似は絶対できないなって気づいたんです。山田さんがやられていることって本当にすごいんですよ。
でも、あれをしよう、これをしようって足し算方式でやりたいことをどんどん足していくと、個性がぐちゃぐちゃになってきて…。もっと人物の核をつかまなきゃと思って、自分が演じるモデルになった人の写真を飾ってそれを毎日見続けたり、監督とディスカッションを重ねたりしました。
足し算的な個性は衣装を着たり、監督の演出や共演者の動きに順応していく瞬発力を大事にしましたね。例えば、衣装がすごく派手なので、この派手な服を着ている人物が違和感なくその場に立っていられるには、どういう佇まいが正解なんだろうと考えたり。現場で集中して、人との関わり方や、目に見えたものへの反応の仕方、その一つ一つに個性を乗せていって、結果的に加藤を生み出していきました。
俳優としてのキャリア10周年を迎える現在は「『これをやりたい』と『受け止める』の間にいたい」
ーー大東さんは“破滅的な演技がしたい”とおっしゃっていたとのことですが、藤原さんは今後どんな演技をしていきたいですか。
俳優を続けて10年になるのですが、自分はこういう演技がしたい、こういう役がやりたいって望みすぎると、その場所にたどり着けないような気がしてきたんです。自分自身の欲望だけだとどうしても息切れしてしまう。だから、自分に与えられる役や役割を受け入れて全うすることも意識して、「これをやりたい」と「受け止める」の間にいたいと思っています。
2022年は、他者が見てくれる自分を大事にしたり、他者がくれたアドバイスを真剣に聞いたりと、そういうことに初めてチャレンジしてきた1年でした。2023年はその結果が出てくる年だと思います。受け入れ続けた結果、どこにたどり着くのか、自分自身でも見てみたいですね。
自分の今の目標は落ち着くことです(笑)。小さい頃からいつも100%の感度で物事を捉えて、全部に反応してたので、今は落ち着いて自分に与えられた仕事をして、結果的にその先にたどり着ければいいなと思います。
藤原季節、俳優10年目を迎え意識している“受け入れること”「自分の欲望だけだと息切れしてしまう」
「破滅的な演技がしたい」という大東駿介との共演を楽しみにしていた
ーー90年代生まれの藤原さんにとって、このドラマは、今の時代からは想像できないような世界観だったと思うのですが、最初に台本を読んだときの感想をお聞かせください。
まず純粋に、脚本も作品としてもおもしろいと思いました。それから大東駿介さんとも共演できる機会があるかもしれないということもあって、ぜひやらせていただきたいと。その後に「ギルガメッシュないと」という伝説の番組といわれる存在を知りました。
非常に熱烈なファンが多い番組だということを後から知って、徐々にプレッシャーに感じていきましたね。当時見ていた人の熱量がものすごくて、これはすごいプロジェクトになりそうだなと、本当にドキドキしました。
ーー大東さんとの共演を楽しみにされていたということでしたが、その理由は。
個人的に、大東さんの舞台をよく拝見しているのですが、大東さんは毎回アナーキーな演技をされるというか、型にはまらない演技が凄まじいんです。以前、映画「明日の食卓」でもご一緒したのですが、その時も勢いのあるお芝居をされていて、大好きな俳優さんなので共演を楽しみにしていました。
今回の「ギルガメッシュFIGHT」でも、大東さんの予想だにしない熱量とエンジンのかかり方に驚きました。彼の“力の根源”を取材しようと思って、待ち時間もずっと大東さんの楽屋に押しかけてましたね(笑)。
大東さんは、破滅的な演技がしたいそうなんです。例えば、舞台だと30公演以上あったりするんですが、大東さんの演技の仕方で30公演もつのかなって毎回、思っていました。その感想を素直に本人に伝えたら「そう思わせたいねん。こいつ最後までもつのかなっていう演技を毎公演したい」とおっしゃっていて。その熱意がすごいなと思いましたし、撮影でも記者会見でも、その破滅的な姿は変わっていなくて、本当に尊敬する人です。
現代で尖った表現をすることの勇気
ーー「ギルガメッシュないと」を知らない世代の人もご覧になると思いますが、その世代に向けての見どころと、現代にも通じるドラマのメッセージ性は何だと思いますか?
当時は、“エロは人間の本質である”ということを、大きな声で言って番組を制作できた時代だったと思うんです。そしてそれに吸い寄せられた人たちが番組を見ていたと思うんですが、今は多様な価値観を認めようという時代なので、1つの尖った意見を大きな声で主張することって難しくなっているんじゃないかと感じます。“エロは人間の本質である”といっても、恋愛しない方もいるでしょうし、嫌悪感を持つ人もいますよね。
でも、そんな時代に窮屈さを感じてる人も多いはずだ、というのが出発点の思いとしてあって、そこに目を背けずに作られた番組です。それから、ギルガメはエロ番組ではなくて、エロをテーマにしたバラエティー。ただのエロじゃダメで、バラエティーになっていないといけない。そこのこだわりが強いんです。
僕が好きな加藤のセリフで「番組はプロデューサーのものじゃない。ディレクターのものだ」っていう言葉があります。プロデューサーはコンプライアンスや世間の声を反映して、もう少し抑えようと言うんですが、加藤は全部跳ね除けて、妥協せずに企画を考え続けます。それは最近では、少なくなってきた傾向なのかなと思います。多様な価値観全てに順応するために、尖ったものを押さえつけてしまいがちなのかなと。だからこのドラマ通して、尖った表現をすることとか、周りに嫌われることを恐れないとか、そういう精神を見ることもできるのかなと思います。
「加藤の個性をどう色づけしていくかは、本当に苦労しました」
ーー天才と呼ばれるディレクター・加藤という人物を演じきれたという実感はありましたか。
加藤の個性をどう色づけしていくかは、本当に苦労しました。出演が決まってから「全裸監督」や、マーティン・スコセッシ監督の作品を見直したりしたのですが、どうあがいても山田孝之さんの真似は絶対できないなって気づいたんです。山田さんがやられていることって本当にすごいんですよ。
でも、あれをしよう、これをしようって足し算方式でやりたいことをどんどん足していくと、個性がぐちゃぐちゃになってきて…。もっと人物の核をつかまなきゃと思って、自分が演じるモデルになった人の写真を飾ってそれを毎日見続けたり、監督とディスカッションを重ねたりしました。
足し算的な個性は衣装を着たり、監督の演出や共演者の動きに順応していく瞬発力を大事にしましたね。例えば、衣装がすごく派手なので、この派手な服を着ている人物が違和感なくその場に立っていられるには、どういう佇まいが正解なんだろうと考えたり。現場で集中して、人との関わり方や、目に見えたものへの反応の仕方、その一つ一つに個性を乗せていって、結果的に加藤を生み出していきました。
俳優としてのキャリア10周年を迎える現在は「『これをやりたい』と『受け止める』の間にいたい」
ーー大東さんは“破滅的な演技がしたい”とおっしゃっていたとのことですが、藤原さんは今後どんな演技をしていきたいですか。
俳優を続けて10年になるのですが、自分はこういう演技がしたい、こういう役がやりたいって望みすぎると、その場所にたどり着けないような気がしてきたんです。自分自身の欲望だけだとどうしても息切れしてしまう。だから、自分に与えられる役や役割を受け入れて全うすることも意識して、「これをやりたい」と「受け止める」の間にいたいと思っています。
2022年は、他者が見てくれる自分を大事にしたり、他者がくれたアドバイスを真剣に聞いたりと、そういうことに初めてチャレンジしてきた1年でした。2023年はその結果が出てくる年だと思います。受け入れ続けた結果、どこにたどり着くのか、自分自身でも見てみたいですね。
自分の今の目標は落ち着くことです(笑)。小さい頃からいつも100%の感度で物事を捉えて、全部に反応してたので、今は落ち着いて自分に与えられた仕事をして、結果的にその先にたどり着ければいいなと思います。
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