【blog】2021.05.12
2021.05.12
2021/5/12 20:32
松居さんが止まった時間を映画にしたかったみたいなことインタビューで言っていた気がする。俺にとってはまさに止まってしまった日々の中で公開した映画になった。「くれなずんでんなあ」っていつも思ってた。こんなつまんない毎日に言葉を与えてくれて、この映画に出会って良かったと思った。書けないこと、言わない言葉がいっぱいあるけど、少しばかり僕のくれなずんでいた日々を。いや、今も続いてるけど。
サンソンの中止が決まった。
舞台セットを片付けてしまう前に、みんなで稽古したり映像の撮影をした。帰りたくなかった。
誰も座っていない客席。
仕事がなくなったその日から食べ物の味がしなくなった。
映画にも本にも興味がなくなる。いや、あるけど。
成長もしたくない、変わりたくもない、乗り越えたくもない、切り替えたくもない、別に前に進みたくもない、連絡も返したくない。何もせずただ引きずって、「生きるだけだろ」と心の中で呟いていた。
くれなずめの公開延期が決まった。
松居大悟がすごい悔しがってて「4月29日にすべてのエネルギーを持っていってた」と言ってて、僕は悔しいという気持ちすら失くしてたことに気づいた。あのときはとにかく休みたくて、誰とも話したくなくて。でもみんなに会うとめっちゃ楽しくて。グチャグチャだった。成田凌が客席で写真を撮ってくれた。最後に載せる。
ゴールデンウィーク。友達に会う。
忘れたくないなって思う。色んなこと。
天気が良かったのでダラダラ歩く。渋谷ユーロスペースの横の階段に座ってボーッとしてたら松居大悟が通りかかる。「なんにもしたくないです」って言ったら「なんにもしなくていいでしょ」って言われて謎の自信が出る。
映画を見はじめるリハビリみたいにロードオブザリングを見るも途中で断念。大好きな映画なのに何度も寝てしまう。
読書も再開しようと思ってブックオフで好きな作家の本を買う。数ページ読んでやめる。
自炊に飽きる。味の濃いものが食べたくてラーメンばっかり食べる。コロナにかかったわけでもないのに味がわからない。スタミナも必要ないから食べ物がいらない。でもなんとなくお腹が空く。結果的にどん兵衛が一番おいしい。居酒屋の味が恋しくなる。
サブスクじゃなくて手触りで映画を選ぼうと思ってTSUTAYAに行くもDVDレンタルは政府からの要請で出来ないと言われ、意味がわからず途方に暮れる。本のコーナーでは多くの人が立ち読みしてる。
5月9日くらいに、5月12日にくれなずめが公開すると発表される。急に言われても実感が沸かない。気がする。
サンソンの大阪公演が中止になる。ツイッターを開くとみんなが謝っていてツイッターを閉じる。
公民館がひとつだけ空いていたので仲間と集まって新しい台本の読み合わせをする。近況報告をし合う。
5月12日。公開日の朝になる。目が覚めてから布団の中でずっとソワソワしていた。松居大悟のツイッターを見てテアトル新宿の初回を勢いで予約する。水曜日サービスデーあざす。
14時半ちょうどにテアトル新宿行けばコッソリ観れると思って、14時27分に着いてからの3分間が長い。
客席で自分の出演した映画をこっそり見る俺はワンスアポンアタイムインハリウッド。
映画が終わってから劇場が明るくなって余韻浸りたいけど恥ずかしいからスマホの電源入れてみるけどスマホの中身に全然興味ないあの感じ。
映画館を出てなぜか1時間くらい歩いてしまった。昔から歩いてばっかりいる自分。
好みのラーメン屋が定休日。入ったことのない蕎麦屋に入ってカツ丼を注文する。めっちゃうまい。貸し切りの店内で相撲を見ながらカツ丼を食べる。ふとサンソンの共演者にメール返してなかったことを強く後悔し、カツ丼を中断してメールを返す。
そういえばサンソンの稽古前、ランニングを始めたことを思い出す。1日に12キロ。毎日毎日走り続けて感じたことを書いておく。
向かい風はキツい。
先は見ない方が良い。
ライバルを見つけるとスピードが上がる。
米をたくさん食べるようになる。
ただそれだけ。
食べ物の話ばっかりだな。
美味しい海鮮丼を食べに行きたい。ともだちと。
2021.05.12 くれなずめ初日
藤原季節
p.s.緊急事態宣言によって今日が初日となった多くの作品へ。おめでとうございます。
https://t.cn/A6VbhJ9S
2021.05.12
2021/5/12 20:32
松居さんが止まった時間を映画にしたかったみたいなことインタビューで言っていた気がする。俺にとってはまさに止まってしまった日々の中で公開した映画になった。「くれなずんでんなあ」っていつも思ってた。こんなつまんない毎日に言葉を与えてくれて、この映画に出会って良かったと思った。書けないこと、言わない言葉がいっぱいあるけど、少しばかり僕のくれなずんでいた日々を。いや、今も続いてるけど。
サンソンの中止が決まった。
舞台セットを片付けてしまう前に、みんなで稽古したり映像の撮影をした。帰りたくなかった。
誰も座っていない客席。
仕事がなくなったその日から食べ物の味がしなくなった。
映画にも本にも興味がなくなる。いや、あるけど。
成長もしたくない、変わりたくもない、乗り越えたくもない、切り替えたくもない、別に前に進みたくもない、連絡も返したくない。何もせずただ引きずって、「生きるだけだろ」と心の中で呟いていた。
くれなずめの公開延期が決まった。
松居大悟がすごい悔しがってて「4月29日にすべてのエネルギーを持っていってた」と言ってて、僕は悔しいという気持ちすら失くしてたことに気づいた。あのときはとにかく休みたくて、誰とも話したくなくて。でもみんなに会うとめっちゃ楽しくて。グチャグチャだった。成田凌が客席で写真を撮ってくれた。最後に載せる。
ゴールデンウィーク。友達に会う。
忘れたくないなって思う。色んなこと。
天気が良かったのでダラダラ歩く。渋谷ユーロスペースの横の階段に座ってボーッとしてたら松居大悟が通りかかる。「なんにもしたくないです」って言ったら「なんにもしなくていいでしょ」って言われて謎の自信が出る。
映画を見はじめるリハビリみたいにロードオブザリングを見るも途中で断念。大好きな映画なのに何度も寝てしまう。
読書も再開しようと思ってブックオフで好きな作家の本を買う。数ページ読んでやめる。
自炊に飽きる。味の濃いものが食べたくてラーメンばっかり食べる。コロナにかかったわけでもないのに味がわからない。スタミナも必要ないから食べ物がいらない。でもなんとなくお腹が空く。結果的にどん兵衛が一番おいしい。居酒屋の味が恋しくなる。
サブスクじゃなくて手触りで映画を選ぼうと思ってTSUTAYAに行くもDVDレンタルは政府からの要請で出来ないと言われ、意味がわからず途方に暮れる。本のコーナーでは多くの人が立ち読みしてる。
5月9日くらいに、5月12日にくれなずめが公開すると発表される。急に言われても実感が沸かない。気がする。
サンソンの大阪公演が中止になる。ツイッターを開くとみんなが謝っていてツイッターを閉じる。
公民館がひとつだけ空いていたので仲間と集まって新しい台本の読み合わせをする。近況報告をし合う。
5月12日。公開日の朝になる。目が覚めてから布団の中でずっとソワソワしていた。松居大悟のツイッターを見てテアトル新宿の初回を勢いで予約する。水曜日サービスデーあざす。
14時半ちょうどにテアトル新宿行けばコッソリ観れると思って、14時27分に着いてからの3分間が長い。
客席で自分の出演した映画をこっそり見る俺はワンスアポンアタイムインハリウッド。
映画が終わってから劇場が明るくなって余韻浸りたいけど恥ずかしいからスマホの電源入れてみるけどスマホの中身に全然興味ないあの感じ。
映画館を出てなぜか1時間くらい歩いてしまった。昔から歩いてばっかりいる自分。
好みのラーメン屋が定休日。入ったことのない蕎麦屋に入ってカツ丼を注文する。めっちゃうまい。貸し切りの店内で相撲を見ながらカツ丼を食べる。ふとサンソンの共演者にメール返してなかったことを強く後悔し、カツ丼を中断してメールを返す。
そういえばサンソンの稽古前、ランニングを始めたことを思い出す。1日に12キロ。毎日毎日走り続けて感じたことを書いておく。
向かい風はキツい。
先は見ない方が良い。
ライバルを見つけるとスピードが上がる。
米をたくさん食べるようになる。
ただそれだけ。
食べ物の話ばっかりだな。
美味しい海鮮丼を食べに行きたい。ともだちと。
2021.05.12 くれなずめ初日
藤原季節
p.s.緊急事態宣言によって今日が初日となった多くの作品へ。おめでとうございます。
https://t.cn/A6VbhJ9S
山田孝之・松田龍平インタビュー「目の前で藤村が生きてることが、ただ嬉しかった」
竹中直人、山田孝之、齊藤工の3人が監督を務めた映画『ゾッキ』。大橋裕之のマンガ『ゾッキA』『ゾッキB』を原作に、劇団ペンギンプルペイルパイルズを主宰する倉持裕がシームレスな脚本に仕上げた。この作品が初監督作となった山田孝之と、彼が手がけたパートに出演した松田龍平にインタビュー。20年来となる二人の交流と、現在のお互いの存在について聞いた。
「僕は龍平くんのファンだから、目の前で芝居が見られることに、ただ感激していました」(山田)
──お二人が出会ったきっかけは?
山田「10代前半の頃、僕と母が二人暮らしをしていたんですが、同世代が集まって遊ぶときに、ふと龍平くんがうちに来たんですよ。」
松田「共通の友達がいて、面白い人がいると紹介されたのが山田孝之でした」
──そこから20数年。今回、山田さんの初監督作品で、松田さんに出演オファーをした理由を教えてください。
山田「初めて会ったときから、龍平くんはもう役者の仕事をしていて、初めて会う前から僕はずっと龍平くんのファンなんですよ。どこかのタイミングで一緒に仕事をしたいとずっと思っていたんですが、これまで機会がなくて。今回はそれとは別に、原作を読んだとき、藤村役は絶対に龍平くんがいいと感じたんです」
松田「山田くんにはこれまでも何度か声をかけてもらったんですが、タイミングが合わなくて。役者として、一緒に仕事をしたいとは思っていたんですけど、今回、山田くんの初監督作品ということもあって、またとない機会でしたし参加できて良かったです」
──撮影前に、山田さんは松田さんにどんな指示をされたのでしょうか。
山田「龍平くんがロケ地である愛知県蒲郡市に入るとき、豊橋の駅に僕もスタッフと一緒に迎えに行ったんです。その車中で、藤村という人物は、こういう生き方をしてきたんじゃないかという話をしました。役の背景は、俳優が考えることでもあるんですが、僕が芝居をするとき、全部丸投げされると不安に感じることがあったので、ひとつの案として僕はこう考えているという話をしました。龍平くんは覚えてる?」
松田「なんとなく覚えてるような(笑)。藤村の物語は、あてのない旅に出るところから始まるんですけど。彼にとって、旅に出る理由がどれだけ重要なのか、これまでも散歩みたいな旅に出たりしてたのか、何かの重圧に追い詰められて、解き放たれるためにあてもなく旅に出ることにしたのか。自分でも想像してみたんですけど、山田くんから話を聞いて、納得する部分がありました」
──撮影中はいかがでしたか?
松田「細かい演出はあまりなかったですけど、楽しそうに撮っていましたね。山田くんはずっと笑顔でモニターの前にいて。撮影中は監督の表情が気になるんです。いいのか悪いのか心配になってしまって。山田くんはすごく楽しそうだったから、安心して演じることができました」
山田「純粋に、生きている藤村の映像を撮れることが嬉しかったんです。僕は松田龍平のファンなので、目の前で龍平くんが芝居をしてくれるのも嬉しかったし、藤村として生きてくれているんだと感激してました」
「山田くんのあの笑顔を見ていたら、監督も面白そうだと思ってしまいました」(松田)
──山田監督は、俳優のほか、映画のプロデュースも行っていますが、監督ならではの面白さとは?
山田「監督は楽しいです。もちろん、大変なこともたくさんあるし、向かう方向が正しいかわからないけれど、みんな行くぞと先頭に立ってキャストやスタッフを導かなくてはいけない。スタッフからの提案も、最終的な決定をするのは監督です。不安だし怖さもあるけれど、それが楽しくもあります。プロデューサーは、撮影に入る前に資金を集めたり、現場から上がったものを、どう編集して宣伝するかという、外側を固める作業なので、結果的に嬉しいことはあっても、作りだす楽しさはほぼないんですね」
──では、今後、監督業の方に重点を置くのでしょうか。
山田「それはタイミングだと思います。芝居は好きなので、俳優は続けます。ただ、プロデューサーは僕の勝手な使命感でやっているので、代わってくれる人がいたらその方にお任せします」
──使命感とは、より面白い作品を世に出したいという?
山田「クリエイティブというより、労働環境の改善です。深夜に及ぶ撮影で睡眠時間が削られて、そんな過酷な環境も仲間に愚痴ったところで何も改善されません。収益の分配についても問題意識を感じています。だから、プロデューサーとしてルールを作る側になれば、健全な労働環境の中で、キャストもスタッフも仕事に打ち込むことができ、質の高い映画が作れるのではないかと思ったんです。でも、同じ志をもつ誰かが代わってくれるなら、プロデューサー業はすぐに辞めるつもりです。ただ、役者はこれまで通りやるでしょうし、どれを主な仕事にするか、決める必要はないと思っています」
──松田さんにとって、同世代の山田さんの存在が刺激になりますか。
松田「色々なことに挑戦してますよね。特に、監督をやるのは面白そうだし、羨ましいところもありますけど、自分からスタートを切って、仲間を集めてというのは、すごくパワーの必要なことだから。もし万が一、スタッフが全て揃っていて、たまたま監督が失踪しちゃったから代わってくれみたいなことを言われたら、やってみたいですね(笑)」
──監督業に興味は?
松田「山田くんのあの笑顔を見ていたら、いいなぁと思ってしまいます。そういえば、竹中監督と山田監督のパートが交差するシーンで、監督が2人現場に居た撮影があったんですけど。」
山田「今回はオムニバスではなく、グラデーションで続いていくので、1つのシーンに監督が複数いることもあったんですよ」
松田「そう。あの撮影は面白かったな。福くんには竹中さんが演出をつけて、僕には山田くんで、竹中さんはけっこう細かく演出をしていて、福くんに耳元で何か言ってたりするんです。それで撮影になると、さっきと違うリアクションになったりしてて、こっちが面喰らってしまったり。監督と俳優がボクサーとセコンドみたいな関係性のような気がしちゃって。うちのセコンドはただニヤニヤしているだけだったから(笑)」
山田「その動揺した表情に、龍平くんの良さが出てるんです。僕は大満足でした。きっと竹中さんも、意表を突かれたときの藤村の表情が好きだったんじゃないかな」
松田「それならいいんだけど。向こうは若くて勢いのある福くんがいいパンチを繰り出してくるし、こっちも作戦をくれないかなと思って(笑)」
「アテのない旅をするのは特別なとき。目的地がないと寂しくなってしまいそう」(松田)
──劇中、藤村はあてのない旅をしますが、そんなふうに、目的のない旅をした経験はありますか?
山田「小学生の頃は、通学路が2キロくらいあったんですけど、友達と帰るときにはルートを変えてみたり、休みの日も山の中に入ったらどこに繋がるのか行ってみたり、あえて迷子になるような散歩はよくしていました。上京してからも、ひとつ手前の駅で降りて、なんとなく歩いてみて、こんなところにいい建物があるんだとか、気の向くままに歩いてみたり。だから、この原作を読んだときに、グッときたのかもしれませんね」
松田「いいよね、そういう散策は。でも、ゴールがあって寄り道する分には楽しいけど、何の目的もない場合は、心が特別な状態のときなのかもしれないな。何か見つかるかもしれないという希望と、何もないかもしれないという絶望の狭間にいるような。やっぱり目的地がないと寂しい気持ちになりそう」
山田「いつ終わるかわからないしね」
──藤村の表情の中にも、不安と期待が入り混じるようなものがありました。
松田「藤村は、ギリギリなところがありますよね」
山田「世間から見ると、ギリギリアウト」
松田「もう大半の人がアウトだと思う人物だよ」
──なるほど(笑)。では最後に、この作品の見どころを教えてください。
山田「親子や友達、恋人、誰とでも一緒に気楽に楽しめる作品になっています。僕が担当したところでは、藤村がドリンクを受け取ろうとするカット、その音に注目してください。レジの音、自転車のベルとペダルを漕ぐ音、床屋の回転灯、飛行機や現場の音を録音して、曲を作りました。あのシーンは、独特な音楽が流れています」
松田「山田監督が担当したパートはゆっくりと時間が流れるようなロードムービーで、竹中監督と齊藤監督は、パンチのあるストーリーに仕上げていて、その流れも良かったな。3人の監督は、それぞれ個性があるんですけど、1本の作品として観た時に違和感がなく楽しめたのも驚きました。原作を知っている人も、衝撃を受けるシーンがあると思います。僕にはありました。そこも楽しみにしてください」
竹中直人、山田孝之、齊藤工の3人が監督を務めた映画『ゾッキ』。大橋裕之のマンガ『ゾッキA』『ゾッキB』を原作に、劇団ペンギンプルペイルパイルズを主宰する倉持裕がシームレスな脚本に仕上げた。この作品が初監督作となった山田孝之と、彼が手がけたパートに出演した松田龍平にインタビュー。20年来となる二人の交流と、現在のお互いの存在について聞いた。
「僕は龍平くんのファンだから、目の前で芝居が見られることに、ただ感激していました」(山田)
──お二人が出会ったきっかけは?
山田「10代前半の頃、僕と母が二人暮らしをしていたんですが、同世代が集まって遊ぶときに、ふと龍平くんがうちに来たんですよ。」
松田「共通の友達がいて、面白い人がいると紹介されたのが山田孝之でした」
──そこから20数年。今回、山田さんの初監督作品で、松田さんに出演オファーをした理由を教えてください。
山田「初めて会ったときから、龍平くんはもう役者の仕事をしていて、初めて会う前から僕はずっと龍平くんのファンなんですよ。どこかのタイミングで一緒に仕事をしたいとずっと思っていたんですが、これまで機会がなくて。今回はそれとは別に、原作を読んだとき、藤村役は絶対に龍平くんがいいと感じたんです」
松田「山田くんにはこれまでも何度か声をかけてもらったんですが、タイミングが合わなくて。役者として、一緒に仕事をしたいとは思っていたんですけど、今回、山田くんの初監督作品ということもあって、またとない機会でしたし参加できて良かったです」
──撮影前に、山田さんは松田さんにどんな指示をされたのでしょうか。
山田「龍平くんがロケ地である愛知県蒲郡市に入るとき、豊橋の駅に僕もスタッフと一緒に迎えに行ったんです。その車中で、藤村という人物は、こういう生き方をしてきたんじゃないかという話をしました。役の背景は、俳優が考えることでもあるんですが、僕が芝居をするとき、全部丸投げされると不安に感じることがあったので、ひとつの案として僕はこう考えているという話をしました。龍平くんは覚えてる?」
松田「なんとなく覚えてるような(笑)。藤村の物語は、あてのない旅に出るところから始まるんですけど。彼にとって、旅に出る理由がどれだけ重要なのか、これまでも散歩みたいな旅に出たりしてたのか、何かの重圧に追い詰められて、解き放たれるためにあてもなく旅に出ることにしたのか。自分でも想像してみたんですけど、山田くんから話を聞いて、納得する部分がありました」
──撮影中はいかがでしたか?
松田「細かい演出はあまりなかったですけど、楽しそうに撮っていましたね。山田くんはずっと笑顔でモニターの前にいて。撮影中は監督の表情が気になるんです。いいのか悪いのか心配になってしまって。山田くんはすごく楽しそうだったから、安心して演じることができました」
山田「純粋に、生きている藤村の映像を撮れることが嬉しかったんです。僕は松田龍平のファンなので、目の前で龍平くんが芝居をしてくれるのも嬉しかったし、藤村として生きてくれているんだと感激してました」
「山田くんのあの笑顔を見ていたら、監督も面白そうだと思ってしまいました」(松田)
──山田監督は、俳優のほか、映画のプロデュースも行っていますが、監督ならではの面白さとは?
山田「監督は楽しいです。もちろん、大変なこともたくさんあるし、向かう方向が正しいかわからないけれど、みんな行くぞと先頭に立ってキャストやスタッフを導かなくてはいけない。スタッフからの提案も、最終的な決定をするのは監督です。不安だし怖さもあるけれど、それが楽しくもあります。プロデューサーは、撮影に入る前に資金を集めたり、現場から上がったものを、どう編集して宣伝するかという、外側を固める作業なので、結果的に嬉しいことはあっても、作りだす楽しさはほぼないんですね」
──では、今後、監督業の方に重点を置くのでしょうか。
山田「それはタイミングだと思います。芝居は好きなので、俳優は続けます。ただ、プロデューサーは僕の勝手な使命感でやっているので、代わってくれる人がいたらその方にお任せします」
──使命感とは、より面白い作品を世に出したいという?
山田「クリエイティブというより、労働環境の改善です。深夜に及ぶ撮影で睡眠時間が削られて、そんな過酷な環境も仲間に愚痴ったところで何も改善されません。収益の分配についても問題意識を感じています。だから、プロデューサーとしてルールを作る側になれば、健全な労働環境の中で、キャストもスタッフも仕事に打ち込むことができ、質の高い映画が作れるのではないかと思ったんです。でも、同じ志をもつ誰かが代わってくれるなら、プロデューサー業はすぐに辞めるつもりです。ただ、役者はこれまで通りやるでしょうし、どれを主な仕事にするか、決める必要はないと思っています」
──松田さんにとって、同世代の山田さんの存在が刺激になりますか。
松田「色々なことに挑戦してますよね。特に、監督をやるのは面白そうだし、羨ましいところもありますけど、自分からスタートを切って、仲間を集めてというのは、すごくパワーの必要なことだから。もし万が一、スタッフが全て揃っていて、たまたま監督が失踪しちゃったから代わってくれみたいなことを言われたら、やってみたいですね(笑)」
──監督業に興味は?
松田「山田くんのあの笑顔を見ていたら、いいなぁと思ってしまいます。そういえば、竹中監督と山田監督のパートが交差するシーンで、監督が2人現場に居た撮影があったんですけど。」
山田「今回はオムニバスではなく、グラデーションで続いていくので、1つのシーンに監督が複数いることもあったんですよ」
松田「そう。あの撮影は面白かったな。福くんには竹中さんが演出をつけて、僕には山田くんで、竹中さんはけっこう細かく演出をしていて、福くんに耳元で何か言ってたりするんです。それで撮影になると、さっきと違うリアクションになったりしてて、こっちが面喰らってしまったり。監督と俳優がボクサーとセコンドみたいな関係性のような気がしちゃって。うちのセコンドはただニヤニヤしているだけだったから(笑)」
山田「その動揺した表情に、龍平くんの良さが出てるんです。僕は大満足でした。きっと竹中さんも、意表を突かれたときの藤村の表情が好きだったんじゃないかな」
松田「それならいいんだけど。向こうは若くて勢いのある福くんがいいパンチを繰り出してくるし、こっちも作戦をくれないかなと思って(笑)」
「アテのない旅をするのは特別なとき。目的地がないと寂しくなってしまいそう」(松田)
──劇中、藤村はあてのない旅をしますが、そんなふうに、目的のない旅をした経験はありますか?
山田「小学生の頃は、通学路が2キロくらいあったんですけど、友達と帰るときにはルートを変えてみたり、休みの日も山の中に入ったらどこに繋がるのか行ってみたり、あえて迷子になるような散歩はよくしていました。上京してからも、ひとつ手前の駅で降りて、なんとなく歩いてみて、こんなところにいい建物があるんだとか、気の向くままに歩いてみたり。だから、この原作を読んだときに、グッときたのかもしれませんね」
松田「いいよね、そういう散策は。でも、ゴールがあって寄り道する分には楽しいけど、何の目的もない場合は、心が特別な状態のときなのかもしれないな。何か見つかるかもしれないという希望と、何もないかもしれないという絶望の狭間にいるような。やっぱり目的地がないと寂しい気持ちになりそう」
山田「いつ終わるかわからないしね」
──藤村の表情の中にも、不安と期待が入り混じるようなものがありました。
松田「藤村は、ギリギリなところがありますよね」
山田「世間から見ると、ギリギリアウト」
松田「もう大半の人がアウトだと思う人物だよ」
──なるほど(笑)。では最後に、この作品の見どころを教えてください。
山田「親子や友達、恋人、誰とでも一緒に気楽に楽しめる作品になっています。僕が担当したところでは、藤村がドリンクを受け取ろうとするカット、その音に注目してください。レジの音、自転車のベルとペダルを漕ぐ音、床屋の回転灯、飛行機や現場の音を録音して、曲を作りました。あのシーンは、独特な音楽が流れています」
松田「山田監督が担当したパートはゆっくりと時間が流れるようなロードムービーで、竹中監督と齊藤監督は、パンチのあるストーリーに仕上げていて、その流れも良かったな。3人の監督は、それぞれ個性があるんですけど、1本の作品として観た時に違和感がなく楽しめたのも驚きました。原作を知っている人も、衝撃を受けるシーンがあると思います。僕にはありました。そこも楽しみにしてください」
#往復書簡#
片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡25
片寄の新年一発目の書簡。年末のタクシー運転手との会話から、片寄のキャラクターがよくわかるエピソードが生まれた。「悩んだ末に」彼が取った行動とは?
拝啓 小竹正人さま
年末、とくに大晦日の3日前くらいからなんか妙にソワソワしたりフワフワしたりする感覚ありますよね。
いつもと違う時間の過ぎ方がするというか、部屋の大掃除をしていても意外と疲れなくて年末特有のアドレナリンを感じるというか。
一年のなかでほとんどの人が休みをとって、新たな年を迎える準備をしている雰囲気って独特で結構好きです。
ありがたいことに昨年の大晦日もNHKで紅白歌合戦に出場させて頂きました。
支えてくださる多くの方々に感謝をして、誠意をもって臨みたいと思います(掲載された際は事後になっていることご了承ください)。
余談ですが紅白歌合戦は必ず“出演”ではなく“出場”という言葉を使うみたいです。
昨年から気になってはいたのですが、紅組白組での切磋琢磨する番組テーマが現在も残っているのだなあと思うと、すごく歴史を感じられます。
さて昨年末、タクシーに乗ったときに運転手さんがいろいろと話しかけてくださる方で、「この時期ですから、役所に申請かなにかですね」と言われました。
こういう場合なんとなく雰囲気を壊したくないので、「あぁそうなんですー」と適当に話を合わせてしまうタイプの自分。そうするとその運転手さんは「個人ですか? 法人ですか? コロナが影響して…」といろいろと話し続けられてしまいました。
話を合わせ続けてはいたのですが、そろそろ目的地に着くあたりで自分の気持ちのなかである迷いが生じたのです。
目的地は役所の辺りよりももう少し先の角なのだけれど、この話の流れに合わせて役所で降りなくて良いのだろうかと。
結局僕は悩んだ末に、役所の辺りで降りてなんならそっちの方向に向かうように歩いたフリまでして、若干の遠回りをして目的地に辿り着きました。
なーんかこういうところあるんですよねえ(笑)。読者の方でこういう感情を経験した方いませんか?? この現象、感情に名前をつけてほしいくらい。
仕事においても状況に応じていろんな角度で人と接してしまう。
ちょっとこの表現は好きじゃないけれど、言い換えるなら空気を読んでしまう。
これはまさにいま自分が、良いのか悪いのか迷ってしまうところでもあります。…まあずっと悩んできたことでもあるのですが。ただ、少なからずそうしてきて後悔はないです。
それがなかったら今がない、と本気で思う性格なので。とくにグループ活動を長くしていると、自分の想いを伝えるどころかいろんな角度から飛んでくる言葉に対してバランスをとるだけで必死なことが日常茶飯事です。
だからこそこれからもこの悩みは尽きないのかなあ…。
グループとしては2020年でデビュー8周年を迎え、9年目に突入しています。
「10」という大台の数字がだいぶ現実的に見えてきたいま、僕らがデビューする前から見てくださっている小竹さんが声をかけるなら、僕たちメンバーにどんな言葉をかけたいですか?
みんなそれぞれのことを知りすぎていて、個々に伝えたい気持ちは否めないかもしれませんが…。(笑)
片寄涼太
p1 昨年の大晦日、NHK紅白歌合戦の合間でリーダーの亜嵐くんに奢ってもらったNHKの食堂の年越し蕎麦。食べ終わって亜嵐くんが「蕎麦じゃなくラーメンにすればよかった」と後悔している姿が彼らしく、微笑ましい大晦日でした
p2 以前イタリアンのお店で頂いた前菜の盛り合わせが、おせち料理のように美しかったのでこの写真を。外食もゆっくりのんびり気兼ねなく、自由に味わって楽しめる日が来てほしいと心から願います
片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡25
片寄の新年一発目の書簡。年末のタクシー運転手との会話から、片寄のキャラクターがよくわかるエピソードが生まれた。「悩んだ末に」彼が取った行動とは?
拝啓 小竹正人さま
年末、とくに大晦日の3日前くらいからなんか妙にソワソワしたりフワフワしたりする感覚ありますよね。
いつもと違う時間の過ぎ方がするというか、部屋の大掃除をしていても意外と疲れなくて年末特有のアドレナリンを感じるというか。
一年のなかでほとんどの人が休みをとって、新たな年を迎える準備をしている雰囲気って独特で結構好きです。
ありがたいことに昨年の大晦日もNHKで紅白歌合戦に出場させて頂きました。
支えてくださる多くの方々に感謝をして、誠意をもって臨みたいと思います(掲載された際は事後になっていることご了承ください)。
余談ですが紅白歌合戦は必ず“出演”ではなく“出場”という言葉を使うみたいです。
昨年から気になってはいたのですが、紅組白組での切磋琢磨する番組テーマが現在も残っているのだなあと思うと、すごく歴史を感じられます。
さて昨年末、タクシーに乗ったときに運転手さんがいろいろと話しかけてくださる方で、「この時期ですから、役所に申請かなにかですね」と言われました。
こういう場合なんとなく雰囲気を壊したくないので、「あぁそうなんですー」と適当に話を合わせてしまうタイプの自分。そうするとその運転手さんは「個人ですか? 法人ですか? コロナが影響して…」といろいろと話し続けられてしまいました。
話を合わせ続けてはいたのですが、そろそろ目的地に着くあたりで自分の気持ちのなかである迷いが生じたのです。
目的地は役所の辺りよりももう少し先の角なのだけれど、この話の流れに合わせて役所で降りなくて良いのだろうかと。
結局僕は悩んだ末に、役所の辺りで降りてなんならそっちの方向に向かうように歩いたフリまでして、若干の遠回りをして目的地に辿り着きました。
なーんかこういうところあるんですよねえ(笑)。読者の方でこういう感情を経験した方いませんか?? この現象、感情に名前をつけてほしいくらい。
仕事においても状況に応じていろんな角度で人と接してしまう。
ちょっとこの表現は好きじゃないけれど、言い換えるなら空気を読んでしまう。
これはまさにいま自分が、良いのか悪いのか迷ってしまうところでもあります。…まあずっと悩んできたことでもあるのですが。ただ、少なからずそうしてきて後悔はないです。
それがなかったら今がない、と本気で思う性格なので。とくにグループ活動を長くしていると、自分の想いを伝えるどころかいろんな角度から飛んでくる言葉に対してバランスをとるだけで必死なことが日常茶飯事です。
だからこそこれからもこの悩みは尽きないのかなあ…。
グループとしては2020年でデビュー8周年を迎え、9年目に突入しています。
「10」という大台の数字がだいぶ現実的に見えてきたいま、僕らがデビューする前から見てくださっている小竹さんが声をかけるなら、僕たちメンバーにどんな言葉をかけたいですか?
みんなそれぞれのことを知りすぎていて、個々に伝えたい気持ちは否めないかもしれませんが…。(笑)
片寄涼太
p1 昨年の大晦日、NHK紅白歌合戦の合間でリーダーの亜嵐くんに奢ってもらったNHKの食堂の年越し蕎麦。食べ終わって亜嵐くんが「蕎麦じゃなくラーメンにすればよかった」と後悔している姿が彼らしく、微笑ましい大晦日でした
p2 以前イタリアンのお店で頂いた前菜の盛り合わせが、おせち料理のように美しかったのでこの写真を。外食もゆっくりのんびり気兼ねなく、自由に味わって楽しめる日が来てほしいと心から願います
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